misson2 怖いもの

あくる日、アリシアはリシェルに呼ばれた。
どうしてなのかは分からなかったが、とりあえず向かうことにする。

「アリシア、来ました」
「どうぞ、入ってください」

相変わらず落ち着いた雰囲気の中でたたずんでいるリシェル。
アリシアは訳も分からないまま椅子に座る。

「ごめんなさいね、急に呼び出したりして」
「いえ、それよりも話って何ですか?}

呼んだ理由が気になるアリシアだが、リシェルは慌てるなとでも言うようにアリシアにお茶を出す。

「ま、これでも飲んで」
「あ、はい」

アリシアは恐る恐るお茶に手を伸ばし一口すする。
今まで味わったことがない、美味しいお茶だった。

「美味しい」
「そうでしょ、そうでしょ」

リシェルは嬉しそうな顔をする、アリシアにとってこの人はまだ良く分からない人だ。
父親や母親はリシェルの事を信頼している、けれどアリシアにとって出会ったばかりでリシェルの事はほとんど知らない。

「さて、じゃあ本題に入りますか」
「はい」

リシェルの顔が真面目な顔つきになった、サングラスをしていて目は見えないが、ジッとアリシアを見つめている。

「こんなこと言うと、あの二人に怒られそうだけど、機兵のパイロットをやってみる気はない?」
「え?」

突然の事に目が点になるアリシア、だがリシェルは本気だった。
アリシアは戦争というモノを目の当たりにして、怖いと思っていた。
自分がそんな事できるはずがないと思っていた。

「わ、私には無理です・・・、そんな怖いこと・・・」
「無理にとは言わないけど、試しにシミュレーターだけ乗ってみない?」
「シミュレーター??」
「所謂模擬戦闘よ、相手を倒しても倒されても問題ないから」

模擬戦闘ならやってもいいかなと思う、命を左右するものではないから。
アリシアが戦争が怖いと思う理由は二つあった。
一つは当然、自分の命の危険があるということ。
そして、もう一つは相手の命を断ってしまうことだ。

死ぬという感覚が分からないからこそ、自分で人の命を断ってしまったときが怖いのだ。
自分では自覚していなくても本心でそう恐怖していたのだ。

「分かりました」

アリシアはシミュレーションだけということを思い、リシェルの後をついていく。

ウロボロスの軍部には様々な設備が整っている。
そして、その一角のトレーニング室。

「ご苦労様、シミュレーター使える?」
「ご苦労様です、はい、いつでも使えますよ」

オペレーターの人に話しかけるリシェル、そして大きな機械のある場所にアリシアは連れてこられた。

「はい、これがシミュレーターです」
「おっきいんですね・・・」
「一機から艦隊戦までシュミレートできるからね、さ、入りましょ」

内部は複雑そうな機械で埋め尽くされており、いくつモノ部屋が並んでいる。
そのうちの一つの部屋にアリシアとリシェルは入った。

「ここに座って」

アリシアは言われたとおりに座ると、リシェルはコンピューターを操作し始める。

「マニュアルは画面上に出るから、一つ一つ教えながらやるわね」
「はい」

基本的な機兵の動かし方が画面に流れる、実際に触って感覚も掴む。
シミュレーターとはいえ、実戦を想定されているだけに、リアルであった。

「それじゃ、CPUとやってみましょうか?」

多少慣れたところでリシェルがアリシアに言った。
慣れてくるとゲームの感覚に近い。
アリシアは少しずつこのシミュレーションが楽しいと思い始めていた。

最初ということもあって、コンピューターのレベルは低く設定してあった。
アリシアはいとも簡単にそれを倒してしまう。

「ふ~ん・・・」

リシェルはアリシアの操縦をただじっと見つめていた。
一通りのプログラムが終わり、アリシアは席をたつ。

「どうだった?」
「シミュレーションは面白いですね」

命のやり取りがないということは気が楽でいい。
アリシアはゲームは好きだったので、こういうことには満足だった。

「そう、興味があったらいつでもきなさい」
「は~い」

リシェルは無理にパイロットに押し進めるつもりはなかった。
しかし、リシェルはアリシアに素質を見いだしていた。

「戦争か・・・」

今は戦闘もなく平穏な時だがそれがいつ崩れるかわからない。
また、戦闘になったら自分の両親やリシェル達はまた戦いに行くだろう。

「でも、戦うのって怖いよ」

死ぬ感覚、殺す感覚、アリシアは分かりたくなかった。
自分は戦うために生まれてきたんじゃない、そう思いたかった。

けれど、現実に今は戦争は始まろうとしている。
自分がどんなに拒否しても、戦いは目前まで迫っていたのだ。

「お父さんも、お母さんもどういう気持ちで戦っているんだろう・・・」

戦うことに怖くはないのか、どうして戦うのか、両親に聞いてみたくなった。
家に帰ると、母親が料理を作っている最中だった。

「おかえり、アリシアもう少しで夕食できるからね」
「うん・・・」

自分の母親は戦いの中に身を置いたというのにも関わらず、いつもとかわらない。

「ねえ、お母さん」
「なに?」
「どうして、戦争で戦うことができるの?」

母親、アコナは唐突に聞かれたことに少し考える。

「あまり深くは考えたことないなあ」
「え、どうして、命のやり取りしてるんだよ?」
「生まれ故郷を守るのは当然でしょ、考える必要ある?」

確かに母親の言うことに一理あった。

「確かに命が関わっている以上、私も戦闘で死ぬかもしれないけれどね」
「だったら、どうして」
「死ぬことよりも、守れなかった方が後悔すると思ったからかな」
「後悔・・・」

母親は昔を思い出すようにしゃべっていた。
懐かしさだけではなく、昔に死んでいった仲間たちのことも思っているのだろうか。

「まぁ、アリシアはそんなこと気にしなくて大丈夫、私たちが絶対に守るから」
「お母さん・・・」

アリシアは自分の母親が何故戦えるのか分かった気がする。
自分には真似できるのだろうか、そんな疑問すら思える。
だけど、やはり命を奪ったり奪われるということは怖いことだった。

「さ、今はご飯にしましょ」

悩んでいるアリシアのことを思ってなのか、わざと明るくする母親。
自分がどうするべきか、何ができるのか。

リシェルに言えばすぐにでもパイロットにはなれるだろう。
訓練も積ませてくれるだろう。

だけど、それ以上の不安がアリシアを行動させずにいた。
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by meruchan0214 | 2007-10-09 20:01 | 守護機兵 ハイシェント2


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