カテゴリ:守護機兵 ハイシェント2( 19 )

misson9 信じえぬ

アリシアはザムレイズ軍の戦艦へと連れてこられた。
当然、優遇されているわけではなく、捕虜としてであった。

「殺されないだけ、マシか・・・、それとも殺されたほうがマシか・・・」

自分自身に余裕があったのだろう、それが油断を生んでしまったのかもしれない。
その結果が今の結果である。

周りがアリシアに銃を向けられ、アリシアは歩かせられる。
空気がピリピリとしており、少し息苦しい感じがする。

「ウロボロスとはやっぱ違うよね」

ウロボロスは軍が存在しているといっても、もっと全体的に温和であった。
さすがに戦闘の時は気を引き締めてはいたが、やはり雰囲気が違う。

銃を突き付けられたまま司令室と思わしき場所へと連れてこられる。

「司令、連れてきました」
「御苦労」

何故かアリシアにも言葉が分かった、確か以前ステイルが来た時は翻訳機を使っていたはずだった。

「何故、君達の言葉を知っているか驚いているようだね」
「どういうつもりなの?貴方地球圏の人間よね」

勘の良いアリシアはすぐに司令官が地球圏の人間だと感づいた。
しかし、指揮していたのは明らかに地球圏の人間ではない、外から来た人間達だ。

「同志に協力するのは当たり前だろう?」
「なっ・・・」

アリシアは言葉が出なかった。
そう、この地球圏にもザムレイズに繋がっている人間達がいたのだ。

「じゃあ、今回の侵攻も・・・」
「流石にハイシェントを任されていただけあって、なかなか聡明な娘さんだ。おそらく君の想像している通りだろう」

偶然でも何でもない、ザムレイズがやってきたのは地球圏の人間の仕業だったのだ。

「一体、何の為に・・・!!」
「私達が地球を、この地球圏を支配する為だよ。だが、世の中は平和だのなんだの、話し合いで・・・。おかしいと思わないかね、力ある者が支配するべきなのだよ」

アリシアは心の底から怒りが湧き上がるのを感じていた。
自分達の私利私欲の為に同じ人々を簡単に戦火に巻き込むことが。

「どうかね、我々と一緒に来ないか?君ほどの実力があれば、直ぐに出世できるぞ?」
「絶対に嫌よ!!」

アリシアは目の前の人間に今すぐにでも殴りに行きたかった。
しかし、捕虜となって動けない体がそうはさせてくれなかった。

「ふふ、あれだけの実力差を見せつけられても、まだ分からないか。まぁいい、連れて行け」
「絶対に貴方達は許さない・・・」

アリシアは独房へと連れて行かれる。
部屋の中は粗末な造りになっており、本当に最低限の生活する空間しかない。

無理やり押し込められるように部屋に入れられたアリシア。
何もできない自分が悲しくなってきた。

「・・・、まさか地球圏の人間が・・・」

少し落ち込んでいたアリシアだったが、すぐに次の問題に気がついた。

「という事は、内部にザムレイズと通じている人間が・・・」

誰にも伝えることはできない。
相手もそれがわかっていて、自分の目の前に姿を現したのだろう。
ウロボロスにそういう人間がいないと信じたいがそれでも不安になってしまう。

「みんな・・・」

自分が捕まっているということよりも、残った両親や仲間たちが気になる。
ハイシェントも敵に接収されてしまった。
ただ、今のアリシアには祈ることしかできなかった。

一方、ザムレイズの格納庫ではハイシェントが収められていた。

「これが、地球軍、いやウロボロスのハイシェントか」
「やはりレフィン様のハイシェントと似ているな」
「基本的に技術が応用できるからな、これからは我々の兵として動いてもらおう」

ハイシェントのスペックは今もなお高水準を誇っていた。
敵からしてみれば、強力な武器を手に入れたようなものだった。

「まずぃなぁ・・・、とりあえずデータはバックアップしておいてと・・・」

ルピナは自分ができうる限りの事はやっている。
いくらAIとはいっても、直接稼働できるわけではない。
あくまでもサポートとしてのAIなのである。

ルピナがサポートしなければ、パワーダウンするとはいえやはりルピナ的にはいい気はしない。

「アリシアちゃんは無事かなぁ・・・、変なことされてなければいいけど・・・」

同じ立場であるアリシアを心配するルピナ。
整備されながらも何もできない自分に歯がゆさを感じる。

きっと、アリシアは自分を責めているだろうと、ルピナは考えた。
弾が無数に飛び交う戦場だ。
絶対なんてことはありえないし、それはハイシェントといえども例外ではない。
だから、アリシアが責任を感じることはないとルピナは思っていた。

「あ・・・」

ルピナは何かを思いついたようであった。
もしかしたら、アリシアを救い出して自分も脱出できる。
可能性はあまり高くはないが、やらないよりはマシであった。

「やってみるかぁ・・・」

ルピナの思いついたこととは、このザムレイズ艦のハッキングであった。
ルピナ自身が既にAIであり、無線でもある程度の距離なら侵入できるためであった。
だが、根本的に性質が違う可能性が高い。
そうだった場合、ハッキングは意味無いものになってしまう。

一途の望みを託しながら、ルピナはハッキングを開始した。
[PR]
by meruchan0214 | 2007-11-28 21:34 | 守護機兵 ハイシェント2

misson8 驚愕

あれから、何度か小競り合い程度での戦闘があった。
お互いに様子見という程度で、被害もほとんどなかった。

何度かそういった出撃を繰り返すうちにアリシアも戦うことになれてきていた。

「サポートはできるけど操縦するのは、アリシアちゃんなんだからね」
「わかってるよ、ルピナちゃん」

ハイシェントに居る、ルピナとも息が合ってきていた。

「リシェルさん、戻りました」
「御苦労さま」

リシェルは書類の束に向かって仕事をしていた。
大きな戦闘が無い今のうちというところだろうか。
本当ならば、ずっとこの仕事だったらいいのにとリシェルは漏らす。

「事務だけならどんなにいいことか・・・」
「そうも言っていられませんからね」
「ただ、あの人もこのまま黙っているとは思えないしね」

あえて名前を言わないのがアリシアは少し気になった。
けれども、相手の侵略が終わったわけではない。
ザムレイズ軍がこのまま終わるわけではないと確信していた。

どれだけステイルが周りを止めてくれるかにも期待はしていた。

「必ずまた戦わないといけない時が来るからね・・・」
「そう・・・ですね」

戦いに慣れたといっても、好きになったわけではない。
いつでも、人殺しが大義になってしまう戦いが怖いと思っている。

ビーッ!!ビーッ!!

ウロボロスの警報が鳴り響く。

「アリシア!!」
「はい!!」

アリシアは急いで格納庫へと向かった。
リシェルも仕事をやめ、ブリッジへと向かった。

「ジョニカ、相手は?」
「はい、ザムレイズ軍の中隊です。先行部隊かと思われます」
「なるほどね、フリス隊とアコナ隊は出撃して。アリシアもハイシェントで出てもらって」
「了解!!」
「他の部隊も直ぐに出れるように準備をしておいてね」

ウロボロス内に緊張が走る。
今までの小競り合いとは違う状況に新しい戦乱の予感を感じていた。

アリシアはハイシェントに乗り込み出撃する。
次いで、リシェル、そしてフリス、アコナ達も出撃した。

「さて、どうでてくるか・・・」
「相手も前回と同じような轍は踏まないだろうからな」

お互いが様子を窺いながら徐々に距離を詰めていく。
そして、ザムレイズ軍からもパワードールの出撃が確認できた。

射撃距離に入って、ウロボロスの機兵とザムレイズのパワードールが戦いを開始する。

「いけ!!」

ハイシェントの弾がパワードールに放たれるが、電磁シールドで攻撃が阻まれた。

「な・・・」

驚きを隠せなかったのはアリシアだけではなかった。
パワードール全てに電磁シールドが搭載されているのだ。

「皆、退いて!!」

リシェルの声に皆が後退戦を始める。
電磁シールドがある以上実弾兵器のダメージは薄い。
遠距離で電磁シールドを打ち破れるのは、現状ではハイシェントとエルブラスト位であった。

「アリシア、ウロボロスが退くまで時間を稼ぐわよ」
「分かりました」
「いい、絶対に無理しちゃだめよ」
「はい」

ハイシェントとエルブラストはウロボロスや部隊全体を守るように少しずつ後退する。
しかし、敵の攻撃は激しくウロボロス軍を攻めたてる。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「レムド!!」

逃げ切れなかったウロボロス軍の機兵が破壊される。
防御に徹しているからまだ何とかなっているが、このままでは敗戦は必至だった。

「リシェル様!!全機格納終わりました!!」
「わかったわ、アリシア!!」
「はい!!」

ハイシェントとエルブラストもその場から撤退しようとする。

「アリシアちゃん!!危ない!!」
「しまっ・・・」

一瞬判断が遅れたアリシアは電磁シールドが間に合わず、被弾する。

「く・・・」

アリシアはハイシェントを動かそうとするが、何も反応がない。

「駆動系に損傷・・・。動けないや」

当たり所が悪かったとしか言えなかった。
動きを停止したハイシェントにパワードールが近づいてくる。

「アリシア!!」
「ハイシェントはもう、動けないみたいです」

リシェルの通信にアリシアは諦めたように喋る。
思った以上にアリシアは自分の事を認めることができた。
これで終わりなんだと、素直に受け入れてしまった。

「ちっ・・・!!」

リシェルは何とかハイシェントを回収しようとするが、パワードールに阻まれて近づくことができない。
ハイシェントは動けないまま、敵のパワードールに接収される。

「すいません、リシェルさん・・・。私のせいで」

それを最後に通信が終わった。

「アリシア、ルピナ、ごめんね・・・」

ハイシェントが敵に接収され、これ以上は無理と判断したリシェルはウロボロスへと後退する。
何とか取り戻したかったが、1機ではどうしようもなかった。

一方、ハイシェントのコクピットの中ではアリシアがルピナに話しかけていた。

「ごめんね、私のせいで」
「ううん、大丈夫。アリシアこそ・・・」

敵に捕まるということ、それから先どうなるかは誰もわからない。
ただ、アリシアはウロボロスの皆、リシェル、そして両親であるフリスとアコナに申し訳ない気持で一杯だった。
[PR]
by meruchan0214 | 2007-11-14 19:00 | 守護機兵 ハイシェント2

misson7 変わりゆく

アリシアは正式に軍人としてウロボロスに居ることになった。
階級は低いものの、その先立っての戦いでの活躍は既に有名になっていた。
もちろん、両親が前戦争の英雄であるということも、加味してのことではあった。

「ん~・・・、今日は休みだ!!」

久しぶりの休暇、ここのところ暇さえあればシュミレートや軍部関係の処理など忙しい毎日だった。
リシェルの見立てでは暫くはあちらから攻めてこないだろうということでの休暇だった。

「学校はどうかな・・・?」

なし崩し的に軍人になったアリシアは急に学校に行かないように思われても仕方がなかった。
ジョニカから話はいっている為、休学扱いでまだ学校には在籍している。

アリシアはそっと学校を覗いてみると、いつもと変わらない風景がそこにはあった。
当たり前の事、それがとても羨ましく思えてきた。
今まで居た場所ではない、それが今の自分の居場所。

だからこそ、当たり前だった場所を守りたい。
皆がいつものように生活できる場所を守りたかった。

「うん・・・、頑張れそう」

アリシアは戦いをする意義を見出し始めていた。
ブラブラとのんびりしていると、以前の女の子、ハイシェント自身が遊んでいた。

「あ、アリシアちゃん。こんにちわ~」
「こんにちわ、えっとそういえば、名前教えてもらってないよね・・・?」
「あれ、言ってなかったっけ??まあ、いいや、私の名前はルピナだよ」
「ルピナちゃん、この前一緒に居た子は?」
「ナミアはお母さんと一緒に居るって言ってたけど」
「ふ~ん」

こうやって話してみると、普通の女の子とまったく変わらない。
それが戦闘になると、ハイシェントの頭脳として動いているのだ。

「ねぇ、ルピナちゃんって170年も前からハイシェントに居るの?」
「うん、そうだよ」
「作ったのはお母さん?」
「作った・・・っていうよりは~、お母さんが助けてくれたんだ」
「助けてくれた?」

アリシアはルピナの話に興味が沸いた。
ただのプログラムだったら、助けてくれたなんていう表現はしないだろう。

「お母さん、死に掛けた私とナミアの意識をデータ化して保存したんだ」
「データ化して・・・保存・・・?」

今では考えられないことだ、確かに歴史にはそういったことを実験していたという事実は残ってはいる。
だが、リシェルなどを見ていると確かにそれしか考えられないことではあった。

「一番辛いのはお母さんだから、私達が助けてあげないといけないの。ずっとずっと悩んでるから」

今までリシェルを見てきていてそんなそぶりはほとんどなかった、
悩んでいるといっても、作戦の事などをいつも考えているようだったのだ。

「ルピナちゃんはお母さんのこと、大好きなんだね」
「うん!!もちろん!!」

アリシアはこれ以上突っ込んだことは今は言わないほうがいいと思った。
彼女の話は本当だと思う、ということはお父さんといったあのプロトタイプハイシェントは確実に実の父親だ。
両親がお互いに敵として戦い、娘達は母親と共に戦う。
どう思っているのか興味はあったが、聞く気にはなれなかった。

「そういえば、ルピナちゃんってその姿はどうなってるの?」
「触ってみる?」

アリシアは触ろうとするが、ルピナの体をすり抜ける。
今目の前に居る、ルピナの姿は立体映像なのだ。

「それで、この前目の前で消えたんだ」
「うん、ウロボロスの電気系統を伝って帰るだけだから」
「ん~でも、実際にはここに居ないってことだよね?」
「感覚的には意識だけ居るって感じだよ、実際のデータはハイシェントの中だし」
「ふ~ん」

予想以上にしっかりしている、ルピナ。
子供と言っても170年も前の話だ、学習機能が当たり前だとしたら当然とも言えるだろう。
しかし、子供っぽさは抜けてはいないようだ、それはAIとしての設定なのか、彼女自身がそうなのかはわからない。

「これからもよろしくね」
「あ、うん。よろしくね」

ルピナはにこやかに笑った。
それにつられてアリシアも笑ってしまう。

「アリシアちゃん、凄かったけど。それに慢心しちゃ駄目だからね」
「分かってるわよ」

ルピナに釘を刺されるが、実際そのとおりだとアリシアは思う。
アリシア自身、自分の才能を感じていた。
でも、それに溺れてしまったら駄目になりそうな自分が居た。

「ん、じゃあ約束」

ルピナは小指を出して指切りを示した。
アリシアは指を出すが、当然ルピナは映像の為すり抜けてしまう。
だけど、やることに意義があった。

「それじゃあ、そろそろ私、戻るね」
「うん」
「今日は楽しかったよ~、バイバイ」

ルピナの姿が消えていった。
ある意味ここに居る限りは便利な姿だとアリシアは思った。
しかし、自分は人であり続けたいと思ってしまった。

きっと、リシェルもそれを望んでいるんだろう。
人が人でなくなってしまわないようにと。
[PR]
by meruchan0214 | 2007-11-11 00:12 | 守護機兵 ハイシェント2

misson6 過去遺産

アリシアが眠りについている頃、ウロボロスの格納庫ではリシェルが一人、ハイシェントとエルブラストの前に立っていた。

「ごめんね、辛い思いさせて」

リシェルがハイシェントとエルブラストに話しかけると、まるで実物がそこにいるような精巧なグラフィックスが現れた。
それは二人の女の子でどことなくリシェルに似ている。

「ううん、平気だよ。お母さん」
「そうだよ、ルピナの言うとおり。例えお父さんでも許せないことは許せないから」

二人の女の子はリシェルに心配かけまいとわざと元気そうな声を出している。
それに気がついているリシェルであったが、わざと知らない振りをしていた。

「ありがとうね。ルピナ、ナミア」

ルピナとナミアは嬉しそうに笑顔を作る。
両親同士が戦いをする、それに自分自身は父親と戦わなくてはいけない。
辛いのはリシェル自身だけではなくて、二人も同じ筈なのにその様子を見せようとしない。

「まったく、誰に似たのかしら・・・」
「ん?」
「何か言った、お母さん?」
「何も言ってないわよ」

こんな時でしか、家族としての時間も持つことができない。
それにリシェルは少し後悔していた、娘達の意識を機兵に移したことを。

「あの時の選択は合っていたと信じてるけど・・・」

リシェルは昔の事を思い出していた。



170年前、人々が宇宙に住み始めてから数年の月日が流れていた。
その中でもとりわけ、研究熱心だったのがリシェルを含む研究団だった。

「リシェル、検査結果出てるわよ」
「ありがとう、そこに置いといて、後で見る」

この頃のリシェルはまだ戦いなどという言葉も知らなかった。

「レフィン、そっちはどう?」
「こっちは順調だ、後半月もあれば完成するだろう」

当時、彼女達は宇宙で生活するだけでなく、それぞれの星を移動し中継地点をも担う宇宙船を作っていた。
それが後のウロボロスである。

「しかし、後はAIが問題なんだよな」
「そうね、いくら自動解析とは言っても、人間の感情にはほど遠いし・・・」

この頃の技術はかなり精巧で、見た目は人間と変わらない。
しかし、所詮は作り物。
与えられた任務しかこなすことしかできなかった。

「まあ、制御するには人間の感情は必要ないけどな」
「そんな夢の無いこと言わないでよ」

リシェル達が着手していたものは主に二つ。
超大型の宇宙船と人間にそっくりな思考回路を持つAIを作ることだった。

「そういえば、アレナが面白いものを作ったから後で遊びに来ないかと言っていたな」
「また、アレナが何か作ったの?」
「えらい大掛かりなものみたいだったが・・・」
「それじゃあ、さっさと片付けて見に行ってみましょうか」

そんな事が日常だった。
幸せな生活が続くとリシェルは信じて疑わなかった。
それからしばらくの時間が過ぎていくと、リシェル達の研究の方針は少しずつ変わっていった。

「まさか、このままだと後50年持たないなんて・・・」
「人間はやりすぎたってことか・・・」

人間達の環境汚染が更に進んでおり、リシェル達はこの地球が全滅するのに後50年という結果を出してしまった。

「どんなに計算しても、これを変えることはできないのかな・・・」
「まだ、時間はあるんだ。何とか考えよう」

しかし、リシェル達科学者がいくら集まってもいい解決策を見つけられなかった。
人間がもっと宇宙に出れば少しは変わるかもしれないが、それは非現実的なことだった。

「ウロボロスに人を詰めたとしても、到底足りないな・・・」
「そうだね・・・」

この頃には既にノルンの前身となるスーパーコンピュータが存在していた。
本当にただ計算するだけのコンピューターではあったため、感情的な理論は一切出さなかった。

「やっぱりこれしかないのか」

地球を救う方法はたった一つ。
人間達が少なくなること、だった。
リシェル達はうすうすそのことには感づいていた。
人間達が環境を破壊するのならば、いなくなるしかないということ。

「でも、そんなの非情すぎる」
「問題はないさ、機械が全てをやってくれる」

そして作り出されたのはプロトタイプのハイシェントだった。
機械が人を裁く、その目的に作られたがある欠陥が生じていた。
制御ができないほどの暴走頻度が高かったのだ。

「制御する方法はないのか・・・」
「やっぱり、やめた方がいいのよ」

レフィンはプロトタイプハイシェントの使用方法を日夜研究していた。
リシェルはそれ以外の方法を模索していた。

「これだ・・・これしかない!!」

とある日、レフィンは何かを閃いたようであった。

「人の意識をデータに変換すれば・・・」

理論的には今の技術ではそう難しくなかった。
完全なAIを作るのは無理でも、人の意識をデータに変換するのは簡単だった。
人の意識を全て収める器さえあれば良かったのだから。

「レフィン、もうやめましょう」
「どうしてだ、このままだと地球は滅びるんだぞ?」

余りにも危険なモノ、それを制御する術を手に入れたらどうなるか。
リシェルは徐々に変わってきているレフィンに気がついていた。

「ハイシェントは破壊しましょう」
「確かに、あれは危険すぎる」

レフィンを除いた人達の総意だった。
だが、その決断は遅かった。

「ハイシェント動きます!!」
「なんですって!?」

破壊する前にレフィンがハイシェントを起動してしまったのだ。
AIが不完全なまま動かせば、自分達の身も危ない。

「く・・・くくく・・・」

ハイシェントからレフィンの声が聞こえる。

「素晴らしい、肉体という呪縛から解き放たれるというのは!!」
「レフィン・・・貴方・・・!!」

リシェルはその言葉で全てを理解してしまった。
レフィンは自分自身の意識をプロトタイプのハイシェントに移植したのだ。

「私がこの地球を守ってやる、全ての人間に粛清を与えるのだ」
「レフィン、やめて!!」

既にリシェルの言葉はレフィンには届いていなかった。
ハイシェントは研究所の天井を力任せに突き破ると、上空から砲台を構えた。

「最初の粛清はお前達だ!!」
「皆、逃げて!!」

散り散りに逃げるのもつかの間、ハイシェントから一筋の光が放たれた。

「きゃあああああああ!!」

辺りのモノは薙ぎ払われ、研究所は倒壊する。
研究所だったものは瓦礫に変わり、ハイシェントはその場を去っていった。

「う・・・」

ゆっくりと目を開けるリシェル、それと同時に右足に激痛が走る。
おそらく、骨まで折れているが今はそんなことに構っている暇はなかった。

「皆!!ルピナ!!ナミア!!」

歩く度に激痛が走る痛みを堪え、皆を探す。

「リシェル・・・」
「アレナ!!」

リシェルはアレナに近づく、だがアレナは瓦礫の下敷きに上半身だけが出ている状態だった。
何とか助けようとするが余りにも乗っている瓦礫は重く、どかすことができない。

「リシェル、スパコンはまだ無事・・・?」
「何を言っているの・・・?」
「お願い、確認して」

リシェルはスーパーコンピュータを確認する。
あれだけの衝撃を受けたにも関わらず、スーパーコンピューターはその姿を保っていた。
もちろん、活動も停止していない。

「大丈夫・・・みたいよ」
「そう・・・、なら、私の意識を吸い出して、もらえる?」
「!!」
「このままじゃ、レフィンをとめられる人はいなくなる。だったら、スーパーコンピューターに私の意識を移せば・・・」
「アレナ・・・」
「お願い、リシェル」

アレナの懇願に断ることができなかった、生きているうちならば意識を吸い出すのは簡単だ。
だが、それは肉体の死を意味することでもあった。
どうせ待つ死で後悔するくらいならば、意識を吸い出して機械として生きる方がマシだと考えたのだろう。

「リシェルはルピナちゃんとナミアちゃんを・・・、ダウンロードが終わったら私も探すから」
「ごめんね・・・」

リシェルは最後にダウンロードを始めると娘達を探しに行った。
足に激痛がはしり、歩く度に言葉にすらできないほどの痛みがリシェルを襲う。

「ルピナ!!ナミア!!」

必死に娘を探すリシェル、こんなことをしたのが夫であるレフィンだということを信じたくは無かった。
運命というものは残酷だった。
リシェルが二人を見つけたときには、彼女達の命のともし火は既に消えかけていた。

「ルピナ・・・、ナミア・・・」

この時、全てを失うのが急に怖くなっていた。
夫は消え、仲間たちも死に、愛する娘達もいなくなってしまう。
それだけがどうしても許せなかった。

「アレナ!!」
「リシェル・・・、二人は・・・」
「まだ、息がある今のうちなら・・・」
「本当にそれでいいの?」
「私は・・・、私は・・・」

自分よがりだということは分かっていた。
後悔する事も分かっていた。
けれど、自分の命よりも娘達が失う方がずっとずっと怖かった。

「お願い・・・」
「分かりました」

スーパーコンピュータにダウンロードされたアレナは自分の意思でスーパーコンピュータを動かしていた。
研究員の仲間達でまともに生き残ったのはリシェルだけだった。
かろうじて息が残っていた者たちは自ら、意識をデータへと変換した。
自分達の犯してしまった過ちを消すために、あえて人であることを捨てた。

あるものはコンピュータにあるものはウロボロスに、それぞれの意識をデータ化しAIとして生まれ変わっていった。

「レフィンは止めないといけない・・・」

リシェルは機械化した仲間達と共にハイシェントに対抗しうるモノを作り始めた。
しかし、実験の段階でプロトタイプのハイシェントと同じ結果になっていた。

「こんなことをしている間にも・・・レフィンは」

最近のニュースの見出しはいつも変わらない。
謎の巨大ロボットが街を破壊しつくというものだ。
電磁で身を守るハイシェントに攻撃は効かない、核を使えば倒せるだろうが、それでは地球が汚染されてしまう。
この時代にはハイシェントを破壊する手段が全くと言って良いほどなかった。

街の人々はこの竜のロボットに怯える日々が続いた。
それはまるで恐竜映画でも見ているかのようだった。

「制御できないなら・・・」

リシェルは開発段階で自分もデータ化することを考え始めていた。
以前、レフィンがやったことと同じように。
そうすれば、自分の思うように動かせる、レフィンを止めることができる。

「本気なのか?」
「ええ、本気よ」

かつての仲間達が私に言葉をかける。
レフィンを止めるには同じ事をするしかない。そう思っていた。

「けど、それは無理な相談よ、リシェル」
「どうして?」
「もう、新しいハイシェントには同じ事を考えた人間がはいっているもの」
「同じ事を・・・?」

誰のことなのか分からなかった、自分以外にもそんなことを考えている事を居るとは思いもしなかった。

「お母さん!!」
「ルピナ!!」

そう、ハイシェントには娘のルピナが既に入っていたのだ。

「お母さんは駄目だよ、折角無事だったんだもん」
「ルピナ・・・」

ハイシェントからの声、泣いているつもりはないが、リシェルは涙を流していた。
自分の娘に実の父親を手にかけさせないといけない。
それが、リシェルにとって一番辛い事であった。
本当はまだまだ遊びたい年頃だったはずなのに、運命の悪戯が全てを狂わした。

「でもね、ルピナだけにそんなことはさせられないのよ」
「お母さん・・・?」
「後二機残っているはずよね?」
「リシェル!!」
「アレナ、もう決めたことなのよ・・・」

こうして、リシェルは自らの意識を最初期の機兵に意識を移した。



「もう170年も昔なのか・・・」
「ん?」

リシェルが懐かしそうに言葉を発した。
170年の間、データのバックアップを取るにつれて変わってしまったものも居た。
モイライやノルンがそうだったように。

「でも、まだまだ貴方達の力が必要なのね」
「うん、任せてよ!!」
「また、同じことは繰り返さないよ」

しばらく、リシェルの家族の団欒は続いていた。
[PR]
by meruchan0214 | 2007-11-03 17:18 | 守護機兵 ハイシェント2

misson5 覚醒

相手はザムレイズの軍艦3隻。
パワードールも多数出撃しており、こちらとの戦闘態勢は整っていた。
対するはウロボロス軍とザムレイズ軍の軍艦1隻。
こちらも機兵やパワードールを出撃させ戦う状態は整っている。

「アリシア、シンクロシステムはお互いのシステムを共有することによって、より広範囲のレーダーを持つ事にあるわ。レーダーの使い方は分かるわね?」
「はい、分かります」
「オーケー、あんまり離れすぎると機能しなくなるから、気をつけなさい」
「了解です」
「自信を持って、貴方ならこのシステムに何も問題なく使いこなせるはずだから」

アリシアはマニュアル通りに操縦する。
ほとんどがシュミレーション通りでほぼ違和感無く動かすことができた。

「アコナ、フリスさん、ごめんね」
「いえ、こうなることは予想はしてました」
「娘が自分で選んだ、複雑な気分ですが止めるつもりはありませんよ」
「ありがとう、皆ステイルさんの軍には当てないように気をつけて!!」
「了解!!」

いよいよ、戦いが始まった。
以前の戦いから再びあの熱線の攻撃があると思うと迂闊には攻撃できない。
だが、リシェルはいつもと違いやや余裕をもっていた。

「射程距離さえ分かっていれば・・・」

相手の兵器さえ分かっていれば対策も立てれる。
エルブラストは自身の持つ砲台を連結した。

「射程外から撃てばいいってね・・・、アコナお願い!!」
「了解!!」

アコナの乗るフルゲスト改がエルブラストの砲台の照準を定める。

「いけ!!」

長遠距離からの狙撃、それを正確に狙い打つ。
エルブラスト以外にもほとんどの機兵が同じような戦術を取った。

「同じ手は二度通用しないってね」

長遠距離からの狙撃に熱線の射程まで近づくことができない。
そうなると必然的に戦闘は白兵戦になっていく。

「来たわよ、フェルル隊、シュイ隊は現状を維持、フリス隊とアコナ隊は敵を迎え撃って。狙撃隊に敵を近づけさせないで」
「了解」

機兵、パワードール同士の白兵戦はウロボロス軍の有利であった。
機体性能が明らかに違うというわけではないが、錬度が如実に出ているのだろう。

「相手のハイシェントが出てきたら、アリシア、私たちで抑えるわよ」
「は、はい!!」

正直、アリシアはついていくので一杯一杯だった。
当たれば運が悪ければ即死、良くても機体破損。
だけど、不思議と今まであった不安はなくなっていた。
破壊すれば相手の未来を奪ってしまう、罪悪感こそ残っていたが、乗ると言うことに違和感はない。

「うん、その調子だよ」
「はは、ありがと」

語りかけてくるハイシェント、自分が動かしていない、反応しきれない時に勝手に動いているのが分かる。
自分をサポートしてくれている、どんな激しい動きをしたところでもちゃんとついてきている。
戦える、自分も護るモノがある、そう思い始めていた。

「きた!!」

どす黒い大きなものが近づいてくる。
ザムレイズのハイシェントが近づいてきていた。

「アリシア、恐れないで。一人じゃないから、絶対に勝てる」
「は、はい!!」

再び対峙するハイシェント同士、それに今回はエルブラストもいる。

「お父さん・・・」
「え・・・」

ハイシェントが呟いた言葉に少し驚くが、今は戦場だ。
色々と聞くのは後回しにアリシアはした。

「レフィン・・・!!」
「おや、今日はハイシェントではないのか、それではハイシェントに乗っているのは・・・?}
「貴方を倒す人間よ」
「くくく、やれるものならやってみろ」
「アリシア!!」
「はい!!」

ハイシェント、エルブラストがプロトタイプハイシェントに襲い掛かる。
一進一退の攻防を始め、アリシアはリシェルに遅れないように必死だった。
だが、アリシアの感覚は皆の予想を遥かに超え始めていた。

「見える・・・」

エルブラストとプロトタイプハイシェントが次にどうやって動くか。
アリシアにはこの戦場全体が今どうなってるか無意識に頭に入ってくる。

「リシェルさん、任せてください!!」
「え?」

アリシアの乗るハイシェントがプロトタイプハイシェントと競り合いになる。

ジ・・・ジジジ・・・

激しくぶつかり合う音、リシェルはまだ実戦を始めたばかりのアリシアに全て任せられるはずも無く援護に行こうとする。

「え!?」
「何!?」

リシェルもレフィンも驚愕の声を出すしかなかった。
一瞬、ほんの一瞬でハイシェントがプロトタイプハイシェントの腕を断ち切った。
その瞬間はリシェル、斬られた本人にも分からなかった。

「ちっ」

予想外の攻撃にプロトタイプハイシェントは撤退する。
それに呼応するかのように、他のパワードール達も撤退して言った。

「予想以上だわ・・・」

呟いたリシェルはただ驚きの言葉を放つしかなかった。
戦闘が終わり、ウロボロスに戻る。
初の戦場で大きな戦果をあげたアリシアはまさに英雄の如き存在だった。

「私、勝ったの?」

一番驚いたのはアリシア本人であった。
思った以上にうまくいきすぎたせいもあるだろう。

「良くやったわね」

イマイチ実感のわかないアリシアに対して、リシェルが言葉をかけた。
その言葉に、自分が相手を退けたことを少しずつ感じ始めていた。
戦っているときに感じた感覚は今はもうない。
今は物凄く落ち着いているだけだった。

「戻りましょうか」
「はい!!」

アリシア達がウロボロスに戻るとステイルの艦からの通信が入る。

「ありがとう、助かりましたよ」
「いえ、それよりも大丈夫なのですか?」
「心配ない、皮肉なことだがこちらも一枚岩だけじゃないんでね」
「そうですか」

リシェルはやや複雑そうな表情を浮かべる。

「それでは、君達の無事を祈っている」

通信が切れると、みんなの緊張が解けたようにもなった。
今回の一番の大手柄は間違いなくアリシアだった。
プロトタイプハイシェントを圧倒し、傷を負わせ撤退させたからだ。

「でも、戦う才能って怖いですね」

正直なアリシアの感想だった。
得も知れぬあの感覚、しかしそれが逆に心地よい。
命をやり取りしているという、妙な興奮がアリシアの心をそう思わせたのだ。

「そうね、戦いなんてなければ、必要無いものだしね」

リシェルはそれに賛同するように頷いた。

「でも、戦わなければいけないのが、残念だけど」

それと同時に少し悲しそうな言葉で台詞を付け加えた。
戦いが無くなればどんなにすばらしいことなのだろう。
少なくとも、この地球圏に住む人間たちはこの20年は戦争を起こさなかった。
異なる星の人間たちが突然攻めてきた。

「とりあえず、今日は疲れたでしょう。もう休みなさい」
「あ、はい」

言われてみると何となく眠い気がした。
それだけ精神を集中していたせいもあるだろう。
アリシアは両親である、アコナやフリス達と共に家へと戻っていった。

「そういえば、戦闘のときにハイシェントがお父さんって言ったよね・・・」

確かにそう呟いた、作り主ということなのだろうか。
リシェルとレフィン達は確かにハイシェントを作った人々には違いない。
だけど、ハイシェントの言葉はアリシアが父を呼ぶ様な、そんな感じだった。

「まさかね・・・」

一瞬、頭の中を変なことがよぎったが、すぐにそうではないと否定した。
アリシアが考えたことは、ハイシェントもリシェルと同じなのではないかと。
そして、リシェルとレフィンがそのハイシェントの実の両親ではないかと。

それだと呟いた言葉もわかる。
けれど、ハイシェントのしゃべり方などは明らかにまだ子供だ。
いくらなんでも、レフィンはともかくとしても、リシェルがそれを許すとは思えなかった。

「今日はもう寝よ!!」

あんまり深く考えることをやめて、布団に潜るアリシア。
いろいろと考えることも無く、静かに安らかな寝息をたてていた。
[PR]
by meruchan0214 | 2007-10-30 19:57 | 守護機兵 ハイシェント2

misson4 護る力

いつ襲ってくるか分からない敵。
勝ち目があるのかも分からない。
自分に戦う力があるのならば、それを奮わないのが罪なのか。

恐怖が体を支配し、戦うことを恐れる。
死を恐れているのではない。
自分がやろうとしていることを恐れている。

人を殺すと言うこと、未来を奪うと言うこと。
だけど、戦わなければ自分たちの未来が消える。
どうすれば、どうすればいいのか。

「はっ!!」

夜、寝苦しくて目が覚めるアリシア。
ウロボロスでは地球と同じように周期的に朝から夜までを繰り返す。
できるだけ、自然にそれがウロボロスだった。

「まだ、夜か・・・」

辺りは静まり返っている。
ウロボロスでは夜とは言っても、他はどうであるかは分からない。
事実、家にいるのはアリシアだけで両親は家にいなかった。

「お父さんとお母さんは・・・軍部の方か・・・」

一人だと言うことをとても寂しく感じたのは久しぶりだった。
誰かに傍にいてほしいと思っても誰もいない。
そんな孤独感がアリシアをより不安にさせていた。

眠気が覚めてしまったアリシアはとりあえず街に出ることにする。
地球の時間で言うならば、今は午前3時、真夜中だ。

「ふぅ・・・」

アリシアは公園の辺りを一人で歩いている。
水の流れる音と木々の揺れる音が音楽を奏でているようだった。

「ん?」

アリシアは歩くのを止める。

「子供の声がする?」

耳を澄ませて聞いてみると、確かに子供がはしゃいでいるような声がする。
こんな時間にどうしてなのかは分からない、けれど気になったアリシアは声のする方角へと向かった。

公園の噴水に小さな女の子が二人遊んでいた。
こんな時間なのにそんなことを感じさせないくらいに楽しんでいる。
しかし、アリシアは遊んでいる子供に違和感を感じた。
見えているのその場にはいない、幻影のようだった。

「子供がこんな時間になにしてるの?」

こんな時間まで遊んでいるということを黙って見過ごすわけにもいかず、声をかける。
しかし、二人の女の子はキョトンとした顔で何で遊んじゃいけないのか分からない顔つきだ。

「だって、こういう時じゃないと遊べないんだもん」
「普段は遊ぶ機会がほとんどないですから」

双子のように見える女の子、一人はワンパク盛りでもう一人は大人びて見える。
顔つきはそっくりだが、その印象のせいかはっきりと区別がつく。

「いつもは何してるの?」
「お母さんと一緒に居るの」
「お母さんと一緒って・・・、お母さんは何してるの?」

いまいち会話の趣旨が掴めないアリシア。
どこの子供か聞こうと思ってあれこれと聞いてみる。

「お母さんの名前は?」
「リシェル、リシェル・エル・ビュー」
「り・・・しぇる・・・?」

リシェルの子供だと言う彼女達、まさかあのリシェルの子供とは思えなかった。

「リシェルさん、リシェルさんってもしかしてこのウロボロスで一番偉い人?」
「うん、そう言ってたよ」

やっぱり、そう思ったアリシアだが、明らかにおかしい事に気がついた。
リシェルがまともに生きていたのはずっと昔の話だ。
子供が今もこんな姿でいるはずがないということ。

「お母さんは大変だから、私達が助けてあげないといけないんです」
「うんうん」

しかし、リシェルがやってきた時は一人だった。
彼女達が居る雰囲気はどこにも無かった。

「ん・・・」

アリシアは不意に嫌な気配を感じ取った。
それは二人の子供も感じ取ったみたいだった。
子供たちは顔を見合わせて頷くと、彼女らの姿が薄くなっていく。

「え、消えた・・・?」

まるで最初から居なかったかのようにアリシアだけが残った。
その次の瞬間、警報が鳴り響いた。

「また、来たんだ・・・」

アリシアは家から軍部へと向かった。
戦うつもりはないが、足が勝手に行ってしまうのだ。
ブリッジに着くと、すでにみんな集まっていた。
だが、いつもと様子が違う。

「どうしたんですか?」

アリシアが聞くと、ジョニカが教えてくれる。

「相手が話し合いをしたいっていうのさ」
「話し合いって、あの戦った相手ですか?」
「そういうことだ」

しかし、アリシアの感じた気配はこんなことではなかった。
もっと黒く嫌な気分になる、そんな気配だった。

「とにかく、話をしてみないことにはね、アコナ、同席してもらえる?」
「わかりました」
「フリスさんとジョニカは付近を警戒してもらえる?」
「了解しました」

相手の艦は攻撃をしないという意思表示をしながら、こちらに近づいてくる。
アリシアは感じた気配とは違う、気配を感じていた。
リシェルはアリシアの感じ取ったことを察したのか、アリシアにも一緒に来るか聞いた。

「え、私なんかが?」
「大丈夫よ、話し合いにいくだけだから」

アリシアは少し迷ったが興味が勝ったらしく、リシェルの後をついていく。
入港した敵艦から、人影らしきものが降りてきた。
その相手は人間とほぼ変わらぬ風貌の男、着ているものがやや違う程度であった。

「はじめまして」

男はリシェルの前に立ち、ニコリと笑いながら話した。
穏やかな雰囲気を持っており、敵とは思えなかった。

「はじめまして、こちらの言葉が通じそうで何よりです」
「ははは、翻訳する装置を使っていますからね」
「なるほどね、私の名前はリシェルと申します」
「私はザムレイズのステイルと申します。以後お見知りおきを」
「それで、私達に何か御用でしょうか?」

リシェルは相手の出方を伺っている、人のよさそうとは言え、油断はできないということだろう。

「単刀直入に言いましょう、休戦をいたしませんか?」
「休戦を、貴方方から仕掛けてきたのに?」
「あれは私達全ての本位ではありません」
「その証拠は?」

リシェルは全くと言っていいほど信用をしていないみたいだった。
当然と言えば当然だ、アリシアはただリシェルと相手のやりとりを見ている。

「我々は信用されていないみたいですね」
「それはお互い様だと思いますけど?」

そう言うとステイルは少し笑ってみせた。

「なるほど、あの人の言っていた通りの人ですね」
「・・・」
「勘違いなさらないように言いますが、私達は少なくとも私の指揮する艦は貴方方と戦うつもりはありません」
「それで、休戦と言っても貴方達だけではないのでしょう?」
「確かに私も軍人ですし、私が指揮しているのはこの艦だけですが・・・」

アリシアはステイルという人間は悪い奴ではないと感じていた。
彼の発している雰囲気はどちらかというと、リシェルやジョニカに似ている。
寧ろ気になっていたのは、この艦以外にこの宙域に嫌な気配を感じることだった。

「残念ながら、今の我々は貴方方の星を言葉を借りて言うならば植民地にしようとしています」
「やっぱりね、予想はしていたけれど」
「ですが、私はそうではいけないと思う。あの人は我々の未来の為だと言うが、そんな良いモノではない自分の復讐の為に我々を使おうとしている」
「貴方は私達とどうあるべきだと?」
「協力し合える、彼の技術は我々の技術を大きくしました、ならば逆もあるはずです」

ステイルの言う言葉は確かにそうであった。
未知の文明の科学というのは大いに魅力的だ。
先の戦闘でも似て非なるモノが存在していた。
それがもしもお互いに共通できるモノがあったとしたら、お互いに伸ばせあえたら。
アリシアはそんなことができたらいいだろうな、と思っていた。

リシェルも興味深そうにその話は聞いていた。

「我々だけでは、自分達の軍を止めることはできません。だからこそ貴方達の協力が必要なのです」
「貴方の言いたい事は分かりました、ですが、具体的にどうしろと?」
「貴方達から、休戦を申し出てもらいたいのです」

ステイルがそれ以上言う前にリシェルが答える。

「残念だけど、それはできません」
「何故ですか?」
「今の状態で休戦を申し込んだら、相手の言い様にしなくてはなりません。それは全体の意思としてもありえません」
「確かにそうかもしれない、ですが、これ以上の犠牲を出してもいいのですか?」

ステイルの言う事も一理ある、ウロボロスやヴェルゼ、アースラインの被害が大きくなればなるほど不利な条件で停戦しなければいけない。
アリシアはステイル自身は本心で言っているのだろう、と感じ取っていたが、全体の状況がリシェルに頷かせないのだろう。

「貴方の気持ちはありがたいと思います、確かに私達ウロボロスが休戦したとなれば、ヴェルゼやアースラインも休戦するでしょう。被害もさほど大きくないと思えます」
「だったら、休戦に・・・」
「貴方の様な考えを持った方々がもっと増えたら、私達が安心できるようになったらその時は喜んで休戦をいたしましょう」
「・・・分かりました。確かにそういった意味ではまだまだ私の力不足ですね」

ステイルは諦めたようであったが、希望を捨てたわけではなさそうだった。

「あっ」

不意にアリシアが声をあげると、みんながアリシアを注目した。

「来る・・・」

アリシアの言葉にほとんどの人間は意味が分からなかった。
だが、一部の人間には確実に伝わっていた。

「アコナ、機兵の準備を」
「了解しました」
「我々もパワードールの準備だ」
「はっ!!」

ステイルも自らの兵達に指揮をする。
一気に戦場の空気にと場が変わった。

「貴方もろともって所かな」
「小賢しい真似を・・・」

アコナ、フリスはそれぞれ機兵に乗り込んだ。
アリシアはただそれを黙って見ているだけだった。

「ハイシェントの整備は?」
「終わってます、エルブラストも整備終了しました」
「二機のシンクロシステムをMAXまで引き上げておいて」
「シンクロシステムはまだ完全に完成していません、オートで検証通りの性能を発揮するかどうか・・・」

リシェルは少し悔しそうな顔をしているが、それでも使うしかない。
それを見ていたアリシアは誰かに言われたわけでもないが自分から動き始めていた。

「オートでって事はマニュアルならば検証通りに動くということですよね?」
「確かにその通りだけど・・・」
「私に乗らせてください、お願いします」

アリシアはリシェルに頭を下げて頼み込む。

「いくら、フリスさんとアコナさんの子供とは言っても実戦経験のない・・・」
「分かったわ」

整備兵を黙らせてリシェルはアリシアが機兵に乗ることを了承した。

「アリシアちゃんはハイシェントに乗って、私がエルブラストに乗るから」
「分かりました」
「誰か、アリシアちゃ・・・、アリシアに合うパイロットスーツを」
「は、はい」

リシェルに言われて周りの人間は慌ててアリシアに機兵へ乗せる準備をする。

「もう、子ども扱いしないからね」

トンと肩を叩かれるアリシア、たったそれだけだけど今のアリシアにとってはとてもうれしいことだった。

トクン・・・

心臓が高鳴っている。
自分で決めた事と言ってもやっぱり緊張するし、恐怖も感じる。

「心配しないで、お姉ちゃん」

ハイシェントの操縦席に座るとどこからともなく声が聞こえた。
聞いたことのある声、公園であった少女の一人の声だった。

「お姉ちゃんなら、大丈夫。お母さんも、ナミアも私も手伝うから」

語りかけてきたのはハイシェントだった。
その言葉にアリシアの気持ちは落ち着いていった。

「うん、ありがとう」

ふぅっと一呼吸置いてから、操縦桿を握る。

「アリシア、準備はいい?」
「リシェルさん、いつでもどうぞ」

エルブラストが先に格納庫から出撃する。
そして、ハイシェントも続いて出撃する。

「ハイシェント、アリシア。出撃します!!」

これがアリシアの初めての出撃となる。
自分ができるならやるだけやってみよう。
自分には助けてくれる仲間がたくさんいる。

そう思えば護ることに恐怖を感じなかった。
[PR]
by meruchan0214 | 2007-10-19 21:10 | 守護機兵 ハイシェント2

misson3 迷い

謎の敵との戦闘があってから一週間。
ウロボロスは補給をする為に木星のアルカディアへと立ち寄った。
物資の補給以外に戦闘の為の補給だ。

「さて、これが終わるまで敵が黙っていてくれればいいけれど・・・」
「相手の目的がまだ分からない以上、いつくるか分かりませんからね」

ブリッジではリシェルとジョニカが話をしている。
最低限の人数は残し、他は休憩を取らせている。

しかし、いつでも緊急事態には備えていなくてはいけない。

「レーダーに熱源反応、照合結果、前回のモノと一致」
「やっぱり、来ましたね」
「そうね、ウロボロスをお願いね」

リシェルはウロボロスをジョニカに任せ、自身はハイシェントに乗り込んだ。

「フリスさん、アコナ、二人ともいい?」
「いつでもいけますよ」
「私も大丈夫です」

リシェルのハイシェントを筆頭にウロボロスを護る為に出撃する。

「今回はウロボロスだけじゃないのよ!!」

ウロボロスからの出撃を合図にするかのように、正体不明機を囲むように複数の艦隊が現れる。

「流石だな、時間通りだ」

現れた艦隊は火星のアルカディア、ヴェルゼの戦艦だった。
ヴェルゼの戦艦からも、何機もの機兵が出撃する。

「ジョニカさん!!」

みんなが出撃してやや遅れてアリシアがブリッジに入ってきた。
リシェルが根回ししていた為にアリシアは顔パスで軍部には入って来れるようになっていた。

「大丈夫だ、負けはしないさ」
「でも・・・」

アリシアは言い得れぬ不安を感じていた。
先の戦いでもそうであったが、今度は今まで以上にその不安は大きかった。

「ウロボロスはシールドを展開し、攻撃に備えよ!!」

数はこちらの方が上、負けるはずがない。
誰もがそう思っていた、ただ一人アリシアを除いて。

「何かおかしいわね」
「リシェルさんどうしたんですか?」
「いや、ただこうなることは相手も予想していたはずなのにね」

リシェルも何となく何かがおかしいということに感づき始めていた。
相手の布陣が定石とは違うのだ。

「ジョニカ、聞こえる?」
「どうしました、リシェル様」
「全軍に突出した攻撃はしなように伝達してもらえるかしら?」
「分かりました、けど、どうして?」
「何となくね、嫌な予感がする」

相手も無理に撃ってこようとはしてない。
お互い膠着状態のまま、睨み合っている。

「ほ、リシェルさんも分かってるみたい」

アリシアは自分が感じ取ったことをリシェルも感じていたことに少し安心した。
しかし、このままでは拉致があかない。
お互いに牽制ばかりの攻撃でまともな攻撃はまったくというほどない。

「ノルン、通信できる?」
「リシェル、何用ですか?」
「今、木星圏の敵艦隊のデータを取ってほしいんだけど、できるだけ早く」
「分かりました、少し待ってください」
「お願いね」

痺れを切らして攻撃したらきっと負ける。
リシェルはそれを直感で感じ取っていた。
もちろん、アリシアもそれは感じていた。

「この戦い攻めたら負ける・・・」
「アリシア、何を言ってるんだい?」
「分かるんです、相手はこちらを圧倒するモノがある」

アリシアの不安は確信へと変わっていた。
相手はこの戦力差にも関わらず、怯んだりする様子は全くない。
戦力なんて関係ない、何かがあるのだ。

「くそ、何をチマチマやってるんだ!!」

アースラインの機兵の一隊長がつぶやく。
牽制のみの戦いにだいぶいらついているようだった。

「戦力はこっちが圧倒的に上だ!!一気に押しつぶせ!!」

アースラインの軍隊は牽制のみの戦いに痺れを切らし本格的な攻撃を開始する。

「いけない!!」
「無理に攻め込まないで!!」

アリシアとリシェルは同時に叫ぶ。

「リシェル、解析が終わりました。相手方には・・・」

ノルンとの通信が再びつながった瞬間だった。
敵軍から一斉に熱線がアースラインに向かって照射された。

「遅かったようですね」

ノルンが冷静に話す。
敵軍から発せられた熱線はアースライン軍の半数以上を一発で焼き尽くした。
射程こそそこまで長くはないものの、超高熱で機兵の装甲を一瞬で破壊するほどの威力。

「照射内は太陽とほぼ同程度の温度とでております」
「これじゃ、近づけないわね」

リシェルは相手の奇妙な布陣の意味が分かった。
相手は熱線という兵器を楯に少しずつ前進するつもりなのだ。
撃ち漏らした機兵は周りの護衛機が撃ち落とす。

「参ったわね、これは」

相手の熱線がどれだけ撃てるか分からないが、これでは攻めきれるモノではない。

「リロードは約30秒ほどと相手の艦の規模、出力から考えられます」
「30秒か・・・」

30秒で切り崩すのは至難の業だ。
相手は全力で熱戦を撃つ砲台を守る、こちらは30秒以内にその砲台を破壊しなくてはいけないのだ。

「やっぱり、駄目だよ・・・」

ブリッジに居るアリシアはこの戦いは勝てないと感じていた。
あの兵器を目の当たりにしてそう思えない人の方が少ない。

すると、敵軍から例のプロトタイプハイシェントが現れた。

「どうした、もう来ないのか?」
「レフィン・・・!!」

リシェルの声が変わった、憎しみに近い声。
明らかに元夫に大しての態度ではない。

「愛しき妻よ、元気にしていたかい?」
「貴方にもうそんな言葉はいわれたくないわね」

普段冷静なリシェルがあれほどまでに、感情を表に出すのは非常に珍しかった。
アリシアにもその感情がヒシヒシと肌で感じるほどだった。

「お互い攻め切れないんだ。どうだ、ここは一つ決闘で勝敗を決めないか?」

リシェルは少し考えた、相手が約束を必ず守るとは言いがたい。
けれども、このまま膠着状態が続くよりはマシだと考えた。

「リシェルさん・・・」
「リシェル様なら、大丈夫さ」

微かに震えているアリシアをなだめるようにジョニカは語りかける。

「皆さんの意見はどうです?」

さすがにアースラインやヴェルゼなどの連合軍、リシェルの一存で決める訳にもいかない。

「負けた場合はどうなるんですか?」
「だが、しかし・・・このままでは」

賛否両論である、戦いを続けても勝てる見込みは少ないのは皆わかっている。
だからといって、リシェル一人にすべてを任せたくないのも事実であった。

「さあ、どうするかね?」
「わかったわ、受けましょう」

どちらに転んでも負ける可能性が高い。
だったら、もしも負けたら自分だけが罰を受けよう。
そう考えた結論だった。

「ふふふ、戦いが嫌いだったお前がどう戦うのか見物だな」
「貴方の好き勝手にはさせないわよ」

リシェルの指示により、二機のハイシェントの周りには機兵などは一切近づかせなかった。

「行くわよ!!」

ハイシェント同士の戦いが始まる。
お互いが交錯しあう度に激しい火花が飛び散る。

「流石、なかなかやるな」
「ちっ」

お互いにダメージは受けてはいない。
武装も装備もほぼ同じ、今は互角の勝負をしているが勝負がつくのは一瞬だ。

「このままじゃ、負けちゃうよ」

アリシアは戦いの行方が何となくわかった。
リシェルに対して相手は本気をだしていない。

「もらった!!」

プロトタイプハイシェントの攻撃がハイシェントの左肩から一気に左腕を吹き飛ばす。
だが、それこそがリシェルの狙っていたコトであった。

左側を吹き飛ばされたが、右腕で相手を掴み、口で相手の動きを封じる。

「これは一本とられたな」
「くっ」

確かに有利そうに見えるのはリシェルのハイシェントではある。

「相打ち・・・」

アリシアは戦いの結末が見えていた。
お互いの攻撃が撃てばお互いに吹き飛ぶ。
動きを止められたが、攻撃はできるのだ。

「中間を取って、今回はお互いに引こうじゃないか」
「・・・分かったわ・・・」

リシェルは相手の要求を飲むしかなかった。
ハイシェントは掴んだ腕や口を外すと背中を見せることなく、ウロボロスへと戻っていく。
プロトタイプハイシェントも敵軍へと戻り、敵の旗艦はその場から去っていく。

「流石です、リシェル様」

戻ったリシェルを出迎えるジョニカだが、リシェルの表情は思わしくない。

「お世辞はよして、あれは完全に私が負けてたわ」
「ですが・・・」
「あいつは私たちに力を見せにきただけ、こちらの方が上なんだってね」

リシェルは悔しそうに話す。
今回は大人しく引いてくれた、しかし次はこうはいかないだろう。

「リシェルさん、大丈夫・・・ですか?」
「あら、心配してくれるの?ありがとう、大丈夫よ」

アリシアは不安そうにリシェルに話しかける。
みんなには不安がるから、勝ったということにしておく。
けれども、現実はそう甘くはない。

「ふぅ・・・、少し休みます」
「わ、わかりました」

リシェルはそれ以上何もいわずに部屋に戻っていった。
なんとなく気になったアリシアはその後を追った。

「リシェルさん!!」
「あら、どうしたの?」
「なんとなくですけど・・・」

何て言えばいいのかわからなかった。
今は何を言っても同情にしかならないような気がする。

「アリシアちゃんもこうなること、予想していたんじゃない?」
「え、それは・・・」
「いいのよ、本当のことを言ってみて」
「そう・・・です・・・」

アリシアはずっとこうなるような不安を覚えていた。
自分は乗って戦ったことはないけど、何となく分かる。

「護る為に戻ってきたのにね」

自嘲気味に笑うリシェルはもの悲しそうな顔だった。
アリシアにはリシェルにできることは何もない、ただ、黙って傍にいるだけだった。

「ねえ、アリシアちゃん」
「はい?」
「ちょっと付合ってもらえるかしら?」

自分で良ければとアリシアはリシェルの後をついていく。
そこは以前にもやったことのあるシュミレーション室だった。

「どうするんですか?」
「シュミレーションしたいことがあってね、アリシアちゃんに手伝ってもらおうかと思って」
「はぁ・・・」

アリシアは自分にはこんなことしかできない、そう思っていた。
でも、わざわざアリシアではなく、他の人に頼めばいいのでは?と思っていた。

「それじゃあ、この前やったみたいなシュミレーションでいいからやってみて」
「はい」

アリシアは言われたとおりにシュミレーションを開始する。

開始して直ぐに違和感を感じた。
いつもよりも感覚が鮮明になっている感じがした。
鋭い刃のように触れたものを切り裂くような感覚。

「きた!!」

アリシアはいつもの通り動こうとするが、動きが遅いと思ってしまう。
相手の機兵もそうだが、自分の操縦する機兵も遅く感じてしまうのだ。

撃った弾も遅い、しかし敵には命中する。
相手の動きが手に取るように感じ取れる。

「最後!!」

あっという間に全てのシュミレーションの工程を終了する。

「こんなに簡単だったっけ?」
「アリシアちゃんがすごいのよ」

リシェルが答えた。

「え?」
「私の与えた情報を瞬時に理解して、自分のモノにする。それは才能よ」
「あの、どういうことなんですか?」

リシェルの言葉に戸惑いを隠せない。
自分に才能があると急に言われても困るだけであった。

「貴方には私やフリスやアコナにはなかったものを持っているということ」
「私が?」
「そう、最初見たときは確信はなかったけれど、今ならはっきりと言えるわね」

アリシアはそんなことを言われても実感が沸かないし、乗ろうとも思わない。

「貴方が不安に覚えている戦いは全部貴方がどうなるか予測して感知しているから」

言われると確かに自分はこれからの事が予測できた。
見えてはいないけれども感じることができた。

「私がアリシアちゃんの感覚を広域化の役割をしてみたの、結果はさっきの通りね」
「でも・・・」
「無理強いはするつもりはないけれど、考えてもらえる?」

アリシアは自分に特別な才能があると言われてもうれしくはなかった。
確かに昔から勘は良かった、意識もしたことはない。
けれど、その才能を戦いに使わなくてはいけないということが、怖かった。

「ただいま・・・」

力無く帰ってくるアリシア、家には両親が既に帰ってきていた。

「どうしたんだ、元気が無いな」
「何かあったの?」
「ん?なんでもない」

何でも無いと言っても、そんなことが通用する両親ではない。
暗くなっているのが傍目から見ても分かるのだ。
その事が余計に両親を心配にさせた。

「考え事なら、お父さん達が相談に乗るぞ?」
「そうそう、一人で考えても拉致があかないわよ?」

両親の言う言葉はうれしいけれど、アリシアは喋りたくなかった。
自分がリーシェに乗れと命令された訳ではないが、乗ってくれと言われたこと。
戦うということが怖く、戦いたくないと思うこと。
両親はその戦いに身を置いているということを考えると自分だけとも思えない。

「私、リーシェさんに機兵に乗らないかって言われたの」
「リーシェさんが・・・?」
「それで、アリシアはどうしたいの?」

自分の中で答えは全くと言っていいほど出ていない。
戦うのが怖い、それが今のアリシアを支配していた。

「アリシアは無理に戦わなくても大丈夫だからね」

母親の言葉、娘を心配する気持ち。
自分だけ戦わないという訳にもいかないはず。
でも、母親はアリシアに戦わなくてもいいと言う。

「そうだな、子を護るのは親の仕事だからな」

父親もそれに賛同するかのようにうなずく。

「とりあえず、今は休みなさい。学校もしばらく休校みたいよ」

アリシアは重い体をベッドに乗せた。
どうするべきか迷いながら。
[PR]
by meruchan0214 | 2007-10-12 19:36 | 守護機兵 ハイシェント2

misson2 怖いもの

あくる日、アリシアはリシェルに呼ばれた。
どうしてなのかは分からなかったが、とりあえず向かうことにする。

「アリシア、来ました」
「どうぞ、入ってください」

相変わらず落ち着いた雰囲気の中でたたずんでいるリシェル。
アリシアは訳も分からないまま椅子に座る。

「ごめんなさいね、急に呼び出したりして」
「いえ、それよりも話って何ですか?}

呼んだ理由が気になるアリシアだが、リシェルは慌てるなとでも言うようにアリシアにお茶を出す。

「ま、これでも飲んで」
「あ、はい」

アリシアは恐る恐るお茶に手を伸ばし一口すする。
今まで味わったことがない、美味しいお茶だった。

「美味しい」
「そうでしょ、そうでしょ」

リシェルは嬉しそうな顔をする、アリシアにとってこの人はまだ良く分からない人だ。
父親や母親はリシェルの事を信頼している、けれどアリシアにとって出会ったばかりでリシェルの事はほとんど知らない。

「さて、じゃあ本題に入りますか」
「はい」

リシェルの顔が真面目な顔つきになった、サングラスをしていて目は見えないが、ジッとアリシアを見つめている。

「こんなこと言うと、あの二人に怒られそうだけど、機兵のパイロットをやってみる気はない?」
「え?」

突然の事に目が点になるアリシア、だがリシェルは本気だった。
アリシアは戦争というモノを目の当たりにして、怖いと思っていた。
自分がそんな事できるはずがないと思っていた。

「わ、私には無理です・・・、そんな怖いこと・・・」
「無理にとは言わないけど、試しにシミュレーターだけ乗ってみない?」
「シミュレーター??」
「所謂模擬戦闘よ、相手を倒しても倒されても問題ないから」

模擬戦闘ならやってもいいかなと思う、命を左右するものではないから。
アリシアが戦争が怖いと思う理由は二つあった。
一つは当然、自分の命の危険があるということ。
そして、もう一つは相手の命を断ってしまうことだ。

死ぬという感覚が分からないからこそ、自分で人の命を断ってしまったときが怖いのだ。
自分では自覚していなくても本心でそう恐怖していたのだ。

「分かりました」

アリシアはシミュレーションだけということを思い、リシェルの後をついていく。

ウロボロスの軍部には様々な設備が整っている。
そして、その一角のトレーニング室。

「ご苦労様、シミュレーター使える?」
「ご苦労様です、はい、いつでも使えますよ」

オペレーターの人に話しかけるリシェル、そして大きな機械のある場所にアリシアは連れてこられた。

「はい、これがシミュレーターです」
「おっきいんですね・・・」
「一機から艦隊戦までシュミレートできるからね、さ、入りましょ」

内部は複雑そうな機械で埋め尽くされており、いくつモノ部屋が並んでいる。
そのうちの一つの部屋にアリシアとリシェルは入った。

「ここに座って」

アリシアは言われたとおりに座ると、リシェルはコンピューターを操作し始める。

「マニュアルは画面上に出るから、一つ一つ教えながらやるわね」
「はい」

基本的な機兵の動かし方が画面に流れる、実際に触って感覚も掴む。
シミュレーターとはいえ、実戦を想定されているだけに、リアルであった。

「それじゃ、CPUとやってみましょうか?」

多少慣れたところでリシェルがアリシアに言った。
慣れてくるとゲームの感覚に近い。
アリシアは少しずつこのシミュレーションが楽しいと思い始めていた。

最初ということもあって、コンピューターのレベルは低く設定してあった。
アリシアはいとも簡単にそれを倒してしまう。

「ふ~ん・・・」

リシェルはアリシアの操縦をただじっと見つめていた。
一通りのプログラムが終わり、アリシアは席をたつ。

「どうだった?」
「シミュレーションは面白いですね」

命のやり取りがないということは気が楽でいい。
アリシアはゲームは好きだったので、こういうことには満足だった。

「そう、興味があったらいつでもきなさい」
「は~い」

リシェルは無理にパイロットに押し進めるつもりはなかった。
しかし、リシェルはアリシアに素質を見いだしていた。

「戦争か・・・」

今は戦闘もなく平穏な時だがそれがいつ崩れるかわからない。
また、戦闘になったら自分の両親やリシェル達はまた戦いに行くだろう。

「でも、戦うのって怖いよ」

死ぬ感覚、殺す感覚、アリシアは分かりたくなかった。
自分は戦うために生まれてきたんじゃない、そう思いたかった。

けれど、現実に今は戦争は始まろうとしている。
自分がどんなに拒否しても、戦いは目前まで迫っていたのだ。

「お父さんも、お母さんもどういう気持ちで戦っているんだろう・・・」

戦うことに怖くはないのか、どうして戦うのか、両親に聞いてみたくなった。
家に帰ると、母親が料理を作っている最中だった。

「おかえり、アリシアもう少しで夕食できるからね」
「うん・・・」

自分の母親は戦いの中に身を置いたというのにも関わらず、いつもとかわらない。

「ねえ、お母さん」
「なに?」
「どうして、戦争で戦うことができるの?」

母親、アコナは唐突に聞かれたことに少し考える。

「あまり深くは考えたことないなあ」
「え、どうして、命のやり取りしてるんだよ?」
「生まれ故郷を守るのは当然でしょ、考える必要ある?」

確かに母親の言うことに一理あった。

「確かに命が関わっている以上、私も戦闘で死ぬかもしれないけれどね」
「だったら、どうして」
「死ぬことよりも、守れなかった方が後悔すると思ったからかな」
「後悔・・・」

母親は昔を思い出すようにしゃべっていた。
懐かしさだけではなく、昔に死んでいった仲間たちのことも思っているのだろうか。

「まぁ、アリシアはそんなこと気にしなくて大丈夫、私たちが絶対に守るから」
「お母さん・・・」

アリシアは自分の母親が何故戦えるのか分かった気がする。
自分には真似できるのだろうか、そんな疑問すら思える。
だけど、やはり命を奪ったり奪われるということは怖いことだった。

「さ、今はご飯にしましょ」

悩んでいるアリシアのことを思ってなのか、わざと明るくする母親。
自分がどうするべきか、何ができるのか。

リシェルに言えばすぐにでもパイロットにはなれるだろう。
訓練も積ませてくれるだろう。

だけど、それ以上の不安がアリシアを行動させずにいた。
[PR]
by meruchan0214 | 2007-10-09 20:01 | 守護機兵 ハイシェント2

misson1 新たなる幕開け

ヴェルゼやアースライン、そしてコンピューターノルンの戦いから20年。
人々の記憶から戦争があったということが薄れ掛けている頃。

前戦争の英雄達は各々の役目につき、ここ20年間は平和な時が続いている。
大型生活艦ウロボロスもまた平和な時が続いていた。

「行ってきま~す」
「アリシア、気をつけていきなさいよ」
「分かってま~す」

彼女の名前はアリシア・ルウカ、前戦争のウロボロス軍、フリス・ルウカとアコナ・グルリアとの間に生まれた子供である。
フリスとアコナは戦争終結後、親善大使として、アースライン、ヴェルゼとの間に入り、平和に尽力を尽くしてきた。

「お母さんも心配性なんだから」

ウロボロスに住んでいる人は地球の小さな小国ほど居る。
アリシアもその中の一人だった。

アリシアはウロボロス内にある学校に通っている。
ウロボロス内には一校しか存在しないが、小中高、更には大学、大学院まで付属している。
その敷地は広大でウロボロスの1フロア全て使っている。

「おはよ、アリシア」
「おはよ~」

いつもと変わらない学校生活、平和な時が既に当たり前となっていた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

不意に激しい揺れを感じる。
小惑星にでも追突したのだろうか、ウロボロスは武装を持たない。
しかし、そういった衝突を回避するために、常に周囲にバリアを張っており、少数だが機兵と呼ばれるロボットが警備に当たっている。

「わっ!!」

激しい揺れはそれ一回だったが、辺りがとても騒がしい。
少しすると艦内放送が流れ始める。

「緊急事態です、居住区に居る方は至急各自の家に戻り、待機し直ぐにシェルターへと逃げる準備を始めてください」

緊急事態、訓練は何度かやらされていたが、訓練ではないみたいだった。
アリシアや他の人達は訳も分からず、家へと帰らされた。

「一体何があったんだろう・・・」

アリシアは家に戻るが、人の気配がない。
自宅待機でシェルターに避難ならば、両親も家に居るはずである。

「お父さん達、どうしたんだろう?」

アリシアは家の中を探し回る。
すると、いつもとは違う光景が目に飛び込んできた。

「何・・・これ?」

父親の部屋の一部がドアになっており、そこから先には別の通路がつながっていた。
今まで何度も父親の部屋に入ったことはあるが、これを見たのは初めてだった。

好奇心旺盛なアリシアは『いけないかな?』と思いつつも中に足を踏み入れた。

「ウロボロスのどの辺りなんだろう?」

アリシアは見知らぬ廊下を歩く、緑や一般の建物が並ぶ居住区に比べ、艦の中を実感させる造りになっている。

ダダダダダダ!!

数人の人が廊下を走っていく、凄く慌しいようだ。

「あれって、軍服だよね・・・、前にお父さんとお母さんに見せてもらったことあるや」

両親は元々はウロボロス軍でトップクラスの実力を持つ機兵乗りだ。
アリシアの物心ついたときにはほとんどそういった事には縁はなかったはずだった。

「誰だ!!ここは居住区の人間が入るところじゃないぞ!!」

見つかった、アリシアはビクビクしながら後ろを振り向く。
しかし、アリシアも声をかけた軍人もお互いの顔を見て驚いた。

「お父さん!!」
「アリシア!!」

ほぼ同時に声が出る、父親の部屋の扉は軍部に続いていたのだった。

「どうやってここまで来たんだ?」
「お父さんの部屋に扉が・・・」

アリシアが言うと父親はしまったと言うような顔をした。
自分のミスだと言うことが分かったのだろう。

「フリス!!早くしないと!!って・・・アリシア・・・」

直ぐ後ろから聞こえたのは母親の声、父親も母親も軍服に袖を通している。

「私の部屋の扉から来たらしい、ちゃんと閉まってなかったようだな」
「そうなの・・・、でも今は急がないと・・・」
「ねぇ、緊急事態って何があったの?こんなの初めてだし・・・」

アリシアが聞くと、母親は肩にそっと手を伸ばす。

「大丈夫、何でもないから。直ぐに戻るからね」
「でも・・・」

アリシアは不安で胸がいっぱいだった。
生まれてから初めての出来事、何よりも軍服に身を包んでいる、両親を見るのが怖かった。
優しい言葉をかける母親が直ぐにでもいなくなってしまいそうだった。

「アコナ、フリス!!早くしなよ!!」
「了解、直ぐ行きます」

60台くらいの目つきの鋭い女性、まだまだ元気そうに見える。
着ている服からしてかなりこの中で偉い人に思えた。

「その子は?ここは民間人立ち入り禁止だぞ」
「艦長代理・・・申し訳ないです、私達の娘で・・・」
「そうか・・・、とにかく二人とも急いでいくれ」

それ以上は何も言わず、急ぐフリスとアコナを見送った。
そしてアリシアへと向きを変える。

「あの・・・、何があったんですか?」

恐る恐るアリシアは聞いてみる、その姿は威厳に満ち溢れており、目で見られただけでも圧倒される。

「知りたいと思うなら止めはしないが・・・、今までの生活はできなくなるかもしれないよ?」
「それでも・・・知りたい・・・です」

半分本心で半分は知りたくはなかった。
けれど、両親が何をやっているのか知りたかった、自分だけ知らないというのが許せなかった。

「それじゃあ、ついてきな」

艦長代理の後をついていく、大きな扉を抜けた先は大きなブリッジになっていた。

「ジョニカ艦長代理!!機兵出撃準備整いました!!」
「ようし、迂闊にシールドの範囲外にでるんじゃないよ!!」
「了解!!」
「アコナ、フリス、頼んだよ!!」

艦長代理が声をかけると、画面にアコナとフリス、両親の顔が映し出された。

「了解」
「分かりました」

次々とウロボロスから出撃する機兵。
アリシアは教科書でしか機兵を見たことがない。
その上、この緊迫した状況、ただ事ではないというのは素人でも分かる。

「正体不明機、戦闘エリアに到達します!!」
「相手の正体が分かるまで、深追いはするな!!」

オペレータの声や艦長代理の声が騒々しくなるくらい交錯する。
アリシアの目の前で起きているのは戦争だった。
目の前で花火のように起こる爆発。
どちらかは分からない、だけど今その爆発で人が死んだかもしれないのだ。

「お父さんやお母さんがあの中に・・・」
「大丈夫だ、あの二人は前戦争の英雄だからな」
「英雄・・・?」

軍人だったという事は二人から聞いていたが、英雄とまでは聞いたことはない。
ましてや、教科書には一切その事についてはふれられていない。

「だが、現実に人の命が今散っているのは確かだけどな・・・」

ジョニカ艦長代理は少し悲しそうな顔をするが直ぐに厳しい表情に戻る。

「艦長代理!!今までの機兵のデータに一致するモノがありません!!」
「何だと!?」

オペレーターの声に全員が驚きを隠せなかった。

「ジョニカさん、こいつら機兵とは違うみたいだぞ」
「ええ、似て非なるモノっぽいわ」

ついで入ってくるフリスとアコナの通信、ブリッジには動揺のざわめきが起こる。

「慌てるな、正体不明だとしても倒せない相手ではない!!」

ジョニカ艦長代理の言葉通り倒せない相手ではない。
正体不明と言えども、全く武器が通じないというレベルではないのだ。

「お父さん・・・お母さん・・・」

今のアリシアには二人の無事を祈るしかなかった。
戦局はウロボロス側が優勢だ、少しずつですが押していく。

「戦力的には上か・・・」

ジョニカ艦長代理が呟いたその時だった。

「何かが物凄い速度でやってきます!!」
「直ぐに解析しろ!!」

アリシアは何故かそれが怖いと感じた。
ずっと遠くにいるはずなのに、実際に戦っているはずではないのに。
今やってくる何かが怖いと感じ取った。

「どうした?大丈夫か?」

ジョニカ艦長代理が心配して声をかけてくるが、アリシアの震えは止まらない。

「艦長代理!!ゲイドチームが壊滅状態です!!」
「何だと・・・」
「解析完了、分析結果は・・・ハイシェントです」

辺りが騒然となる、当然といえば当然だ。
ハイシェントと言えば、前戦争でウロボロス軍最強の機兵として活躍した。
それが今敵として前に立っているのだ。

「しかし、こちらに残っているハイシェントとはややデータが違うようですが・・・」
「だが、ハイシェントだということには間違いないんだろう?」
「はい・・・」

ジョニカ艦長代理は明らかに悔しそうな顔をした。
たった一機の機兵の出現によって、一気に劣勢に立たされたのだ。

「敵増援部隊確認!!」
「不味いな・・・、ヴェルゼとアースラインに救援信号を!!」
「了解!!」

20年以上前の機兵とは言え、その圧倒的な戦力は健在だった。
この20年で機兵自体の性能は飛躍的向上した上で尚こちらの機兵よりもスペックが高いのだ。

「艦長代理、私とアコナであれを止める」
「・・・、頼むぞ・・・」

ジョニカ艦長代理は二人に頼むしかなかった。
実際にハイシェントに乗ったことのある人間ならば、対処法も分かるはず。
更にフリスとアコナの操縦技術はウロボロス内でもトップクラスだ。

「お父さん、お母さんダメだよ!!」

アリシアは両親を止める、しかし二人は止まるわけにはいかない。
大きな不安がアリシアを更に震えさせた。

「勝てないよ、あんなのに・・・」
「アリシア・・・?」

ジョニカ艦長代理はアリシアの言葉に疑問を持った。
機兵の事は何も分かっているはずがないのに、出た言葉。
まるで相手がどんな奴なのか感じ取っているみたいであった。

「艦長代理、もう一機来ます!!」
「く、流石にこれ以上は持たせられんぞ・・・」

一機でも危険な機兵が二機になったら手をつけられなくなる。
ジョニカ艦長代理もあせりの表情が浮かぶ。

「!!、通信来ます」
「何?通信回線開け」

通信を開くと、女性の声がブリッジに響く。

「増援が来るから、後5分持ちこたえなさい。アイツは私が何とかする」
「その声は・・・」

戦場に乱入してきたもう一機のハイシェント、それは自分自身と対峙するかのようにハイシェントの前へと姿をあらわした。

「ハイシェントが・・・二機?」
「誰が操縦しているの?」

アコナとフリスは驚きを隠せない。
しかし、お互いが敵同士であるということは直感した。

「フリスさん、アコナ、ここは任せなさい」
「リシェルさん!!」

その言葉に二人は驚きと喜びが混じったような声をあげる。
アリシアももう一機のハイシェントが来たことにより、かなり不安は薄らいでいた。

ハイシェント同士の戦いはほぼ互角、パワーもスピードもどちらも決め手にかけている。
だが、味方にハイシェントが現れたお陰で味方の士気がぐっと上がった。
何よりも乗っている人物がジョニカ艦長代理やフリス、アコナにとって喜ばしい人だった。

「後方から援軍です、アースラインとヴェルゼです!!」
「よし、一気に蹴散らせ!!」

援軍が到着したことに形勢不利とみたのか、正体不明機とハイシェントは戦線を離脱する。

「何とかなったな・・・」

安堵の息をつくジョニカ艦長代理。
アリシアも敵が撤退したことにより、不安は完全に消えていた。

「ハイシェントから再び通信来ます」

先ほどは声だけだったが、今度は映像つきでウロボロスに通信が入った。

「無事だったようね、ジョニカ」
「リシェル様!!」

画面に映った女性は20代前半の女性、リシェルと呼ばれていた。
熟年者達は全員彼女の事を知っているみたいであった。

「ウロボロスに帰還しても大丈夫かしら?積もる話はそれからにしましょう」
「はい!!」

ハイシェントはウロボロスに収納される。
そして、ブリッジにアリシアにフリスやアコナ、ジョニカなどクルー全員が集まっていた。
その前に立っているのはリシェルと呼ばれた女性。

「また、ここに立つ事になるなんてね」
「リシェル様・・・、お帰りをお待ちしてました」
「私はもうここの艦長じゃないよ」

艦長ではないという言葉に驚くアリシア。
どう見てもそんな年齢には見えない。

「ですが、ウロボロスの艦長は貴方しか居ません」
「ジョニカが今までやってきたのでしょう?」
「それは、リシェル様が帰ってくるまでの間で・・・」

あの威厳に満ちた艦長代理があれほどまでに下手に出ているのに驚く。
少しあっただけだが、それほどまでにリシェルという人を尊敬しているのだとアリシアは感じる。

「リシェルさん、受けてあげてください。皆、待ってたんですよ、絶対帰ってくるって」
「そうですよ、皆信じてたんですよ」
「フリスさん、アコナ・・・」

ジョニカ艦長代理以外にもフリスやアコナの言葉に戸惑うリシェル。
しかし、艦長代理やフリス、アコナ以外にもリシェルに戻ってきてほしい人はたくさん居た。

「分かりました。ですが、指揮は今まで通りジョニカが行ってください」
「はい」
「以上です。後でジョニカ、フリスさん、アコナには個人的に話があります。いいですか?」
「分かりました」

リシェルの話が終わると皆は各々に解散する。

「リシェル様の部屋はそのままにしてあります」
「ありがと、じゃあ私の部屋でね」

リシェルはその自分の部屋へと歩いていった。

「ねえ、お父さんあの人どういう人なの・・・?」
「このウロボロスを作った人の一人で艦長だった人、20年前から行方不明だったんだ」
「え、でもどう考えても20年前っていったら子供じゃん」

フリスはその言葉を聞くと顔から笑みがこぼれる。
アコナやジョニカもそれを聞いて少し笑っている。

「あの人は特別だからな」
「特別って・・・?」
「一緒に行けば分かるよ、来るか?」
「うん」

アリシアはアコナ達と一緒にリシェルの部屋へと向かった。

「失礼します」
「どうぞ」

アリシア達が中に入ると、懐かしそうにリシェルが部屋を見ていた。

「本当にあのときのままなのね」
「ええ、そうですよ」
「立ち話じゃなくて、座って話しましょうか」

リシェルはアリシア達を座らせる。

「その子はフリスさんとアコナの?」
「ええ、そうです。アリシア」
「あ、私、アリシア・ルウカって言います」

アリシアが少し硬くなりながら挨拶をすると、リシェルはそれをただにこやかに見ていた。

「よろしくね、アリシアちゃん」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

不思議な雰囲気を纏った女性だと感じた、見た目こそ若いが見た目とは不相応な落ち着き方。
それに自分たちとはどこか違うとアリシアは思った。

「さて、まずは私がここに来た理由から話しましょうか」
「ええ」

リシェルはゆっくりと語りだした。

「私の体は確かに爆発に巻き込まれて失ったわ、それと同時に全て消えるはずだった。でもね、お節介が一人居てね」
「お節介?」
「モイライが私とノルンのバックアップを取っていたのよ、最後の時までのね」

アリシアには何の話をしているか分からないが、モイライは聞いたことがある。
今、アースラインで活躍しているスーパーコンピューター。
これからの人類がどうあるべきかを常に計算し続けていると言う。

「でも、バックアップしてあったなら何故20年も?」
「私はもうここに戻ってくるつもりはなかった、私の役目は終わったはずだった」
「はずだった?」

リシェルの言い方はまだやるべきことが残っていたみたいだった。
しかもそれは想定外であったみたいだ。

「まさか・・・」
「ええ、あなた達も見たでしょ。もう一機のハイシェント」
「あれって一体?」
「順を追って話すわね、まずもう一機のハイシェントの事」

リシェルはフゥと溜息をつき、再び口を開いた。

「私たちがウロボロスを作って、すぐの初めての機兵。プロトタイプのハイシェントなの」
「プロトタイプ?」
「ええ、だけど理論的に余りにも危険だったから。私達は破壊することを決めた。けど、それを良しとしなかった人間が居たの」

今まで以上にはっきりと言う口調。
決意の強さが現れているみたいだ。

「その良しとしなかった人間は、プロトタイプのハイシェントを奪って宇宙に逃げた」
「でも、それって170年も前の話ですよね?」
「そう、私達はそれを追って破壊したはずだったんだけど」
「今になって再び現れたと言うことですね」
「その通り、そしてアレを動かしているのがあの人なら私はそれを止める責任がある」

少し悲しそうな表情をするがすぐに元に戻った。

「あの人がああなったのは私の責任、妻として止めなくてはいけないから」

その言葉にその場に居た全員は驚いた。
話にも驚いたが、結婚していたと言うことにもっと驚いたのだ。

「あら、言ってなかったっけ?」
「初耳ですよ!!」
「まあとにかくね、そういう意味で私は止めるために来たの」

アリシアには分けの分からない話だ。
ただ、リシェルが見た目とは裏腹に凄く年を取っているのが分かった。
聞いている話だとどうもロボットっぽい。

「とりあえず、アリシアちゃんの目が点になってるから。ちゃんと説明しましょうか」
「あ、お、お願いします」

リーシェは今までの経緯・・・、以前の戦争の事を要約して話してくれる。
自分自身が元々人間で記憶などを電気信号に変えて、ロボットの体に移植していること。
ノルンやモイライなどのスーパーコンピュータの事など話してくれた。

「というと、リシェルさんは、今200歳くらい?」
「そうなるかな」
「はぁ~・・・凄いですね」

ある程度説明が終わると、再びリシェルは会話を元に戻す。

「それと、今回現れた敵だけど」
「あれは一体?」
「太陽系ではない所から来ているわ」
「なるほど・・・」
「文明レベルはアッチの方が上、操縦技術は下の中って所らしいわ」
「らしいわって・・・、疑問系なんですね」
「ノルンもそこまでは分からないわよ、初めて見たから」

ノルン、先ほど説明してもらった全人類に対して宣戦布告を行ったコンピューター。
20年前の戦争でリシェルもろとも爆発したはず。

「ノルンも修復したんですね」
「ええ、今は人を裁くつもりはないらしいわよ」
「今は、ですか・・・」
「まあ、ね。でも、味方ならあれほど強力なサポーターはいないけどね」
「そうですね」

敵の敵は仲間といったところだろうか。
正体はこの星間ではなく、更にスケールの大きい話だ。

「もう、何がなんだか・・・、これから戦争がまた始まるって事ですか?」
「そう・・・なるかな、私一人で済む問題なら良かったんだけど・・・」

両親達の懐かしい仲間が戻ってきてくれたことは嬉しいことだと思う。
けど、戦争が始まると言うことにアリシアは大きな不安を抱え始めていた。
[PR]
by meruchan0214 | 2007-10-04 21:01 | 守護機兵 ハイシェント2