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2夜、変わる日常

夜も更け静けさが支配する頃
それは変わり始めていた

キイィィィィィン・・・

真の耳に何かおかしな音が聞こえる

キイィィィィン・・・

聞こえているというのはおかしい、頭に響いている感じだった

ガバッ

あまりに気になるので布団から起き上がる真
だが、それは一向に鳴り止む気配が無い

「一体、なんなんだ・・・」

真が悩んでいても、頭の音は止まらない
ふと、机の上を見てみると、千夏からもらった宝石が輝いているのが見えた

「なんだ・・・?」

宝石は淡い赤色の光を放っており、真の目を魅了する
真はそれを手にとってみると、それの光は真の中へと吸い込まれる

「暖かくて心地いいな・・・」

しばらくじっとしていると、いつの間にか頭の中で鳴っていた音は消えていた

「これが、呼んでいたのか?」

宝石をじっと見つめる真

ガシャアアアアアアン!!

急に窓ガラスが割れ何かが飛び込んできた

「ギルル・・・ソイツヲ・・・ヨコセ・・・」

何とか聞き取れる言葉でこの宝石をよこせといっているようだった
明らかに人間とは違う異形の生物、真は驚愕するしかなかった

「ヨコセ・・・」

ジリジリと近寄ってくる生物、腕は刃のように鋭い

ヒュン

真の目の前を掠める腕、その後に髪の毛が数本パラパラと落ちてくる

『夢じゃない・・・』

全身から冷や汗が湧き出てくる
このままでは殺される、見たことも無い化け物に殺されると思った

「ギルル・・・」

ヒュン!!

再び腕が振り下ろされた時、宝石がひときわ激しく輝きだす

「うわ!!」

ドガアアアアアアアン!!

その赤い光は生物に炸裂し、爆発を起こす
化け物は壁際まで吹っ飛ぶがまだ息があるようだった

「ジャマ・・・スルナラ・・・コロス・・・」

よろよろと立ち上がる化け物、そしてジワジワとにじり寄ってくる

ダン!!ダン!!ダン!!

3発の爆発音、テレビで聞いたことがある、拳銃の音だ

「ギュアアアアアアア!!」

化け物が叫び声をあげる、良く見ると両腕と腹から緑色の液体が流れている

「ギリギリセーフってところかな・・・」

どこかで聞いたことがある声だった

スタッ・・・

割れた窓から入ってきたのは沖原千夏だった

「大丈夫、篠原君?」

千夏が声をかけるが真には今何が起きているのか理解するのが難しかった

「ガアアアアア!!」
「っと、先にこいつをやるのが先ね・・・」

千夏は腰のホルダーから2丁の拳銃を取り出す

「これでも、喰らいなさい!!」

ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!

千夏の放った弾丸は確実に化け物の急所を狙い撃ちする

ドサッ・・・サァァアアアア・・・・・・

倒れた化け物はそのまま灰に帰っていく

「ふぅ、これで一安心かな・・・」
「一体、何がどうなってるんだ・・・」

千夏が真に近づく、真は腰が抜けていて立つことができなかった

「ごめんね、昼間渡したの間違えちゃってさ、危険な目に遭わせちゃったね」

千夏は申し訳なさそうに謝る

「ん~・・・、昼間は話さなかったけど、もう隠そうと思っても無駄だよね」
「とにかく、あんな化け物がいるとは思わなかったけどね」

大分落ち着いてきた真、状況の整理も大体ついたようだ

「とりあえず、宝石を返してもらえるかな?」
「これかい?」

真は宝石を千夏に手渡す、すると千夏は変な顔をする

「あれ、これ反応した後がある」
「あ、それはさっき僕を守ってくれたんだ」

真が喋ると、今度は驚きの表情を浮かべる

「えーっ!!じゃあ、篠原君も適合者なの!?」
「適合者・・・?」
「偶然って何て素晴らしいのかしら、あでも、まだ協力してくれると決まったわけじゃないか・・・」

喜んだり、落ち込んだりと色々忙しい千夏
真はというと、その千夏に全くついていけないようであった

「あの・・・千夏・・・さん・・・?」
「あ、ごめんごめん、とにかく、明日詳しい話するから、リトルガーデンって喫茶店知ってる?」

リトルガーデンはこの辺に住むものなら大体は知っている有名な喫茶店である
上手い、早い、安いをモットーとしており、常連客も多い
真も何回か行ったことはあるが、いつも満席状態であった

「うん、知ってるけど」
「んじゃ、話は早いや、明日の・・・そうだな~・・・6時くらいにお店で待ってるから」
「あ、うん」
「それじゃ、また明日~」

千夏はフワリと窓から飛び降りた

「あ、壊れた窓・・・」

割れた窓を見て呆然とする真
どうすればいいんだろうと、悩むがどうしようもない

「ごっめ~ん、忘れてた」

ヒョイっと窓から再び千夏が入ってきた

「隆泰さんから、借りてきたこれをつかって・・・」

千夏が何かをばら撒くと呪文らしきものを唱え始めた

「縁!!」

呪文を唱え始めると、まるで何事もなかったかのように部屋が元に戻る

「これで大丈夫っと、じゃあ今度こそじゃあね~」

千夏は窓を開けてまた飛び降りて去っていた

「・・・・・・・・・・」

どういう反応をしていいのか分からない真

「何か疲れたな・・・」

とりあえず休むことにした
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by meruchan0214 | 2006-04-30 23:58 | LittleGarden

43、家族の思い

家族との一日が終わり、私は林さんの家へと戻った
まだ名残惜しいが仕方がない

「おかえりなさい、どうだった?」
「楽しかったですよ、なんか凄く懐かしかったです」

実際、私が妖になってからまだ4ヶ月ほど
だけれど、私には凄く長い時間妖だったきがする
それほど、私の生活に妖というものが溶け込んでいる

「あ、そうそう、これなんか妖からもらったんだけど、記憶ある?」
「鮭・・・?」

机の上に置かれた、鮭
はっきり言って何がなんだか分からない

「半魚人らしき妖からだったんだけど」
「半魚・・・う~ん・・・」

記憶にない、そもそも仕事中に妖を助けたこともない

「ん~・・・、全然記憶にないです」
「そっか、ならいいんだけど、どうしましょうかね、この鮭」
「どうしましょう?」

悩む私と林さん、結局しょうがないので食べることにした
まあ、本当にただの鮭なのかが少し怪しかったけれど
食べてみると、新鮮で意外においしかった

「ふぅ~、食べた食べた・・・」
「それで陽子ちゃん、今後のことだけど・・・」

きた、分かっていたことだ

「一緒には暮らせないと思います、私が居ることで家族に迷惑がかかるかもしれないし」
「なるほどね・・・」

私なりに考えた結果だった、妖と人間が一緒に暮らせば少なからず危険が襲うのは間違いない
でも、心の奥では一緒に暮らしたいという気持ちがあるのも確かではある

「本当は、一緒に暮らしたいけど、私は妖ですし、それに今は林さんと一緒に居た方がいいんです」

この言葉に嘘や偽りはない、家族も大事だし林さんも大事である

「そう・・・、それで家族には何ていうの?」
「分かりません・・・、妖の事を言うわけにもいかないし・・・」
「それはそうだけどね、家族とはなれて私と暮らすならそれなりの理由が無いと」
「下宿・・・、微妙ですね」
「そうね、家も近いって言ってたし」

悩めば悩むほどいい案が思いつかない
いっそのこと、本当の事を家族に言った方がマシな気がしてきた

「本当の事を言っちゃう・・・とか・・・?」
「ん~、それもありといえばありだけど・・・」

意外な返答だった、林さんだったら、『絶対にダメ!!』とか言いそうな気配だった

「例えばさ、妖と言っても、良いイメージを持たせればいいわけだから、そういった場合、陽子ちゃんが妖だとしても、あんまり拒絶されないでしょ」
「あんまりってのが気になりますけど・・・確かにそうですね・・・」
「まあでも、それだけだといけないから、そうね・・・芝居でもしてみる?」
「芝居・・・?」
「うん、まあ、詳しい話は隆泰君の所にいきましょ」

こうして、私達は隆泰君の所へ向かうこととなった

「芝居をする?」
「ええ、悪い案では無いと思うんだけど・・・」
「確かに前例はあるから、不可能では無いといえば無いけれど」

隆泰さんは少し考えているみたいだ
前例があるというのは聞いたことなかったが、あるなら少しは希望が持てる

「でも、最悪妖に対して完全に拒絶反応起こすかもよ?」
「それは、そうかもしれないけど・・・、でも、このまま黙っているわけにもいかないみたいだし」

林さんが隆泰さんを説得してくれている
隆泰さんは最悪の事態を想定して、話をしているみたいだ
成功すればいいが、失敗すれば大変な事態になる可能性があるのは私にも分かる

「家族の絆が深ければ大丈夫、夕子ちゃんもそうだったでしょ?」
「そうだけど・・・、陽子ちゃん」
「はい?」
「家族を信じられるかい?」

信じられる、果たしてどうなのだろうか、まだ今日1日あっただけの家族
でも、まだ一緒に居たいと思った
会う前なら信じられなかったかもしれないが、今なら信じられる
それだけの暖かさを今日一日で教えてもらった

「はい、信じられます」
「そうか、分かった、協力しよう」
「それじゃあ、早速どうするか考えましょ」

早速、芝居に向けての作戦を練ることにした
上手くいってほしい、いや、成功させなくてはいけない
家族と言う絆が切れてほしくない、そう思っていた

私はすでに人間では無いけど、絆は切れないと心の中で思っているのだ
だから、これは成功させなくてはいけない
私のためにも、家族の為にも・・・
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by meruchan0214 | 2006-04-30 10:33 | 妖の調べ

42、見守るヒト

「この分だと大丈夫そうね」
「そうですね」

遊園地から少し離れた樹の上から、見守る私と夕子ちゃん
とりあえずは何事もなさそうで安心した

「陽子ちゃんはこれからどうするんだろうなあ」
「一緒に暮らすのは難しいと思います、妖と人間ではすむ世界が違いますから」
「でも、夕子ちゃんの妹は人間よね?」
「そうですけど・・・」

夕子ちゃんには朝子という妹が居る、もちろん血が繋がっているはずは無い
妖だということは、朝子ちゃんも納得の上ではあるが、
それまでにいたるまでが色々と大変だったらしい

「!!」

感じている気配が一つ、人間ではなく妖の気配
その妖の注意が向いているのは私達ではなく、陽子ちゃんの方であった

「様子を見に来て正解だったわね」
「そうですね、彼女の家族水入らずは邪魔させたくありませんからね」

私達は樹の上からふわりと舞い降りる

「さ、いきましょうか」
「はい」

私達は音もなく走り出す
それは人間には知られることのないように
妖という存在を表に明かさない為である

傍までやってきたが、妖は陽子ちゃんを見ているだけでこちらには気付いていない

「何してるのあなた?」
「ギョ!!?」

妖は驚いた顔をすると、慌てて後ろに後ずさる
敵意・・・は感じられない、むしろ怯えているみたいだ

「陽子ちゃんに何か用なの?」
「ギョギョ・・・、あの人の知り合いですか・・・?」

こんな内気な妖は初めて見る、見た目は半魚人っぽいが・・・
すると、半魚人は顔を赤らめて、何かを差し出す

「これをあの人に渡してください!!」

差し出されたものは、鮭だった・・・

「・・・」
「これで失礼します!絶対に渡してくださいね!!」

バシャバシャバシャ

妖は走り去っていった

「何者だったんだろう・・・」
「さあ・・・」

私達はあいた口が塞がらなかった

「とりあえず、これ、どうしようか・・・」
「渡してくれといわれたのですから、渡すべきなのでは?」

後に残された鮭だけがただ空を見つめている

「あ、終わったみたいですよ」
「え、あ、ほんとだ」

変なやり取りがあったせいで完全に見守ることはできなかったが、
無事に終わったからよしとしよう

「陽子ちゃんより、早く家に帰らないと・・・」

私は家に向かって歩き始める

「それよりもどうしよう、これ・・・」

片手には鮭
はっきり言って恥ずかしい、生の鮭がただぶら下がっている

「まあ、陽子ちゃんに渡しますか・・・」

私は鮭を家に持ち帰った

あの妖の正体が気にはなるが、悪い妖ではなさそうだった
とりあえず、陽子ちゃんに聞けば分かる
そう思い、私は家へと帰った

ただ、帰る時は視線がちょっと痛かった
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by meruchan0214 | 2006-04-29 22:17 | 妖の調べ

41、思いは馳せる

結局、遊園地に落ち着くことになった私達
普段あんまり来ないから楽しくはあるが

「陽子おねえちゃん、次あれにいこ」
「はいはい、ちょっと待っててね、今いくから」

緊張も取れ大分家族とコミュニケーションもとれるようになってきた

「ここのお化け屋敷凄い怖いんだって」
「へ~、じゃあ、入ってみようか」

私自身、こういうのは得意というか、怖くはない
ましてや、自分が既にお化けみたいなものだから、所詮作り物だ

「うう、怖いなあ・・・」

牧子は自分で行きたがった割にはかなり怯えているようだ

ジャリ

「ヒッ!!」

ちょっとした音に牧子は敏感に反応する
その様を見るのはすこし楽しかった

バアアアアア!!

「キャアアアアアア!!」

牧子は思いっきり叫び声をあげる、私はお化けよりも牧子の声に驚いた
ただ、備え付けの窓が開いて、そこには生首?が覗いている

「ほら、大丈夫だから、ね」
「う、うん」

かなり逃げ腰の牧子、入ったことにかなり後悔していそうだ
私の傍にべったりとくっついていて離れようとしない

「前もこうだったんだっけ・・・」

何となく頭に思い浮かんでくる昔のこと
昔から私はこういうことには強いが、下の弟や妹はからっきしだめだった
肝試しなんかやった日には、みんなが私の布団に潜り込んできたこともあった

「懐かしいな・・・」

徐々にではあるが、昔の記憶が取り戻されていく
まだはっきりと思い出したわけではないが、少しずつ染み渡っていく感じである

「陽子おねえちゃん、離れないでね」
「分かってるわ、お姉ちゃんが傍に居てあげるから、大丈夫」
「うん」

私はそっと牧子の手を持ってあげる

「ひゃっ!!」

牧子は私の手の冷たさに驚いたようだ
自分でも手を握るまで、手が冷たいことを忘れていた

「これ、お姉ちゃんの・・・手?」

やばい、咄嗟になにかごまかせるものがないか辺りを見回す

「お姉ちゃ・・・・」

牧子は自分の肩に乗っているものを見て言葉を失った

「セーフ・・・」

内心かなりドキドキものだったが、間に合ったようだ

「う~ん・・・」

バタン

牧子は自分の肩に乗っていたものを見て倒れてしまった
流石に作り物とはいえ、生首を目の前に持ってきたのは衝撃すぎだったかもしれない

「ちょっとやりすぎだったかな・・・、よいしょっと」

私は気絶しているうちに牧子を抱きかかえお化け屋敷を出る
暖かい、私と違って体温を感じる
生きているということを牧子の体から伝わってくる
でも、私は既にそんなものはない、死体の体なのだ

だが、このこ達のお姉ちゃんであり続けたい、そう思っていた

「あら、牧子は寝ちゃったの?」
「お化け屋敷のお化けを見て気絶しちゃって・・・」
「あらあら、牧子は昔から苦手なわりに、こういうの好きだから」
「うん・・・」

母親と話す時間、なんだか懐かしい

「あなたが居ない間、みんなで一生懸命探したのよ、警察に何度も連絡したり」
「うん、ごめんなさい」
「あなたが生きていてくれて本当に良かったわ、半分諦めていたから」

言われるたびに心が暗くなる
『生きていた』と言うことはない、私は既に死んでいる
たまたま、妖になったというだけのことだ

「でも、私はまだ全然思い出せなくて・・・」
「いいのよ、そんなこと、少しずつ思い出していけば、これからは一緒なんだから」

一緒・・・、そういえばそうだ、今の今まで考えていなかった
いや、考えようとしなかったというのが正しいのかもしれない
家族が見つかったのなら、一緒に暮らそうとするのはごく自然なことだ
だけれども、私には今の生活しかできない
もう、再び元の家族と一緒に暮らすなんて事はできないのだ

「あ・・・」
「まだ、無理をしなくても大丈夫よ、私達はあなたが治るのを待つから」

待つ、それはきっと徒労に終わってしまうだろう、
私と家族とでは住む世界が既に違うのは確かだ
けれど、何故か心が揺れ動く、普通の生活を自分望んでいるのかも分からない

「ごめんなさい」
「何謝ってるの?謝ることなんてないわよ」

謝ることしか出来なかった、もうあの時みたいな家族の団欒は望めないのだ
自分はもう人間じゃない、妖、違う生き物なのだ

だが、気持ちだけは膨らんでいく
今の生活は大事だ、でも、家族とも一緒に居たい
ただ、ただ、思いだけが衝突しぶつかり合っている

もう一度、あのときのように・・・
どんなに祈っても時間は戻らないものなのだ・・・
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by meruchan0214 | 2006-04-28 22:36 | 妖の調べ

1夜、始まり

ある晴れた昼下がり、真は特に何かあるわけでもなく街をぶらついていた
特に目的があるわけでもなく、ただぶらついている
やることがないのだ、部活にも入らず、ただダラダラと過ごす毎日
退屈な時間だけが進んでいく

「あ~、何か面白いことでもないかな~」

口で言っても、そうそう面白いことがあるはずもない
アルバイトも考えたが、何かが違う、それがアルバイトをやる気にはさせないのだ

「やめてください!!」

裏路地の方から女の人の声がする

「申し訳ないが、我々と一緒に来てもらおうか」

男の声もする、どうやら女の人が男に絡まれているらしい

「どうしよっか・・・」

悩む真、今目の前で起きていることに巻き込まれたくは無いが
様子は見たい、自分の安全が確保されているのならば行ったであろうが
もしも、巻き込まれたら嫌だなと考える

タッタッタッ

こちらに近づいてくる足音、薄暗いビルの影からその姿が徐々に明らかになる

「あれは、うちの学校の制服・・・というか、どこかで見たことあるな・・・」

近づいてきている女の子は真の通っている高校の制服、
更に見ると、その子は同じクラスの女の子だった

「確か、沖原 千夏さんだっけ、誰かに追われているみたいだけど」

千夏の後ろからは黒服の男が数人
だが、人通りの多いところにでたせいか、千夏を追うのをやめる

「ふぅ~助かった~」
「あの、沖原千夏さん?」
「えっ!?」

真が千夏に声をかけると、千夏は驚いたような声をあげた

「あ、な~んだ、篠原君か~って、もしかして・・・さっきの見た?」
「見たっていうか、あんな大きな声を出してたら気付くと思うけど・・・」
「う~・・・、まあ、いっか、今見たこと気にしないでよね」
「気にしないでよって、凄い気になるんだけど」

気にしないでといわれて余計に気にするのは人間の心理だろう
だが、漫画とかで見るような黒服に追われているのを実際に見たのは
真にはかなり衝撃的な出来事であった

「ん~、とにかくなんでもないから、ね?」

ね?といわれても納得できるはずもない
千夏にはどうしても聞かれたくない事情があるらしい

「分かった、じゃあこれあげるから、今見たことは忘れてね」

千夏は真の手に何かを握らせ走り去っていった

「なんだったんだろう?」

真は握らされた手をみると、なにやら宝石のようなものだった
赤く透き通った石、ルビーに近いようだが少し違うようだ
なにより、石というものは冷たいイメージがあるが
これはなにやら熱を持っている、普通の石とは確実に違うと分かった

「ん~、宝石・・・なのか・・・?」

訳の分からない真だったが、とりあえず家に帰ることにした

家に帰ってからも、真は街での出来事が気になっていた
それに千夏が渡したこの石も不思議でたまらない

とにかく、明日千夏に聞いてみようと心に思いながら夜を迎えた・・・

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by meruchan0214 | 2006-04-27 23:53 | LittleGarden

40、明日の為

陽子ちゃんを家族に会わせて落ち着いた私

「お疲れ様、林さん」

隆泰君が気を利かせてくれたのか、コーヒーを出してくれる

「ありがとう、隆泰君」

私はコーヒーを取り、一口すする

「はい、1000円になります」

ブホッ

驚きの余り、コーヒーを口から噴出してしまった

「あ、ごめん・・・、ジョークだったんだけど」
「相変わらず、変なところでジョークを出すわね」
「まあ、性格だからしょうがないです」

隆泰君はこぼれたコーヒーを拭きながら話す

「新しいの持ってきますね」

流石に隆泰君は悪いと思ったのか、今回は何も言わなかった
別に私は気にしないのだけれども
陽子ちゃんに関して言えば、後は彼女達次第だ
私の口の挟む問題ではない

「お待たせ、あ、そうそう、新作のケーキを今度出そうと思ってるんですけど」
「ふんふん」
「とりあえず、林さん。試食してみますか?」
「ただなら、いいわよ」
「ただでいいですよ、まだ出すと決まったわけじゃないし」

隆泰君はコーヒーと一緒に可愛らしいケーキも持ってくる
苺ベースのタルトみたいだ
彩りも綺麗で流石といったところだろうか

「恵が何か新しいの考えたっていうんで、とりあえず作らせてみたのですが」
「あの子のお菓子作りはプロ並だからね」

恵ちゃんのお菓子作りと言うか、料理はかなり上手だ
何度か食べさせてもらったことがあるが、プロ顔負けの腕前だった

「それじゃあ、さっそく」

サクッ 

モグモグ

「おいしい~」

生地が丁度いい硬さで、苺の甘酸っぱさと合っている
口の中に入れると、さっくりと食べられる
味はコーヒーなどと一緒に食べる為か少し濃い目の味付けだが、
それでも十二分においしかった

「どうですか?」
「おいしいよ、ただ単品で食べるにはちょっと味が濃いけど」
「そうですか、まあ基本がうちはセットですからね~」

そう、この店では基本的に、コーヒーとケーキはセットで出される
その分の値段はするのだが、それだけの価値があると私は思っている

「うん、おいしいよ、これいくらでだすつもりなの?」
「セットで500円」
「安!!」

思わず本音が出てしまった、
これだけのものを出すのなら、多分1000円出しても惜しくは無い
それくらいおいしいのだ

「まあ、原価が安いですから、これでも十分元取れますよ」
「・・・、一つ聞いていい?」
「はい?答えられることなら」
「原価、いくらなの?」
「ん~、まあ、コーヒーの方が高いとだけ、言っておきます」

一体、どんな魔法を使っているのだろう
明らかに安すぎる気がしないでもない

「うちは、全部手作りがモットーですから」
「ああ、そういうことね」

手作り・・・、1から全部作っているわけなのだが、
彼らの栽培はちょっと違う、普通に収穫するのは間違いないのだが、
少しズルをしているために、そこら辺のものよりも人件費などがかからないのだ

「おいしかったわ、ごちそうさま」
「はいはい、陽子ちゃんなら遊園地の方へ行ったみたいですよ」
「あ、そう」

半分見抜かれていたみたいで少し悔しかったけれど、
この情報は少しありがたかった、
やっぱり、心配になっている自分がいる
見守らずにはいられないのだ
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by meruchan0214 | 2006-04-27 23:32 | 妖の調べ

LittleGarden登場人物

小説「LittleGarden」の登場人物です

篠原 真 (しのはら まこと) ♂ 16歳

LittleGardenの主人公、ふとした偶然から喫茶店リトルガーデンで働くことになった高校生
学校での成績は良くもなく悪くもなく、普通の学生である
父親は幼い頃に死んでおり、母親と二人暮しである
だが、そんな逆境にもめげず日々生活をしている

沖原 千夏(おきはら ちなつ) ♀ 16歳

真とは同級生でかなり前向きな女の子
病院の理事長の娘な為か金銭感覚に非常にうとい
正真正銘の人間だが、異常な特殊能力をもっている
また頭が非常に良く、実は海外の大学の博士号を持っている

平林 隆泰(ひらばやし たかやす) ♂ 24歳

リトルガーデン現店長で真の才能を見抜いた人間
喫茶店のマスターを若くして務める男の人
人間ではあるが、その実力は妖に勝るとも劣らないと言われている
それ故か分からないが彼の喫茶店には多くの妖が集まる
そのせいもあってか、表向きは喫茶店という反面情報屋という裏の側面も合わせもつ
彼は陰陽術を覚えており、特に式神を使った術を得意とする


麻生 恵(あそう めぐみ) ♀ 22歳

喫茶店、リトルガーデンのフロアマネージャーを担当する
隆泰とはここと同期で働き始め、腕も互角で互いに良きライバルでもある
それだけに、隆泰とのコンビを組んだ時の実力は高く、
この近隣の妖には非常に恐れられている、もちろん一人の戦闘力は高い
隆泰との恋人説がまことしやかに流れているが、真実は不明である

真宮 夕子(まみや ゆうこ) ♀ 18歳

隆泰の喫茶店で働く女の子
人間ではないらしいが、その正体は現在は不明
非常におっとりとした性格だが以外に芯が強くしっかり者である
基本的に隆泰の命令で動くが、独断で行動することもしばしば
6歳下の妹がおり、名前を朝子という
2人姉妹で両親などはいないが、家庭は上手くいっているらしい
しかし、この二人の血が実は繋がっていないことはほとんどの人が知らないことである

平林 楓(ひらばやし かえで) ♀ 12歳

隆泰の義理の娘、人間と妖のハーフである
そのためか人間とも妖とも違う能力を持っているが、滅多に使うことは無い
性格は明るいが、少し人見知りな面もある
隆泰のことは『パパ』と呼んで慕っている(決して怪しい『パパ』ではない)
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by meruchan0214 | 2006-04-27 00:24 | LittleGarden登場人物

39、再会

次の日曜日、結局私は牧子達と会うことにした
やはり、考えれば考えるほど会いたいという気持ちが強くなっていく
記憶はなくても体が覚えているのかもしれない

「林さん~、服これで大丈夫かな~?」
「大丈夫よ、かわいいじゃない」

何かただ会うだけなのに、妙によそよそしくもある
まるでどこかに出かけるみたいだ

「私と陽子ちゃんの関係は打ち合わせどおり、先生と患者の関係ね」
「分かってます、あくまでも記憶喪失だけと思わせないといけないですからね」

嘘をつくのは少し心苦しいが、妖とばれないようにするには仕方がないことだ
今回の会う事に関して、隆泰さんや恵さんなども手伝ってくれているようだ

「さ、そろそろ時間ね、行きましょうか」
「うん、分かったよ林さん」

私達は待ち合わせの場所へと向かう、
当然、隆泰さんの手が回っているところ、喫茶店リトルガーデンだ
あそこなら、妖が多い為いろいろが隠しやすく手も回しやすいわけだ

カランカラーン

私と林さんは入り口の扉を開ける

「いらっしゃいませー」

夕子さんが出迎えてくれる、
そういえば、ここで働いている夕子さんを見るのは初めてかもしれない

「林さん、お待ちの方はもうお見えになってますよ」
「あら、時間通りにきたのに」
「10分も前から待っていらっしゃいましたよ、かなり楽しみにしてたみたいです」

夕子さんが軽く説明してくれる
楽しみにしていた、行方不明だった人間が見つかったのだ
嬉しいにきまっている、だが、逆に私は少し複雑な気持ちだった

「とりあえず、ご案内いたしますね、こちらです」

夕子さんに連れられて、席へと案内される
そこには牧子と他の兄弟あと母親が待っていた

「どうも、私陽子さんの主治医の木陰林と言います」

林さんが丁寧に挨拶をする
それを見て、母親も深くお辞儀をする

「こちらこそ、陽子の母でございます」

優しそうなお母さん、そして兄弟達やはり懐かしいとは思うが思い出せない

「ほら、陽子さん、お母さんと兄弟達ですよ」
「あ、こ、こんにちは」

私は緊張のあまり何故か挨拶だけしてしまう、
ここに来る前までは何を聞こうとか、こういうことを話そうとか思っていたが
いざ、対面してくると緊張してしまって言葉がでてこない

「陽子お姉ちゃんってば、何か他人みたい~」

牧子が指摘した通りだろう、私は他人も同然なのだ
ただの記憶喪失ならまだよかったかもしれないが、人ではないのだ

「少しずつ焦らず思い出していけばいいのよ、私はあなたが生きていてくれただけで嬉しいわ」
「そう、ですよね・・・」

生きていてくれただけで・・・嘘だ、私の体は既に死んでいる
だが、本当に嬉しそうにしている家族達を見ていると私は何もいえなかった

「肉体的には特に障害はないので、後は記憶だけなのですが・・・」

林さんがもっともらしい説明をする、
肉体の障害というよりは、肉体そのものがすでに変貌しているなんて言えるはずも無い

「今日一日は病院の許可ももらってあるので、ご家族水入らずでお過ごしください」
「すいません、無理を言ってしまって・・・」

今日これからは家族と過ごすこととなる
だが、果たして記憶の無い私でいいのか、
既に人間としての機能をしていない私でいいのか、
そんな不安がつきまとう

「陽子お姉ちゃんどうしたの?」
「ん?なんでもないよ、なんでも」

少し考え事をしていただけでもすぐに心配そうに聞いてくる
ありがたいことなんだけれども、今の私には答えることができない

「それじゃあ、私はまだ仕事が残っておりますので失礼いたします」

林さんが席から離れ、帰っていく
これからは私一人でなんとかしなくてはならない
一応、恵さんが見張っていてくれるらしいが何が起こるか分からないのも確かだ

「とにかく、体のことだけはばれないようにしないと」

腐食している部分や胸の傷跡を見られたら一発でアウト
一応、見つかりにくいようにサラシを巻いてはいるが、油断はできない

「それじゃあ、陽子何処に行きたい?」

母が私に微笑みかけながら聞いてくる

「みんなが行きたいところでいい・・・です・・・」

どうしてもまだ恥ずかしい気持ちが先行している
見るだけならまだいいが聞かれたりすると、何かくすぐったい

「それじゃあ、あなたが好きだった場所に行きましょうか」

こうして、私の家族との一日が始まった
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by meruchan0214 | 2006-04-26 16:18 | 妖の調べ

妖の調べの独り言2

第二回妖の調べについての独り言です
大分、登場人物が多くなってきて管理が大変ですが、
基本的には陽子、林の2人が主です

それに準レギュラーが
加奈、隆泰 かな、恵と夕子はまた別のお話で一杯活躍することでしょう

と言うわけでこれが終わったら次は、
喫茶リトルガーデンのお話に入る予定です

といってもしばらくは終わりそうにないですけどね
陽子と林が落ち着くまでは書かないかと思います

隆泰や恵、夕子については多分まだ謎な部分が多すぎなので、
おいおいと次のお話で明かすことになるでしょう
後、あんまり関係ないですが、このお話の主題は

人間から妖になった者(陽子)の生き様
妖故に人間に憧れる者(林)の生き様
が主な主成分になっています

奇数話が陽子、偶数話が林と言う風にそれぞれ主観を変えてるのですが
実際分かるのかなと考え中

二人とも人間ではありませんが、
元人間と妖ではお互いに人間に対する憧れ方が違うことを上手く表現できたらいいなとか、
とにかくこれからも妖の調べをよろしくお願いいたします
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by meruchan0214 | 2006-04-25 22:26 | 独り言

38、始まりはいつのことか

「今日は陽子ちゃんは連れて行かないほうがいいかな・・・」

私は陽子ちゃんを置いて一人で仕事に行く
正確に言えば、一人ではなく隆泰君と恵ちゃんと一緒だ
彼らは人間ではあるものの、実力だけで言うなら私達と同等以上
だが、それだけの力を手に入れるのにはそれだけの苦しみもある

「そういえば、隆泰君と恵ちゃんがこの仕事始めてからもう6年も経つのかぁ・・・」
「そうですね、俺が18の時でしたからよく続けてると思いますよ」

隆泰君達は元々は普通の一般人であった
だが、資質をこの前の店長に認められてこの世界に入った

「隆泰ってば、最初私に負けっぱなしだったのにね」
「うう、そりゃ得意分野が違えばそうだろ」
「実戦にでたのは恵ちゃんが先だったっけ」

資質があるといっても人間だ、妖と戦う為の修行がありすぐに実戦というわけではない
私が覚えている限りでは、恵ちゃんは半年、隆泰君は8ヶ月ほどかかったのを記憶している

「今では私達に並ぶほどの実力者か・・・」

二人は妖の間でも有名な妖狩りの人間である
世の中には妖を狩る専門の人間がいるわけであるが
実力から言えば、日本の中でトップの5本の指に入るだろう
更に二人にコンビを組ませれば、間違いなくトップだろう

「そういえば、二人って付き合ってるの?」
「ぶっ!!仕事中に何を言い出すんですか!!」

隆泰君はかなり慌てているようだ

「だって、6年も一緒だし、よくコンビ組んでるじゃないもっぱらの噂だよ?」
「隆泰とは仕事のパートナーであって、生活のパートナーじゃありません」

恵ちゃんがあっさりと否定の言葉を喋る

「そっかあ、でもそんな風には見えないけどなあ~」

私はちろちろと流し目で二人を見る
だが、恵ちゃんの態度はあんまり変わる気配はない

「とにかく、今は仕事中ですから、終わったらゆっくり話しましょう」
「それもそうね」

何か上手くはぐらかされた気がしないでもない
けれども、まあ、二人のコンビはまさに絶妙といえる

私と陽子ちゃんがコンビを組んで戦ったとしても
この二人のペアには敵わない
それくらい、お互いを知り尽くしている

「まあ、今回は楽な仕事だから、気楽にやろう」

闇に溶け込む私達
全てにおいてそれぞれには始まりがある
そのきっかけは分からないが、必ず来るものなのだ

私も彼らのような人々に会わなければ、敵として彼らの前にいたのかもしれない

これだから、世の中と言うものは恐ろしくもあり、面白くもある

「陽子ちゃんにもいつか分かる日がくるのかな」

今はまだ陽子ちゃんは悩む時期だ
何があっても人間の味方でいられるかは分からない
でも、私は陽子ちゃんを信じている

人としての自分を忘れない限り大丈夫だろう

今、できることは全てやるべきなのだ
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by meruchan0214 | 2006-04-25 22:13 | 妖の調べ