人気ブログランキング | 話題のタグを見る

30夜 変異

デュアラウズとの戦いが始まった
真達は全力を持って戦ってはいるが、お互いにダメージは与えてはいない

「やっぱり、強い・・・」

父親の力を吸収したデュアラウズの強さは今まで戦ったどんな敵よりも強かった

「攻撃が全く効かないなんて」

何度も攻撃を試みるが、牽制程度の攻撃ではダメージを与えることはできない
だが、こちらは相手の攻撃を一撃もらっただけでも致命傷になりかねない

「真、千夏、左右から攻撃しろ!!」

隆泰の指示が辺りに響く
攻撃が効かないことは隆泰も重々承知ではある

「持久戦はこっちの方が振りだっていうのに・・・」

元々、妖と人間では身体的に人間の方が圧倒的に不利である
訓練である程度は縮まるとはいえ、根本的な差は埋まらないのだ

「何とかして短期決戦に持ち込みたいけど・・・」
「私が隙を作るよ、その一瞬を逃さず全力で攻撃すればもしかしたら・・・」

千夏が真に話し始める

「隙を作るって?」
「とにかく、任せなさいって」

千夏はそれだけ言うと、デュアラウズに向かって走り始める

「千夏!!不用意に近づくな!!」

隆泰の言葉を無視し、真っ直ぐにデュアラウズと向かっていく

「馬鹿め、そっちから死ににくるとはな」

デュアラウズの四肢が伸び、千夏を襲う

ヒュン!! ガッ!!

間一髪のところで攻撃を避ける千夏
そのまま、勢いを緩めることはない

ヒュン!!ヒュン!!

巧みに攻撃を避ける千夏で後少しというとこまでやってきた

ザス!!

肩に一撃デュアラウズの攻撃が突き刺さった

「この程度・・・!!」

傷にひるむことなく千夏はデュアラウズに取りついた

「ぐっ・・・」
「真君今よ!!」

千夏が真に向かって叫ぶ
千夏の言う隙を作る方法とは、自分が動きを封じて自身ごと攻撃をさせることだった

「くくく、私の武器を忘れたのか?」

デュアラウズの体から鋭い角が伸び、千夏の体をめったざしにする

グサッグサッ!!

鈍い音が辺りに響く

「千夏さん!!」
「千夏!!」

真と隆泰の大声が辺りにこだまする

「私に近寄ったのが運の尽きだったな」

角がつきたたっている千夏の体を引き抜こうとする

「ぬ、まだ息があるのか」
「貴方を倒すまでは・・・死ねないからね」

普通の人間なら即死しそうな攻撃を受けてなお、千夏はデュアラウズの動きを止めている

「早く、真君!!店長!!」

千夏の声が二人に届く

「真!!やるしか・・・ない!!」
「千夏さん・・・」

隆泰は傷の具合から見て治せないと判断したのか、攻撃の構えを取る
だが、真は千夏の事を思うととても攻撃はできなかった

「真君!!」

千夏の再三真を呼ぶ声

「離せ!!この女ぁ!!」

デュアラウズは躍起になって、千夏を攻撃する
千夏はその攻撃を受けながらも、手を緩めようとはしない

「このままだと三人とも死んじゃうわ、だから、今やるしかないのよ!!」
「でも、でも僕は・・・!!」
「皆を守るんでしょ!!こんな所で止まってどうするの!!」

真は攻撃をする構えを取るしかなかった
確かにデュアラウズは倒したかったが誰かを犠牲にしてまで望んだことではない
ましてや、皆で生きて帰ると誓ったのに、今ここで千夏を見捨てようとしている

「千夏さん・・・ごめん・・・!!」

真の顔から涙が溢れていた
誰かを犠牲にしなくては、自分達の勝ちはない
やりたくないけどやるしかない、真は自分の出来る全ての力を込めた

「千夏すまない・・・」

隆泰からも謝罪の言葉が漏れた

「大丈夫ですよ、店長・・・」
「真、行くぞ・・・」
「はい!!」

隆泰と真の最大威力の力が溜まっていく

「離せ、離さんか!!」

デュアラウズは必死に千夏を振りほどこうとするが傷だらけの体とは思えない力で千夏は押さえ込んでいた

「今、私は痛みの感覚がないからね、どんなことをしても無駄よ」

そして・・・
全力の一撃がデュアラウズに振り下ろされた

ズガガガガァァァァァァァン!!

辺りに凄まじい爆音が響く
全てを込めた一撃、辺りにあるモノもなぎ払うほどの威力

後に残ったのは静寂が包む世界
隆泰と真の二人だけだった

「店長・・・」
「何も言うな・・・、俺達は無力だったな」
「はい・・・」

後悔しても帰ってこない、どんなに嘆いても死人は蘇らないのだ

「結果的には一人の死者で済んだ・・・だけど・・・」

真の胸にはやるせない気持ちで一杯であった
例え敵に勝っても誰かが死んでしまっては嬉しくもなんともない

「折角、知り合えたのに・・・まだ色々話すこともあったのに・・・」

真は悲しみで声もでなくなってきた
ただ、ただ涙だけが顔から流れ落ちてきていた

「千夏さん、ありがとう・・・」
「どういたしまして、真君」

不意にどこからか千夏の声がしたきがした

「え・・・幻聴・・・か・・・」
「幻聴じゃないわよ」

ボコッ

地面から千夏が突然現れた
真と隆泰は何が起きたのかさっぱり飲み込めなかった

「うん、上手くいったみたいね、さすが私」
「さすが私って・・・、どうして!?」
「ま、死に掛けたのは確かだけどね、体バラバラになったし」

恐いことをアッサリと話す千夏
だが、それ以上に真は千夏が生きていてくれたことが嬉しかった

「もしかして、例のウィルスの力なのか?」
「ピンポーン、店長正解です」

真も以前千夏の口から聞いたことがあった
人間を超人にしてしまうウィルスのこと

「そんなこと・・・できるなら早く言ってくださいよ!!」
「敵を騙すには味方からってね、敵が私の事知ってたら掴ませなかっただろうし」

確かに言っていることは分かるが真は悲しんだ分の気持ちをどうすればいいか分からなくなっていた

「千夏、今度休みなしな」
「え、店長、それ酷いよ、私のお陰で勝てたのにー」

真は隆泰の言葉にうんうんとうなずいた

「とりあえず、無事でよかったよ・・・」

その場に力なく座る真
千夏が生きていたことが嬉しかったせいか安心してしまったのだ

「あはは、ごめんね、でも心配してくれてありがとね」

チュッ

千夏は軽く真のほっぺにキスをした

「わ!!何をするんですか!?」
「あはは、照れちゃって、可愛い」

真っ赤になっている真を千夏が笑う
それを見て隆泰も笑っていた

「店長も心配してくれてありがと」
「キスはないのか?」
「してほしいの?恵さんが何かしても私知らないよ?」
「冗談に決まってるだろ、そんなこと頼んだら恵に殺される・・・」

隆泰はかなり真面目な顔で話していた
とにかく全員無事でよかった
ただ今はそれだけで気分が良かった

戦いは終わったのだと実感できたのだ
by meruchan0214 | 2006-08-02 22:02 | LittleGarden


<< パソコンについての独り言 小さな村の御伽話2 >>