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桜の散る頃 4

いつもと変わらない日常、例えおかしいとも言われても、桜には関係ない
自分の行きたい道を行き、自分のやりたいことをする、それだけで桜は十分だった
しかし、それが本当に桜の望んでいた事なのか分からなくなるときがあった

「貴方は本当は全てを表にだすのが怖いのよ」
「私は好きな事をやっているだけ」
「いえ、臆病な自分を隠す為にやっていること」
「そんなことはない、毎日楽しく暮らしている」

自分の中の何かが囁いている、どれが本当の自分でどれが偽りの自分
だが、桜は気づいていた、どれも自分自身であるということを

「いつまで自分を演じているつもり?」
「演じてはいない、これが私自身」
「嘘、貴方は怖いから演じている、私を出す事を恐れている」
「恐れてなんかいない、貴方は私、私は貴方だから」
「では、何故私を閉じ込める、何故私を外に出さない、それは自分が、桜自身が本当の自分になる事を恐れているから」

頭の中で自分達だけの会話が続いている、表に出ている自分
心の奥に隠されている自分、全てが自分であり、それぞれが自己主張をする

「・・・ちゃん、さ・・ちゃん、桜ちゃん!!」

恭子の声に夢から覚めるよるにガバッと飛び上がった
それに驚いたのか恭子は胸を手にあてて、少し後ずさった

「桜ちゃんが寝てるなんて珍しいね」
「う~ん、お休み電波がランゲルス星から飛んできたから」

いつもの調子で答える桜、しかし何かがいつもと違う
あんな夢を見たからであろうか、自分がこれを演じているのか分からない

「ねえ、もしも私が私じゃなくなったらどうする?」
「・・・」

突然、いつも変な事を言っている桜に質問をされて恭子は固まった

「ね、熱でもあるの?」

結局恭子の第一声は桜を心配する声だった、だがいつもとは違い真剣な表情を見ると恭子は真面目に答える

「どんなことしても、どんな風になって、桜ちゃんは桜ちゃんでしょ、桜ちゃんの代わりはいないんだから」
「私の代わり・・・?」
「例えばさ、桜ちゃんが急に記憶喪失になって自分が分からなくなってもさ、私は桜ちゃんの友達であり続けるよ。だって例えどんなになっても桜ちゃんは私の大事な友達だから」

桜は恭子の言葉が嬉しかった、思わず、涙が出てきてしまうほどだった

「わっ、桜ちゃん、どうしたの急に」
「あれ・・・、勝手に出てきちゃうよ」

暖かい涙、嬉しい気持ち、全てが一気にこみ上げてきた
どうあっても、自分は自分、それが分かっていれば自身を見失わない気がした
by meruchan0214 | 2007-02-05 12:36 | 短編小説


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