人気ブログランキング | 話題のタグを見る

4、出会い

「ここが例の場所ね…」

今、私はとある廃工場にやってきていた
どうやらここに妖が出没するらしいからだ

「さて、さっさと終わらせてしまいましょうかね」

私は廃工場へと入っていった

数時間前…

「というわけで、林さんに頼みたいのですよ」
「廃工場の妖ねえ…」
「本当は、俺が行けたら良かったのですが、別口で依頼があるもので…」

月に4~5回、こういう依頼がやってくる
妖を倒す妖…
同族の殺し合いと言ってしまえばそれまでだが、
毒をもって毒を制す、それが私達の考え方である

「分かったわ、今日中に片をつけるから」

私は隆泰君の依頼を受けることにした
人間にも妖にも言えることであるけれども、誰もが良い人であるはずもないし
悪い人であるはずもない。
私はただ私にとって大事な人達を守りたい、それだけである

今回の件も事例を聞く限りでは
人間がちょっかいを出さなければ特に問題ないはずだったと思う
人間には人間の妖には妖の立場というものがある

それをお互いに侵したときにこういったイザコザが起きるのだ
無干渉が一番いいのだが、そうもいってはいられない

「それじゃあ、お願いします。報酬はいつものようにやっておくんで」
「分かったわ、連絡先はいつものところで?」
「はい、誰かしら待機しているので、大丈夫ですよ」

隆泰君は私に頭を下げると、音も無く立ち去る
人間の同業者は非常に珍しいがこういった関係も面白い

「さて、準備してさっさと終わらせようっと」

少し気分の高揚している私はワクワクしながら準備を始めた

そして、現在この廃工場にやってきている

「気配はする…隠れているのかしら…?」

私は周囲に警戒しながら奥へと進んでいく

「今のうちに撒いておいたほうがいいか…」

私は植物の種を辺りに撒き散らす
これが室内で戦う時の私の切り札になりうるからだ

「これで良し、と後は仕掛けてくるのを待つだけかな」

私は妖が現れるのを待つことにした、
自分から探してもいいのだが、ここは敵の領地内
下手に動いて罠にかかるよりも、自分の領域に誘い込んだほうが戦いやすいからだ

少しすると空気の流れが変わる

「きたかな」

殺気とは違うが明らかにこちらの様子を伺っている

「出てって…さもないと、ケガをすることになります」

少女の声が工場内に響く

憑依神…にしては若すぎる声
単純にここを根城にしている、妖なのか
だったら、今まで噂にならなかったのがおかしい
という事は結論は一つ、新しい妖…生まれたばかりの妖なのだ

「残念だけど、そういうわけにはいかないのよ」
「そんな事言う人は今まで何人もきたわ、けれど誰も私を止められないのよ」

彼女の言動はどことなく悲しみを含んでいる
こうすることが苦肉の策であるかのようである

「私をここから出したいのなら、力ずくでやってみたら?」
「…そうですか…、仕方ありません…」

一瞬、気配が消えたかと思うと、それが大きな私への敵意となった

ガッ!!

ズザザザザ!!

私は彼女の拳を防御する、人間とは思えぬその力は私の体を何メートルも引きずる

「!!」

彼女の動きが一瞬止まった、それは明らかに驚いているという表現であった

「なかなかやるわね、でも私はこの程度じゃ倒せないわよ」
「少し甘く見すぎていたようですね…、次は本気でいきます」

ヒュン!!

さっきよりも素早い動き
訓練のしていない者だったら、目で追うことすらできないだろう
だけど、私はこれくらいの速さだったら何度も体験している

ドガッ!!

「まだまだ、甘いわね」

私は植物の盾を作り彼女の拳を止める

「そして、これで終わりよ」

合図を送ると、さっき撒いた種が一瞬で成長し蔦を伸ばし、彼女を絡め取る

彼女は必死にもがいてはいるが、蔦を外すことはできない
少しすると諦めたように、力を抜く
しかし、少女は少し安心したそんな顔付きであった
by meruchan0214 | 2006-03-25 11:08 | 妖の調べ


<< 5、信じるモノ 3,悪夢という現実 >>