misson3 迷い

謎の敵との戦闘があってから一週間。
ウロボロスは補給をする為に木星のアルカディアへと立ち寄った。
物資の補給以外に戦闘の為の補給だ。

「さて、これが終わるまで敵が黙っていてくれればいいけれど・・・」
「相手の目的がまだ分からない以上、いつくるか分かりませんからね」

ブリッジではリシェルとジョニカが話をしている。
最低限の人数は残し、他は休憩を取らせている。

しかし、いつでも緊急事態には備えていなくてはいけない。

「レーダーに熱源反応、照合結果、前回のモノと一致」
「やっぱり、来ましたね」
「そうね、ウロボロスをお願いね」

リシェルはウロボロスをジョニカに任せ、自身はハイシェントに乗り込んだ。

「フリスさん、アコナ、二人ともいい?」
「いつでもいけますよ」
「私も大丈夫です」

リシェルのハイシェントを筆頭にウロボロスを護る為に出撃する。

「今回はウロボロスだけじゃないのよ!!」

ウロボロスからの出撃を合図にするかのように、正体不明機を囲むように複数の艦隊が現れる。

「流石だな、時間通りだ」

現れた艦隊は火星のアルカディア、ヴェルゼの戦艦だった。
ヴェルゼの戦艦からも、何機もの機兵が出撃する。

「ジョニカさん!!」

みんなが出撃してやや遅れてアリシアがブリッジに入ってきた。
リシェルが根回ししていた為にアリシアは顔パスで軍部には入って来れるようになっていた。

「大丈夫だ、負けはしないさ」
「でも・・・」

アリシアは言い得れぬ不安を感じていた。
先の戦いでもそうであったが、今度は今まで以上にその不安は大きかった。

「ウロボロスはシールドを展開し、攻撃に備えよ!!」

数はこちらの方が上、負けるはずがない。
誰もがそう思っていた、ただ一人アリシアを除いて。

「何かおかしいわね」
「リシェルさんどうしたんですか?」
「いや、ただこうなることは相手も予想していたはずなのにね」

リシェルも何となく何かがおかしいということに感づき始めていた。
相手の布陣が定石とは違うのだ。

「ジョニカ、聞こえる?」
「どうしました、リシェル様」
「全軍に突出した攻撃はしなように伝達してもらえるかしら?」
「分かりました、けど、どうして?」
「何となくね、嫌な予感がする」

相手も無理に撃ってこようとはしてない。
お互い膠着状態のまま、睨み合っている。

「ほ、リシェルさんも分かってるみたい」

アリシアは自分が感じ取ったことをリシェルも感じていたことに少し安心した。
しかし、このままでは拉致があかない。
お互いに牽制ばかりの攻撃でまともな攻撃はまったくというほどない。

「ノルン、通信できる?」
「リシェル、何用ですか?」
「今、木星圏の敵艦隊のデータを取ってほしいんだけど、できるだけ早く」
「分かりました、少し待ってください」
「お願いね」

痺れを切らして攻撃したらきっと負ける。
リシェルはそれを直感で感じ取っていた。
もちろん、アリシアもそれは感じていた。

「この戦い攻めたら負ける・・・」
「アリシア、何を言ってるんだい?」
「分かるんです、相手はこちらを圧倒するモノがある」

アリシアの不安は確信へと変わっていた。
相手はこの戦力差にも関わらず、怯んだりする様子は全くない。
戦力なんて関係ない、何かがあるのだ。

「くそ、何をチマチマやってるんだ!!」

アースラインの機兵の一隊長がつぶやく。
牽制のみの戦いにだいぶいらついているようだった。

「戦力はこっちが圧倒的に上だ!!一気に押しつぶせ!!」

アースラインの軍隊は牽制のみの戦いに痺れを切らし本格的な攻撃を開始する。

「いけない!!」
「無理に攻め込まないで!!」

アリシアとリシェルは同時に叫ぶ。

「リシェル、解析が終わりました。相手方には・・・」

ノルンとの通信が再びつながった瞬間だった。
敵軍から一斉に熱線がアースラインに向かって照射された。

「遅かったようですね」

ノルンが冷静に話す。
敵軍から発せられた熱線はアースライン軍の半数以上を一発で焼き尽くした。
射程こそそこまで長くはないものの、超高熱で機兵の装甲を一瞬で破壊するほどの威力。

「照射内は太陽とほぼ同程度の温度とでております」
「これじゃ、近づけないわね」

リシェルは相手の奇妙な布陣の意味が分かった。
相手は熱線という兵器を楯に少しずつ前進するつもりなのだ。
撃ち漏らした機兵は周りの護衛機が撃ち落とす。

「参ったわね、これは」

相手の熱線がどれだけ撃てるか分からないが、これでは攻めきれるモノではない。

「リロードは約30秒ほどと相手の艦の規模、出力から考えられます」
「30秒か・・・」

30秒で切り崩すのは至難の業だ。
相手は全力で熱戦を撃つ砲台を守る、こちらは30秒以内にその砲台を破壊しなくてはいけないのだ。

「やっぱり、駄目だよ・・・」

ブリッジに居るアリシアはこの戦いは勝てないと感じていた。
あの兵器を目の当たりにしてそう思えない人の方が少ない。

すると、敵軍から例のプロトタイプハイシェントが現れた。

「どうした、もう来ないのか?」
「レフィン・・・!!」

リシェルの声が変わった、憎しみに近い声。
明らかに元夫に大しての態度ではない。

「愛しき妻よ、元気にしていたかい?」
「貴方にもうそんな言葉はいわれたくないわね」

普段冷静なリシェルがあれほどまでに、感情を表に出すのは非常に珍しかった。
アリシアにもその感情がヒシヒシと肌で感じるほどだった。

「お互い攻め切れないんだ。どうだ、ここは一つ決闘で勝敗を決めないか?」

リシェルは少し考えた、相手が約束を必ず守るとは言いがたい。
けれども、このまま膠着状態が続くよりはマシだと考えた。

「リシェルさん・・・」
「リシェル様なら、大丈夫さ」

微かに震えているアリシアをなだめるようにジョニカは語りかける。

「皆さんの意見はどうです?」

さすがにアースラインやヴェルゼなどの連合軍、リシェルの一存で決める訳にもいかない。

「負けた場合はどうなるんですか?」
「だが、しかし・・・このままでは」

賛否両論である、戦いを続けても勝てる見込みは少ないのは皆わかっている。
だからといって、リシェル一人にすべてを任せたくないのも事実であった。

「さあ、どうするかね?」
「わかったわ、受けましょう」

どちらに転んでも負ける可能性が高い。
だったら、もしも負けたら自分だけが罰を受けよう。
そう考えた結論だった。

「ふふふ、戦いが嫌いだったお前がどう戦うのか見物だな」
「貴方の好き勝手にはさせないわよ」

リシェルの指示により、二機のハイシェントの周りには機兵などは一切近づかせなかった。

「行くわよ!!」

ハイシェント同士の戦いが始まる。
お互いが交錯しあう度に激しい火花が飛び散る。

「流石、なかなかやるな」
「ちっ」

お互いにダメージは受けてはいない。
武装も装備もほぼ同じ、今は互角の勝負をしているが勝負がつくのは一瞬だ。

「このままじゃ、負けちゃうよ」

アリシアは戦いの行方が何となくわかった。
リシェルに対して相手は本気をだしていない。

「もらった!!」

プロトタイプハイシェントの攻撃がハイシェントの左肩から一気に左腕を吹き飛ばす。
だが、それこそがリシェルの狙っていたコトであった。

左側を吹き飛ばされたが、右腕で相手を掴み、口で相手の動きを封じる。

「これは一本とられたな」
「くっ」

確かに有利そうに見えるのはリシェルのハイシェントではある。

「相打ち・・・」

アリシアは戦いの結末が見えていた。
お互いの攻撃が撃てばお互いに吹き飛ぶ。
動きを止められたが、攻撃はできるのだ。

「中間を取って、今回はお互いに引こうじゃないか」
「・・・分かったわ・・・」

リシェルは相手の要求を飲むしかなかった。
ハイシェントは掴んだ腕や口を外すと背中を見せることなく、ウロボロスへと戻っていく。
プロトタイプハイシェントも敵軍へと戻り、敵の旗艦はその場から去っていく。

「流石です、リシェル様」

戻ったリシェルを出迎えるジョニカだが、リシェルの表情は思わしくない。

「お世辞はよして、あれは完全に私が負けてたわ」
「ですが・・・」
「あいつは私たちに力を見せにきただけ、こちらの方が上なんだってね」

リシェルは悔しそうに話す。
今回は大人しく引いてくれた、しかし次はこうはいかないだろう。

「リシェルさん、大丈夫・・・ですか?」
「あら、心配してくれるの?ありがとう、大丈夫よ」

アリシアは不安そうにリシェルに話しかける。
みんなには不安がるから、勝ったということにしておく。
けれども、現実はそう甘くはない。

「ふぅ・・・、少し休みます」
「わ、わかりました」

リシェルはそれ以上何もいわずに部屋に戻っていった。
なんとなく気になったアリシアはその後を追った。

「リシェルさん!!」
「あら、どうしたの?」
「なんとなくですけど・・・」

何て言えばいいのかわからなかった。
今は何を言っても同情にしかならないような気がする。

「アリシアちゃんもこうなること、予想していたんじゃない?」
「え、それは・・・」
「いいのよ、本当のことを言ってみて」
「そう・・・です・・・」

アリシアはずっとこうなるような不安を覚えていた。
自分は乗って戦ったことはないけど、何となく分かる。

「護る為に戻ってきたのにね」

自嘲気味に笑うリシェルはもの悲しそうな顔だった。
アリシアにはリシェルにできることは何もない、ただ、黙って傍にいるだけだった。

「ねえ、アリシアちゃん」
「はい?」
「ちょっと付合ってもらえるかしら?」

自分で良ければとアリシアはリシェルの後をついていく。
そこは以前にもやったことのあるシュミレーション室だった。

「どうするんですか?」
「シュミレーションしたいことがあってね、アリシアちゃんに手伝ってもらおうかと思って」
「はぁ・・・」

アリシアは自分にはこんなことしかできない、そう思っていた。
でも、わざわざアリシアではなく、他の人に頼めばいいのでは?と思っていた。

「それじゃあ、この前やったみたいなシュミレーションでいいからやってみて」
「はい」

アリシアは言われたとおりにシュミレーションを開始する。

開始して直ぐに違和感を感じた。
いつもよりも感覚が鮮明になっている感じがした。
鋭い刃のように触れたものを切り裂くような感覚。

「きた!!」

アリシアはいつもの通り動こうとするが、動きが遅いと思ってしまう。
相手の機兵もそうだが、自分の操縦する機兵も遅く感じてしまうのだ。

撃った弾も遅い、しかし敵には命中する。
相手の動きが手に取るように感じ取れる。

「最後!!」

あっという間に全てのシュミレーションの工程を終了する。

「こんなに簡単だったっけ?」
「アリシアちゃんがすごいのよ」

リシェルが答えた。

「え?」
「私の与えた情報を瞬時に理解して、自分のモノにする。それは才能よ」
「あの、どういうことなんですか?」

リシェルの言葉に戸惑いを隠せない。
自分に才能があると急に言われても困るだけであった。

「貴方には私やフリスやアコナにはなかったものを持っているということ」
「私が?」
「そう、最初見たときは確信はなかったけれど、今ならはっきりと言えるわね」

アリシアはそんなことを言われても実感が沸かないし、乗ろうとも思わない。

「貴方が不安に覚えている戦いは全部貴方がどうなるか予測して感知しているから」

言われると確かに自分はこれからの事が予測できた。
見えてはいないけれども感じることができた。

「私がアリシアちゃんの感覚を広域化の役割をしてみたの、結果はさっきの通りね」
「でも・・・」
「無理強いはするつもりはないけれど、考えてもらえる?」

アリシアは自分に特別な才能があると言われてもうれしくはなかった。
確かに昔から勘は良かった、意識もしたことはない。
けれど、その才能を戦いに使わなくてはいけないということが、怖かった。

「ただいま・・・」

力無く帰ってくるアリシア、家には両親が既に帰ってきていた。

「どうしたんだ、元気が無いな」
「何かあったの?」
「ん?なんでもない」

何でも無いと言っても、そんなことが通用する両親ではない。
暗くなっているのが傍目から見ても分かるのだ。
その事が余計に両親を心配にさせた。

「考え事なら、お父さん達が相談に乗るぞ?」
「そうそう、一人で考えても拉致があかないわよ?」

両親の言う言葉はうれしいけれど、アリシアは喋りたくなかった。
自分がリーシェに乗れと命令された訳ではないが、乗ってくれと言われたこと。
戦うということが怖く、戦いたくないと思うこと。
両親はその戦いに身を置いているということを考えると自分だけとも思えない。

「私、リーシェさんに機兵に乗らないかって言われたの」
「リーシェさんが・・・?」
「それで、アリシアはどうしたいの?」

自分の中で答えは全くと言っていいほど出ていない。
戦うのが怖い、それが今のアリシアを支配していた。

「アリシアは無理に戦わなくても大丈夫だからね」

母親の言葉、娘を心配する気持ち。
自分だけ戦わないという訳にもいかないはず。
でも、母親はアリシアに戦わなくてもいいと言う。

「そうだな、子を護るのは親の仕事だからな」

父親もそれに賛同するかのようにうなずく。

「とりあえず、今は休みなさい。学校もしばらく休校みたいよ」

アリシアは重い体をベッドに乗せた。
どうするべきか迷いながら。
[PR]
by meruchan0214 | 2007-10-12 19:36 | 守護機兵 ハイシェント2


<< misson4 護る力 misson2 怖いもの >>