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堕ちた天使 6

屋敷に侵入した夕子は次々と敵を蹴散らし奥へと進んでいく
朝子の両親の忘れ形見、絶対に護りたい
大事な事を教えてくれた彼等の恩にまだ報いていない

「待っててね、朝子」

それだけではない、朝子は自分にとっても大事な、大事な妹だ
無事でいてほしいのは当然である

「こっちか!!」

夕子はどんどんと先へと突き進む
自分には朝子がどこに居るか感じることができる、ただそれを追っていけばいい
夕子が朝子の居るであろうと思われる場所についたのはすぐだった
しかし、その扉の奥からは朝子だけの気配ではない、邪悪な気配が感じ取れた

「退くわけにいかないしね」

夕子は扉を勢い良く開ける
そこには猿轡をさせられ縛られている朝子と以前倒したはずの妖が立っていた

「朝子を帰しなさい・・・!!」
「君にできるかな、今の君に」
「ムーッ!!ムーッ!!」

朝子は何かを言おうとしているが猿轡のせいで声にならない
夕子は本来の姿に戻りたかったが、朝子の目の前でもある
自分の正体を知らない朝子、この世界の事を知ってほしくなかった、巻き込みたくなかった

「ククク、さあ、お前の姿を見せてみろ!!」

銃を持った男達が現れる、その顔色は青白く既に生気はなかった
男たちは一斉に夕子に向かって銃弾を浴びせる

「どうした、変身しないのか?」
「くっ」

夕子は本来の姿、天使に戻る事を躊躇っていた
今まで自分を信じてきた人間に正体を明かす危険さは良く知っている
朝子が全てを受け入れてくれる可能性は100%ではないのだ
部屋の中を激しく動き回る夕子、少しでも銃の狙いを定めさせない為だ

「こいつ等はまだ何とかなるとしても・・・、やるしか・・・ないのか」

朝子を助けるには天使の姿を取るしかない、例え嫌われても良い
助ける事を第一と判断した夕子は意を決し、敵の前に立った

「朝子、私は貴方を本当の妹のように思ってたよ」

夕子は朝子に声をかけると、訳の分からない顔でキョトンとしていた
その直後に夕子の体が光に包まれ、天使の姿へと変わっていく

「貴方達は絶対に許しません!!」

天使の姿を取り戻した夕子、その手をかざすと光が亡者たちを包み、無へと帰す

「そうでなくては、面白くないな、天使フィリアムよ!!」

夕子が本来の姿に戻るのを待っていたかのように、敵も本来の姿、ヴァンパイアとしての姿を曝け出した

「私だけならともかく、朝子をさらったこと、絶対に許さない!!」

強力な妖同士の戦いが始まった
夕子は朝子を護るため、全てを捨てようとして戦いを挑もうとしていた
by meruchan0214 | 2007-01-10 23:11 | 短編小説


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