カテゴリ:カナシミノウタ( 9 )

エピローグ

あれから50年、戦争は過去のものとなりつつあった
私は今でも戦争の悲劇を伝える為に活動を続けている
仕事をする片手間にずっと戦争の悲惨さを皆に伝えてきた

「私は敵であったイディア国の人間に命を救われました、その人間を通じて戦争はいかに辛く悲しいことなのかを痛感しました」

私達はあの後埠頭の先でルティの仲間だというイディア軍に助けられた、
やられた振りをして、逆にルティの理想を広めていたらしい
その為に我々を見つけるのが遅くなったということ
ティリカが死亡したことについては、彼等も悔やんでいた

「だから、二度と戦争など馬鹿げたことが起きないよう、一人一人が関心を持ち、起こさないという心構えが必要だと思う」

だが、死んでしまったものは生き返らない
だったら二度と起きないようにするのが、私の務めだとおもったのだ
こういうことは私達だけで済めばいい

「先生、おつかれさまでした」
「ああ、お疲れ様」
「先生に花束が届いてますよ、こちら、カードも一緒です」

私はカードを見て驚いた
そこにはこう書かれていた

『大石 武さんへ あの時の事をお礼に言いたくこのカードをお送りいたします、ルティ&ティリカ』

「君、コレを持ってきた人は!?」
「20台くらいの綺麗な外国人と15~6歳のその方の妹さんみたいでしたよ」

私は慌てて外にでるが、それらしき人は見当たらない
そもそも、50年も経っていてそんなに若いわけがない
だが不思議と彼女達本人からの気がした

その時、一瞬風が吹いた

『ありがとう』

風は私に呟いた
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by meruchan0214 | 2006-04-24 00:48 | カナシミノウタ

最終話 カナシミノウタ

血に染まった夕焼けだがそれは心に焼きつくほど綺麗だった

「明日には目的地に着きそうだな」
「ああ、何とかここまでやってこれたな」

我々は遂に目的地のすぐ傍までやってきていた
死者が出なかったわけではないが、それでもかなり被害は抑えれたほうだ

普通だったらとっくに全員死んでいるか、生き残っても数人だっただろう

「小岩、ここを生き残ったらどうする?」
「俺か?俺は・・・そうだな・・・、実家に帰ってのんびりやるのもいいかな」
「そうか、お前らしい考えだな」

先の話をするなんて何日・・・いや何ヶ月振りのことだろう
今までなら、いつ死ぬべきかしか考えなかったが、今は先を考えている
全てはあの事があってからの事だ

「大石はどうするんだ?って、お前には妻も子供もいたっけ」
「ああ、元気で居てくれればいいが」
「大丈夫さ、お前が無事なら奥さんも子供も無事さ」

夢や希望を語り合う、そんな機会があることは思っても見なかった
今、我々と行動を共に居ている民間人もそうだ
最初は戦争に怯えるしかなかったが、今では生きる事を考え行動している

自分が何をするべきか、死んでいった人のためにも生きる為に
みんなが考えている、大人も子供もみんな考えている

「お姉ちゃん、やっとここまできたよ。無事にやり遂げられるんだよ・・・」

ティリカは少し悲しい目をしていたが、それもすぐに元に戻る

「さ、後もう少しだよ!!頑張ろうね!!」

ティリカの笑顔に何回助けられたか分からない
その能力は元より明るさに皆が元気つけられてきた

「ああ、そうだな」

我々は足を進める、もう少しで未来が開けるのだ

そして・・・

我々は島の最南端の埠頭にたどり着いた

「ついにここまできたんだな!!」
「ああ、俺達は生き残れたんだ」

皆で歓喜の声が上がる
今まで皆で頑張ってきた、それだけに喜びもひとしおだ

「後はお姉ちゃんの部隊が来るのを待つだけ・・・」

ターン

その時、一発の銃声が辺りに鳴り響いた

「あ・・・」

腹から血を流しその場に足をつくティリカ
銃声のした先にはいつもとは見慣れない服装のイディア国の軍人がいた

「あなた達は・・・」
「束の間の喜びはどうだったかな?裏切り者と倭国諸君」

イディア語で喋っているのは分かるが、私は片言しか知らない
だが、相手は我々がここに来ることを知っていたようであった

「イディアの特務部隊・・・、じゃあ、シェリルさん達は・・・」
「ルティの戯言に惑わされた者達は既に処刑しましたよ」
「なんですって・・・!!」

イディア語で喋るティリカ、聞き取れる範囲では既にルティの仲間は処刑されたということらしい

「あなたの能力は非常に厄介だ、だから油断する今まで待っていたのですよ」

ティリカは悔しそうな顔を浮かべる、
イディア軍の撃った弾はティリカに確実にダメージを与えている

「その傷ではまともに力も使えまい、今ここで処刑してやる!!」

イディア軍はティリカに向かって銃を向けた

「ティリカ逃げろ!!」

私は隠し持っていた拳銃をとっさに抜きイディア軍に撃ちこむ

ダンダンダンダンダン!!

「ぐあ!!」
「ぎゃあ!!」

何人かの急所には命中した、しかし、やはり全員を殺しきるまでにはいたらなかった

「この!!」

イディア軍は自分に銃を向ける

『だめだ!!』

ダダダダダダダダダダ!!

自分はやられたと思い、目をつぶる
だが、何も感じないし痛くもない、まるで何も当たっていないようであった

『まだ、動く・・・?』

自分は恐る恐る目を開けると、目の前にはティリカが立っていた

「手は出させない、これ以上誰も殺させない・・・!!」

弾丸はティリカの直前で止まっており、少しするとパラパラと地面に零れ落ちる

「まだ、これだけの力が残っているとは・・・、撃て、撃ち殺せ!!」

ダダダダダダダダダ!!

再び、銃から弾が打ち出される、だがそれがティリカに届くことはなかった

「殺させない・・・、だから、あなた達を倒す!!」

いつものティリカとは全く違う雰囲気となる
邪悪とでも呼ぶべきだろうか、そんなオーラを纏っているようだった

「死を司る者よ、我の仇なす敵に裁きの鉄槌を与えん」

ティリカが詠唱を終える、すると辺りは急に闇にと包まれる

「うわ、うわああああああ!!」

イディア軍の叫び声が聞こえる

ズバア!!

肉を切る音

グチャ

何かを潰したような音

とにかく色々な音がした、それは今まで聞いたどんな音よりも生生しく、残酷だった

だんだん視界が晴れてくる
そこには、イディア軍の死体が転がっていた

一人は首を掻き切られたように、首と胴が離れている
またある一人は人間であったか分からないように肉片となっている

「うぐ・・・」

流石の残酷さに自分も気分が悪くなった
恐ろしい能力、人を一瞬で殺してしまう、初めて彼女達の能力が怖いと感じた

「・・・、大地の精霊よ、彼らを元在るべき場所へ・・・」

ティリカが再び詠唱を終える
すると、死体は一瞬で風化し土へと帰っていく

何もなかったかのようになっていくその様は少し異様であった

「ティリカ・・・」

私はティリカに近づく

「ゴホッ!!」

ティリカは口から大量の血を吐き出した

「ティリカ!!」

ティリカに慌てて近づく、彼女はその場に倒れこんでしまう

「ごめん・・・なさい・・・」

ティリカが力なく口を動かし話し始めた
見ると、最初に受けた弾丸の傷意外に無数の銃痕ができていた
そう、私を助けた時に全部の弾を受けきったわけではなかったのだ

「私、お姉ちゃんに禁止されていたことしちゃった・・・」
「我々を守るのに仕方がなかったんだろ!?」
「ハァ・・・、結局、皆を守りきる・・・事ができな・・・いから・・・」

ティリカは苦しそうに喋り続ける
それは我々に対しての贖罪のようであった

「だから、ごめ・・・ん・・・なさい・・・」
「いいから、喋るな!!いま傷を治療する!!」

ティリカは首を横に振る

「もう、手遅れ・・・能力を使っても治せないから・・・」
「だからって諦めていいものか!!」

自分はありったけのガーゼを血止めに使い
血の出ている部分を全て止血しようとする

「大・・・石さん・・・、私の代わりに・・・皆を、助け・・・てあげ・・・て・・・」
「ああ、皆も助けるから、だから、まだ死ぬな!!」
「ありが・・・とう・・・、安心・・・できる・・・」

ティリカはにっこりと笑うが、その目からは涙が溢れていた
それを見た自分はいつの間にか一緒に涙を流していた

「あれ・・・、なんで・・・涙が・・・、安心した・・・せいかな・・・」
「ああ、安心させてやるから、だから!!皆、ありったけの治療道具を用意するんだ!!」

私が叫ぶと皆で治療できるものは何でも集めた
薬草や民間療法、やれることは全部した
だが、血は止まることなく流れ続けていた

「そろそろ・・・、寝ていいかな・・・、眠くなってきちゃった・・・」
「ダメだ、まだ終わってないだろ!!寝るな!!」
「ありがとね・・・、良かったよ・・・あなた達に会え・・・て・・・」

ティリカはゆっくりと目を閉じる
口からは息をしていない、心臓も動いていない
今、目の前で少女の命は散ったのだ

「ティリカ・・・」

自分を含む全ての人は涙していた
敵である我々を親身になって助け、ここまで導いてきた彼女を
まだ、幼くして散ったこの命を皆が惜しんで泣いている

体はまだ温かい、その死に顔は安らかで本当にただ眠っているように見える

「忘れない、絶対に生きて、忘れるものか・・・」

心に決めた事、ティリカが救ってくれた命、
死ねない、生き抜く、例え何があろうとも
それが命に変えて守ってくれたものへの手向けになるのならば・・・

絶対に忘れるものか・・・
ここであった出来事を
出合った人たちの事を
そして、彼女達のことを・・・

ウタが聞こえる
悲しみを歌うウタ
風にのり、大地を駆け
全てのモノへと伝えよう

それを忘れることのないよう、カナシミノウタは歌い続ける
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by meruchan0214 | 2006-04-24 00:31 | カナシミノウタ

7話 決別

雨が降る、雨は地上の汚れたものを洗い流してくれるが
我々の心までは洗い流してはくれない

「さあ、もう少しです、参りましょう」

我々は目的地まであと少しの所まで来ていた

「つぅ・・・」
「大丈夫?お姉ちゃん・・・」

ルティの容態は日に日に悪くなっていく一方だ
まともな治療ができないのだから、当たり前といえば当たり前だが・・・
だが、ルティ本人はというと、それを隠すかのようにしている

「少し休みましょうか、歩くのも辛いのでは?」
「大丈夫です、大石さん、こんな所で立ち止まるわけにいかないでしょう」

明らかに顔色が悪い、腕はぶらんとしており力が入っていない
多分、既に腕は痛みすら感じていないのかもしれない

しばらく歩くと、海が見えてくる
いよいよ、逃避行も最終局面が見えてきた

「後、少しですね・・・」
「ああ、だが本当にあなたの仲間が?」
「はい、表立つということはありませんが、信頼できます・・・」

ルティに仲間がいるというのは、意外な話であったが
今はそれを信じるしかない、わらをもすがる思いと言うやつだ

ドガーン!!

「な、なんだ!?」

海からの砲撃だ、我々の姿を確認したのだろう

ドガーン!!

「逃げるんだ!!」

我々は蜘蛛の子を散らしたように辺りへ散らばる
だが、ルティには避ける元気がないようだった

「ルティ!!」

自分はルティを担ぎ上げると、相手から直視できない場所へと逃げる
せめて、砲撃からは逃れないといけなかった、

「隊長、こっちです!!」

黒崎が先導する声が聞こえる、自分はその声の方角へと走る

「はぁ、はぁ・・・」

何とか敵の攻撃を巻くことができた

「こちら側の攻撃は抑える話だったけど・・・、もしかしてバレタのかしら・・・」
「ばれる??」
「ええ、ようするにこちら側には私の息がかかったというのもおかしいですが、仲間達が待機しているはずなんです」
「なるほど、ばれて仲間が・・・」
「そういう可能性が高いというわけです・・・」

ここまできて、絶望が襲ってくるようであった
逃げ道がない、絶体絶命と言うのはまさにこういうことを言うのだろう

「あ・・・、隊長!!逃げてください!!」

黒崎の叫ぶ声がする、その次の瞬間だった

ダダダダダダダダッ!!

マシンガンだろうか、弾丸が飛ぶ音がする

ドサッ

誰かが倒れる音、そしてなにやら話し声がする

「参りましたね・・・、私の完全なミスです・・・」

ルティは申し訳なさそうな表情を浮かべる

「多分、黒崎さんはもう・・・」
「言うな、今はここを生き延びることを考えよう」

足音が徐々に近づいてきているのが分かる
ここまでくるのは時間の問題だろう

「大石さん、私を置いていってください」
「何を言うんだ!!」
「私はもうじき死にます、だから私が出来る限り時間を稼ぎます、その間に逃げてください」

ルティから聞きたくない言葉が発せられた
心のどこかでは分かっていたのかもしれないが、認めたくなかったというのもある

「生きてください、私の分まで・・・」

ドン!!

ルティは私を押すと、立ち上がり足音のする方向へと走り出した

タッタッタッ

「ルティ!!待つんだ!!」

だが、それはまるでルティには聞こえていないみたいに彼女は反応しなかった

向こうで何か叫ぶ声が聞こえる
少なくとも我々の国の言葉ではない

その後少しして銃の撃つ音、そして何も聞こえなくなる

ガサガサガサ

「誰だ!!」
「大石、ここにいたか、黒崎が見当たらないんだが知らないか?」
「小岩・・・、黒崎は殺されたよ、後、ルティもな・・・」

自分は何だかどうでもよくなってきた

「黒崎が・・・それにルティさんまで・・・」
「結局、我々にできることなんて何もなかったんだ、生かされているだけの人間だったんだ」

ドガッ!!

思いっきり小岩に殴られた

「馬鹿やろう、隊長のお前が何言ってるんだ!!」
「小岩・・・」
「俺達は生きる為にここまで来たんだろう!!それなのにここまで来て諦めるのか!?」
「だが、俺達だけではどうすることもできない・・・」

ドガッ!!

再び小岩に思いっきり殴られる

「お前がこんなやつだとは思わなかった、もういい勝手にしろ!!」

小岩はつかつかと前から去っていく
今の自分には何もする気が起きない、自分の無力さが全身を駆け巡っているようだ

「何でこんなに無力なんだ・・・」

無力の自分が悔しい、だがどうすることもできない
誰一人守ることもできない自分に何ができるというのか

もう、いつ死んでも構わない、そんな心境だった

「くそ・・・」

自分はただ一人そこに座り続けていた

ガサッ

茂みが少し動いた、誰か来たのか、殺すなら殺してくれ

「大石さん・・・小岩さんがこちらに居るとおっしゃってたので」

現れたのはティリカちゃんだった

「お姉ちゃん、最後どうだったんですか・・・?」
「・・・・・・」

答えられなかった、自分を生かすために自ら囮になったこと、
自分の死期を悟っていたこと、とてもいえそうになかった

「お姉ちゃんの事は大体わかってるつもりです、考え方とか・・・」

ティリカの表情がかなり暗い、実の姉が死ぬというのは実感わかないだろう

「自分を逃がす為に、自ら囮になった、自分はもうじき死ぬからと言ってな・・・」
「そうですか・・・」

自分にはかけてあげる言葉が見つからない、
自分のせいで半分殺したようなものだから

「お姉ちゃんはきっと生きてますよ、だって、私達普通じゃないし」

ティリカは声を明るくする

「だって、お姉ちゃんが死んだところを見たわけじゃないでしょ?だったら、きっと生きてるよ、お姉ちゃんは強いんだもん」

逆に私を励まそうとしているみたいだった
妹が私に声をかけてくれるというのに、何もいえない自分

「それにお姉ちゃんのことだから、生きてくれって大石さんに言ったと思う、だから、いつお姉ちゃんに会ってもいいように、生きなきゃ!!」

そう、最後ルティはこう言っていた
『自分の分まで生きてくれ』と
ルティが自分の命を犠牲にしてまで、救ってくれたこの命

「そうか、そうだよな・・・」

それをむざむざ不意にするわけにはいかない

「うん、私じゃあお姉ちゃんには及ばないところがあるけど、がんばるから」
「そうだな、まだ俺達は死んではいないんだ、だったら精一杯やらないとな」

まだ、こんな若い子供に元気つけられるとはまだまだ自分も未熟だ
それにティリカが言っていたようにまだ死んだとは限らない
死ぬ姿を見ていないのだから、希望は残っている

「みんな、大石さん待ってますよ」
「ああ、すぐ行く」

自分はその場から立ち上がり歩き始める
みんなの行動を無駄にするわけにはいかない、
その為に歩いてきたのだから
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by meruchan0214 | 2006-04-21 18:49 | カナシミノウタ

6話 ゆらめき

「お姉ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫よ、一応応急処置はしたから」

ルティの傷口はかなり酷い
まともに当たってはいないとはいえ、機関銃だ
掠っただけだから、まだこの程度で済んだものの、直撃だったら腕はなくなっていただろう

彼女達の力は自分達には効果がないらしい
だから、この怪我をすぐに治すということはできないのだ

「すまない、俺達は何も出来なくて・・・」
「いいんですよ、私にはこれしかできませんから」

ルティは我々に対し笑みを浮かべる
だが、その腕は非常に痛々しく、どれだけの傷かを物語っている

「とりあえず、今日は休ませていただきますね、何かあったらおよびください」

彼女から休むという言葉が出るのは初めてだった
それだけ彼女の負った傷は大きいのだ

「お姉ちゃん、肩貸すよ」
「ごめんね、ティリカ」

ルティはよろよろと歩いていく、歩くのも辛そうだ

「ちゃんとした医者に見せないとまずいな・・・」
「そうだが、医者なんてこんなところにはいないぜ?」

小岩の言うとおりだ、今まで医者の役目は彼女達がやってきた
だが、それは医学的なことではなく超常現象だ

確かに応急処置はしたが、あくまでも応急処置だ
ちゃんとした治療ではない
出来る限り早くちゃんとした医者に見せないとまずいだろう

「本当に何もできないのだな、我々は」
「所詮、無力なんだよ俺達は、虚しくなるくらいにな」

本当に虚しくなる、小岩の言うとおりだ

「だが、多分俺達にも何かはできるんじゃないか?」
「何かって何だ?」
「さあな、でもそれを考えるのが俺達だろ」

それもそうだ、考えもしないで何かができるわけがない

「そうだな、自分達にもまだできることはあるよな」
「うん、それでこそ大石だ、暗い顔は似合わんぜ」

持つべきものは友と言うがまさしくその通りだと思う
辛い時に話し合える仲間がいるというのはいいことだ

「隊長、交代します」

いつの間にか交代の時間らしい
自分達は黒崎と駒峰に見張りを任せ奥へと引っ込む

「もし、・・・がだら・・・しくね」
「うん・・・」

ルティとティリカの話し声がする

「この傷だと、どのみち長くはもたないから」
「でも、ちゃんと治療すれば・・・」
「この近くに治療できるところなんてないわ、それにそんなことしている暇なんてないし」

自分の事は自分がよく分かっているというが
ルティはすでに自分の傷の深さが分かっている

「私の命があるうちに、できれば生き残らせてあげたいの」
「お姉ちゃん、何でそこまでする必要があるの・・・お姉ちゃんは十分やったじゃん!!」

ティリカの声が荒げる、彼女の言うことはもっともだと思う
ルティの今までやってくれたことは我々に対しどれほど有益であったか
ここまで、被害が少なかったのは彼女達のお陰に他ならない

「私、お姉ちゃんが死ぬのは嫌だよ・・・」
「ティリカ・・・」
「お姉ちゃんが死んじゃったら、私一人になっちゃう・・・」
「・・・」
「お父さんも、お母さんも戦争で死んじゃって、私の肉親はお姉ちゃんだけなんだよ?」

二人の両親が死んでいるというのは初耳だ
ルティとは出会ってからかなり話してはいるが、そういった話は全くしなかったというのはあるが

「そうだったわね、ごめんね、私は大丈夫だから、ね」
「本当に?傷はどうするの?」
「何とかして、治療する方法を探しましょ?」
「うん!!」

ティリカの声が明るくなった

「それじゃあ、今日はもう休みなさい」
「うん」

会話が終わったのか辺りは急に静かになった気がする

「ごめんね、ティリカ・・・」

ルティの声が聞こえる

「もう、どうすることもできないのよ・・・、私が死ぬのは必然・・・」

その声は表情を見なくても分かるような悲しみの声
たった一人肉親を残してしまうという、悲しさが伝わってくるようだ

「後何日この腕がもってくれるか・・・か・・・」

彼女の痛みは誰も分からない
肉体的な痛みだけではない、精神的な痛みもだ

自分達はやはり無力なのか、そう思ってしまう

何も力にはなれないのか、その気持ちが焦りを生む
だが、我々には何もしてあげることができない
せめて、彼女の傷を治すことができたら、力になれるのだが

戦場は無情にもそんな目をも摘み取ってしまっているのだ・・・
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by meruchan0214 | 2006-04-19 22:03 | カナシミノウタ

5話、無力

我々がルティと出会ってから既に1週間
徐々にではあるが、南へと下っている

「このままいけば、後5日で最南端か・・・」

そう、最南端まで着いたらそれ以上南に行きようがない
それまでに戦争が終わることは多分ない

だが、少しでも生き延びれる可能性を信じて向かうしかないのだ

ブゥゥゥゥン

飛行機の近づいてくる音がする
もう、倭国側にはこの島での戦術用戦闘機は残っていない
ということはこの音はイディア国の戦闘機である

「く、みんな急げ!!」

私達は民間人を誘導する
以前までなら、もっとそれぞれが自分勝手に動いていたが
今は統率も取れてきている、そのお陰ここ数日は負傷者は何名か出ているものの死ぬということはなかった

「大石さん、小岩さん、他の方々をお願いいたします」

ルティが一人前に躍り出る

「ルティ、いくらなんでも無茶だ!!」
「でも、私以外にできる人はいませんから」
「お姉ちゃん、私も手伝う!!」

ティリカもルティと同じく前へと出ようとするが、それをルティが引き止める

「ティリカはケガを負った人達の手当てを、私のほかにはあなたしかいないのだから!!」
「でも・・・」
「ティリカちゃん、ここはルティに任せるしかない」
「う、うん・・・」

自分はティリカを連れ防空壕へと走る
戦闘機がいつもとは違いかなり多い、確実に我々を殺すつもりできている

「これからはあなた達には見せられませんから・・・」

ルティは何かを小声で言ったみたいだが、自分には聞き取れなかった

ダダダダダダッ!!

辺りは爆弾の投下により火の海となり、機関銃の音が絶え間なく続く
戦闘機の狙いは我々よりも、ルティに定めている
当然といえば当然だろう、裏切り者で特殊な力を持つ彼女
即死以外ならどんなケガでも治してしまう、流石にちぎれた腕や足は再生しないが
ルティやティリカを殺してしまえば、それをできる人はいなくなる
それだけに他の者を見逃してでも殺すつもりなのだろう

「急げ!!みんな遅れるなよ!!」

自分達は防空壕に向かってひたすら走る
逃げることしかできない我々にとってこれしかないのだ

「くそ・・・」

胸の中の苛立ちを抑えるのに必死になる
この場においてあまりにも無力な自分が悔しい

何とか防空壕には着くものの、辺り一面燃え盛っており、まるで夜とは思えない

「無事で居てくれよ・・・」

自分にはルティの無事を祈るしかなかった




「みんな、無事に逃げたようね・・・」

私は空を覆いつくす飛行機を眺める

「私を殺す為だけにこれだけの数を使ってくるとはね」

彼女は少し笑みを浮かべる
まるで、これから起こることが楽しみであるかのようであった

「ここからはティリカにも見せられないからね」

私は手を両開きにし、その場に立ち尽くす

「闇の精霊よ、全てを等しき闇に、光照らすことのない闇を、その力を介抱し全てを飲み込まん」

詠唱が終わると辺りは燃えているというのに完全な闇に閉ざされる
もちろん、戦闘機も目視不可能だ、

ブウウウウウンン

ドガァァアアアアン

何かと何かがぶつかって爆発する音
それは金属音だったり、岩の音だったり様々だ

「ごめんなさい・・・」

私は殺してしまったイディア国の兵士達に謝る
殺したくはない、けれど殺さなければ私達がやられる

私だけが死ぬならこの命幾つでも捧げよう
でも、私にはまだ守らなくてはいけないことがある

「ハッ!!」

ダダダダダダ!!

暗闇に響く機銃音、多分乱射しているだけだとは思うが
しかし、それだけにどう飛んでくるか分からない

「この音は・・・まずい!!」

私は瞬間的に避けようとする

ダンダン!!

腕が千切れそうなくらいだった、何発か腕にもらったようだ
いや、正確には掠めただけだが、それくらい威力があるのだ

「痛みがない・・・か、かなり深いわね」

私は暗闇の中、布を引きちぎり自分の腕に巻く

「引き上げるまでは逃げるわけにはいかないわね・・・」

私のこれはそこまで大きな範囲をカバーできるものではない
下手に動くと見える範囲で狙い撃ち去れる可能性があるのだ

ブゥゥゥゥゥゥゥゥン

戦闘機の遠ざかっていく音がする

「何とか・・・か・・・」

私は血が流れ出る腕を押さえながら防空壕へと向かった

「そろそろ、正念場か・・・」

彼らの無事を確保するまでは絶対に死ねない
例え、この身が灰になろうとも、絶対に守ると誓ったのだから
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by meruchan0214 | 2006-04-19 00:53 | カナシミノウタ

4話、償い

朝、それは我々が外には出れない時間だ、
明るいと敵から我々の姿が丸見えで狙い撃ちに遭うからだ
だから、我々は朝から夕方までは防空壕に潜み、夜に移動する
そして、次の朝を迎える前に次の防空壕へと移動するのだ

「今日もなんとかやってこれたな」

我々は少しずつだか確実に南へと下っていく
鳩沢が死んだ時以外は死傷者は奇跡的になく順調に進んでいる

「だが、いつまでこれが続くかな・・・」

またいつ空からの攻撃が来るか分からない
だが、それを恐れていては逃げられない、死を覚悟して逃げないといけないのだ

自分は防空壕の入り口で近づいてくるモノはないか見張っている

「隊長、交代しますよ」
「あ、ああ、もうそんな時間か」

今は我々が交代で防空壕を見張っている
何かあればすぐに行動できるように待機しているのだ

「隊長は奥で休んでください」
「すまない、黒崎」

自分は黒崎と交代して、防空壕の奥へと引っ込む

「ん・・・、はぁ・・・」

女性の声がする、誰か怪我でもしたのだろうか
自分は寝床へと歩く、といっても実際寝れる時間は2~3時間といったところだが

自分が歩いていると、何人かの男達とすれ違った
男達はいかにも満足げに歩いている

私はこんな時になんでそういう顔をしているか分からなかった

そして、私は用意された寝床に着く

「あ・・・」

そこにはルティが居た、何か非常に焦っている感じだ

「あ、す、すいません、お休みですか?」

ルティが慌てて立ち上がる、何か様子がおかしい
いつもなら、もっと丁寧な彼女が慌てている
良く見ると少し衣服が乱れている、
もしかして、さっきの男達と関係しているかもしれない

「もしかして、さっきの男達に・・・?」
「あ、い、いえ、違うんです、関係ありません」

必死に否定するルティ、普段では絶対に見せないことだ
多分、男達に慰みものにされたのだろう、
いや、彼女の性格からいってされたというのは多分妥当ではない
自分から捧げたとの方がこういう状況は納得できる

「罪滅ぼし・・・ですか?」

彼女は黙ったままだ、図星なんだろう

「私が直接皆さんにできることはこれくらいしかありませんから・・・」
「そんなことはないのでは?あの力のほうがよっぽど・・・」
「でも、それだけじゃあ、私達の犯した罪は償えるものではないです」
「だから、自分の体を?」

ルティはコクンと頷く
その表情はいつもの彼女と違い、凄く儚げで寂しそうだ

「こんなことではダメだっと言うことも、分かってるんです、でも、一時的にでもいいから、戦争のことを忘れることができたらいいなと思って・・・」

彼女はニコリと笑う、だが、その表情はやはりいつもとは違う

「だけど、今、君は凄く寂しそうな顔をしている、本当に償いだけでやっているのか?」
「はい」
「私には、自分への戒めにも見える」
「・・・」

ルティは何も答えない

「自分一人で何もかも背負い込むのは辛いことだと思いますよ」
「・・・、大石さんって、何でもお見通しなんですね」
「そんなことはない、ただ今は君がそう見えただけだ」
「確かに私への戒めも含まれています、だから辛くても耐えれるんです」

背負うことで耐える、なんとも辛い話だ
彼女はどのくらい罪の意識に悩まされてきたのか想像もつかない

「私でも、できることがある、誰かを救えるなら、私はどうなっても構いません」
「でも、体を差し出すことが誰かを救うことになるとはならないのでは」
「あくまでも、体を差し出すことだけが救うわけではないんです、それを含めて全てを見て初めて私にとって救うことなんです」

思い込みが激しいというべきなのだろうか、
ただ、それくらいに彼女にとって我々を救うということに重大な使命なんだと感じているのだろう
ルティにはそこまで罪があるとは私には思えない
むしろ、罪があるのは私達軍人や国の上の方だと思う

「なんで、戦争なんてするのでしょうね・・・」

今の彼女を見ていると、自分たちまで寂しくなってしまう、そんな気持ちだ

「戦争をして、迷惑をこうむるのは関係のない人々だというのに・・・」
「だが、どちらかが勝ち、どちらかが負けない限り続くのが戦争だからな」
「でも、現にいまここにいる人たちのほとんどが関係ない人たちです、私達、軍人が戦争をしていなければ、普通に暮らしていたはずの人たちです」
「それはそうだが・・・」

いつの間にか彼女の表情はいつもの顔に戻っている

「私は自分にできることがしたい、辛くても、苦しくてもそれが私の罪なんですから」
「分かりました、私からは何も言いません」

多分、彼女を突き動かしてる信念は誰であっても曲げられない
それくらい、自分が罪を犯したと思っているのだ
皆がルティのような考えを持っていればいいが、ありえないのが人というものだ

「すいません、なんか変な話につき合わせてしまって・・・」
「いや、こっちが話しかけたことだから気にすることはないです」
「では、ゆっくり休んでくださいね、失礼します」

ルティは立ち上がると、寝床から去っていく
その後姿からはさっきまでの寂しそうな雰囲気は全くなくなっていた
出る直前、彼女は少し足を止める

「話、聞いてもらって少し嬉しかったです」
「貴方に妻子がいなければ、好きになってました」

最後のほうは良く聞き取れなかったが、彼女はすぐに去っていった

「償い・・・か・・・」

私は罪について考えていた、むしろ私の方が償いをしなければいけない
何人ものイディア人を殺し、今はそのイディア人に助けられて自分達では何も出来ない

「くそ・・・」

妙な苛立ちを覚えるが、私にはどうすることもできない
ましてや彼女の代わりなどできるはずもない

ただ、時間だけが過ぎていく

戦争はいつ終わるのか…

なにも分からぬまま明日へとしがみついている
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by meruchan0214 | 2006-04-17 22:52 | カナシミノウタ

3話、大人と子供

我々が南へ下り始めて既に2日が経っていた
これまでは特にコレといった襲来もなく極めて順調だ

「このままいければいいのだがな・・・」

襲撃がないとはいっても、戦争をやっているという事実には変わりはない
いつどこから弾が飛んでくるか分からない、そんな状況なのだ

「しかし、ずっと森の中を歩くというのも、嫌な感じだな」
「しょうがないだろ、小岩。戦闘機に見つかったら、一網打尽にされるからな」
「結局どこを行っても安全な場所はない・・・か」

出発時は50~60だった人間達はあちこちからの生き残りが合流し
既に80人を超えるくらいの大所帯となっていた

「見つかるのも時間の問題か・・・」

そう人数が増えれば増えるほど安全に逃げるというのは難しくなる
大人数ほど目立つし、動きも取り辛いからだ

「はっ・・・」

最後尾を歩くルティが何かに気付いたようだ

「皆さん、先に行ってもらえますか?」
「一体、どうしたんだ?」
「すぐ近くに倭国の人ではない気配がします」

ルティの言うことが外れたことは一度もない、
むしろ、彼女が予め危険を察知してくれていることで今まで何もなかったようなものだ

「追っ手は私が何とかしますから、大石さんは先導を」

本来なら逆の立場になるべきだろうが、ルティの方が何とかできる可能性が高いのは確かだ
だから、自分はルティの話すことに賛同するしかないのだ

「ティリカには、迷彩をかけるよう伝えておきます、では」

ルティは音もなくその場から立ち去った

「みんな、そのまま前進だ」

自分達はルティの言われたとおりにしか行動できない事が悔しかった
攻めてくるのはイディア国、我々を守ってくれるのもイディア国
なんとも皮肉なものだ

「さて、ここからどうするべきか・・・」

森はここで終わっている
ということは、見晴らしの良い平地を歩かなければいけないということだ
断然、今までよりも危険度は上がってくる

「行くしかないか・・・」

意を決したように我々は前へと進む

ジワジワジワジワ

夏の夜はこんな戦争中でも虫の声がする
そんな中で我々の逃避行は続く

「あ・・・」

ティリカが急に足を止め、何かを唱え始める

「みんな立ち止まらないで!!何とかあそこまで逃げ切って!!」

ティリカが叫ぶ、ティリカの指すあそことは防空壕の事だ
だが、悪魔の音は徐々に近づいてくるのが分かる

ブウウウゥゥゥゥゥゥン

何基ものエンジン音がする
空には戦闘機が3機、明らかにこちらを狙っている

「風よ、その力を持って全てを受け流さん!!」

ティリカが何かを唱え終えると、我々に何かが包み込む

「これで弾は当たりにくくなったから、焦らずに逃げて!!」

だが、一般人が戦闘機に襲われてあせらずにはいられない
みんな我先にと防空壕へと逃げ始める

ヒュウウゥゥゥゥゥゥ!!

辺り一面に爆弾が落ちてくる
だが、その爆弾はまるで我々を避けているかのように落ちてきていた

ドガアアアアアアァァァァァァン!!

爆風が撒き散らされる、視界は曇り前が見えずらい

「だめだよ、皆・・・!!」

ティリカが必死の先導しているが、それどころではない
一般人はとにかく逃げるのに必死だ

「あ、危ない!!」

鳩沢が急に走り出す、その先にはまだ5,6歳の子供が居た

ダダダダダダ!!

鳩沢目掛け機関銃が放たれる

チュチュチュチュチュン!!

ズドズド!!

ほとんどの弾丸はさっきのティリカのお陰か外れたが
何発か鈍い音がした

「鳩沢!!」

自分が近寄ると、鳩沢はすでに動かなくなっていた
頭に一発と胸に一発、即死だった
頭と胸からはドロドロとした血が流れ出ている

「鳩沢・・・」
「ウワーン!!」

どうやら子供は無事だったらしい
自分は鳩沢の守った子供を抱え、防空壕へと先を急いだ

「ハァハァ・・・」

防空壕に辿り付いた時はすでに戦闘機はいなくなっていた
ここまでこれた者達は70名ほど、鳩沢を含めた10名弱がさっきの襲撃で死んだことになる
だが、ティリカのあれがなければもっと多くの死者が出ていたはずだ
それだけでも、彼女達の力は偉大なのかもしれない

「ごめんね・・・」

ティリカが謝る、私は何故ティリカが謝っているのかが分からなかった

「あなたの部下を死なせちゃった・・・、いえ、それ以外に何人も・・・」
「いや、仕方がないことだ、それに君のあれがなければもっと死者が出ていたはずだ」

しかし、彼女は首を横に振る

「私のせいだよ!!お姉ちゃんに頼まれていたのに、みんなを救えなかった…」

絶対にみんなを救うというのは不可能だ、
確かルティはこう言っていた
『銃弾を防ぐことはできるが、機関砲や砲弾を防ぐことはできないと』
多分、我々が持っている銃の弾は何かしらの力で防ぐことはできるが、
それ以上の威力を持つものは防ぎきることができないのだ
良くても逸らすことが精一杯だろう、さっきティリカがしていたことのように

「だが、君の力で多くの人が救われたんだ、それは良いことだろ」
「うっ・・・」

ティリカは泣き出してしまった、全員を守ることができなかったのがそれだけ悔しいということだ、
彼女の悔しさに比べれば、我々のできることなど、蟻のようだろう

「とりあえず、後はルティだけか」

彼女がやられるというのはちょっと考えづらいが、もしもということがある
もし、彼女らがいなくなったら、我々が人々を守らなければいけないのだ

「とにかく、ティリカちゃんは奥で休んで、その力は体力を使うんだろう」
「うん・・・」

ティリカは大人しく従う、だがその言葉には今までの前向きな姿勢は感じられなかった

「鳩沢・・・」

自分より先に死ぬことが許せなかった、
だがそれよりも鳩沢が動けて、子供を守りに動けなかった自分はもっと許せなかった

「隊長、鳩沢は満足して死ねたと思います、子供を守れたんだから」
「ああ、そうだな・・・」

言える言葉が何も出てこなかった、かけてやる言葉が見つからなかった
だがそう思わなければ鳩沢の死が無駄になるそんな気がしたのだ




「はぁ・・・、はぁ・・・」

2時間ほど遅れてルティが到着した

「皆さん、ご無事でしたか?」
「いや、大体は無事だったが・・・」
「そう、ですか・・・」

ルティはそれ以上聞くようなことはしなかった、彼女も大体察しはついていたのだろう

「ティリカは落ち込んでいませんでしたか?」
「かなり落ち込んでいた、みんなを救えなかったとな」
「やはり、ティリカは私と同じ力を持ってるといってもまだ子供・・・ですから」

その通りだ、我々よりもいくら強かろうが、精神的にはまだまだ子供なのだ
分かっていてもそうするしかない、彼女の苦悩が分かる気がした

「とにかく、今夜は安心なはずです。大石さん達も休んでください」
「ああ、そうするよ、でもルティもちゃんと休まないと、後がもたないのでは?」
「私は大丈夫です、慣れてますから」

彼女はにっこりと笑う、精神的にもとても強い女性だ

「でも、ちゃんと休んでください」
「はい、大丈夫ですよ」

ルティはずっと笑顔のままだ、だが、彼女が笑顔を作る時は大体無理をしているときだ、
まだ、出会って数日ではあるが、彼女の行動は大体読めてきた

「俺が見張ってるんで、ルティさん休んでください」

意外な言葉がでたのは、小岩だった
あの面倒くさがりな小岩が自分からやるというのは珍しかった

「あ、俺も手伝います、ルティさんには命を助けてもらった恩がありますからね」

駒峰も自分から言い出す

「部下達もこういっていることですから、休んでください」

再三の自分達からのお願いが聞いたのか、ルティが折れたようだ

「分かりました、ではお言葉に甘えさせていただきます」

ルティは深々と頭を下げる

「でも、何かありましたらすぐ起こしてくださいね」

そういうとルティは防空壕の奥へと消えていく
我々はその姿をずっと見守っていた

「では、やるか」
「ああ、彼女達ばかりに負担はかけられないからな」
「気合いれてやりますよ!!」
「出来る限りのことはします」

我々はそれぞれ監視の位置につく
これくらいしか我々が手伝えることがないのだからしょうがないが、
これだけでも彼女の負担が減らせれるのなら、少し嬉しかった

しかし、我々の逃避行はまだ途中なのだ
これから先何人生き残るかは分からない
けれど我々は行くしかない、生きる為に未来を見るために行くのだ
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by meruchan0214 | 2006-04-15 22:26 | カナシミノウタ

2話、傷跡

防空壕での目覚め、相変わらず良く眠れた気がしない

カチャ、カチャ

自分が起き上がると、そこには少ないながらも朝食が置いてある

「あ、お目覚めですか?ここに皆さんの分の御飯置いておきますね」

今はただでさえ食料を確保するだけでも辛いのに、
わざわざ、我々の為に食事を用意してくれている

「いいのかね、大事な食料を配ってしまって・・・」
「大丈夫です、こんなことも想定して食べるものだけは確保してあるんですよ」

ルティは優しく微笑む、その顔付きはどことなく女神と呼ぶべきだろうか、
倭国の人間と顔付きが違うせいもあるかもしれないが、
それが逆に非常に神秘的であった

「といっても、誰も居なくなった所から拝借してきたものですから、決して良いことではないんですが、みんなが生きる為にはしょうがないですからね・・・」

確かに、こんな時に人の家の野菜を盗むなとか誰もいえないだろう、
みんなが生き残ることに精一杯なのだ

「では、私はあちらで他の皆さんと話がありますので」

ルティはそれだけいうと、自分達の傍から離れていく
気を使わせてしまっているのがよく分かる

「ん、んん~」

駒峰が目を開ける

「お、目が覚めたか」
「あれ、俺助かったんですか?」
「ああ、まさに奇跡としか言いようがないがな」

確かにあれは奇跡以外なんともいえない
言ったところで何があったのか完全に説明がつくはずもない

「これが俺達の御飯だそうだ、ありがたく頂戴しろよ」
「うお、白い御飯だ。こんなところで食えるなんて!!」

駒峰はお腹が空かせていたのか我先にと御飯を食べ始める

「毒が入っているかもしれませんよ」

黒崎がぼそりと喋る、まだルティのことを信用していないようだ

「毒が入っているなら、俺達が寝ている間に殺すだろう」
「そうかもしれませんが・・・」
「死んだらその時だ、その為に俺達は戦っていたんだろう?」
「うっ・・・」

黒崎が認めない理由も分からなくもないが、少なくとも彼女はそんなことをする人間ではない
自分達はとりあえず用意された御飯を食べることにする

「やはり、お米は上手いな」

何ヶ月かぶりの白米はとても上手く感じた、
ただ、炊いてあるだけなのにこれほどおいしいとは思わなかった

「大石、昨日彼女の言っていた、道というのはどうなったんだろうな」
「確か妹が掘っていると言っていたな、分かった聞いてこよう」

元々、食事が終わったらルティには話を聞きに行く予定であった
小岩に言われなくても、自分も同じ疑問を持っていたからだ

カタン

自分は食べ終わった食器を持ってルティの所まで向かった

ワイワイ、ガヤガヤ

まるで戦時中とは思えぬ活気の有様だった
今まで出会ってきた人たちは皆自分達が生き残る事に必死で互いを心配する余裕がなかった
だが、ここに居る人たちには活力がある、全てが一つにまとまっているという風だ

「あ、お食事が済みましたか?」

ルティがこちらに気付いたようで話しかけてくる

「ああ、久しぶりに白米なんか食べさせてもらったよ」
「それは良かったです、今日はいよいよ抜け道から撤退を始めますので」

彼女の言い方を察するにもうすでに抜け道は完成しているらしい

「抜け道というのは一体どういうもので?」
「そうですね・・・、とりあえずここから南へと逃げる予定です」

南へ・・・確かにイディア軍は北から徐々に侵略してきている
当然といえば当然の選択だろう

「ただ、私達は歩くしかないので、被害は少なからず出ると思います」

それはそうだ、北から来るといってもそれは地上部隊が制圧しながらくるだけであって
飛行機などが飛んでこないわけではない

「君達の力では何とかならないのか?」
「私達の力はそんなに強いものではありません、確かに銃弾くらいなら防げますが、戦闘機の機銃や砲撃はとても防ぐことはできません」

いくら不思議な力があるといっても万能ではないらしい
言われてみればそこまで万能であるならば、
ここを制圧するにしても、彼女一人で十分事足りるはずだ

「まあ、何とかなるよ、私が居るんだもん!!」

不意に声がする
その声に振り向くと、ルティを小さくした感じの女の子が居た

「ティリカ、準備は整ったの?」
「もちろん、バッチリだよおねえちゃん」

ティリカと呼ばれた少女はグッと親指を立てる

「このこが君の妹さん?」
「はい、ティリカ挨拶しなさい、こちら、倭国の軍人さんで大石武さん」
「は~い、私の名前はティリカ・ヒュリスだよ」

元気イッパイの女の子、まるで戦時中だということを吹き飛ばしてくれそうな元気だ

「では、出発はいつごろに?」
「御飯が終わり次第すぐに出発予定です」
「分かりました、我々も一緒に行きましょう。何かあったら、私達が敵を食い止めます」

自分が言うと、ルティは暗い表情を浮かべる

「命を投げ捨てるようなことはしないでくださいね」

それだけ言うと、ルティはそそくさとその場から立ち去ってしまう

「お姉ちゃんはね、これ以上誰かが死ぬところが見たくないんだ」

ティリカがルティの気持ちを代弁するかのように話しかけてくる

「お姉ちゃん何でも背負い込んじゃうから、今回の事も自分の責任だって感じてる。だから、例え軍人さんでも、死んでほしくないんだよ」
「そう・・・か・・・、そういえばティリカちゃんは何でここに?」
「ん~、勝手についてきたって言っちゃえばそれまでだけど、私達の力を見込まれてっていったほうが正確かな、イディア国にしてみれば、私達が裏切るなんて予想もしてなかっただろうけど」

そうだ、今まで忘れていたが彼女達は祖国を裏切っているのだ
仮に私達が助かったといっても、彼女達に待っているのはどちらにしても処罰が待っているはずだ

「後悔はしていないのかい?」
「後悔するくらいなら、最初から裏切ってないし。私は私のやりたいことをするの、私は軍の関係者じゃないし」

前向きな強い子だ、ルティにも通じる優しさを持っている

「ただ、お姉ちゃんは軍の人間だから、戻ったらたぶん銃殺刑だけどね」

とんでもないことをサラリと言う
だが、本人が望んでやっている以上仕方のないことかもしれない

「ま、ここに来て一番驚いたことは、私と同じくらいの年でもう戦争に参加させられてる子が一杯いたっていうことかな」

確かに倭国ではすでに兵員が尽きかけており、学生のまま兵隊にさせられたり医療へと回されたりされていた

「ここに逃げてきた人達だって、半分くらいはそんな人達だった。だから、私も精一杯できることはやろうと思ってるの」

彼女の言葉には重みがあった、あっちへこっちへと命令を出す上とは違う
ここでの悲惨な現状を見てきた彼女達だからこそいえる言葉かもしれない

「そんなわけだから、兵隊さん達も私達が守るから、命の無駄はしないでね」

急に明るく喋りだす、私達が守るから…本来なら自分達が言わなくてはならないセリフ
それをこんな自分よりも一回りも幼い子供が言っているのだ

「んじゃ、後みんなの準備手伝ってくるから、また後でね」
「あ・・・」

自分は何もいえなかった、正直私達よりよっぽどイディア国の彼女達の方がここの人たちを守っている、何よりも信頼がある
自分達は何をやっていた、いや自分達の問題じゃない、国自体の問題なのだ
負けるということを隠し続け、今もここでは悲劇が繰り返されている
意地で何を得るというのだろうか、ただ尊い命が失われていくだけではないのか

自分は大人しく仲間のところへと戻るしかなかった

「隊長・・・」

黒崎や鳩沢がすぐそこで待っていた

「話、聞いていたのか?」

自分が聞くと二人はコクンと頷く

「彼女は信頼できる、我々なんかよりもずっとな」
「そうですね・・・、俺達の小ささを実感しました」

死ぬ覚悟、並大抵の覚悟ではない
戦争で死ぬことが本望だと思っていたが、そうでないと気付かされた
ルティに待っているのはなにが起ころうとも死しかないのだ
つまり彼女は自分の死と引き換えに我々を守ろうとしているのだ

「そこまでする必要なんかないのに・・・」

鳩沢の言うとおりだ、イディア国の軍人なら軍人らしくすれば良かった
多分彼女もそう思っているかもしれない、
だが、妹のティリカはこう言っていた
『今回の事も自分の責任だって感じてる』と、
今回のこともと言うことは前にもあったのだろうか、
少し疑問が残るが詮索できる身分でもないし、するつもりもない

「とにかく、もうじき出発だ、準備をしよう」

自分達は出立する準備を始める

「皆さん、揃っていますね?」

ルティがこの防空壕に残っていた人たち全員を見渡す
その数ざっと数えても50~60人はいる

「これから、まだ戦火の少ない南へと移動します。必ずあなた方は私達が守ります。だから信じてついてきてください」
「ルティさんを信じない奴なんかいないぜ」
「そうだ、ルティさんがいなければ死んでいたんだ」
「頼みますぜ!!」

「ありがとう、皆さん…では、これより出発いたします!!」

こうして我々は南へと向かい歩き始めた

これからが本当に生き残る為の行軍が始まる
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by meruchan0214 | 2006-04-14 21:40 | カナシミノウタ

1話、暖かさは誰からも

ザァァァァァァァ

「はぁはぁ・・・」

雨の中森林地帯を駆け抜ける兵隊達
本隊とも離れ離れになり、必至に逃避行を続ける

この戦争は負ける

頭の中では分かっている、だが国への忠誠を捨てるわけにはいかない
自分を信じた部下は一人減り、二人減り、
ついには自分を含めたったの5人になってしまった

「大石隊長!!駒峰の体調が思わしくありません!!」

部下の一人が叫ぶ
だがここで立ち止まるわけにはいかない、
すぐ後ろにはイディア国の軍人達が迫ってきているからである

「鳩沢!黒崎!しっかりと駒峰を支えてやれ!!」

本当は、駒峰が助からないことは分かっていた
敵の砲撃の破片が突き刺さり、内臓が見え隠れしているのだ
だが、生きている限りは見捨ててはおけない、これ以上誰一人として置いていきたくなかった

「お、おれの事はいいっすから、みんなで先に・・・」

駒峰が辛そうな口調で話す

「馬鹿やろう、けが人は黙っていろ!!すぐ治療できるところを探してやるからな!!」

どこかに隠れられる場所はないか、必至に走る
この辺りは予めこの土地の者が何個か防空壕を作っていたはずだ
そこにいけば、せめて痛み止めくらいはあるかもしれない
痛みだけでも楽にしてやりたい、そう思っていた

「おい、大石!!あそこに防空壕があるぞ!!」

先を走っていた小岩が叫ぶ

「よし、あそこまで頑張れよ・・・」

自分達は必死に防空壕まで走っていった



「ふぅ、ふぅ」

やっとの思いで防空壕の前までやってきた
中からはたいまつの光が漏れており人の気配がする

「すまない、誰かいないか?怪我人が居るんだ」

すると、声に気がついたのか人が向こうからやってくるのがわかる

「怪我人がいらっしゃるのですか?」

自分達は出てきた人間を見てびっくりした、
何故なら敵国であるはずのイディア国の人間が目の前にいるのだ

「くそ、ここにはもうイディア国に抑えられていたのか!!」

黒崎が女に向かって銃を向ける

「待ってください!!そこの方は危ないのでは?だったら先にするべきことがあると思います」

確かにその通りだ、この女が何者であれ駒峰を何とかしてやりたかった

「銃を降ろせ、黒崎」
「しかし!!」
「いいから、降ろせ!!」

自分の言う言葉にしぶしぶ従う黒崎

「では、その方をこちらへ」

とにかく、自分達は彼女の案内に誘われるがままに行くしかなかった
もしもここがイディア国の人間に抑えられていたとしたら、
自分達はここで死ぬことになるだろう、
だが、自分の命を差し出せばもしかしたら他のものはあるいは・・・
そう思っていた

「さ、そちらに寝かせてあげてください」

病室らしき部屋にくるが、その部屋には包帯がいくらかある程度で
それ以外のものは一切見受けられなかった

「だめか・・・」

自分は駒峰に対して何もしてやれなかったという無念の気持ちで一杯になった
だが、次の瞬間、奇跡が起きた

「我、生命の精霊と契約せし者、我が契約においてかの者の傷を癒さん」

女が言葉を発するとその手が輝きだす
その手を傷口にかざすとみるみるうちに傷が塞がっていく

「これは、幻でもみているのか!?」

5分くらいだったであろうか、女が手をかざし終わると駒峰の傷はほぼ完治していた

「ふぅ、この方はもう大丈夫です。明日にでもなれば目を覚ますでしょう」

とても人間業とは思えない力、だが彼女が大切な部下を駒峰を救ってくれた恩人であることは確かであった

「すまない、恩に着る」
「いえ、元はといえば私達のせいですから・・・それに、私がいくら人を治せる力を持っていても全員はすくえません・・・」

彼女は暗い表情を浮かべる
彼女には彼女の気持ちと言うものがあるのだろう

「でも、なんでイディア人であるあなたが我々を助ける?」

もっともな疑問をぶつけてみる
仮にも今進行形で戦争しあっている国同士だ
それを敵国の人間を介抱したということであればただでは済まないだろう

「私の目の前で誰かが死ぬなんてのは見たくないんです・・・」

彼女の表情は暗いままだ

「私も元々は兵士としてやってきました、でも、人種が違うからといって殺しあったりするのはおかしいと思うんです、だから・・・」

そこまできて彼女は言葉を閉ざしてしまう
だが、多分それだけじゃない、自分の本能がそう探知する

「この国が負けるから、これ以上の犠牲は無意味だからとは言わないんですか?」
「隊長!!一体何を倭国が負けるなんて!!」

彼女はハッとした顔をする

「分かっていらっしゃるんですね、でも何でそこまで分かっていながら戦争をするんです?」
「確かに、負け戦と分かっていて戦うのはおかしいが、私にも信念と言うものがあってね」
「・・・、皆さんそう言うのですね・・・、でも、命を投げ捨てるなんて事をしないでください」

彼女は懇願するように私に問いかけてくる
自分とは関係のない国、敵国である私達に対してだ

「一つしか・・・一つしかないんです、それをこんな戦争で不意にするなんて・・・」
「奇麗事を!!だったらお前達が戦争をやめればいいじゃないか!!」
「黒崎!!黙っていろ!!」

彼女はうつむいたままだ、確かに勝ちを確信しているからこそ言えることかもしれない、
だが、それだったら関わらなければいいだけだ、そうすれば勝手に戦争は終わる

・・・・・・・・・・・・

しばらく沈黙が続く、だが彼女がそっと口を開いた

「そうですよね、確かにその方の言うとおりです。でも、事は既に私個人でどうにかなる問題でもないし、あなた達が何をしてもどうにかなる問題でもないんです」

確かに個人が何かを言って終わるなら戦争なんて起きるわけがない

「でも、私の力によって誰かを救えるなら救いたいんです。例え奇麗事と呼ばれたとしても」

目には涙が溜まっている、泣かないように必死なんだろう
彼女の気持ちに偽りはない、気持ちが篭っている

「あ、ルティさんを泣かしてる!!」

自分達の会話を打ち切ったのは子供の声だった

「ルティさんをいじめるな~、兵隊さんでも許さないぞ」

子供が騒ぎ始める、すると火事に溜まる野次馬のように人が集まってくる

「ルティさんを泣かせたって!?」
「例え倭国の兵隊であろうとも、ルティさんに手を出すのは許さないぜ」
「ここはルティさんが居てこその場所なんだ」

集まってきた人たちは皆倭国の人間達
だが、皆がルティと呼ばれた女性、すなわち今私の前に居る彼女を庇っている

「皆さん、何でもないんです、別に何かされたわけでもないです」
「そうかルティさんが言うんだったらしょうがない、でも何かあったらすぐ呼んでくれよ」

集まってきた人たちはみな散り散りに去っていく

「何で、こんな奴を庇うんだ・・・」

黒崎はまだ不服そうだが、私達を助けてくれたことには変わりはない

「すまない、だがずっとこのままと言うわけにもいかないと思うのだが・・・」

ルティはコクンと頷く

「はい、今、ここから裏手にでる道を掘っています。多分明日にでも開通するでしょう」

道を掘る、なんとも気が長い話だが、明日にでもというのは意外だった

「私の妹が道を掘っています、ティリカというのですが、私と同じ力を持っています」
「そうですか、あ、自己紹介が遅れました、私、倭国第15小隊隊長 大石武と申します」
「私の名前はルティ・ヒュリスと申します、ルティとおよびください」

ルティは非常に答えてくれる

「おい、お前達もだ」

自分にどやされ、私達の部隊全員にそれぞれ自己紹介させる

「よろしくお願いします」

深々と頭を下げるルティ、本来なら頭を下げるのはこちらの方かもしれない

「今日はゆっくりお休みください、入り口は私が見張っておりますので」

そういうと彼女は病室の外へと出て行った

「隊長、あの女信じられますか!?」

黒崎と鳩沢が聞いてくる

「信じられると思うぞ、あれはマジだと思う」
「小岩の言うとおり、彼女は信頼に値する人物だと思う」
「そうですか?今も外を見張ると言っておいて俺達を捕まえる気かも」
「だが、駒峰を救ってくれたのは確かだ、信じるしかあるまい」

自分の言葉にしぶしぶ応じる、確かに普通の倭国人なら正常な反応だろう
むしろ、私や小岩の方が少数派の意見だ

だが、本当に私達を売る気なら、あそこまで人望は集められないだろう
それこそが私が彼女を信頼する気持ちにさせたものであった

「とにかく寝るぞ、彼女を信じるんだ」

こうして、私達とイディア国の女ルティは出会った
この戦争の果てに何があるのか分からぬまま…

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by meruchan0214 | 2006-04-14 00:17 | カナシミノウタ