misson10 逃走劇

独房に入れられたアリシア、ひとまず身体的には何もされてはいない。
だが、ここから脱出するのは一人では不可能だった。
壁を叩いてみても、ドアをいじくりまわしてみても、全て徒労に終わった。

シュン

扉が開き、一人の軍人が入ってきた。

「ウロボロスの方、ですね?」
「貴方は?」

アリシアが言葉を返そうとすると、軍人は唇に手を当てて喋らず聞いてほしいという、ジェスチャーをした。

「私はステイル隊長の密偵を受けている、イオシスといいます。ウロボロスの方が捕まったと聞いて極秘に助け出すように指示されております」

イオシスは辺りの様子を窺いながら喋る。

「今すぐには無理ですが、必ず何とかしますから。それまで堪えてください」

アリシアはイオシスの言葉に頷くしかなかった。
敵だらけのここでは、もしコレが敵の罠だったとしても状況を打開するにはイオシスの言葉を聞くしかない。

「では、あまり居ると疑われますので失礼します」

イオシスは独房から出て行った。
アリシアはその姿を黙って見送るしかなかった。

「信用して、いいのかな?」

敵の真っ只中にいるせいか、いまいち信用が置けない。

「あ・・・、そういえば、ルピナちゃんは・・・」

今頃になって思いだした。
ハイシェントにはAIとはいえ、ルピナも一緒に居たのだ。
もしも、データを書き換えられてしまったとしたら、ルピナが消えてしまう可能性もあった。

「私も何とかしないと」

他人任せにしているというのはどうにも性に合わない。
やはり、自分が何とかしないといけないのだ。

「少し変わったかな・・・私」

昔の自分だったらそんなことも考えなかったかもしれない。
もしかしたら、自分で死を選んでいたかもしれない。
だけど、自分にはきっとまだできることがある。
そう信じることにしたのだ。

「どうしようかな・・・」

アリシアが悩んでいると、不意に独房の扉が開いた。

「え、え?」

わけのわからないアリシアであったが、恐る恐る扉の外をのぞいてみる。
見張りは立っておらず、ここから抜け出そうと思えば抜け出せそうだった。

「行っちゃうか・・・」

アリシアは意を決して独房から外にでた。
向かうべきは格納庫、何か使える機兵やパワードールがあるかもしれない。
もちろん、ルピナも助けなくてはいけない。

「確かこっち」

大体、一度見ただけで覚えてしまうアリシアは自分の記憶を頼りに進んでいく。
不思議と通る道には人の気配がほとんどと言って良いほどない。
アリシアは極力足音をたてないように静かに歩いた。

「こちらです」

アリシアが歩いていると、不意に聞き覚えのある声がした。

「イオシスさん」
「まさか、こんな直ぐに行動を起こすとは思いませんでしたが・・・、ハイシェントの準備は終わってますよ」
「ありがとうございます」
「さあ、早く」

アリシアはイオシスに連れられて格納庫へと向かった。
格納庫につくとハイシェントが出撃準備を終えて待機させられていた。

「イオシスさんは?」
「私は大丈夫です、早くしないと見張りがきます」
「わかりました」

アリシアはハイシェントに乗り込む。

「アリシアちゃん、大丈夫?」
「私は大丈夫よ、ごめんね」
「ううん、私も大丈夫だから。気にしないで」
「ありがと」

アリシアは整備されたハイシェントを起動させ、無理やり格納庫から脱出した。
それを見ていたイオシスは笑みを浮かべると艦内に戻っていった。

「貴方達は我々の希望、ここで捕まっているわけにはいきませんから」

イオシスはそう呟いた。

「でも、うまくハッキングできてよかったよ」
「やっぱり、ルピナちゃんがやったのね」
「逃げ出すなら捕まった直後がいいってね、お母さんも言ってたよ」

無事に逃げ出したアリシアだが、予想通り追撃部隊が出撃してきた。
しかし、その追撃すらもいとも簡単に振り切ってしまう。

「また、捕まるわけにはいかないからね」
「うんうん」

アリシアはザムレイズ軍の艦の事を思い出していた。
地球圏の人間がザムレイズに協力しているということ。
もしかしたら、ウロボロスにもそんな人間がいるかもしれないということだ。

「信じたくはないけど・・・」

そんな不安を消すように首を振るアリシア。

「どうしたの?」
「ううん、何でもない」

それから、10分後アリシア達は無事にウロボロスへと帰還した。
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by meruchan0214 | 2007-12-03 20:03 | 守護機兵 ハイシェント2


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