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タキルの章 11輪 疑問

タキル達はルティやティリカ、アーシャの計らいで元々の自分の家で魔族達と一緒に居る
タキルにはその生活が懐かしく、楽しいものであった
姉や妹が居て、ケイナやシェリル、仲間の魔族が居る
今が戦いの真っ最中であるということなど忘れてしまいそうな事だった

「今が奴らと戦っているとは思えないくらいだな・・・」
「そうね~」

ここしばらくは連日の戦闘ということもあってか、休養を含めた待機状態である
ケイナも久しぶりの地上ということで大分嬉しいようだった

「!!」

不意に感じる不穏な気配、感じ取ったのは自分だけではなかったみたいだった

「私達を呼んでいる・・・?」

タキルとケイナは急いで店の外へと飛び出した

「タキルさん!!」
「タキル様!!」

シェリルとヘーテも気がついたようでタキル達に合流した
四人はその気配のする方へと走っていく

「居た・・・!!」

そこには二人の魔族がタキル達を待っていた
一人は忘れたくても忘れられない、タキル達の村を滅ぼした張本人
もう一人は女の魔族であるが、普通に立っているだけなのに隙が全く見当たらない

「デサイドとルエス・・・」
「ゲルデイグ軍の四将軍が二人も居るなんてね」

魔界で知った事実、ゲルデイグ軍とマルズ軍との戦い
タキル達の村を滅ぼした魔族はこのゲルデイグ軍のデサイドであった

「デサイド、貴方はもういいわ」
「くくく、同じ仲間だと言うのに・・・」
「別に私が彼らに会いたいというのに勝手についてきただけでしょ」

デサイドはクククとただ笑っている

「お前達が何のようだ!!」

敵対している魔族に対して吼えるタキル
だが、ルエスはそれに過剰に反応することもなくただ淡々としている

「まあ、私は彼らには縁があるようですからねぇ」
「貴様・・・!!」

デサイドの嫌らしい声が耳につき、タキルは怒りをあらわにする

「デサイド、貴方は黙ってて!!」
「おお、怖い。それでは私はこの辺りで失礼しますよ」

そういうと、デサイドは空間を消えるように居なくなった

「貴方がタキルね」

ルエスは観察するようにタキルに話しかける
今まで出会ってきたゲルデイグ軍の魔族とは何かが違う気がする

「何故貴方達は人間と共に歩む道を選ぶ?」

何故と言われても自分は今まで人間として育ってきた、人間として生きるなら当たり前の事である

「人は脆く儚い、それでいて傲慢で自分勝手だ、そんな人間を守る理由がどこにある?」

ルエスは人を守る事に疑問を抱いていた、魔族は元々は残虐性が非常に強い種族だ
そもそも守ろうとする心を持たない者にとっては不思議でしかないのだろう

「魔族には無いもの、他人を思いやる気持ちがそうさせるのです」

最初に言葉を開いたのはシェリルだった

「他人を思いやる気持ち?」
「私の父は人間からその思いやる気持ちを教わりました、とても、とても素晴らしい事だと思います」
「何故素晴らしいのだ?他人を思いやってどうする?」
「魔族でも人間でも分かりあえます、人間にしかないもの、魔族にしかないもの、それをお互いに補えあえることが素晴らしいとは思わないのですか?」
「言っている意味が分からないな、どうやら話をするだけ無駄だったようだ」

ルエスはそれだけ言うと、デサイドと同じように姿を消した

「何か調子狂うなあいつ・・・」
「そうね、あの魔族は何か違う気がする」

タキル達はその場でルエスたちが姿を消した場所をただ眺めているだけだった・・・
by meruchan0214 | 2007-03-16 12:07 | 架空世界[フリトアネイス]


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