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死神と呼ばれた少女 3

私にはその人を倒す事ができなかった
その人の想いが私の中に流れ込んできた

「可哀相・・・」

私と同じくらいの年齢、私と同じような力の持ち主
だけど、私と彼女では育った環境が違った
私には助けてくれる人が居てくれた、ずっと傍に居てくれた
最初は呪ったこの力だけど、皆の為に使えることの喜びを知った

「お前、何故私の邪魔をする」

彼女は死霊術師、ソウルイーターの持ち主、悲しい悲しい人だった
感情がなくなっているようには傍目から見えるだろう、本人もそう思っているだろう
でも、本当は心の奥で悲しんでいる、人を殺すたびに悲しんでいる

「私には彼女を殺せない・・・」

私には彼女の姿が私に被っていた、彼女がどんなに人を殺してもどんなに倒さなくてはいけない人でも私には無理だった

「何故、お前は本気を出さない、このまま殺されるというのか」
「私と貴方は似すぎている、だから貴方の気持ちが良く分かるの」
「私は気持ちなど、とっくの昔に捨て去った誰にも私の気持ちなど分かるものか」
「分かるよ、私も母さんと出会わなければ、貴方みたいになってたから」

彼女はそれを否定するかのように攻撃を仕掛けてくる、私はそれを避けるだけ
倒せない、こんな悲しい人を倒してはいけない

「ミスティ、まだ終わってないの?」
「母さん!!」

私が彼女を倒す事に戸惑っていると、母さんがやってきた

「母さん、あの人私と一緒だよ、本当は可哀相な人なんだよ」
「可哀相・・・ね、でも私達の依頼は彼女を殺す事、でしょ」
「そうだけど、でも・・・」

母さんは私の言葉は分かっているはずだ、私を救ってくれたのは母さんだから
母さんはフゥとため息をつくと、私に笑いかける

「言い出したら聞かない子だからね、でもとりあえずは、ね」
「うん、ありがとう」

あの人を救いたい、ただそれだけ
母さんが私にしてくれたように、私もあの人を救いたかった

死神と呼ばれた私を救ってくれたように
by meruchan0214 | 2007-02-19 14:20 | 短編小説


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