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59、分からない事

「ん~・・・納得いかないなあ・・・」
「どうしたの陽子ちゃん?」

無事に済んだからいいようなものの、隆泰さんとか恵さんは本当に洗脳されていなかったのか
夕子さんに手傷を負わせたのは事実だし、あんな風にトントンいくのが気に食わない

「隆泰さん達って酷いじゃないですか」

正直、洗脳を受けないのならばもっと別の手段もあったと思う
だけどわざわざ洗脳した振りをしてまで私達と戦う意味があったのだろうか

「まあ、夕子ちゃんの事も、今回のこともそれなりに隆泰君達の考えがあってのことでしょう」

林さんの言うことももっともだが、それでも納得いかない

「夕子さんだって、怪我したのに」
「それだけしなくてはいけなかったのじゃあ、あいつの居場所を教えてくれたのだって、隆泰君でしょ?」
「そうですけど・・・」

そうあの時入っていた紙は隆泰さんが気付かないように私に渡したもの
それのお陰で私達はあの男の場所へと行けたのである

「もしかしたら、夕子ちゃんは初めからわかってたのかもね」
「え?」
「隆泰君達が操られて無いこと、それを知った上で自ら怪我をしたとも考えられるわ」
「どうしてそんなことを?」
「夕子ちゃんはね、献身的すぎるのよ、だからお互いの為を思っての事、隆泰君もそれには気付いてたのかもしれないよ」

確かに夕子さんの他人思いのところは行き過ぎな気もしないでもないが、
他人のためにそこまで自分を傷つけられるものだろうか

「ま、予定調和ってやつ?隆泰君達にしても、夕子ちゃんにしてみても」

林さんに言われてもやっぱり納得がいかない

「むう、そんなものなのかなあ・・・」

だが、確かにそう言われてしまうとそう思える節もある

「明日、夕子さんに聞いてみよう」

そう思い寝床につく

そして、次の日・・・

私は学校が終わった後、夕子さんに会いにいった

「あら、陽子さん、どういたしました?」
「ちょっと、お話したいなと思いまして・・・」
「昨日の事、ですか?」
「どうして、それを?」

夕子さんはフフッっと笑う

「顔に書いてありますよ」
「えっ?」
「とりあえず、どこか寄っていきましょうか」

私達は近くの喫茶店へと入る、もちろんリトルガーデンではない

「林さんが言ってたのですけど、隆泰さんが本当は洗脳されて無いって知ってました?」
「知ってましたよ」

ケロッとした表情で返答する夕子さん

「じゃあ、あの怪我は・・・?」
「あれは確かに隆泰さんに受けたものですけど、命には別状ありませんでしたし」

何と言うか、お人好しもここまで来ると怖いものがある

「じゃあ、私達の所に来た時のあれは?」
「半分嘘で半分本当の事ですね、隆泰さんが演技してるのかしてないのか、見てれば分かりますから」

信頼しているとはこういうことを言うのだろうか?
何かが違うような気がしないでも無い

「陽子さんにはまだ分からないかもしれないですが、私達はこれで今までやってきたんですよ」
「でも、いいんですか、本当に?」
「私も似たようなこと、隆泰さん相手にやったことありますし、お互い様ですよ」

夕子さんは笑いながら話す
笑い事じゃあ無い気がするけど、この人たちにとっては当たり前なのかもしれない

「まあ、真面目にいうと、言わなくても分かるんです、もう何年も一緒にやらせていただいてますから」

お互いを信頼しているから、自分の身を犠牲にできる
心が通じ合ってでもいるのだろうか・・・

少し隆泰さん達がうらやましかった

「昨日のことなら隆泰さんからちゃんと謝っていただきましたし、平気ですよ」

再び、夕子さんに笑いが見える
私や林さんも同じ状況に陥った時、こんなことができるのだろうか

夕子さんや隆泰さん達のつながりの深さを改めて知った気がした
by meruchan0214 | 2006-05-17 13:16 | 妖の調べ


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