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16,影の使者

中に入ると、薄気味悪い感じがした

「いかにもって感じね…」
「そう、ですね…」

陽子ちゃんは少し雰囲気に飲まれているようだ

「ここは別々に参りましょうか、私が上見てまいりますから、林さんと陽子さんは一階をお願いいたします」
「そうね、ゾンビとかなら夕子ちゃんの方が得意だし」

私は夕子ちゃんの提案に頷く

「では、わたくしは上からみてまいります」

夕子ちゃんはふわりと翼を広げ踊り場から一気に上の階へと上っていく
こういうとき、空を飛べると便利だと思う
私は空中の敵こそ攻撃自体はできるものの、空を飛ぶことができない
だから、夕子ちゃんのことが少しうらやましかった

「じゃ、行こうか?」
「はい!」

陽子ちゃんは空元気とでも言うべきか、声だけはでている
私達は一つ一つ部屋を調べていく

「何にもいない…か」

一向に妖が見つかる気配がない
でも、確かに妖の気配は感じる、どこかに隠れているのだろうか

「どこにもいませんね」

陽子ちゃんが話しかけてくる
ずっと何もいないせいか、陽子ちゃんの気も落ち着いてきたようだ

「そうね、でもこの手の妖はどこに潜んでるか分からないから気をつけないと」
「なるほど…、じゃあ、私もその気になれば色んなところに潜めるのかな?」
「ははは、そうかもね」

冗談を言えるくらいの心のゆとりができているみたいだ
本当は、このまま何事もなければ一番いいのだけれども

ガチャ

「この部屋もいない…か」

もういくつ部屋を見てまわったか分からないが
どこにも妖の姿は見えることはない

「一回、入り口まで戻ってみようか?」
「そうですね」

私と陽子ちゃんは入り口へと戻る

「あ、夕子ちゃん」

入り口には夕子ちゃんが待っていた

「林さん、見つかりましたか?」
「こっちは全然、その様子だと夕子ちゃんの方も何も居なかったみたいね」
「ええ、まるでこちらの様子をずっと伺っているみたいな、そんな感じがします」

確かに夕子ちゃんの言うとおりだ、
明らかに居るというのは分かっている、だが姿が見えない
相手の情報を得るというのは戦いを有利にする
そのことを考えると、相手はただの妖ではないことが推測がたつ

「陽子ちゃんはどう思う?」

・・・・・・・・・・・・

返事がない

「あ、あれ?陽子ちゃん!?」

ついさっきまで隣にいたはずの陽子ちゃんがいなくなっている

「林さん、もしかしたら、相手が何か仕掛けてきたのかもしれません」
「分からない、けど陽子ちゃんを探さないと!!」
「はい!!」

私達は陽子ちゃんを探す
だが、上から下隅々まで探したが陽子ちゃんの姿は見当たらなかった

「一体何処に…」

ここの妖につかまってしまったのではないだろうか、
捕まっているだけならまだいいけれども、殺されているなんてこともある
私の頭の中はどんどんとマイナス方面へと向かっていく

「林さん!!しっかりしてください!!」

夕子ちゃんに大声を出されて私の意識が戻ってくる

「ごめん、夕子ちゃん、ちょっと取り乱してた」
「この洋館の中にはいるはずです、もう一回探しましょう」

私達は再び洋館内を探し始めた

無事で居てほしい、ただそれを願って…
by meruchan0214 | 2006-04-04 23:26 | 妖の調べ


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