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あの日の思い出 7

グラディアでの事はあっという間だった
カースアイズやその娘達との語り合い
私達と全く変わらない夢や希望に満ちていた

「何とかしてやめさせないとね」
「そうだね」

私達はグラディアの国を後にし、フェイルト王国へと戻った

王国に戻った私達はグラディアがどういう国か姉さん達に分かってもらうべく
記録石に記録した全てを見てもらうことにした

「魔族全部が悪いわけじゃないんだよ、姉さん」

姉さんの顔は信じたくなさそうな顔をしている
多分、私もあの時の出来事がなく、カースアイズと再会していなければ
姉さんと同じような反応をしただろう

「こんなの嘘よ!!」
「嘘じゃないよ、私達がちゃんとこの目で確かめたんだから!!」

私達の村を滅ぼした魔族、グラディアで平和そうに暮らす魔族
どちらも本当のことだ、私も村を滅ぼした魔族は許すつもりはない
だけれども、少なくともグラディアの魔族達は違うと私は信じていた

「だからね、姉さんもグラディアの事考えて」
「・・・少し時間を頂戴」

姉さんは部屋から出て行く、少なくとも効果はあったとは思う
グラディアとの戦闘はこれ以上は無意味だと、国全体に広める為には姉さんの協力も必要なのだ

「ラスフィーナさんも分かってくれますよ」
「そうだね、ヴェルダ」

そして数日後、私達は国王へグラディアの現状を伝えるべく城へと向かった

「おお、エルターナとヴェルダか今回の件はご苦労であった」
「いえ、それで王様提出した記録石の件ですが・・・」
「うむ、少し信じがたいがお主達が嘘をついているとは思えん」

やはりグラディアを記録石で完全に記録してきたのは正解であった
元々この国の王は温和な方、魔族が倒すべき敵ではないと分かればきっと戦争をやめてくれる

「だがしかし、国境付近の村を襲って略奪しているのも事実・・・」
「それはグラディアとは関係ないと再三申し上げているはずです!!」

私は声を大にあげて王様にほえてしまう

「じゃが、確証が無いいじょう、裏でやっているともいいきれんじゃろ」
「確かに・・・そうですが・・・」
「ワシも必要の無い争いはしとうない、無関係だと証明できたのならばすぐにでもやめよう」

証明するには私達には難しいことであった
そう、現在魔族が暮らしているとはっきりしているのはグラディアしか存在しない
それに魔族がグラディア方面からやってきているというのは事実
私達にはかなり不利な状況であった

「私が証明しますよ」

不意に後ろから聞き覚えのある声
私達が後ろを振り向くとそこにはカースアイズの姿があった

「カースアイズ・・・、どうしてここに?」
「ある人に頼まれてね、よくたったの数日でグラディアまできたと思うよ」
「お主があのカースアイズか・・・」
「お初にお目にかかります、フェイルト王国国王」

カースアイズは丁寧にお辞儀をする

「話は元に戻しますが、私達の国の魔族は決して無抵抗な人たちを殺せる者達ではないです」
「それはエルターナから聞いておる」
「ですので、エルターナの居た村を襲った魔族は私が責任を持って捕まえました」

するとカースアイズは呪文を詠唱する

フワ・・・

一個の球体の中に、幾人もの魔族が入っている
カースアイズにも似たような雰囲気はあるものの
こいつらは発するオーラ全てが邪気に満ちていたのが分かる

「この者達の処罰はあなた方に一任します」

カースアイズがトンッと軽く球体を押すと地面をすべるように球体が移動する

「本当にこいつらが私達の・・・?」
「ええ、体に聞いたから間違いないわ」

この魔族に対して怒りがふつふつと湧き上がってくるのが感じる

「ふむ、それが本当であればエルターナやお主の言うことは正しいと言うことになるな」
「今回ここに来たのは、グラディアの女王の命により代表として王と謁見することにあります」
「どういうことなんですか?」
「和平を結びたいということです、書状もこちらにお持ちしてあります」

カースアイズは王の側近に書状を渡し、王がそれに目を通す

「ふむ・・・、確かに直筆の書状らしいの」
「グラディアの魔族達は人間達と共存を望んでいます、しかしそれを快く思っていない魔族も居るのも確かです」

カースアイズは言葉を続ける

「ですが、私達はそれを最小限に抑えたい、だけど私達を認知してくれているところは少ないのが現状です」
「おぬしの言いたい事はよく分かった」
「エルターナのような事を繰り返さない為にも他の国々の協力が必要なのです、どうかお願いします」

カースアイズが深々と頭を下げる
それだけ真剣だということである表れであろう

「・・・近々、グラディアへこちらから向かうと女王に伝えておいてくだされ」

それはグラディアとの和平を結ぶと遠まわしにいった言葉であった

「ありがとうございます!!」

再び王に向かって頭を下げるカースアイズ
そして、私に向かってそっと話しかけてきた

「お姉さんに感謝しなさい、あの人がグラディアに来なければまだ戦争は続いてたのよ」
「姉さんが?」
「では、私は女王に伝えてきますのでこれで失礼します」

カースアイズは礼儀良く王室から出て行く

「さて、エルターナよ」
「はい」
「お主達の言うことは確かであった、グラディアの事は安心するがよい」
「はい!!」

私は嬉しかった、これであの人と戦う必要がなくなる
それだけで嬉しかった

「後、この魔族達の処罰はどうする、死刑は免れぬが」
「・・・私にやらせてください」

一種のけじめであった
正直、この球体に閉じ込められている魔族達は憎くてしょうがない
でも私は知ってしまった魔族全てが憎むべき存在ではないと
だけれど、家族を殺した者達だけは私の手でやりたかった
憎しみの刃はこれだけにしようと心に誓いながら私は彼らを処刑した



数ヵ月後・・・

フェイルト王国とグラディア王国は無事に和平を結ぶことができた
フェイルト王国は始めは反対していたものが大多数だったが
グラディアの魔族や王の働きもあって少しずつ受け入れられつつあった

「まさか姉さんがグラディア王国まで直訴しに行っていたとは思わなかったよ」
「別に私は貴方がそこまでいうから、信じてあげたくなっただけよ」
「ほんと、感謝してますよ姉さん」

私達はグラディアの人達と一緒に国境の警備をしている
もちろん魔族も一緒だ

「エルターナさん、サンゲル村の方に山賊が現れたそうです」
「OK,みんなよろしくね」

私達の共存への道は始まったばかりなのだ
by meruchan0214 | 2006-07-26 21:24 | 短編小説


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