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桜の散る頃 

ここはとある県のとある市のとある高校
この高校は自由な校風ということでよく知られており、最低限のマナーさえ守っていれば色々な事ができると有名である
ここに通う女子高生、麻生 桜もその中で学園生活を満喫していた

「はろはろ~ん」

変な挨拶と共にまず保健室へと立ち寄る桜、仕事仲間でもあり先生でもある千尋に挨拶に行くのが日課であった

「ああ、おはよう麻生」
「ちひろんは今日も元気?」
「元気だから、早く教室に行けって、遅刻するぞ」

千尋は教室に行くことを促すが、桜はそれを気にする様子はまったくない
まさにのれんに腕押しといったところだろうか

「そんなこと言うと、ランゲルス星人が先生を襲っちゃうよ?襲っちゃうよ?」

意味不明な言葉を喋る桜、彼女が言うには、ランゲルス星人は地球に友好を結びたい宇宙人で桜の親友らしい、何かにかこつけては彼女の言葉に出てくる星人であった
いつも通りの桜に千尋も既にあきらめていた

「全く、チャイムが鳴る前には教室に行けよ」
「ほいほ~い」

変な言葉をしょっちゅう喋るが常識などがないわけではない
だが、怪しい発言と行動ばかりしているので周囲からは奇異な目では見られていた

「まったく、そんなんでよく学年トップを取るわ・・・」

千尋は少し呆れたように独り言をつぶやいた
授業中は真面目にやっているのか傍目からでは全く分からない
テストをやるとほとんどの教科が満点近いという周りから見ても謎の女の子であった

「さて、同志のところに行ってくるよ~」

彼女の言う同志とはクラスメート、すなわち教室である
ランゲルス星人と友好を結ぶ同志だと彼女は豪語している
桜は踊りながら教室へと向かっていった、途中壁にぶつかりながらフラフラと歩いている

「あ、桜ちゃんおはよ~」
「きょうゴン、はろはろ~ん」

桜の一番の親友である山岡 恭子、クラス内で唯一桜の意味不明な言動についていく女の子である

「きょうゴン、きょうゴン」
「なに、桜ちゃん」
「昨日ね~、ランゲルス星人がね~新しい道具をくれたんだ」

桜がランゲルス星人のことを喋っているときはどことなく恍惚とした表情だ
恭子はそれを楽しそうにニコニコしながら聞いている

「良かったね、桜ちゃん」
「うん、きょうゴンにも分けたげるね」

これが彼女の普段の生活であった
他人からみればとてつもなく変わっているがそれが彼女にとっての日常
誰の目も気にしない、自分のやりたいことをやる彼女である
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by meruchan0214 | 2007-01-31 09:05 | 短編小説

桜の散る頃 登場人物

桜の散る頃 登場人物

麻生 桜 (あそう さくら) ♀ 16歳

本編の主人公、性格は変な発言が多いいわゆる電波系と呼ばれる人間
行動も奇怪な行動が多いが常識などは知っている、しかしやることはいつも派手
いつも行動が可笑しい為か、何をやっても不思議でないと思われているのか、色々突拍子もないことをいつもやるが、周りからはまたやってるよという感じである
実は対妖用に強化された人間であるが、その副作用によってこんな性格になった
怒ると口調がまともになる

沖原 千尋(おきはら ちひろ) ♂ 38歳

桜の通う高校の保険医、医者としては非常に優秀であり本来なら霧雨会と呼ばれる病院団体のトップに近い存在、そして次期理事長が決まっている
性格は傲慢にも思えるがそれは他人を気遣ってでた言葉である為に生徒人気は高い
同じ学校に居る為か妖との戦いの際には桜と組まされることが多いのが悩みの種らしい
直接の戦闘は苦手で後方での指揮や援護を得意とする

山岡 恭子(やまおか きょうこ) ♀ 16際

桜の同級生で学校内で唯一桜の変な行動についていける度胸のある人
彼女自身は普通の人間であり、妖の存在は知らない
桜の事は彼女曰く、変な人だけどとっても優しい女の子らしい
運動や勉強はできる子ではあるが家事全般は苦手
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by meruchan0214 | 2007-01-31 08:43 | 短編小説

44陣 代償 力

ドクン、ドクン

心臓がいつもより強く鼓動する

ドクン、ドクン、ドクン

自分の内側から迫ってくる力、飲み込まれそうになる

「はぁ、はぁ」

布団から飛び起きるように目覚めるリーシェ
横ではルピナがまだ気持ち良さそうに眠っている

「また、"あれ"がきたか・・・」

リーシェはルピナを起こさぬようにそっと部屋を出ていった



「た~つ~や~く~ん」

メルが竜哉を呼んでいる、朝から何事だというのだろうか

「リーシェさん見なかった?」
「いや、見てないけれど」

どうやらリーシェがNATSからいなくなったらしい
自分達と一緒に戦ってくれるとはいえ、今だ監視中の身であるリーシェ
NATSから勝手にいなくなるというのは考えにくかった

「まさか、リーシェさんに"あれ"がきたんじゃ・・・」
「あれ?」

竜哉にはアレと言われても何の事かサッパリ分からない

「発作みたいなものでね、その時のリーシェに近づいたら殺されるよ」

殺されると言う言葉を聞いてゾッとする竜哉
しかし、メルが冗談で言っているようには見えない

「まいったな、今のリーシェさんだと抑えられないだろうし・・・」

メルは本当に心配そうな顔をしている

「竜哉君!!メルちゃん!!DEPSが現れたわ!!」

棗が二人を呼びにきた、メルはリーシェを探しに行きたそうであったが、先にDEPSを何とかしなければならない
竜哉達は現場へと急行した

「がぁぁぁぁぁぁぁ!!」

現場ではDEPSが何匹か暴れ回っている
全て倒すのには時間がかかりそうだ

「レドンとナイーズはあっちを頼む」
「了解」

皆で手分けして戦う、リーシェもいれば良かったのだがいないのはしょうがない

「いくぞ!!」

戦闘態勢に入った瞬間だった、レーダーに何かが写ったかと思うとDEPSが血しぶきを上げて崩れ去っていった

「何だ・・・?」
「リーシェさん・・・」
「まずいわね、メル」

空中に浮かぶ一人の影、それは紛れもなくリーシェであった
一目見ただけでも竜哉にすら、それがまともではないことは分かった
いつもつけられている目隠しがされておらず、覗かせる赤い瞳は見ただけでも気を失いそう
そして、いつも彼女にあった優しい雰囲気は一切なく波動みたいなものを感じ取れる

「覚悟を決めてね・・・、皆」

ダリアの言葉に皆が息を飲む
ゆっくりとリーシェは上昇すると、徐々に形態を変化させていく

「全てを狩る者、あれに近づいたモノは全て壊される」

メルがリーシェではなく全てを狩る者と呼んだ
リーシェの姿は徐々に魔獣のような姿と変化していく

「グォォォォォォォォォォォォォ!!」

辺りが地鳴りをするような声をあげる
穏やかな声ではなく、それはまさに獣が獲物を狙う咆哮であった

「まさか、こんな所で"あれ"とやりあうことになるなんてね・・・」

いつも強気なダリアですら弱気の声がする

「くるよ!!」

リーシェ・・・、全てを狩る者はこちらに殺気を向け、襲いかかってきた
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by meruchan0214 | 2007-01-30 00:03 | 竜の翼 ハイシェント

タキルの章 2輪 埋められないもの

魔族が目撃されたと言う灯台までやってきたタキル達
そこからは魔族特有の気配が漂っていた

「俺たちを誘っているな」
「グルルルルルルル」

ケルベロス、オルトロスも魔族の気配を敏感に感じ取っているみたいだった

「しかもこの感じは・・・」
「お兄ちゃん、もしかして」

タキルやティリカはこの魔族の気配に覚えがあった
村を滅ぼされた時に姿を見た魔族
ケイナと互角の勝負を繰り広げていたあの魔族だ

「ケイナ・・・」
「お兄ちゃん」
「大丈夫だ、俺達は強くなった以前よりもずっと」

タキル達は灯台の中へと入っていた
中へ入ると、その中だけ別空間のような奇妙な感覚に襲われた

「いるんだろ、でてこいよ」

何もない空間に向かって強い口調で喋るタキル

「クックック、少しはできるようになったみたいですね」

空間を切り裂くようにして現れた魔族
村を襲ったときと全く変わらないあいつがいた

「そろそろ貴方達を無視しておくと危険なのでね、片付けさせて頂きますよ」
「俺たちだって、ずっと強くなったんだ・・・、ティリカ、ケル、オル!!」
「うん」
「ガウ!!」
「バウ!!」

タキル達と魔族の戦いが始まった
4対1ではあるが、魔族は余裕そうな表情をしている

「こいつ、あの時より強くなっている!?」
「くっくっく、主から更なる力を授かりましたからねぇ!!」

魔族が少し力を解放すると、オルトロスとケルベロスが壁まで吹き飛ばされた

「ケル!!オル!!」

ティリカが二匹に駆け寄る、ケルベロスとオルトロスはヨロヨロと立ち上がるが、受けたダメージは大きい

「くっ」
「まだまだですねぇ、あの時の女以上にはなっているようですが」

自分はずっと強くなった、だが敵もそれ以上に強くなっていた
このままでは勝ち目がない、タキルはそう悟った

「そろそろ、死んでもらいましょうか」
「させるか!!」

タキルは一人、魔族へと飛び込んだ
呪文を詠唱しながら、魔族との接近戦

「いけ!!」

タキルの呪文の詠唱が終わると、タキルの腕から魔法が放たれる
魔族はその魔法をあっさりとかわすと、後ろにいるティリカたちに当たった

「え、お兄ちゃん!?」

魔法に当たったティリカ達の体が一瞬にして外へと飛んでいった

「攻撃と見せかけて、仲間を逃がす・・・ですか、美しい兄妹愛ですね」
「うるさい!!」

ここから先へと行かせないとばかりに立ちはだかるタキル
だが、力の差は歴然だった

「ぐっ・・・」
「さて、そろそろ止めですかね」

タキルの意識が遠のいていく、仇を討てなかったこと、ハクガ達、姉や妹の心配をしていた
うっすらと目を閉じていくタキル、もう動く力は残っていなかった
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by meruchan0214 | 2007-01-28 01:46 | 架空世界[フリトアネイス]

アーツの章 2輪 報告

グラディアを出たアーツ達は順調に魔族たちを排除していった
危険な事は何回かあったが、皆非常によくやってくれていた

「マヤ、ケガ人の様子はどうだ?」
「そうですね明日には治療が完了します」
「そうか、マヤ達には苦労かけるけど」
「いえ、皆さんの苦労に比べたら私はまだまだですよ」

そんな明るい会話が続いている
事実、今の所アーツの率いる部隊にはこれといって目立つ損害はない
ケガ人が何人もでてはいるが、治療で何とかなる範囲であった

「アーツ隊長、お伝えしたい事が」

伝令がアーツに何やら報告があるみたいだった
その表情は決して良い報告ではないと物語っていた

「悪い知らせ・・・か?」
「はい、アーツ隊長の親友であられるタキル様が行方不明となりました」
「なんだって!?」

驚きを隠せないアーツ、その直ぐ傍で聞いていたマヤも信じられないような表情をしていた

「グラディアの南の灯台で魔族と戦闘、一緒に向かった妹のティリカ、ケルベロス、オルトロスの生存は確認されましたが・・・」
「遺体は発見されてないんだな?」
「ええ、ですが。ティリカ殿の話では一方的にやられた、とのことです」

直ぐにでもグラディアに引き返したかった
だが、今はまだ自分達の魔族を討伐する使命が残っている
明らかに心配しているアーツをマヤが見つめる

「タキルさんならきっと大丈夫ですよ」
「確かに、あいつは直ぐに死ぬような奴じゃないが・・・」

マヤ自身も喋った言葉が気休めにしかならないと言うことは分かっている

「とにかく、僕達は僕達のできることをやるしかないんだ」
「そう・・・ですね」

生きていてほしい、心からそう願う
星空を見ながら、アーツはタキルの無事を祈っていた
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by meruchan0214 | 2007-01-28 01:30 | 架空世界[フリトアネイス]

43陣 幼い 記憶

棗はNATSの施設の屋上で風に当たっていた
その姿はいつもより、元気がなくどこか儚げだ

「竜哉君、今日はごめんね」

棗は夕日を眺めながら、見ていない竜哉に向かって言葉をかける

「いや、俺は平気だけど」
「何とかしないととは思っているんだけど・・・」
「しょうがないさ、誰だって一つや二つ何かあるんだから」

いつものような元気が全く感じられない
錯乱した自分を見せてしまったせいだろうか

「まあ、そのお陰で私にはこの力があるんだけどね」
「力って、超能力の事?」

竜哉の言葉に棗は頷いた
以前に見た事がある、物に触れずに動かしたりすること
VACGも強いそういう力がないと動かせないのだ

「でも、肝心なときに使い物にならないなんて駄目だよね」
「そんなことないさ!!」

竜哉は必死に棗を慰める
誰だって欠点はある、それに彼女は力と引き換えにその欠点を持ってしまった
どんな理由があるかは分からないが、彼女には彼女しかできない事がある

「真っ暗な押入れに閉じ込められたのが始まりかな」
「押入れに?」
「自業自得だったけどね、怖くなってずっと泣いてた」
「そうなんだ」
「誰にも見つけてもらえなくて、外に出られなくて、最終的には私がこの力で扉ごと壊しちゃったんだけどね」

そういいながら棗は、光る何かでハートのマークを作ってみせた

「っと、こんな話しても竜哉君はどうでもいいよね」
「いや、棗さんの事何一つ知らなかったし、そういうこと話してくれるだけで嬉しいよ」

竜哉の言葉に少し棗の顔が赤くなった気がした

「とにかく気にしないで、棗さんは棗さんのままでいてほしいからさ」
「うん、ありがと」

棗は最初に喋っていたよりは元気になったようだ
竜哉はやっぱり暗くなっている棗よりは明るい方がいい、そう思った

「室長が疲れてるだろうから、もう休んでもいいってさ」
「うん、そうさせてもらうね」

棗はNATSの中へと入っていく

「本当にありがとね、大分楽になったよ」

すれ違いざまに棗が竜哉にかけた言葉
恋愛とかそういう感情ではないかもしれないけれど、仲間としての絆は今確実に存在している
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by meruchan0214 | 2007-01-28 01:18 | 竜の翼 ハイシェント

死神と呼ばれた少女 2

死神と呼ばれた少女が居た、自分自身が死ぬことはできなかった
死のうと思ってもいつも誰かが自分を助けてしまう
今回もまた自分を助けた人間が一人、それによってまた人を殺してしまう
彼女の心の傷は深く深く暗いものであった

しかし、また自分自身がその安堵を求めているのは確かだった
関わってほしくはない、でもその助けてくれるということに喜びを感じてしまう
人間誰でも孤独ではいたくはない、誰かを求めている

自分自身を助けた人間、長い黒髪の女性
親のように自分を包んでくれる、でも少女自身の力で殺してしまう事を恐れた

黒髪の女性は少女を護ると言った
例え、死神に魅入られた少女だとしても、自分が護ると言った

黒髪の女性は全てを分かっていたのだ
少女が望まなくても他人の命を奪ってしまうことを
それによって少女が孤独を強いられたことも全て分かっていた

それを分かった上で黒髪の女性は少女を助けたのだ
自分もそうであったから、他人に救われたから
今度は自分がそういった人間を助ける番であると

彼女もまた少女と同じ力を持った人間だった
同じ力を持つ少女、自分にはすぐ感じることができたと

少女はすぐには信じることができなかった
今までの自分にはそんなことできる人は誰一人としていなかった

でも、仲間が居る、助けてくれる人が居る
それをどうしても信じたかった

人にはない力を持って生まれてきてしまった少女
その力を理解してくれる女性
少女を包み込んでくれるその抱擁は少女の心を溶かしていった
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by meruchan0214 | 2007-01-25 09:28 | 短編小説

ハクガの章 1輪 己が立場

ハクガは一人、剣の修行をしていた
アーツは悪魔討伐の為に出陣、タキルも灯台へと向かった

「タキル達が居ない時は俺が守ると決めたからな」

アーツ、タキル、ハクガの三羽烏はそれぞれ自分の役割を分かっていた
ハクガは自分がやるべきこと、成すべき事を忘れてはいない

「ハクガ!!ハクガ!!ちょっと、盗賊団が現れたって!!」
「フッ、分かったすぐ行く」

大慌てで入ってきたユミルに慌てることなく、自分を研ぎ澄まさせていく
この数ヶ月で自分自身の腕もかなり上がった
ユミルもハクガの良きパートナーとして戦っている

「ハクガ兄ちゃん、気をつけてね」
「ああ、お土産買ってくるから、いい子にして待っているんだぞ」

村の子供達に声をかけていく
生き残った数少ない村の人間達、守らなくてはならない

「ユミル、行くぞ」
「早く、早く。こっち、こっち」

ハクガは盗賊団が現れた場所へと駆け抜けていく
ユミルは魔法を使ってハクガの後を追いかけていった

「人のモノを暴力で奪おうというのは許せないな」

盗賊団は馬車を襲っている最中であった
ハクガとユミルは急がねばいけないということで、あっという間に盗賊団と旅人の間に割って入った

「ユミル、馬車を頼む、こいつらは俺がやる」
「うん」

盗賊団はたった二人の相手に舐めてかかっていた
しかも、相手はまだ若い青年、自分達を止められるはずがないと

だが、それは少し戦っただけでたちまちそれは違うということを思い知らされた
人間の動きでは到底できないような速さ、それを生かす剣術
その圧倒的な力の差を見せ付けられるのは、すぐのことであった

「フッ、他愛のない・・・」

あっさりと盗賊団を捕まえ、官憲に引き渡すハクガ

「アーツ、タキル、しっかりやれよ」

ハクガは遠くにいる、親友二人の安否を心から気遣った
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by meruchan0214 | 2007-01-24 09:05 | 架空世界[フリトアネイス]

42陣 助ける 気持ち

錯乱したまま暴れる棗、竜哉はこれといった対応策がないまま棗のエレストリカから逃げ回るしかなかった

「このままではDEPSを倒しても俺まで」

洞窟を壊したかったが、自分達が生き埋めになってしまう
洞窟の奥深くまで入り込んでいた竜哉はできる手段がほとんどない

「竜哉君!!あと少しそのまま持ちこたえて!!」

頭に響く声、リーシェの声であった
すると、一筋の光が暗闇に走ったかと思うとその光が辺りの暗闇を一気に吹き飛ばした

「棗ちゃん!!落ち着きなさい!!」

明かりを取り戻したことで、棗が落ち着いてきた

「あ、あ・・・」

自分が何をしたのか理解しているようではあった
この洞窟に竜哉と棗を誘い込んだDEPSはリーシェの光の攻撃で絶命していた

「ごめんなさい・・・」

棗はただ謝った、自分がしてしまったことわざとではないにしろ、ハイシェントにもダメージを与えてしまったのだ

「大丈夫さ、お互い無事だったんだし、とりあえず外に出よう」
「ええ、そうね」

竜哉達は洞窟を出て、NATSへと帰還する
帰還する際も棗はどこか今日のことを引きずっていた

「リーシェさん、今回は助かりました」
「いえいえ、棗ちゃんの動きがおかしかったから、慌てて向かったのよ」
「おかしかったって、あんな距離の事が分かるんですか・・・」

確かにリーシェは目隠しをしており、目が見えるというわけではない
気配を感じているとはいえ、あそこまでの距離は100kmは離れていた

「まあね、この世界でいうなら200kmくらいまでなら余裕ね」
「そうですか・・・」
「それよりも、棗ちゃん大分落ち込んでいるわよ」
「そうですよね・・・」

真っ暗闇になった瞬間に完全に錯乱状態になった棗
あれは異常としか言えなかった

「ちゃんと慰めてあげるのよ」
「何で俺なんですか!!」
「あら、好きじゃないの、棗ちゃんのことが」

リーシェに指摘されて真っ赤になる、竜哉、明らかに図星をつかれている

「というわけだから、よろしくね」

リーシェはにっこりと笑うと去っていってしまう

「さてどうしたものか・・・」

確かに竜哉は棗を慰めたいとは思っていた
だが、どう言葉をかければいいのか何も分からなかった
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by meruchan0214 | 2007-01-23 14:27 | 竜の翼 ハイシェント

堕ちた天使 10

結局、その日の夕方に夕子は朝子に会いに行くことにした
いつまでも会わないというわけにはいかない
朝子には恵や隆康から話がいっているはずである

「朝子、居る?」

居るのは最初から分かっている
しかし、朝子からの返事はない、夕子はそのまま話を続けた

「何も言わなくてもいいから、とにかく聞いてほしい」

夕子はそこに居るであろう、朝子に語りかける

「確かに朝子に今まで私が化け物だということは黙っていたわ」

朝子は人で夕子は人ではないそれは揺るがない事実

「でも、でもね、私は朝子の事がとても大切なの、貴方が私の事をどう思ってもいい。貴方の両親に教えられたから、人を想う事を」

夕子自身がここまで変わったのは全て朝子やその両親のお陰である
彼らと出会わなかったら今の自分は存在しない
いや、既にこの世から消え去っていたかもしれない

「嫌いになってもいい、化け物と思われてもいい、それでも私には朝子が一番大事だから」

たとえ、どんな事を思われたとしても、全てを受け入れる覚悟はできている
会うことができなくなっても、朝子が幸せになれるならどんなことでも受け入れよう

「明日、リトルガーデンで待ってるから」

夕子はそれだけ言うと、扉の前から姿を消した

次の日、夕子は宣言どおりリトルガーデンで待っていた
朝子が来なかった時、その時は朝子と別れの時である
夕子には長い長い時間に思える、一分、一秒が物凄く長く感じる

「隆康、朝子ちゃん来ると思う?」
「さあな、こればっかりは朝子ちゃんの気持ち次第だからな」

隆康や恵にも予想がつかない、ただ来てほしいと夕子と一緒に思うだけだった

そして、夕方午後5時を過ぎたころであった

カランカラーン

入り口の扉が開き、そこには朝子の姿があった

「お姉ちゃん、ごめんね、私の為にやってくれたのに・・・」

入ってきた朝子の第一声、朝子も夕子の事が忘れられなかった
今まで一緒に暮らしてきた、優しい姉だから

「朝子・・・」
「どんな事があっても、お姉ちゃんは私のお姉ちゃんだもんね」
「ありがとう、ありがとう、朝子」

夕子は朝子を力強く抱きしめた、その顔からは涙が流れていた

「痛い、痛いよ、お姉ちゃん」

そういいながらも、うれしそうにする朝子
今まで培ってきた姉妹の絆は簡単なことでは切れることはないのだ

「よかった、よかった」
「そうね」

遠くから見ている隆康と恵も自分のことのように喜んでいた

この事件以降、朝子は夕子達の仕事に深い興味を持つようになった
人間以外の存在、妖を認知したことにより、夕子達の手伝いがしたかったのだ

神の教えを忘れた訳ではない、しかしそれが全てではない
夕子の心の中には自分自身の気持ちがはっきりと存在していた
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by meruchan0214 | 2007-01-23 08:57 | 短編小説