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misson12 どんなに……

「ここが地球……」
「あの時以来か……」

アリシア、フリス、アコナの三人は地球の軍に迎えられて、地球に降りていた。
アリシアは初めての地球に少し興奮している。
今までウロボロスの中しか知らなかったが、ウロボロスの外はこんなに広い世界なのだと、アリシアは感激していた。

「お父さん、モイライってコンピュータの場所、分かってるの?」
「まぁな、こっちだ」

フリスの先導でモイライの場所へと向かう。
ウロボロスや宇宙にはない違った爽快感がこの地球にはあった。

「でも、何となくウロボロスに似ているよね」
「そうね、でも、正確に言うと、ウロボロスに似ているんじゃなくてウロボロスが似ているなんだけどね」
「そういえば、ウロボロスは地球の環境をベースにしているって授業でやったっけ」

戦争中でなければもっと楽しめるのに、そう思いながらもアリシアは進んでいく。
青い海岸線も緑の山も今はゆっくりと楽しむことが出来ない。

「ここだ」

フリスに案内されてついた先は大きな研究施設だった。
機兵ごと中に入ることができるようになっており、ハイシェントとエルブラストはそれぞれ格納庫へと収納される。

「お待ちしていました」

アリシア達が中に入ると、一人の女性が出迎える。

「アンドロイド……?」

外見こそ人間にそっくりではあるが、虚ろな目と抑揚のない声。
機械的な動きがアンドロイドだと分からせた。

「モイライが待っています、こちらへどうぞ」

アンドロイドはそのままアリシア達を奥へとつれていく。
中は奇麗に掃除がされており、過去の物とは思えない。

大きな広間にでると、無数のコンピューターが辺りに敷き詰められていた。

「お久しぶりですね、フリスさん、アコナさん。そして、初めまして、アリシアさん」
「これがモイライ……」

ひときわ大きなスクリーンに女性の顔が映し出される。
それと同時にスピーカーから女性の声が聞こえてきた。

「リシェルさんが、貴方の所に向かえと……」
「はい、話は聞いています。私達は貴方達に伝えなければならないことがあります」

すると、先ほどのアンドロイドが大きな機械を持ってきた。

「これは一体?」
「電磁シールドを中和する装置です。これをハイシェントとエルブラストに取り付ければ、電磁シールドは全て中和することができます」
「電磁シールドを中和……」
「ですが、逆を言ってしまうと、ウロボロス、ハイシェント、エルブラストの電磁シールドが効果を失う事になります」

確かに電磁シールドが使えなくなるのは痛手ではある。
特にウロボロスは戦闘する手段がない。
電磁シールドが使えなくなったら唯の的になってしまう。

「なるほど……」
「ウロボロスの電磁シールドまでも中和するのか」
「はい、まさに両刃の剣です」

しかし、現状では相手の電磁シールドを何とかしない限りは勝ち目がない。
だが、これを使用するのは自分達が倒せても旗艦が落とされる可能性が高くなるのだ。

「あと、アリシアさん」
「はい」
「貴方に渡す物があります」
「私に?」

モイライは隣の部屋の扉を開けた。

「この奥に、私とノルンからのプレゼントです」

アリシアはその言葉にただ黙って歩いていく。
そこは大きな格納庫になっていた。

「これは……、ハイシェント?」

もう一機のハイシェント、細部を見ると元のハイシェントとはやや違うみたいである。

「以前造られたハイシェントを元に私とノルンが改良を加えたものです」
「でも、これだけあってもAIは彼女じゃないんだよね?」
「それは彼女の意思次第ですが…、代わりのAIは作ってはありますよ」
「それじゃ、ルピナちゃんに聞いてくる」
「分かりました」

アリシアはルピナの元、ハイシェントへと向かった。

「あれ……」

アリシアはハイシェントに近づくといつもと雰囲気が違う事に気がついた。

「ルピナちゃん?」

返事がない、いつもならば呼べば必ず返事が来るはずだ。
おかしいと思ったアリシアはハイシェントの中に入る。

ザ…ザザザ……ザ…

モニターが雑音を立てている。
アリシアは直ぐにコクピットに座り、データを見る。

「これは…!!」

データ内にウィルスが侵食している、データを徐々に書き換えている。

「確か通信は隔離されていたよね…、モイライさん、聞こえますか!?」
「はい、なんでしょうか?」
「ハイシェントのデータにウィルスが…、このままじゃルピナちゃんが!!」

一分一秒でも時間がもったいない、モイライは即座にハイシェントへの接続を試みた。

「……駄目です、接続できません」
「そんな…」
「このままいくと、AIが書き換えられますね。地球に対して敵対するように…」
「じゃあ、あの時には……」

アリシアは捕まった時のことを思い出していた。

「どうにかできないんですか?」
「接続できれば何とかなるかもしれませんが…」
「接続……、そういえば以前マニュアルに」

アリシアは以前読んだマニュアルを思い出していた。

「確かここを……」

思い出しながら先へと進めていく。
焦りで手が震えているが何とか先へと進んでいく。

『パスワードを入力してください』

「パスワード…、一体何だというの」

アリシアは考える。
恐らく設定したのは、リシェルかルピナである。
アリシアはとにかくリシェルとルピナの名前を入力してみる。

『パスワードが違います、正しいパスワードを入力してください』

当然の如くパスワードは弾かれた。
残された時間はあまりにも短い、ゆっくり考えることもできない。

「何か、二人の共通すること……、親子……、違う、じゃあ、ほかには…?」

アリシアは残り少ない時間で考える。

「まさか…でも……ね…」

思いついたのは一つ。
でも、それは今アリシア達と敵対している。
しかし、それしかアリシアは考えられなかった。

『認証しました』

「やった!!」

アリシアは直ぐにモイライに接続できるようになったことを伝える。

「ありがとうございます、これなら何とかなりそうです」

モイライは間髪を入れずにハイシェントへアクセスした。
データが徐々に復旧されていく様を見て、アリシアはホッと安心した。
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by meruchan0214 | 2007-12-20 23:07 | 守護機兵 ハイシェント2

misson11 思う惑い

「そうか、逃げ出したか」
「はい、思ったよりもやるようです」

アリシアが逃げた後、ザムレイズの司令官とその配下が話をしている。

「だが、準備は終わっていたのだろ?」
「はい、全て整っております」

司令官はニヤリと笑みを浮かべた。

「すぐに奴らの恐怖する顔が目に浮かぶわ」

司令官は高笑いをする、それに一礼をし配下は外に出て行った。



「死ぬかと思った……」
「無事だったから良かったものの……、本当に心配させて」
「悪かったと思ってるよ」

戻ってきたアリシアを迎えたのは心配していた仲間達だった。
無事に生きて戻ってきたことを喜んでくれた。

「でも、その代わりに皆に話さなくちゃいけないことがあるの」

アリシアはザムレイズ軍の戦艦の中で出会った、地球圏の人間の事を話した。

「やっぱりね……」

リシェルはその話に納得しているようだ。

「前からおかしいとは思っていたけど」
「そうなんですか?」
「まあね……」

リシェルはいろいろと考えているようだ。

「とりあえず、アリシアは疲れてるでしょ。休んでいいわよ」
「え、大丈夫ですよ?」
「心配させた分、一緒にいてあげなさい」

リシェルはアリシアに両親と一緒に居るようにと遠まわしに言った。
その言葉にアリシアは一礼をすると、部屋を出ていった。

「さてと……」

リシェルは一人、格納庫へと向かった。

アリシアとアコナ、フリスは久ぶりに家でのんびりしている。
戦闘の事で怒られたりもしたが、帰ってきたことに素直に喜んでいた。

「自分の腕を過信しすぎるなよ」
「うん」
「でも、ザムレイズと手を組んでいる人間か……」
「しかも、あの強化されたパワードール相手は、正直辛いね」

歴戦の猛者である、フリスやアコナにとっても大幅に強化されたパワードールは辛いものであった。

「戦わないといけないのに、これじゃあどうしようか」

正直に言って暗い話題しか出てこない。
敗戦したばかりのせいもあるだろう、全体的に士気が下がっていたようだった。
唯一、アリシアが戻ってきたことでいくらか明るくなってはいたが、それでも以前ほどの活気はなかった。

「皆さん」

突然、ルピナの姿に似ている女の子が現れた。

「ルピナ……ちゃん?」

姿形は似ているが、ルピナよりもっとしっかりしている雰囲気だ。

「いえ、ルピナは私の姉です。私は妹のナミアと言います」

礼儀正しくお辞儀をするナミア、それにつられるようにアリシア達も礼をする。

「緊急なのでいきなり用件で失礼いたしますが、地球に降りていただけませんか?」
「え?」
「お母様に何か考えがあるみたいです」

アリシアはそれだったら何でウロボロスの通信を使わないのか分らなかったが、とりあえずナミアの言う通りにする。
アリシア達が格納庫につくとリシェルと数人の整備士が待っていた。

「御苦労さま、話はナミアに聞いているわね?」
「ええ、でも何でまた地球に?」
「モイライの所に行ってもらいたいのよ」
「モイライ?」

アリシアはモイライというのは何のことだか分からなかった。

「モイライっていうのはね、地球を管理しているスーパーコンピューターの一つなのよ」
「へ~」

アコナの言葉に素直に頷くアリシア。

「でも、地球に降りるには何を使うんですか?」
「ハイシェントとエルブラストよ」
「え?」

こんな時にエルブラストとハイシェントをウロボロスから地球へと降ろすというのは危険だと皆が思った。
しかし、リシェルはそれを変えようとはしない。

「ウロボロスはどうするのです?」
「ま、何とかするわ」
「何とかするわって……、リシェルさん本気なんですか?」

リシェルがこういう事で冗談を言わないのは分かってはいるが、ハイシェントとエルブラストの戦力は大きな損害になるのは一目瞭然だった。

「まあね、貴方達に行ってもらわないとダメなのよ」
「分かりました……」

戦いに負けない為にはどうしても地球に降りなければいけないらしい。
その間に負けていたという事になったら目も当てられないが。
しかし、リシェルはそのまま言葉をつづけた。

「幸い、火星、木星のアルカディアとも連携がとれるし、負けはしないから」

負けはしないということは、勝てる訳でもないという言葉の裏返しだとアリシアは感じる。

「なるべく早く帰ってきてね」

リシェルはそれだけ言うと、地球へ向けてアリシア、フリス、アコナを出撃させた。
ウロボロスのクルー達はそれをただ見つめている。

「リシェル様」
「ん?」
「彼らを向かわせた理由は別にあるのでは?」

ジョニカがリシェルに聞く。

「まあね、あの子は闇の部分を知る必要はないのよ」
「例の件、ですね?」
「そう、あの子たちが戻ってくる間に片をつけないとね」

ジョニカはその言葉に静かに頷いた。

「本当は私だけでやりたいんだけどね」

その言葉にジョニカは優しい笑顔を浮かべ、リシェルの後をついていった。
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by meruchan0214 | 2007-12-13 23:43 | 守護機兵 ハイシェント2

misson10 逃走劇

独房に入れられたアリシア、ひとまず身体的には何もされてはいない。
だが、ここから脱出するのは一人では不可能だった。
壁を叩いてみても、ドアをいじくりまわしてみても、全て徒労に終わった。

シュン

扉が開き、一人の軍人が入ってきた。

「ウロボロスの方、ですね?」
「貴方は?」

アリシアが言葉を返そうとすると、軍人は唇に手を当てて喋らず聞いてほしいという、ジェスチャーをした。

「私はステイル隊長の密偵を受けている、イオシスといいます。ウロボロスの方が捕まったと聞いて極秘に助け出すように指示されております」

イオシスは辺りの様子を窺いながら喋る。

「今すぐには無理ですが、必ず何とかしますから。それまで堪えてください」

アリシアはイオシスの言葉に頷くしかなかった。
敵だらけのここでは、もしコレが敵の罠だったとしても状況を打開するにはイオシスの言葉を聞くしかない。

「では、あまり居ると疑われますので失礼します」

イオシスは独房から出て行った。
アリシアはその姿を黙って見送るしかなかった。

「信用して、いいのかな?」

敵の真っ只中にいるせいか、いまいち信用が置けない。

「あ・・・、そういえば、ルピナちゃんは・・・」

今頃になって思いだした。
ハイシェントにはAIとはいえ、ルピナも一緒に居たのだ。
もしも、データを書き換えられてしまったとしたら、ルピナが消えてしまう可能性もあった。

「私も何とかしないと」

他人任せにしているというのはどうにも性に合わない。
やはり、自分が何とかしないといけないのだ。

「少し変わったかな・・・私」

昔の自分だったらそんなことも考えなかったかもしれない。
もしかしたら、自分で死を選んでいたかもしれない。
だけど、自分にはきっとまだできることがある。
そう信じることにしたのだ。

「どうしようかな・・・」

アリシアが悩んでいると、不意に独房の扉が開いた。

「え、え?」

わけのわからないアリシアであったが、恐る恐る扉の外をのぞいてみる。
見張りは立っておらず、ここから抜け出そうと思えば抜け出せそうだった。

「行っちゃうか・・・」

アリシアは意を決して独房から外にでた。
向かうべきは格納庫、何か使える機兵やパワードールがあるかもしれない。
もちろん、ルピナも助けなくてはいけない。

「確かこっち」

大体、一度見ただけで覚えてしまうアリシアは自分の記憶を頼りに進んでいく。
不思議と通る道には人の気配がほとんどと言って良いほどない。
アリシアは極力足音をたてないように静かに歩いた。

「こちらです」

アリシアが歩いていると、不意に聞き覚えのある声がした。

「イオシスさん」
「まさか、こんな直ぐに行動を起こすとは思いませんでしたが・・・、ハイシェントの準備は終わってますよ」
「ありがとうございます」
「さあ、早く」

アリシアはイオシスに連れられて格納庫へと向かった。
格納庫につくとハイシェントが出撃準備を終えて待機させられていた。

「イオシスさんは?」
「私は大丈夫です、早くしないと見張りがきます」
「わかりました」

アリシアはハイシェントに乗り込む。

「アリシアちゃん、大丈夫?」
「私は大丈夫よ、ごめんね」
「ううん、私も大丈夫だから。気にしないで」
「ありがと」

アリシアは整備されたハイシェントを起動させ、無理やり格納庫から脱出した。
それを見ていたイオシスは笑みを浮かべると艦内に戻っていった。

「貴方達は我々の希望、ここで捕まっているわけにはいきませんから」

イオシスはそう呟いた。

「でも、うまくハッキングできてよかったよ」
「やっぱり、ルピナちゃんがやったのね」
「逃げ出すなら捕まった直後がいいってね、お母さんも言ってたよ」

無事に逃げ出したアリシアだが、予想通り追撃部隊が出撃してきた。
しかし、その追撃すらもいとも簡単に振り切ってしまう。

「また、捕まるわけにはいかないからね」
「うんうん」

アリシアはザムレイズ軍の艦の事を思い出していた。
地球圏の人間がザムレイズに協力しているということ。
もしかしたら、ウロボロスにもそんな人間がいるかもしれないということだ。

「信じたくはないけど・・・」

そんな不安を消すように首を振るアリシア。

「どうしたの?」
「ううん、何でもない」

それから、10分後アリシア達は無事にウロボロスへと帰還した。
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by meruchan0214 | 2007-12-03 20:03 | 守護機兵 ハイシェント2