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Mission3 想いをのせて

ビーッ!!ビーッ!!

激しい警報音が辺りに鳴り響く
音は違えど何度も聞いた覚えがある、緊急警報だ

「戦闘が・・・あるのか・・・」

フリスはただ黙って自分の部屋にいるだけである
今の自分は捕虜である、扱いこそ捕虜とはかけ離れてはいるものの敵の艦にいることには違いないのだ

「まったく、また戦わないといけないなんて」

この前目が覚めたとき、最初に話をした女の声がする

「ごめんなさい、今は貴方しかハイシェントを扱える人がいないから・・・」

その近くでリシェルの声もする

「分かってます、でもどうしても戦いは好きになれなくて」
「ごめんね、貴方には無理をかけてばかりで」

フリスは二人の話す声を聞いて驚いた
あの竜の機兵を操っていたのは、少女だったからだ

「じゃあ、私そろそろ行きますね」
「お願いね」

タッタッタッと廊下を走る足音がする
少女が機兵の場所へと向かったのだろう

「あんな子まで戦いに出ているのか・・・」

自分の国に居たときには信じられない光景であった
国では望んだ人間のみが軍の一員として活動する
フリスもまた家系柄自分から望んで軍へと入ったのだ

シュィン

扉の開く音がする、中に入ってきたのはリシェルであった

「すぐにでも戦闘状態に入ります、もしもの事があるので、ブリッジまできていただけますか?」
「・・・分かりました」

リシェルの言われるがままブリッジへと足を運ぶ

「ここでは少女も機兵に乗らなければいけないくらい、人が足りないんですか?」

フリスは聞いてはいけないことだと思いつつもどうしても聞きたかった

「さっきの話、聞こえてたのですか・・・」

リシェルは少し暗い表情をする

「今、ハイシェントをまともに扱えるのは彼女しか居ませんから・・・、私達だってまだ子供の彼女を戦闘に出すのは辛いのです」

悲痛ともとれるリシェルの言葉、ここではフリスの国のように人に溢れているわけではない
護る為に仕方がないことなのかもしれない、でもまだ少女が戦うことなど許されていいものではなかった

「だったら、何で降伏しないんですか!?}

つい大声を荒げてしまう

「この前説明した通りです、戦闘は我々としても本意ではありません、が貴方達の国がやっていることを見過ごすわけにはいきませんし、何よりココに住んでいる人々を護らなければなりませんから」

フリスはあの時見せられた映像が頭に浮かんだ
確かにあれは人のやることではない
もしココが降伏したらあの映像のようなものをここでも行われるのだろうか

「争いがないことは良い事です、ですが弾圧あっての強制では意味がありません」

フリスは何も言えなかった、誰もがあんなふうに支配されたくはない
戦争は世界平和の為には仕方がないと思っていたが、違うことだと思い始めていた

「リシェル艦長!!ハイシェントの様子がおかしいです!!」
「なんですって!?」

確かにハイシェントを見ると、この前戦闘したときよりも動きが鈍くフラフラしている
リシェルは慌ててマイクを取り、ハイシェントへと呼びかける

「アコナ!!アコナ!!返事をして!!」
「あ、リシェルさん・・・、すいません、大丈夫です」
「大丈夫ですって・・・?すぐに戻ってきなさい!!」

明らかにアコナに体調の異常があったのが分かる

「しかし、リシェル艦長今、ハイシェントが戻ったら・・・」
「仕方ないわね・・・、部隊全員にウロボロスの電磁シールド内より出ないように通達」
「了解」
「アコナは戻り次第医者に見せなさい、ハイシェントはいつでも起動できるようにしておきなさい」

肝心のハイシェントがない状況では明らかにウロボロス側が不利なのは目に見えている
先の戦闘もハイシェントあってこその勝利だった
それくらいハイシェントは機兵として完成されているのだ

「俺が乗りましょう」
「え?」

フリスの言葉にブリッジに居るクルー全員が耳を疑った

「貴方がハイシェントに?」
「はい、腕には自身ありますよ」
「リシェル艦長、そいつは敵ですよ!!騙そうとしているんです!!」

普通に考えればクルーの言うことはもっともだろう
当然、リシェルも同じ事を考えていることだとフリスは思った

「分かったわ、アコナが戻り次第変わって頂戴、パイロットスーツを彼に渡して」

リシェルの意外な対応にクルー全員が驚嘆している

「信用するんですか?」
「信用しなければ、ハイシェントには乗せませんよ」

フリスの中で何かが変わったわけではない、真実が分かっただけなのだ

「艦長!!」

周りのクルーの意見を無視し強引にハイシェントへとフリスを乗せる

「いい、ハイシェントは強力故に乗り手を選ぶわ、まずはスピードになれてちょうだい、基本的な操作は他の機兵と同じだから」

リシェルの簡単な説明がされる

「大丈夫ですよ、何年も乗ってますからね」

フリスはハイシェントに乗って戦場へと舞い出た
味方であるはずの故郷の国を裏切って
ウロボロスのパイロットとして戦場へと赴いたのだ
by meruchan0214 | 2006-08-18 23:07 | 守護機兵 ハイシェント


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