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騎士の影 4

「ねぇ~、ジュリ~遊ぼうよ~」

いつも通りエルミナ様が私に声をかけてくる
私はあくまでも護衛であり、遊び相手ではない
そう思っていた

「!!」

私は不意に近づいてくる気配を感じた
1・・・2・・・3・・・
全部で3つの気配が感じ取れた

「エルミナ様、私から離れないで下さい」
「ん?」

明らかにこちらに敵意を持って近づいてくる
そして、私達の前に現れたのは身なりは粗野な格好をしており、腰には剣が刺さっている
風貌から言ってマトモな職についているとは思えない

「どっちがお嬢様だ?」
「似顔絵通りだと、あっちだな」

男たちは何やら話し込んでいる、どうやらエルミナ様を誘拐するつもりらしい

「もう1人はどうする」
「抵抗するならやっちまっても構わねえさ」

男たちはこの時点で既に間違っていた
まだこの時の私は若いとはいえ、敵の力を分からないほど愚かではない
明らかにこの男達は私よりも格下の相手だった

「お前たち、このまま立ち去れば何もしない。だが、エルミナ様に近づくなら容赦はしないぞ」

私の言葉にキョトンとした男達、しかし、すぐに笑いはじめた

「はっはっは、面白い事言うな。下らん、やっちまえ!!」

男達は一斉に私達に向かってきた
私はエルミナ様を後ろに前へと歩き出す

フッと男たちとすれ違う、男達は何も気がついていない

ポタ、ポタ・・・

何かが垂れる音で男達はやっと気がついたみたいだった
自分達の体が傷ついている事、そして私との実力の差を

「ひ、ひぃぃぃぃ」

男達の顔色がみるみると青ざめていく
私の使う武器元々拷問器具であるため、殺傷能力は高くない
だが、相手を苦しめるという点においてはこれ以上ない武器である

「今、楽にしてあげます」

私は懐にしまっていた短剣を取り出し、恐怖ですくんで動けない男達に構える

「待って!!」

男達を殺そうとした私を止めたのはエルミナ様だった
普通の子供であれば、怖くて動けないはずだ
だけど、エルミナ様は力強く前を向いていた
体は小刻みに震えている、当然だろう、しかしそれ以上に強い意思がエルミナ様を動かしているように見えた

「それ以上する意味はないよ」
「何故です?エルミナ様を連れ去ろうとしたのですよ。悪人は裁かれて当然です」
「でも、それ以上やったらこの人たちは罪を償えなくなる、命は一つしかないんだよ」

私よりも年下のエルミナ様が凛とした表情で説教をする
しかも、今まさに自分自身が誘拐されようとしていたのにも関わらず、その相手を庇っている
私にはエルミナ様の行動が理解できなかったが、何故か彼女の言葉には心を惹かれてしまうものがあった

「・・・、分かりました、エルミナ様が言うのであれば」

私は短剣をしまうと男達を官憲に突き出した
それを見ていたエルミナ様は本当に嬉しそうな表情をしていた。

「ありがとう、ジュリ」
「お礼を言われるような事はしていません」
「でも、私を助けてくれたし、言うことも聞いてくれたよ」

今までと同じ事をしていて「ありがとう」なんて言葉をいわれたのは初めてだった
初めて言われたこの言葉は私にとって恥ずかしく、そしてとても嬉しかった

「こ、今回だけですからね」
「あはは、ジュリってば赤くなってる」

この時、初めてお父様が言っていた事を少し理解した気がする
そしてこれが私とエルミナ様の関係の始まりだった
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by meruchan0214 | 2007-07-14 21:40 | 短編小説

騎士の影 3

私は次の日からエルミナ様のボディガードとして表舞台に立つことになった
自分はこういったことは似合わないと判っている
けれども、父親の命令には逆らえない

仕方がなく私はエルミナ様のボディーガードをしていた

「ねぇ、ジュリ、遊ぼうよ~」
「いけません、私は貴方のボディガードであって、遊び相手ではないです」
「だって、お父様はそうは言ってなかったよ~」

旦那様は何を考えていらっしゃるのか、お父様も含めて訳が分からない
エルミナ様はずっと私と遊ぼうとしている

私にはそれがかなりイライラすることであった

「ねえ、何でジュリっていつもそんな怖い顔してるの?」
「そうですか?」

私は言葉で否定はするものの、自分でもイライラしているのは分かる
それが気づかないうちに表に出てしまっていたのだろう

気づかれないように極力努力をしていたつもりだった
しかし、エルミナ様には分かってしまっていたのだ

「もっと一緒に楽しもうよ、ね?」

エルミナ様は屈託のない笑顔を私に向ける
私にはそれが眩しすぎてしっかりと受け止める事ができなかった
ついつい、顔を背けてしまう

「ジュリ~、遊ぼうよ~」
「いけません!!」

つい声を荒げてしまうがエルミナ様はお構いないといった感じだった。
この時、私はまだ気がついていなかった
イライラしていたのは、彼女ではなく、自分自身の心だと言うことに

それを心の底では求めていたと言うことさえも分かっていなかった
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by meruchan0214 | 2007-07-05 22:16 | 短編小説

騎士の影 2

12年前、私はまだ12歳だった
しかし、実力に年齢は関係ない、幼いからの修行を積んできた私は12歳でも、家系の中でも秀逸な実力であった。

「お父様、私は納得できません」

私は同じ暗殺者である父親に申し出た。

「決まったことだ、明日からエルミナ様の正式な近衛兵として従うのだ」
「何故です!!」

私には意味が分からなかった。
私達は今までギルバート領で影として生きてきていた。
これからもずっとそうなっていくと思っていた。

「命令だ、分かったな」

私の父はそれだけ告げると、私の前から音もなく消えた。
私はその場に立ち尽くすしかなかった。

父親に言われた意味も分からずに・・・
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by meruchan0214 | 2007-07-01 22:05 | 短編小説