<   2007年 02月 ( 48 )   > この月の画像一覧

タキルの章 7輪 忘れられない

タキル達が地上に出てからしばらくの月日が経った
まずは魔族と人間の共存する街エルンドールを訪れてから、次の村へと向かった
訪れた時はタキル達に恐怖していた
しかし、タキル達は人間との共存の為に動いていると知ると、少しずつであるが村の人間達も打ち解けてきていた

「ガルドーン、あっちの家に手伝いに行ってくれないか?」
「了解しました」

魔族達も地上での生活が楽しいみたいで人間達と仲良くなり始めていた
魔界にはない独特の民芸品などに興味が一杯である

「人間って言うのは手先が器用ですよね」

シェリルが感心したように喋る

「ただ単に使い方次第じゃないのか?」

タキルに言われると、ああなるほどという顔で頷くシェリル
魔界ではこういった工芸品など作る存在はほとんど無きに等しい
武器や防具などに目先がいきすぎる、良くも悪くも戦闘に特化しすぎているのだ

「少し見回りに行ってきますね」
「おお、気をつけていけよ」

シェリルは外に出ると気持ちよさそうに空へと羽ばたいた
地上に出てから何度か別の魔族との交戦はあったものの、流石にマルズの国の精鋭達ということもあっていとも簡単に退けてきた
100人にも満たない少数の部隊ではあるが、恐らく一国の軍にも相当するくらいの強さだった

「ま、力も使いようか」

物を破壊する力も、物を斬る力も使い方次第で役立つ力に変わる
その力を間違った方向に使えば争いが生まれるのだ、今タキル達が戦っている魔族と同じように

「タキル、エルンドールとの話はつけてきたよ」

ケイナとヘーテがエルンドールから帰ってきた

「エルンドールの方々も直ぐにでも協力してくださるそうです」
「そうか、良かった」

魔族と人間との共存の為には地道な活動をしていかなくてはならない
それほどまでに、人間と魔族との間には深い深い溝があるのだ

「シェリルはどこいったの?」
「その辺で散歩してるだろ、見回りといってたけど、地上の風が気持ちいいらしい」

穏やかな時間が流れている、魔族も人も一緒の時間を過ごす時間が楽しかった

「あ、シェリル様が帰ってきました・・・、誰かと一緒ですね」

いち早く、シェリルの帰りに気がついたヘーテ

「誰かって、分かる?」
「女性が二人、一人はまだ若そうに思えます」

ヘーテの魚のヒレのような耳は超音波を感知する力がある、ヘーテは自身から特殊な超音波を発する事によって、通常よりも広い範囲を感知する事ができるのだ

「どんな人だろ」

ケイナは窓からシェリルが帰ってくるのを覗いていた
それから少ししてシェリルが帰ってくると、ケイナは連れていた女性を見て驚いた

「ルティとティリカじゃない!!」
「ルティとティリカって・・・、俺の姉妹っていう?」
「そうよ、どうしてここまで」

シェリルがルティとティリカを連れて帰ってきた
二人はタキルとケイナを見て本当に嬉しそうな顔をした

「二人とも無事で良かった・・・」
「ルティこそ、どうしてこんなところに・・・?」
「タキルを探してね、そしたら偶然彼女に出会って・・・」

ルティは簡単にシェリルと出会った事をケイナに話す
そして、ケイナもこちらの事情もルティとティリカに話した

「じゃあ、シェリルさんは私達のご先祖様ってこと?」
「そういうことになるのかな・・・、でも、血の濃さで言うと、貴方方と大して差はないですよ。どうして、そこまで貴方方の血が濃いのか理由はともかくとしてね」
「まあ、ね・・・」

ケイナはそれ以上は何も言わない、ルティもそれは分かっているようで何も言わなかった
一方、タキルは訳も分からずただそのやり取りをポカーンと見ていた

「タキルが記憶喪失だって聞いたけど・・・」
「ええ、ルティやティリカの事も忘れていたわ」

ケイナとルティがぼそぼそと耳打ちしあっている

「ねえ、お兄ちゃん、私だよ。分かる?」

ティリカが聞くがタキルは申し訳なさそうに首を振った

「すまない、本当に何も覚えていないんだ、でも二人が俺に取って大切な人間だって言うのは、良く分かる・・・」

自分の中の気持ちが嬉しそうに踊っている、覚えていないけれども魂が覚えているのかもしれない

「タキル様!!」

和やかな空気を壊すかのように、部隊の一人が飛び込んできた

「ここを全域を治めているグラディアの城が奴らに攻め込まれているようです!!」
「グラディアが!?」

その報告に驚いたのはまずルティとティリカだった

「どうりで、最近こっちに来ないと思ったら・・・」
「タキル、どうするの?」
「もちろん助けにいくさ、全員に通達しろ。マルズ王に報告してここは別の部隊に任せる」

タキル達はグラディアに向けて出撃する事にした
どうしてもグラディアを守らなければならない、そんな気持ちがタキルの中にあったのだ

「私達も行くよ、自分達の家を守らないと!!」
「ええ、一緒に居ればタキルも記憶を思い出すかもしれないしね」

ルティやティリカも一緒についてくる

「タキル様、お気をつけて」

村の人達に見送られながらタキル達はグラディアを助けに出撃した

「急ぐぞ!!」

タキル達は全速力でグラディアへと向かった
[PR]
by meruchan0214 | 2007-02-28 12:35 | 架空世界[フリトアネイス]

アーツの章 7輪 迫りくる敵

グラディアに攻め込んできた大量の魔族、その攻撃はいつまた来るか分からなかった
戻ったアーツはヒリウと共に魔族との戦いに備えていた

「ヒリウさん、先の戦いはどうでした?」
「こちらがやや劣勢というところだな、何とか退けたが、これが続くとなるとな・・・」
「なるほど・・・」

グラディアでは既に一般市民は城の中へと避難をしている
街を破壊されても大丈夫というわけではないが、最低限の被害で済む

「来ました!!」

偵察兵が連絡を急いで伝える
いよいよかと、アーツ達は出陣した
魔族の数は圧倒的にこちらより多かった、しかしこちらの城は守りに特化している、そうそうには落とされはしない

「持久戦になりそうだな」
「そうですね」

グラディア城ではいざという時のために食料などは大量に保管している
もちろん、国の人間に負担がかからない程度に集めているのだが、それでもこの城下町の人間全体を養うのは2ヶ月が限度だった

「2ヶ月以内で追い出さなければ負けだな・・・」

ヒリウの言葉にアーツは頷いた

アーツ達は城下町内部へ侵入させまいと城壁から次々と攻撃を仕掛ける
矢や魔法が飛び交うなか、アーツとヒリウ達が切り込んで次々と敵をなぎ倒していく

「てりゃああああ!!」

次から次へと襲い掛かる敵の群れ、既に何匹倒したのか分からなくなるくらい襲ってくる

「アーツ!!」

マヤの魔法がアーツの傷を癒す、戦闘はほぼ互角ではあるものの相手の数が減っていないようにも見える
第一陣を退けるが、こちらもある程度の被害はどうしても出てしまう

「負傷者を優先的に回復してくれ!!」
「急いで体勢を立て直すんだ!!」

魔族はまた直ぐにでも隊を編成して襲ってくるだろう
あまり、回復に時間をかける余裕はない

「アーツ、大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫、マヤこそ大丈夫か?」

お互いの無事を確認しあうアーツとマヤ、しかしそんな会話もあまりしている余裕はない

「タキル達が居てくれればな・・・」

アーツは思わず呟いてしまう、タキル達が居ればどんなに心強いか
しかし、今はタキル達は居ない、彼らに頼ることなく戦わなくてはならない

「第二陣来ました!!」
「迎え撃つぞ!!」

魔族と人間達の戦いはまだ始まったばかりである
[PR]
by meruchan0214 | 2007-02-28 12:33 | 架空世界[フリトアネイス]

58陣 使命を 終える

あれから一ヶ月が過ぎていた、L&Cの脅威もなくなりNATSの仕事もDEPSとの戦いではなく、平和維持の活動へと変わっていた
竜哉と棗は普通の高校生に戻り、レドンとナイーズもそれに付き添う形で高校へと入った

「ハイシェントあれから動かないんだって」

ハイシェントは自身の役目を終えたかのように動かなくなっていた
何をしても動かない、分解もできない、ただそこにあるのは機械の固まりだった

「大きすぎる力は平和な世界には不要ですからね」

一ヶ月経つとリーシェの傷もほぼ全快になっていた
しかし、リーシェの傷が治るということは別れの時が来たという事だった

「元の世界に帰るのですね」
「ええ、私やルピナがもうここに居る訳にはいきませんから」

リーシェ達が元の世界に帰る、それはL&Cを倒した今分かっていた事ではあった

「短い間でしたけれども、ありがとうございました」
「ありがとうございました」

リーシェに続いてルピナも真似するように頭を下げる

「いえ、でも、メルやダリアが・・・」
「過ぎた事です、それにまだ一ヶ月です」
「そう・・・ですよね」

無理やり納得させている自分が居る

「また、いつか会えますよね」

棗の言葉にリーシェはにっこりと微笑んだ
ルピナもそれに釣られてか大きな笑顔を見せた

「さあ、ルピナそろそろ帰るわよ」
「うん!!」

街外れの山の中、リーシェとルピナは大きな魔方陣を描くとそこに大きな洞窟ができた

「それでは、またお会いしましょう」
「お元気で」

リーシェとルピナが洞窟に入ると、その洞窟の入り口は閉じてしまった

「さて、行くか」
「あ、ちょっと待ってよ」

竜哉達は歩き出す、あの戦いがまるで夢だったかのように
でも、積み重ねたものはなくなっていない
仲間ができて、大切なものを守る、失って悲しい事も分かった
けれど、今もなお時は静かに動いている

and...
[PR]
by meruchan0214 | 2007-02-28 08:56 | 竜の翼 ハイシェント

ハクガの章 6輪 見かねる存在

「これは・・・ひどい・・・」

ハクガ達は訪れた村を見て驚愕した
寂れているだけならまだいいが、人々は飢え、仕事もままならない状態だ

「ここが本当にグラディアの一部なのか・・?」

グラディア王国の地方領主が治める村の現状
グラディア近辺の村の豊かさを見ると天と地ほどの差がある

「ねえ、ハクガ。この人達可哀相だよ、助けてあげようよ」
「しかし、今の俺達にやれることは多くないぞ」
「でも、このまま見捨てる事はハクガもできないでしょ」

ユミルの言うとおりハクガはこの村の人達を見捨てる事はできない

「ここの領主は・・・、この前立ち寄った所のと同じか・・・」
「かなりあくどいね、そいつ」

しかし、いくら悪態をついているとはいえ、この近辺を任されている領主
ハクガはグラディアの騎士団の一員、下手をすればグラディアから追われる立場になるかもしれない

「とりあえず、グラディアに報告したら?」
「そうだな、だが、このままだとあまり時間がないようだ」

明日の食事にも困る彼らにとってはいちいちグラディアに戻っていたのでは時間が足りない

「じゃあ、私が食料の買出しするからさ、ハクガ行ってきてよ、ハクガだけなら直ぐにでも行って帰ってこれるでしょ」
「そうだが、ユミル、一人で大丈夫か?」
「大丈夫だって、もう以前の私じゃないんだよ」

一度言い出したら言う事を聞かないユミル、ハクガは仕方なしとグラディアに向かうことにする

「3日で帰ってくるからな、それまで変な事はするなよ」
「はーい」

普通ならば1ヶ月はかかるであろう工程を3日で往復するという宣言をする
しかし、3日でもハクガにとってユミルは心配だった
ユミルはハクガと同じように正義感が非常に強いそれゆえ、下手な事に直ぐに首を突っ込むのだ

「何事もなければいいがな」

ハクガは自分の魔力を解放して、全速力で走る
その速度はあっという間に姿が見えなくなるほど速いものだった
[PR]
by meruchan0214 | 2007-02-27 13:17 | 架空世界[フリトアネイス]

57陣 失った命 残った命

戦いには犠牲がつきものというが、失ったものは大きかった
しかし、メルとダリアがあそこでやらなければ、こちらが全滅していたかもしれないのも分かっていた

「作戦は終了だ、全員、戻ってきてくれ」

室長の声が響いた、室長も皆の気持ちが分かってか、それ以上は何も言わない
暗い雰囲気が押し寄せる中で竜哉達はNATSへと帰還した
NATSについてからも、メルやダリアがソルレオンで爆発したのを知っている為、勝利を喜ぶ者はいなかった
それだけ、メルやダリアは皆の中に居る存在になっていた

「きゅるるるるる」

ミスティが声をあげる、メルの帰りを待っているのだろうか
棗はそれをそっと抱くがその目から涙が溢れていた

「ごめんね、ミスティ、ごめんね」

棗の言葉からはそれしか出てこなかった
だが、メルとダリアがいないだけではない、リーシェも瀕死の重傷を負っているのだ
リーシェは全てを狩る者から降ろされると直ぐに集中治療室へと運ばれる

「俺達の世界の為に・・・」

メルやダリア、リーシェは元々この世界の人間ではない
それなのに、命を捨ててまで自分達を助けてくれたが、自分達は何一つ彼女達にしてやれなかった
悲しさと虚しさだけが残っている、竜哉達は戦いに勝ったのに虚しさだけが残っている

「皆で生き残らなければいけなかったんだ」

後悔してもメルやダリアが帰ってくるわけがない
メルやダリアが残してくれたものを守っていかなくてはならない

「リーシェ様は何とか一命を取り留めたみたいよ」

ずっと傍に付き添っていたナイーズが竜哉達に報告をしてくれる
竜哉と棗はその報告に少しホッとする、ここでリーシェまで命を落としていたら後悔では済まないかもしれない

「話をする?」

ナイーズの言葉に竜哉は頷くことでそれに答える
病室ではルピナがリーシェに甘えていた
リーシェが竜哉達に気がつくと、ルピナをナイーズに頼んで外に連れ出してもらった

「ご無事で良かったです」
「まあね、でも、私が無事でも浮かない顔しているわね」
「それは・・・」
「ふふ、ごめんね、メルとダリアの事でしょ」
「はい」

リーシェは溜め息をつくと、窓の外を眺めながら話す

「貴方達が気にする事はないのよ、メルやダリアが勝手にやったことなんだから」
「でも、僕らの世界の人間じゃないのに・・・、僕達を守る為に」
「仲間を、大好きな人達を守るのに理由はないでしょ、メルやダリアは貴方達の事、気に入ってたのよ」

メルやダリアがいなくなったとしたら、一番悲しいのはリーシェであるはずだ
なのに、リーシェは竜哉達よりも冷静にずっとずっと物静かに語るだけだった

「それに、あの二人の事だから死んでないわよ」
「でも、あんな爆発・・・」
「人を好きになるのはまず信じる事から、そうでしょ」

竜哉の言葉を遮るように話すリーシェ、それはまるで自分にも言い聞かせているみたいだった

「そう、ですよね」
「そうよ、私達が信じてあげなかったら、帰ってこれないでしょ」
「はい」

あの爆発の中で到底生きているとは思えない、メルとダリアがいくら人間とは違う力があるといっても死んだら何もできない
だが、リーシェに感化されたのか竜哉は生きている事を信じようと思った

「それじゃあ、失礼します」

病室を出た竜哉達は、少し気分が軽くなっていた
希望を持ったからであろうか、リーシェが生き残ったからだろうか
今は前を向いて歩くしかない、すべては元には戻らないのだから
[PR]
by meruchan0214 | 2007-02-27 13:15 | 竜の翼 ハイシェント

番外編 生きている喜び

「ねぇ、お姉ちゃん、まだつかないの?」
「後少しだからもうちょっと我慢してね」

ルティとティリカ、そしてケルベロス、オルトロスはタキルを探す旅に出ていた
女だけの旅という事もあって、何度も野党などには襲われたが、腕には自信がある彼女達の問題ではなかった

「でも、お兄ちゃんどこに居るんだろう」
「さあね、死んでないとは思うけれど」

生きているという事はアーツが早馬をグラディアへと送った時には既に旅に出ていたので知らなかった

「!!」

ルティは不意に何者かの気配を感じ取った
ケルベロスとオルトロスもその気配に気付いたようで唸り声を上げていた

「近くに誰か居る」
「人間?」
「いえ、この気配は動物や人間ではないわね」

独特の瘴気、まさしく魔族の気配がする

「相手もこっちに気がついたみたいね」

互いに姿は見えないがはっきりと居るという事は感じている
相手に隙を見せないようにじりじりと差を詰めていく

「待って、私は貴方達に危害を加えるつもりはないわ」

女の魔族の声が響く、しかし、嘘であるとは言い切れないルティは素直には信じられない

「こちらは貴方方の姿を出すわ、心配しないで私一人だから」

女魔族はそういうと一人姿を現した、コウモリの羽に大きな角、力を抑えているがかなりの上級魔族だと覗える
ルティ達はその女魔族を見て少し驚いた、母親の姿に良く似ていたからだ

「母さん・・?」

思わず、ルティとティリカも女魔族の前に姿を現す
すると女魔族もこちらを見て驚いているようだった

「タキルさんにそっくり・・・」

女魔族の洩らした言葉にルティは素早く反応した

「タキルを、弟を知ってるの!?」
「え、え、じゃあ貴方達はタキルさんの姉妹・・・」
「そうよ!!タキルはどこなの!?」

普段、いつも落ち着いているはずのルティが珍しく感情を荒げている
大事な弟を魔族に連れ去られたと思ったのだ

「お姉ちゃん、落ち着いて!!」

ティリカに言われてハッと冷静になるルティ

「タキルさんは今私達と共に行動しています」
「じゃあ、タキルは無事なのね?」
「ええ、ですが・・・、私達と敵対している魔族との戦いで記憶を失くしています」

記憶喪失についてはルティはショックを受けたが、生きていた事による喜びのほうが大きい

「そう、その話は本当なのね?」
「はい、貴方方の事は良く聞いていますから」

ルティは疑問に思った、タキルが記憶喪失ならば自分達のことは知らないはず
なのに、良く聞いているという言葉が出てくるのはおかしかった

「ケイナさんも生きていらっしゃいますよ」
「ケイナも!?」

ケイナが生きていた、親友であるケイナが生きているという事が物凄く嬉しかった
死んだと心の中で諦めていただけに、喜びで涙が溢れてきた

「余程、お二方が大事なのですね・・・」
「当たり前です・・・大切な、大切な人たちですから」

女魔族はうらやましそうにルティを見ていた

「ご案内します、ついてきてください」

ルティとティリカ、ケルベロスとオルトロスは女魔族の後をついていく
タキルとケイナにまた会える、そう思うと胸が躍った
[PR]
by meruchan0214 | 2007-02-26 20:01 | 架空世界[フリトアネイス]

56陣 勝利 犠牲

大爆発の後、辺りには煙が立ち込めており、視界が全く通らない
風によって、煙が払われていき、徐々に視界が開けてくる
爆発の中心にはL&Cはまだ立っていた、だが、流石に至近距離であれだけの攻撃を受けて無事ではない

「オノレ、オノレェェェェェェ!!」

L&Cは大きく叫んだ、まだ動ける、だがメルやダリアの乗っていたソルレオンは跡形もない

「ダメージを負っている今なら・・・」
「うん・・・」

メルやダリアがその身を犠牲にしてまでやった事を無駄にはできない
竜哉達は渾身の力を持てるだけ込めて、L&Cに攻撃を仕掛ける

「ママ、次はどうすればいい?」
「あそこに攻撃しなさい」

リーシェの指示でルピナは全てを狩る者を操縦する
一撃、また一撃と傷を負いながらもその指示は正確無比であった

「レドン」
「分かっている!!」

レドンとナイーズも自身が持つ最強の技を繰り出す

激しい攻撃の前にL&Cの動きが徐々に鈍くなってきていた

「ワタシガ・・・マケルハズナド・・・」

動きが遅くなっていく、命の灯火が少しずつ小さくなっていくのが良く分かった

「ワタシガ・・・ワタ・・・」

最後には全く動かなくなってしまう、L&Cの灯火が消えた瞬間だった

「竜哉さん、最後です・・・」

リーシェの言葉にうなずき、竜哉の乗るハイシェントはフルパワーを溜めはじめる
最後のハイシェントの咆哮が響くとL&Cの体がハイシェントから放出された光に包まれ消滅していく
光が消え去った時、巨大なL&Cの姿はどこにもなく、爆発の後と竜哉達だけが残っていた

「勝つには勝ったけれど・・・」

竜哉はどうすればいいか分からなかった、メルやダリアの失った命は帰ってこない
棗も竜哉にどう声をかけていいのか分からなかった
犠牲なくしては勝利はできなかったのだろうか
竜哉の中にずっと心に響いていた
[PR]
by meruchan0214 | 2007-02-26 20:00 | 竜の翼 ハイシェント

タキルの章 6輪 地上へ戻る

タキルとケイナはこの国の王マルズに呼ばれ、謁見の間に居た
マルズを前にした時、自分の血が騒ぐのを感じた、マルズとまるで共鳴しているかのようだった

「もうすっかり体調は大丈夫のようだな」
「はい、お陰様で」

マルズは嬉しそうな表情をする、その顔は魔族といえどもとても優しい顔だった

「タキル、ケイナ、お前達が私の子孫であるということは既に聞いているな?」
「はい」
「ええ」
「お前達には我々の代表として地上に行ってもらいたい」
「それは魔族として・・・ですか?」

ケイナが聞くとマルズはそれに頷いた

「人間と魔族はもう何千年という年月を争い続けてきた、それを急に変えるということは不可能だ」
「確かにそうですね」
「だが、幸いにも我々に理解を示してくれている人間達も居る」
「人間との共存の道を進めるということですね」
「そうだ、人間には我々に無いものを持っている、当然、我々にも人間に無いものを持っている」

無いものを理由に支配するのではない、それをお互いに協力し理解しあえば共存できるということだろう

「タキルをリーダーとして、ケイナ、シェリル、ヘーテがタキルの補助、それに我々の精鋭を護衛として連れて行け」
「分かりました」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、俺がリーダーなのか?」

急に言われて驚いて、敬語を使うのをやめてしまう
実力ならばケイナやシェリルの方が上なのは明らかである
それを何故自分が選ばれたのかが分からなかった

「これはケイナとシェリルが決めた事だ、私が言うべきことではない」
「大丈夫よ、貴方ならできるから」
「でも・・・」

結局はタキルにその決定を覆す事はできず、リーダーとして魔界から地上へと向かうことになった

「タキル様、これからよろしくお願いいたします」

ヘーテは深々とタキルへと頭を下げる

「いや、そんな律儀にやらなくても」
「いえ、マルズ様が貴方の下で働くようとの命令です、それに従うのが私の仕事ですから」

タキルは内心とっつきにくいなと思いながらも、三人と魔族を引き連れて地上へと向かった
自分が生まれた土地、例え記憶をなくしたとしても体が懐かしさを感じていた
[PR]
by meruchan0214 | 2007-02-23 12:32 | 架空世界[フリトアネイス]

アーツの章 6輪 襲われる都

あれから一ヶ月が過ぎた、魔族にも色々な者が存在するということ
タキルが生きているという事など良い報告がたくさんあった
しかし、当然良い結果のみというわけにもいかなかった
魔族に襲われた村が間に合わず救えなかったなど少なからずあった

「きりがないな・・・」
「そう、ですね」

魔族は倒しても倒しても現れる、ヘーテの話では魔界はこの地上と同じくらい広いらしい
星の数ほどの人間がいるとすれば、星の数ほどの魔族が存在するのと同じ事だった

「皆は大丈夫かな」
「大丈夫ですよ、そんな気がします」
「そうだよな」

本当はマヤも心配でたまらないだろう、聞けばルティ達も旅に出たらしい
タキル達の事は知っているとは思うがそれでも女だけなのは心配だ
合流しようかと考えたが、アーツ達にも任務があり、ルティ達も考えがある為それもできなかった

「アーツ様!!」

伝令が慌ててアーツのところへとやってきた

「どうしたんだ?」
「魔族がグラディアを襲ってきました!!」
「何だって!!」

アーツ達は急いでグラディアへの道を走った
ここからどんなに急いでも一週間近くかかってしまう
それまでグラディアが持ちこたえてくれていればと信じるしかなかった

「くそ、想定していたことなのに!!」

グラディアに戻った時にはひとまず戦闘は終わっていた
多少、壊れた城壁が目立つものの何とかグラディアは持ちこたえたみたいだった

「アーツ、只今戻りました!!」
「アーツさん、お待ちしておりました」

王女であるアーシャがアーツを出迎えた

「今の状況は一体どうなっているんですか?」
「ヒリウが率いた近衛隊が何とか退けましたが、いつまた襲ってくるか・・・」
「分かりました、私の部隊も防衛に回ります」
「お願いいたします」

アーツは旅の疲れがとか言ってはいられない
グラディアを故郷を守る為に戦わなくてはいけなかった
[PR]
by meruchan0214 | 2007-02-23 12:31 | 架空世界[フリトアネイス]

55陣 

L&Cはそれが一つの巨大なDEPSであった
最初に自分達が見ていたものはそいつの上半身だけに過ぎなかったのだ

「いっけえええ!!」

竜哉達の一斉攻撃を浴びせるが、相手はびくともしない
攻撃の効果が適用されているのかすら分からない

「流石にL&Cを統べるだけあって、強いね・・・」
「確かにな・・・」

ハイシェントやエレストリカ、レドン、ナイーズ、ソルレオン、全てを狩る者も全てがL&Cに攻撃を集中させている

「その程度でこの私を倒せると思うな!!」

L&Cはその巨体に見合わない速度でハイシェント達を薙ぎ払う
ダメージはまだ大したことではないものの、積み重ねる訳にはいかない

「あいつに弱点ってないのか?」

竜哉が不安になるのも無理はない、皆がそう思っていることだった
こちらの攻撃をものともせず突っ込んでくる様は恐怖としかいいようがなかった

「私が試してみるか・・・」

メルが何かを思いついたようだ、それに対応してソルレオンがL&Cへと向かっていく

「メル、何を思いついたの?」
「弱点がないなら無理やり作るってね・・・」
「なるほどね」

ダリアもメルの考えを察知したようであった

「二人とも、何をするつもりだ!?」

L&Cの攻撃をぎりぎりで避けながら、ソルレオンの白兵戦のできる距離まで近づいた

「いくよ!!」

ソルレオンの爪がL&Cの肉体に食い込むがさほど効果が無いように思える

「無駄だ、お前達の攻撃が私に届くわけがない!!」

L&Cはソルレオンを叩き落そうとする
だが、ソルレオンの周囲に障壁みたいなものが張られており攻撃が届かない

「メル、あんまりもたつかないでね、これあまり持たないから」
「分かってる、もう少し」

ソルレオンの爪が少しずつL&Cの肉体の奥へ奥へと押し込まれていく

「OK,いくよ!!」

ソルレオンが急に高熱を発し始めた

「まさか・・・自爆!?」

凄い勢いで赤くなっていくソルレオン

「やめるんだ、メル!!ダリア!!」
「相手に攻撃を届かせるには奴の肉体の鎧を剥ぐしかない、でも外からじゃどうしようもないから・・・」

色々言っている間にもどんどんとソルレオンの温度は上昇していく

「リーシェさんからも何か言ってください!!」
「私からは・・・何も・・・」

リーシェは既に喋るのも辛そうだ、しかし、リーシェが普通でもきっとメルとダリアはリーシェの言う事は聞かなかっただろう

「竜哉君、ミスティの事よろしくね」
「後はしっかり頼むからね」

メルとダリアの最後の言葉
その次の瞬間、ソルレオンは凄まじい爆音と共に大爆発を起こした
メルとダリア、そしてL&Cを巻き込んでの爆発だった
[PR]
by meruchan0214 | 2007-02-23 09:02 | 竜の翼 ハイシェント