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misson9 信じえぬ

アリシアはザムレイズ軍の戦艦へと連れてこられた。
当然、優遇されているわけではなく、捕虜としてであった。

「殺されないだけ、マシか・・・、それとも殺されたほうがマシか・・・」

自分自身に余裕があったのだろう、それが油断を生んでしまったのかもしれない。
その結果が今の結果である。

周りがアリシアに銃を向けられ、アリシアは歩かせられる。
空気がピリピリとしており、少し息苦しい感じがする。

「ウロボロスとはやっぱ違うよね」

ウロボロスは軍が存在しているといっても、もっと全体的に温和であった。
さすがに戦闘の時は気を引き締めてはいたが、やはり雰囲気が違う。

銃を突き付けられたまま司令室と思わしき場所へと連れてこられる。

「司令、連れてきました」
「御苦労」

何故かアリシアにも言葉が分かった、確か以前ステイルが来た時は翻訳機を使っていたはずだった。

「何故、君達の言葉を知っているか驚いているようだね」
「どういうつもりなの?貴方地球圏の人間よね」

勘の良いアリシアはすぐに司令官が地球圏の人間だと感づいた。
しかし、指揮していたのは明らかに地球圏の人間ではない、外から来た人間達だ。

「同志に協力するのは当たり前だろう?」
「なっ・・・」

アリシアは言葉が出なかった。
そう、この地球圏にもザムレイズに繋がっている人間達がいたのだ。

「じゃあ、今回の侵攻も・・・」
「流石にハイシェントを任されていただけあって、なかなか聡明な娘さんだ。おそらく君の想像している通りだろう」

偶然でも何でもない、ザムレイズがやってきたのは地球圏の人間の仕業だったのだ。

「一体、何の為に・・・!!」
「私達が地球を、この地球圏を支配する為だよ。だが、世の中は平和だのなんだの、話し合いで・・・。おかしいと思わないかね、力ある者が支配するべきなのだよ」

アリシアは心の底から怒りが湧き上がるのを感じていた。
自分達の私利私欲の為に同じ人々を簡単に戦火に巻き込むことが。

「どうかね、我々と一緒に来ないか?君ほどの実力があれば、直ぐに出世できるぞ?」
「絶対に嫌よ!!」

アリシアは目の前の人間に今すぐにでも殴りに行きたかった。
しかし、捕虜となって動けない体がそうはさせてくれなかった。

「ふふ、あれだけの実力差を見せつけられても、まだ分からないか。まぁいい、連れて行け」
「絶対に貴方達は許さない・・・」

アリシアは独房へと連れて行かれる。
部屋の中は粗末な造りになっており、本当に最低限の生活する空間しかない。

無理やり押し込められるように部屋に入れられたアリシア。
何もできない自分が悲しくなってきた。

「・・・、まさか地球圏の人間が・・・」

少し落ち込んでいたアリシアだったが、すぐに次の問題に気がついた。

「という事は、内部にザムレイズと通じている人間が・・・」

誰にも伝えることはできない。
相手もそれがわかっていて、自分の目の前に姿を現したのだろう。
ウロボロスにそういう人間がいないと信じたいがそれでも不安になってしまう。

「みんな・・・」

自分が捕まっているということよりも、残った両親や仲間たちが気になる。
ハイシェントも敵に接収されてしまった。
ただ、今のアリシアには祈ることしかできなかった。

一方、ザムレイズの格納庫ではハイシェントが収められていた。

「これが、地球軍、いやウロボロスのハイシェントか」
「やはりレフィン様のハイシェントと似ているな」
「基本的に技術が応用できるからな、これからは我々の兵として動いてもらおう」

ハイシェントのスペックは今もなお高水準を誇っていた。
敵からしてみれば、強力な武器を手に入れたようなものだった。

「まずぃなぁ・・・、とりあえずデータはバックアップしておいてと・・・」

ルピナは自分ができうる限りの事はやっている。
いくらAIとはいっても、直接稼働できるわけではない。
あくまでもサポートとしてのAIなのである。

ルピナがサポートしなければ、パワーダウンするとはいえやはりルピナ的にはいい気はしない。

「アリシアちゃんは無事かなぁ・・・、変なことされてなければいいけど・・・」

同じ立場であるアリシアを心配するルピナ。
整備されながらも何もできない自分に歯がゆさを感じる。

きっと、アリシアは自分を責めているだろうと、ルピナは考えた。
弾が無数に飛び交う戦場だ。
絶対なんてことはありえないし、それはハイシェントといえども例外ではない。
だから、アリシアが責任を感じることはないとルピナは思っていた。

「あ・・・」

ルピナは何かを思いついたようであった。
もしかしたら、アリシアを救い出して自分も脱出できる。
可能性はあまり高くはないが、やらないよりはマシであった。

「やってみるかぁ・・・」

ルピナの思いついたこととは、このザムレイズ艦のハッキングであった。
ルピナ自身が既にAIであり、無線でもある程度の距離なら侵入できるためであった。
だが、根本的に性質が違う可能性が高い。
そうだった場合、ハッキングは意味無いものになってしまう。

一途の望みを託しながら、ルピナはハッキングを開始した。
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by meruchan0214 | 2007-11-28 21:34 | 守護機兵 ハイシェント2

misson8 驚愕

あれから、何度か小競り合い程度での戦闘があった。
お互いに様子見という程度で、被害もほとんどなかった。

何度かそういった出撃を繰り返すうちにアリシアも戦うことになれてきていた。

「サポートはできるけど操縦するのは、アリシアちゃんなんだからね」
「わかってるよ、ルピナちゃん」

ハイシェントに居る、ルピナとも息が合ってきていた。

「リシェルさん、戻りました」
「御苦労さま」

リシェルは書類の束に向かって仕事をしていた。
大きな戦闘が無い今のうちというところだろうか。
本当ならば、ずっとこの仕事だったらいいのにとリシェルは漏らす。

「事務だけならどんなにいいことか・・・」
「そうも言っていられませんからね」
「ただ、あの人もこのまま黙っているとは思えないしね」

あえて名前を言わないのがアリシアは少し気になった。
けれども、相手の侵略が終わったわけではない。
ザムレイズ軍がこのまま終わるわけではないと確信していた。

どれだけステイルが周りを止めてくれるかにも期待はしていた。

「必ずまた戦わないといけない時が来るからね・・・」
「そう・・・ですね」

戦いに慣れたといっても、好きになったわけではない。
いつでも、人殺しが大義になってしまう戦いが怖いと思っている。

ビーッ!!ビーッ!!

ウロボロスの警報が鳴り響く。

「アリシア!!」
「はい!!」

アリシアは急いで格納庫へと向かった。
リシェルも仕事をやめ、ブリッジへと向かった。

「ジョニカ、相手は?」
「はい、ザムレイズ軍の中隊です。先行部隊かと思われます」
「なるほどね、フリス隊とアコナ隊は出撃して。アリシアもハイシェントで出てもらって」
「了解!!」
「他の部隊も直ぐに出れるように準備をしておいてね」

ウロボロス内に緊張が走る。
今までの小競り合いとは違う状況に新しい戦乱の予感を感じていた。

アリシアはハイシェントに乗り込み出撃する。
次いで、リシェル、そしてフリス、アコナ達も出撃した。

「さて、どうでてくるか・・・」
「相手も前回と同じような轍は踏まないだろうからな」

お互いが様子を窺いながら徐々に距離を詰めていく。
そして、ザムレイズ軍からもパワードールの出撃が確認できた。

射撃距離に入って、ウロボロスの機兵とザムレイズのパワードールが戦いを開始する。

「いけ!!」

ハイシェントの弾がパワードールに放たれるが、電磁シールドで攻撃が阻まれた。

「な・・・」

驚きを隠せなかったのはアリシアだけではなかった。
パワードール全てに電磁シールドが搭載されているのだ。

「皆、退いて!!」

リシェルの声に皆が後退戦を始める。
電磁シールドがある以上実弾兵器のダメージは薄い。
遠距離で電磁シールドを打ち破れるのは、現状ではハイシェントとエルブラスト位であった。

「アリシア、ウロボロスが退くまで時間を稼ぐわよ」
「分かりました」
「いい、絶対に無理しちゃだめよ」
「はい」

ハイシェントとエルブラストはウロボロスや部隊全体を守るように少しずつ後退する。
しかし、敵の攻撃は激しくウロボロス軍を攻めたてる。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「レムド!!」

逃げ切れなかったウロボロス軍の機兵が破壊される。
防御に徹しているからまだ何とかなっているが、このままでは敗戦は必至だった。

「リシェル様!!全機格納終わりました!!」
「わかったわ、アリシア!!」
「はい!!」

ハイシェントとエルブラストもその場から撤退しようとする。

「アリシアちゃん!!危ない!!」
「しまっ・・・」

一瞬判断が遅れたアリシアは電磁シールドが間に合わず、被弾する。

「く・・・」

アリシアはハイシェントを動かそうとするが、何も反応がない。

「駆動系に損傷・・・。動けないや」

当たり所が悪かったとしか言えなかった。
動きを停止したハイシェントにパワードールが近づいてくる。

「アリシア!!」
「ハイシェントはもう、動けないみたいです」

リシェルの通信にアリシアは諦めたように喋る。
思った以上にアリシアは自分の事を認めることができた。
これで終わりなんだと、素直に受け入れてしまった。

「ちっ・・・!!」

リシェルは何とかハイシェントを回収しようとするが、パワードールに阻まれて近づくことができない。
ハイシェントは動けないまま、敵のパワードールに接収される。

「すいません、リシェルさん・・・。私のせいで」

それを最後に通信が終わった。

「アリシア、ルピナ、ごめんね・・・」

ハイシェントが敵に接収され、これ以上は無理と判断したリシェルはウロボロスへと後退する。
何とか取り戻したかったが、1機ではどうしようもなかった。

一方、ハイシェントのコクピットの中ではアリシアがルピナに話しかけていた。

「ごめんね、私のせいで」
「ううん、大丈夫。アリシアこそ・・・」

敵に捕まるということ、それから先どうなるかは誰もわからない。
ただ、アリシアはウロボロスの皆、リシェル、そして両親であるフリスとアコナに申し訳ない気持で一杯だった。
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by meruchan0214 | 2007-11-14 19:00 | 守護機兵 ハイシェント2

misson7 変わりゆく

アリシアは正式に軍人としてウロボロスに居ることになった。
階級は低いものの、その先立っての戦いでの活躍は既に有名になっていた。
もちろん、両親が前戦争の英雄であるということも、加味してのことではあった。

「ん~・・・、今日は休みだ!!」

久しぶりの休暇、ここのところ暇さえあればシュミレートや軍部関係の処理など忙しい毎日だった。
リシェルの見立てでは暫くはあちらから攻めてこないだろうということでの休暇だった。

「学校はどうかな・・・?」

なし崩し的に軍人になったアリシアは急に学校に行かないように思われても仕方がなかった。
ジョニカから話はいっている為、休学扱いでまだ学校には在籍している。

アリシアはそっと学校を覗いてみると、いつもと変わらない風景がそこにはあった。
当たり前の事、それがとても羨ましく思えてきた。
今まで居た場所ではない、それが今の自分の居場所。

だからこそ、当たり前だった場所を守りたい。
皆がいつものように生活できる場所を守りたかった。

「うん・・・、頑張れそう」

アリシアは戦いをする意義を見出し始めていた。
ブラブラとのんびりしていると、以前の女の子、ハイシェント自身が遊んでいた。

「あ、アリシアちゃん。こんにちわ~」
「こんにちわ、えっとそういえば、名前教えてもらってないよね・・・?」
「あれ、言ってなかったっけ??まあ、いいや、私の名前はルピナだよ」
「ルピナちゃん、この前一緒に居た子は?」
「ナミアはお母さんと一緒に居るって言ってたけど」
「ふ~ん」

こうやって話してみると、普通の女の子とまったく変わらない。
それが戦闘になると、ハイシェントの頭脳として動いているのだ。

「ねぇ、ルピナちゃんって170年も前からハイシェントに居るの?」
「うん、そうだよ」
「作ったのはお母さん?」
「作った・・・っていうよりは~、お母さんが助けてくれたんだ」
「助けてくれた?」

アリシアはルピナの話に興味が沸いた。
ただのプログラムだったら、助けてくれたなんていう表現はしないだろう。

「お母さん、死に掛けた私とナミアの意識をデータ化して保存したんだ」
「データ化して・・・保存・・・?」

今では考えられないことだ、確かに歴史にはそういったことを実験していたという事実は残ってはいる。
だが、リシェルなどを見ていると確かにそれしか考えられないことではあった。

「一番辛いのはお母さんだから、私達が助けてあげないといけないの。ずっとずっと悩んでるから」

今までリシェルを見てきていてそんなそぶりはほとんどなかった、
悩んでいるといっても、作戦の事などをいつも考えているようだったのだ。

「ルピナちゃんはお母さんのこと、大好きなんだね」
「うん!!もちろん!!」

アリシアはこれ以上突っ込んだことは今は言わないほうがいいと思った。
彼女の話は本当だと思う、ということはお父さんといったあのプロトタイプハイシェントは確実に実の父親だ。
両親がお互いに敵として戦い、娘達は母親と共に戦う。
どう思っているのか興味はあったが、聞く気にはなれなかった。

「そういえば、ルピナちゃんってその姿はどうなってるの?」
「触ってみる?」

アリシアは触ろうとするが、ルピナの体をすり抜ける。
今目の前に居る、ルピナの姿は立体映像なのだ。

「それで、この前目の前で消えたんだ」
「うん、ウロボロスの電気系統を伝って帰るだけだから」
「ん~でも、実際にはここに居ないってことだよね?」
「感覚的には意識だけ居るって感じだよ、実際のデータはハイシェントの中だし」
「ふ~ん」

予想以上にしっかりしている、ルピナ。
子供と言っても170年も前の話だ、学習機能が当たり前だとしたら当然とも言えるだろう。
しかし、子供っぽさは抜けてはいないようだ、それはAIとしての設定なのか、彼女自身がそうなのかはわからない。

「これからもよろしくね」
「あ、うん。よろしくね」

ルピナはにこやかに笑った。
それにつられてアリシアも笑ってしまう。

「アリシアちゃん、凄かったけど。それに慢心しちゃ駄目だからね」
「分かってるわよ」

ルピナに釘を刺されるが、実際そのとおりだとアリシアは思う。
アリシア自身、自分の才能を感じていた。
でも、それに溺れてしまったら駄目になりそうな自分が居た。

「ん、じゃあ約束」

ルピナは小指を出して指切りを示した。
アリシアは指を出すが、当然ルピナは映像の為すり抜けてしまう。
だけど、やることに意義があった。

「それじゃあ、そろそろ私、戻るね」
「うん」
「今日は楽しかったよ~、バイバイ」

ルピナの姿が消えていった。
ある意味ここに居る限りは便利な姿だとアリシアは思った。
しかし、自分は人であり続けたいと思ってしまった。

きっと、リシェルもそれを望んでいるんだろう。
人が人でなくなってしまわないようにと。
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by meruchan0214 | 2007-11-11 00:12 | 守護機兵 ハイシェント2

misson6 過去遺産

アリシアが眠りについている頃、ウロボロスの格納庫ではリシェルが一人、ハイシェントとエルブラストの前に立っていた。

「ごめんね、辛い思いさせて」

リシェルがハイシェントとエルブラストに話しかけると、まるで実物がそこにいるような精巧なグラフィックスが現れた。
それは二人の女の子でどことなくリシェルに似ている。

「ううん、平気だよ。お母さん」
「そうだよ、ルピナの言うとおり。例えお父さんでも許せないことは許せないから」

二人の女の子はリシェルに心配かけまいとわざと元気そうな声を出している。
それに気がついているリシェルであったが、わざと知らない振りをしていた。

「ありがとうね。ルピナ、ナミア」

ルピナとナミアは嬉しそうに笑顔を作る。
両親同士が戦いをする、それに自分自身は父親と戦わなくてはいけない。
辛いのはリシェル自身だけではなくて、二人も同じ筈なのにその様子を見せようとしない。

「まったく、誰に似たのかしら・・・」
「ん?」
「何か言った、お母さん?」
「何も言ってないわよ」

こんな時でしか、家族としての時間も持つことができない。
それにリシェルは少し後悔していた、娘達の意識を機兵に移したことを。

「あの時の選択は合っていたと信じてるけど・・・」

リシェルは昔の事を思い出していた。



170年前、人々が宇宙に住み始めてから数年の月日が流れていた。
その中でもとりわけ、研究熱心だったのがリシェルを含む研究団だった。

「リシェル、検査結果出てるわよ」
「ありがとう、そこに置いといて、後で見る」

この頃のリシェルはまだ戦いなどという言葉も知らなかった。

「レフィン、そっちはどう?」
「こっちは順調だ、後半月もあれば完成するだろう」

当時、彼女達は宇宙で生活するだけでなく、それぞれの星を移動し中継地点をも担う宇宙船を作っていた。
それが後のウロボロスである。

「しかし、後はAIが問題なんだよな」
「そうね、いくら自動解析とは言っても、人間の感情にはほど遠いし・・・」

この頃の技術はかなり精巧で、見た目は人間と変わらない。
しかし、所詮は作り物。
与えられた任務しかこなすことしかできなかった。

「まあ、制御するには人間の感情は必要ないけどな」
「そんな夢の無いこと言わないでよ」

リシェル達が着手していたものは主に二つ。
超大型の宇宙船と人間にそっくりな思考回路を持つAIを作ることだった。

「そういえば、アレナが面白いものを作ったから後で遊びに来ないかと言っていたな」
「また、アレナが何か作ったの?」
「えらい大掛かりなものみたいだったが・・・」
「それじゃあ、さっさと片付けて見に行ってみましょうか」

そんな事が日常だった。
幸せな生活が続くとリシェルは信じて疑わなかった。
それからしばらくの時間が過ぎていくと、リシェル達の研究の方針は少しずつ変わっていった。

「まさか、このままだと後50年持たないなんて・・・」
「人間はやりすぎたってことか・・・」

人間達の環境汚染が更に進んでおり、リシェル達はこの地球が全滅するのに後50年という結果を出してしまった。

「どんなに計算しても、これを変えることはできないのかな・・・」
「まだ、時間はあるんだ。何とか考えよう」

しかし、リシェル達科学者がいくら集まってもいい解決策を見つけられなかった。
人間がもっと宇宙に出れば少しは変わるかもしれないが、それは非現実的なことだった。

「ウロボロスに人を詰めたとしても、到底足りないな・・・」
「そうだね・・・」

この頃には既にノルンの前身となるスーパーコンピュータが存在していた。
本当にただ計算するだけのコンピューターではあったため、感情的な理論は一切出さなかった。

「やっぱりこれしかないのか」

地球を救う方法はたった一つ。
人間達が少なくなること、だった。
リシェル達はうすうすそのことには感づいていた。
人間達が環境を破壊するのならば、いなくなるしかないということ。

「でも、そんなの非情すぎる」
「問題はないさ、機械が全てをやってくれる」

そして作り出されたのはプロトタイプのハイシェントだった。
機械が人を裁く、その目的に作られたがある欠陥が生じていた。
制御ができないほどの暴走頻度が高かったのだ。

「制御する方法はないのか・・・」
「やっぱり、やめた方がいいのよ」

レフィンはプロトタイプハイシェントの使用方法を日夜研究していた。
リシェルはそれ以外の方法を模索していた。

「これだ・・・これしかない!!」

とある日、レフィンは何かを閃いたようであった。

「人の意識をデータに変換すれば・・・」

理論的には今の技術ではそう難しくなかった。
完全なAIを作るのは無理でも、人の意識をデータに変換するのは簡単だった。
人の意識を全て収める器さえあれば良かったのだから。

「レフィン、もうやめましょう」
「どうしてだ、このままだと地球は滅びるんだぞ?」

余りにも危険なモノ、それを制御する術を手に入れたらどうなるか。
リシェルは徐々に変わってきているレフィンに気がついていた。

「ハイシェントは破壊しましょう」
「確かに、あれは危険すぎる」

レフィンを除いた人達の総意だった。
だが、その決断は遅かった。

「ハイシェント動きます!!」
「なんですって!?」

破壊する前にレフィンがハイシェントを起動してしまったのだ。
AIが不完全なまま動かせば、自分達の身も危ない。

「く・・・くくく・・・」

ハイシェントからレフィンの声が聞こえる。

「素晴らしい、肉体という呪縛から解き放たれるというのは!!」
「レフィン・・・貴方・・・!!」

リシェルはその言葉で全てを理解してしまった。
レフィンは自分自身の意識をプロトタイプのハイシェントに移植したのだ。

「私がこの地球を守ってやる、全ての人間に粛清を与えるのだ」
「レフィン、やめて!!」

既にリシェルの言葉はレフィンには届いていなかった。
ハイシェントは研究所の天井を力任せに突き破ると、上空から砲台を構えた。

「最初の粛清はお前達だ!!」
「皆、逃げて!!」

散り散りに逃げるのもつかの間、ハイシェントから一筋の光が放たれた。

「きゃあああああああ!!」

辺りのモノは薙ぎ払われ、研究所は倒壊する。
研究所だったものは瓦礫に変わり、ハイシェントはその場を去っていった。

「う・・・」

ゆっくりと目を開けるリシェル、それと同時に右足に激痛が走る。
おそらく、骨まで折れているが今はそんなことに構っている暇はなかった。

「皆!!ルピナ!!ナミア!!」

歩く度に激痛が走る痛みを堪え、皆を探す。

「リシェル・・・」
「アレナ!!」

リシェルはアレナに近づく、だがアレナは瓦礫の下敷きに上半身だけが出ている状態だった。
何とか助けようとするが余りにも乗っている瓦礫は重く、どかすことができない。

「リシェル、スパコンはまだ無事・・・?」
「何を言っているの・・・?」
「お願い、確認して」

リシェルはスーパーコンピュータを確認する。
あれだけの衝撃を受けたにも関わらず、スーパーコンピューターはその姿を保っていた。
もちろん、活動も停止していない。

「大丈夫・・・みたいよ」
「そう・・・、なら、私の意識を吸い出して、もらえる?」
「!!」
「このままじゃ、レフィンをとめられる人はいなくなる。だったら、スーパーコンピューターに私の意識を移せば・・・」
「アレナ・・・」
「お願い、リシェル」

アレナの懇願に断ることができなかった、生きているうちならば意識を吸い出すのは簡単だ。
だが、それは肉体の死を意味することでもあった。
どうせ待つ死で後悔するくらいならば、意識を吸い出して機械として生きる方がマシだと考えたのだろう。

「リシェルはルピナちゃんとナミアちゃんを・・・、ダウンロードが終わったら私も探すから」
「ごめんね・・・」

リシェルは最後にダウンロードを始めると娘達を探しに行った。
足に激痛がはしり、歩く度に言葉にすらできないほどの痛みがリシェルを襲う。

「ルピナ!!ナミア!!」

必死に娘を探すリシェル、こんなことをしたのが夫であるレフィンだということを信じたくは無かった。
運命というものは残酷だった。
リシェルが二人を見つけたときには、彼女達の命のともし火は既に消えかけていた。

「ルピナ・・・、ナミア・・・」

この時、全てを失うのが急に怖くなっていた。
夫は消え、仲間たちも死に、愛する娘達もいなくなってしまう。
それだけがどうしても許せなかった。

「アレナ!!」
「リシェル・・・、二人は・・・」
「まだ、息がある今のうちなら・・・」
「本当にそれでいいの?」
「私は・・・、私は・・・」

自分よがりだということは分かっていた。
後悔する事も分かっていた。
けれど、自分の命よりも娘達が失う方がずっとずっと怖かった。

「お願い・・・」
「分かりました」

スーパーコンピュータにダウンロードされたアレナは自分の意思でスーパーコンピュータを動かしていた。
研究員の仲間達でまともに生き残ったのはリシェルだけだった。
かろうじて息が残っていた者たちは自ら、意識をデータへと変換した。
自分達の犯してしまった過ちを消すために、あえて人であることを捨てた。

あるものはコンピュータにあるものはウロボロスに、それぞれの意識をデータ化しAIとして生まれ変わっていった。

「レフィンは止めないといけない・・・」

リシェルは機械化した仲間達と共にハイシェントに対抗しうるモノを作り始めた。
しかし、実験の段階でプロトタイプのハイシェントと同じ結果になっていた。

「こんなことをしている間にも・・・レフィンは」

最近のニュースの見出しはいつも変わらない。
謎の巨大ロボットが街を破壊しつくというものだ。
電磁で身を守るハイシェントに攻撃は効かない、核を使えば倒せるだろうが、それでは地球が汚染されてしまう。
この時代にはハイシェントを破壊する手段が全くと言って良いほどなかった。

街の人々はこの竜のロボットに怯える日々が続いた。
それはまるで恐竜映画でも見ているかのようだった。

「制御できないなら・・・」

リシェルは開発段階で自分もデータ化することを考え始めていた。
以前、レフィンがやったことと同じように。
そうすれば、自分の思うように動かせる、レフィンを止めることができる。

「本気なのか?」
「ええ、本気よ」

かつての仲間達が私に言葉をかける。
レフィンを止めるには同じ事をするしかない。そう思っていた。

「けど、それは無理な相談よ、リシェル」
「どうして?」
「もう、新しいハイシェントには同じ事を考えた人間がはいっているもの」
「同じ事を・・・?」

誰のことなのか分からなかった、自分以外にもそんなことを考えている事を居るとは思いもしなかった。

「お母さん!!」
「ルピナ!!」

そう、ハイシェントには娘のルピナが既に入っていたのだ。

「お母さんは駄目だよ、折角無事だったんだもん」
「ルピナ・・・」

ハイシェントからの声、泣いているつもりはないが、リシェルは涙を流していた。
自分の娘に実の父親を手にかけさせないといけない。
それが、リシェルにとって一番辛い事であった。
本当はまだまだ遊びたい年頃だったはずなのに、運命の悪戯が全てを狂わした。

「でもね、ルピナだけにそんなことはさせられないのよ」
「お母さん・・・?」
「後二機残っているはずよね?」
「リシェル!!」
「アレナ、もう決めたことなのよ・・・」

こうして、リシェルは自らの意識を最初期の機兵に意識を移した。



「もう170年も昔なのか・・・」
「ん?」

リシェルが懐かしそうに言葉を発した。
170年の間、データのバックアップを取るにつれて変わってしまったものも居た。
モイライやノルンがそうだったように。

「でも、まだまだ貴方達の力が必要なのね」
「うん、任せてよ!!」
「また、同じことは繰り返さないよ」

しばらく、リシェルの家族の団欒は続いていた。
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by meruchan0214 | 2007-11-03 17:18 | 守護機兵 ハイシェント2