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misson11 思う惑い

「そうか、逃げ出したか」
「はい、思ったよりもやるようです」

アリシアが逃げた後、ザムレイズの司令官とその配下が話をしている。

「だが、準備は終わっていたのだろ?」
「はい、全て整っております」

司令官はニヤリと笑みを浮かべた。

「すぐに奴らの恐怖する顔が目に浮かぶわ」

司令官は高笑いをする、それに一礼をし配下は外に出て行った。



「死ぬかと思った……」
「無事だったから良かったものの……、本当に心配させて」
「悪かったと思ってるよ」

戻ってきたアリシアを迎えたのは心配していた仲間達だった。
無事に生きて戻ってきたことを喜んでくれた。

「でも、その代わりに皆に話さなくちゃいけないことがあるの」

アリシアはザムレイズ軍の戦艦の中で出会った、地球圏の人間の事を話した。

「やっぱりね……」

リシェルはその話に納得しているようだ。

「前からおかしいとは思っていたけど」
「そうなんですか?」
「まあね……」

リシェルはいろいろと考えているようだ。

「とりあえず、アリシアは疲れてるでしょ。休んでいいわよ」
「え、大丈夫ですよ?」
「心配させた分、一緒にいてあげなさい」

リシェルはアリシアに両親と一緒に居るようにと遠まわしに言った。
その言葉にアリシアは一礼をすると、部屋を出ていった。

「さてと……」

リシェルは一人、格納庫へと向かった。

アリシアとアコナ、フリスは久ぶりに家でのんびりしている。
戦闘の事で怒られたりもしたが、帰ってきたことに素直に喜んでいた。

「自分の腕を過信しすぎるなよ」
「うん」
「でも、ザムレイズと手を組んでいる人間か……」
「しかも、あの強化されたパワードール相手は、正直辛いね」

歴戦の猛者である、フリスやアコナにとっても大幅に強化されたパワードールは辛いものであった。

「戦わないといけないのに、これじゃあどうしようか」

正直に言って暗い話題しか出てこない。
敗戦したばかりのせいもあるだろう、全体的に士気が下がっていたようだった。
唯一、アリシアが戻ってきたことでいくらか明るくなってはいたが、それでも以前ほどの活気はなかった。

「皆さん」

突然、ルピナの姿に似ている女の子が現れた。

「ルピナ……ちゃん?」

姿形は似ているが、ルピナよりもっとしっかりしている雰囲気だ。

「いえ、ルピナは私の姉です。私は妹のナミアと言います」

礼儀正しくお辞儀をするナミア、それにつられるようにアリシア達も礼をする。

「緊急なのでいきなり用件で失礼いたしますが、地球に降りていただけませんか?」
「え?」
「お母様に何か考えがあるみたいです」

アリシアはそれだったら何でウロボロスの通信を使わないのか分らなかったが、とりあえずナミアの言う通りにする。
アリシア達が格納庫につくとリシェルと数人の整備士が待っていた。

「御苦労さま、話はナミアに聞いているわね?」
「ええ、でも何でまた地球に?」
「モイライの所に行ってもらいたいのよ」
「モイライ?」

アリシアはモイライというのは何のことだか分からなかった。

「モイライっていうのはね、地球を管理しているスーパーコンピューターの一つなのよ」
「へ~」

アコナの言葉に素直に頷くアリシア。

「でも、地球に降りるには何を使うんですか?」
「ハイシェントとエルブラストよ」
「え?」

こんな時にエルブラストとハイシェントをウロボロスから地球へと降ろすというのは危険だと皆が思った。
しかし、リシェルはそれを変えようとはしない。

「ウロボロスはどうするのです?」
「ま、何とかするわ」
「何とかするわって……、リシェルさん本気なんですか?」

リシェルがこういう事で冗談を言わないのは分かってはいるが、ハイシェントとエルブラストの戦力は大きな損害になるのは一目瞭然だった。

「まあね、貴方達に行ってもらわないとダメなのよ」
「分かりました……」

戦いに負けない為にはどうしても地球に降りなければいけないらしい。
その間に負けていたという事になったら目も当てられないが。
しかし、リシェルはそのまま言葉をつづけた。

「幸い、火星、木星のアルカディアとも連携がとれるし、負けはしないから」

負けはしないということは、勝てる訳でもないという言葉の裏返しだとアリシアは感じる。

「なるべく早く帰ってきてね」

リシェルはそれだけ言うと、地球へ向けてアリシア、フリス、アコナを出撃させた。
ウロボロスのクルー達はそれをただ見つめている。

「リシェル様」
「ん?」
「彼らを向かわせた理由は別にあるのでは?」

ジョニカがリシェルに聞く。

「まあね、あの子は闇の部分を知る必要はないのよ」
「例の件、ですね?」
「そう、あの子たちが戻ってくる間に片をつけないとね」

ジョニカはその言葉に静かに頷いた。

「本当は私だけでやりたいんだけどね」

その言葉にジョニカは優しい笑顔を浮かべ、リシェルの後をついていった。
# by meruchan0214 | 2007-12-13 23:43 | 守護機兵 ハイシェント2

misson10 逃走劇

独房に入れられたアリシア、ひとまず身体的には何もされてはいない。
だが、ここから脱出するのは一人では不可能だった。
壁を叩いてみても、ドアをいじくりまわしてみても、全て徒労に終わった。

シュン

扉が開き、一人の軍人が入ってきた。

「ウロボロスの方、ですね?」
「貴方は?」

アリシアが言葉を返そうとすると、軍人は唇に手を当てて喋らず聞いてほしいという、ジェスチャーをした。

「私はステイル隊長の密偵を受けている、イオシスといいます。ウロボロスの方が捕まったと聞いて極秘に助け出すように指示されております」

イオシスは辺りの様子を窺いながら喋る。

「今すぐには無理ですが、必ず何とかしますから。それまで堪えてください」

アリシアはイオシスの言葉に頷くしかなかった。
敵だらけのここでは、もしコレが敵の罠だったとしても状況を打開するにはイオシスの言葉を聞くしかない。

「では、あまり居ると疑われますので失礼します」

イオシスは独房から出て行った。
アリシアはその姿を黙って見送るしかなかった。

「信用して、いいのかな?」

敵の真っ只中にいるせいか、いまいち信用が置けない。

「あ・・・、そういえば、ルピナちゃんは・・・」

今頃になって思いだした。
ハイシェントにはAIとはいえ、ルピナも一緒に居たのだ。
もしも、データを書き換えられてしまったとしたら、ルピナが消えてしまう可能性もあった。

「私も何とかしないと」

他人任せにしているというのはどうにも性に合わない。
やはり、自分が何とかしないといけないのだ。

「少し変わったかな・・・私」

昔の自分だったらそんなことも考えなかったかもしれない。
もしかしたら、自分で死を選んでいたかもしれない。
だけど、自分にはきっとまだできることがある。
そう信じることにしたのだ。

「どうしようかな・・・」

アリシアが悩んでいると、不意に独房の扉が開いた。

「え、え?」

わけのわからないアリシアであったが、恐る恐る扉の外をのぞいてみる。
見張りは立っておらず、ここから抜け出そうと思えば抜け出せそうだった。

「行っちゃうか・・・」

アリシアは意を決して独房から外にでた。
向かうべきは格納庫、何か使える機兵やパワードールがあるかもしれない。
もちろん、ルピナも助けなくてはいけない。

「確かこっち」

大体、一度見ただけで覚えてしまうアリシアは自分の記憶を頼りに進んでいく。
不思議と通る道には人の気配がほとんどと言って良いほどない。
アリシアは極力足音をたてないように静かに歩いた。

「こちらです」

アリシアが歩いていると、不意に聞き覚えのある声がした。

「イオシスさん」
「まさか、こんな直ぐに行動を起こすとは思いませんでしたが・・・、ハイシェントの準備は終わってますよ」
「ありがとうございます」
「さあ、早く」

アリシアはイオシスに連れられて格納庫へと向かった。
格納庫につくとハイシェントが出撃準備を終えて待機させられていた。

「イオシスさんは?」
「私は大丈夫です、早くしないと見張りがきます」
「わかりました」

アリシアはハイシェントに乗り込む。

「アリシアちゃん、大丈夫?」
「私は大丈夫よ、ごめんね」
「ううん、私も大丈夫だから。気にしないで」
「ありがと」

アリシアは整備されたハイシェントを起動させ、無理やり格納庫から脱出した。
それを見ていたイオシスは笑みを浮かべると艦内に戻っていった。

「貴方達は我々の希望、ここで捕まっているわけにはいきませんから」

イオシスはそう呟いた。

「でも、うまくハッキングできてよかったよ」
「やっぱり、ルピナちゃんがやったのね」
「逃げ出すなら捕まった直後がいいってね、お母さんも言ってたよ」

無事に逃げ出したアリシアだが、予想通り追撃部隊が出撃してきた。
しかし、その追撃すらもいとも簡単に振り切ってしまう。

「また、捕まるわけにはいかないからね」
「うんうん」

アリシアはザムレイズ軍の艦の事を思い出していた。
地球圏の人間がザムレイズに協力しているということ。
もしかしたら、ウロボロスにもそんな人間がいるかもしれないということだ。

「信じたくはないけど・・・」

そんな不安を消すように首を振るアリシア。

「どうしたの?」
「ううん、何でもない」

それから、10分後アリシア達は無事にウロボロスへと帰還した。
# by meruchan0214 | 2007-12-03 20:03 | 守護機兵 ハイシェント2

misson9 信じえぬ

アリシアはザムレイズ軍の戦艦へと連れてこられた。
当然、優遇されているわけではなく、捕虜としてであった。

「殺されないだけ、マシか・・・、それとも殺されたほうがマシか・・・」

自分自身に余裕があったのだろう、それが油断を生んでしまったのかもしれない。
その結果が今の結果である。

周りがアリシアに銃を向けられ、アリシアは歩かせられる。
空気がピリピリとしており、少し息苦しい感じがする。

「ウロボロスとはやっぱ違うよね」

ウロボロスは軍が存在しているといっても、もっと全体的に温和であった。
さすがに戦闘の時は気を引き締めてはいたが、やはり雰囲気が違う。

銃を突き付けられたまま司令室と思わしき場所へと連れてこられる。

「司令、連れてきました」
「御苦労」

何故かアリシアにも言葉が分かった、確か以前ステイルが来た時は翻訳機を使っていたはずだった。

「何故、君達の言葉を知っているか驚いているようだね」
「どういうつもりなの?貴方地球圏の人間よね」

勘の良いアリシアはすぐに司令官が地球圏の人間だと感づいた。
しかし、指揮していたのは明らかに地球圏の人間ではない、外から来た人間達だ。

「同志に協力するのは当たり前だろう?」
「なっ・・・」

アリシアは言葉が出なかった。
そう、この地球圏にもザムレイズに繋がっている人間達がいたのだ。

「じゃあ、今回の侵攻も・・・」
「流石にハイシェントを任されていただけあって、なかなか聡明な娘さんだ。おそらく君の想像している通りだろう」

偶然でも何でもない、ザムレイズがやってきたのは地球圏の人間の仕業だったのだ。

「一体、何の為に・・・!!」
「私達が地球を、この地球圏を支配する為だよ。だが、世の中は平和だのなんだの、話し合いで・・・。おかしいと思わないかね、力ある者が支配するべきなのだよ」

アリシアは心の底から怒りが湧き上がるのを感じていた。
自分達の私利私欲の為に同じ人々を簡単に戦火に巻き込むことが。

「どうかね、我々と一緒に来ないか?君ほどの実力があれば、直ぐに出世できるぞ?」
「絶対に嫌よ!!」

アリシアは目の前の人間に今すぐにでも殴りに行きたかった。
しかし、捕虜となって動けない体がそうはさせてくれなかった。

「ふふ、あれだけの実力差を見せつけられても、まだ分からないか。まぁいい、連れて行け」
「絶対に貴方達は許さない・・・」

アリシアは独房へと連れて行かれる。
部屋の中は粗末な造りになっており、本当に最低限の生活する空間しかない。

無理やり押し込められるように部屋に入れられたアリシア。
何もできない自分が悲しくなってきた。

「・・・、まさか地球圏の人間が・・・」

少し落ち込んでいたアリシアだったが、すぐに次の問題に気がついた。

「という事は、内部にザムレイズと通じている人間が・・・」

誰にも伝えることはできない。
相手もそれがわかっていて、自分の目の前に姿を現したのだろう。
ウロボロスにそういう人間がいないと信じたいがそれでも不安になってしまう。

「みんな・・・」

自分が捕まっているということよりも、残った両親や仲間たちが気になる。
ハイシェントも敵に接収されてしまった。
ただ、今のアリシアには祈ることしかできなかった。

一方、ザムレイズの格納庫ではハイシェントが収められていた。

「これが、地球軍、いやウロボロスのハイシェントか」
「やはりレフィン様のハイシェントと似ているな」
「基本的に技術が応用できるからな、これからは我々の兵として動いてもらおう」

ハイシェントのスペックは今もなお高水準を誇っていた。
敵からしてみれば、強力な武器を手に入れたようなものだった。

「まずぃなぁ・・・、とりあえずデータはバックアップしておいてと・・・」

ルピナは自分ができうる限りの事はやっている。
いくらAIとはいっても、直接稼働できるわけではない。
あくまでもサポートとしてのAIなのである。

ルピナがサポートしなければ、パワーダウンするとはいえやはりルピナ的にはいい気はしない。

「アリシアちゃんは無事かなぁ・・・、変なことされてなければいいけど・・・」

同じ立場であるアリシアを心配するルピナ。
整備されながらも何もできない自分に歯がゆさを感じる。

きっと、アリシアは自分を責めているだろうと、ルピナは考えた。
弾が無数に飛び交う戦場だ。
絶対なんてことはありえないし、それはハイシェントといえども例外ではない。
だから、アリシアが責任を感じることはないとルピナは思っていた。

「あ・・・」

ルピナは何かを思いついたようであった。
もしかしたら、アリシアを救い出して自分も脱出できる。
可能性はあまり高くはないが、やらないよりはマシであった。

「やってみるかぁ・・・」

ルピナの思いついたこととは、このザムレイズ艦のハッキングであった。
ルピナ自身が既にAIであり、無線でもある程度の距離なら侵入できるためであった。
だが、根本的に性質が違う可能性が高い。
そうだった場合、ハッキングは意味無いものになってしまう。

一途の望みを託しながら、ルピナはハッキングを開始した。
# by meruchan0214 | 2007-11-28 21:34 | 守護機兵 ハイシェント2

misson8 驚愕

あれから、何度か小競り合い程度での戦闘があった。
お互いに様子見という程度で、被害もほとんどなかった。

何度かそういった出撃を繰り返すうちにアリシアも戦うことになれてきていた。

「サポートはできるけど操縦するのは、アリシアちゃんなんだからね」
「わかってるよ、ルピナちゃん」

ハイシェントに居る、ルピナとも息が合ってきていた。

「リシェルさん、戻りました」
「御苦労さま」

リシェルは書類の束に向かって仕事をしていた。
大きな戦闘が無い今のうちというところだろうか。
本当ならば、ずっとこの仕事だったらいいのにとリシェルは漏らす。

「事務だけならどんなにいいことか・・・」
「そうも言っていられませんからね」
「ただ、あの人もこのまま黙っているとは思えないしね」

あえて名前を言わないのがアリシアは少し気になった。
けれども、相手の侵略が終わったわけではない。
ザムレイズ軍がこのまま終わるわけではないと確信していた。

どれだけステイルが周りを止めてくれるかにも期待はしていた。

「必ずまた戦わないといけない時が来るからね・・・」
「そう・・・ですね」

戦いに慣れたといっても、好きになったわけではない。
いつでも、人殺しが大義になってしまう戦いが怖いと思っている。

ビーッ!!ビーッ!!

ウロボロスの警報が鳴り響く。

「アリシア!!」
「はい!!」

アリシアは急いで格納庫へと向かった。
リシェルも仕事をやめ、ブリッジへと向かった。

「ジョニカ、相手は?」
「はい、ザムレイズ軍の中隊です。先行部隊かと思われます」
「なるほどね、フリス隊とアコナ隊は出撃して。アリシアもハイシェントで出てもらって」
「了解!!」
「他の部隊も直ぐに出れるように準備をしておいてね」

ウロボロス内に緊張が走る。
今までの小競り合いとは違う状況に新しい戦乱の予感を感じていた。

アリシアはハイシェントに乗り込み出撃する。
次いで、リシェル、そしてフリス、アコナ達も出撃した。

「さて、どうでてくるか・・・」
「相手も前回と同じような轍は踏まないだろうからな」

お互いが様子を窺いながら徐々に距離を詰めていく。
そして、ザムレイズ軍からもパワードールの出撃が確認できた。

射撃距離に入って、ウロボロスの機兵とザムレイズのパワードールが戦いを開始する。

「いけ!!」

ハイシェントの弾がパワードールに放たれるが、電磁シールドで攻撃が阻まれた。

「な・・・」

驚きを隠せなかったのはアリシアだけではなかった。
パワードール全てに電磁シールドが搭載されているのだ。

「皆、退いて!!」

リシェルの声に皆が後退戦を始める。
電磁シールドがある以上実弾兵器のダメージは薄い。
遠距離で電磁シールドを打ち破れるのは、現状ではハイシェントとエルブラスト位であった。

「アリシア、ウロボロスが退くまで時間を稼ぐわよ」
「分かりました」
「いい、絶対に無理しちゃだめよ」
「はい」

ハイシェントとエルブラストはウロボロスや部隊全体を守るように少しずつ後退する。
しかし、敵の攻撃は激しくウロボロス軍を攻めたてる。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「レムド!!」

逃げ切れなかったウロボロス軍の機兵が破壊される。
防御に徹しているからまだ何とかなっているが、このままでは敗戦は必至だった。

「リシェル様!!全機格納終わりました!!」
「わかったわ、アリシア!!」
「はい!!」

ハイシェントとエルブラストもその場から撤退しようとする。

「アリシアちゃん!!危ない!!」
「しまっ・・・」

一瞬判断が遅れたアリシアは電磁シールドが間に合わず、被弾する。

「く・・・」

アリシアはハイシェントを動かそうとするが、何も反応がない。

「駆動系に損傷・・・。動けないや」

当たり所が悪かったとしか言えなかった。
動きを停止したハイシェントにパワードールが近づいてくる。

「アリシア!!」
「ハイシェントはもう、動けないみたいです」

リシェルの通信にアリシアは諦めたように喋る。
思った以上にアリシアは自分の事を認めることができた。
これで終わりなんだと、素直に受け入れてしまった。

「ちっ・・・!!」

リシェルは何とかハイシェントを回収しようとするが、パワードールに阻まれて近づくことができない。
ハイシェントは動けないまま、敵のパワードールに接収される。

「すいません、リシェルさん・・・。私のせいで」

それを最後に通信が終わった。

「アリシア、ルピナ、ごめんね・・・」

ハイシェントが敵に接収され、これ以上は無理と判断したリシェルはウロボロスへと後退する。
何とか取り戻したかったが、1機ではどうしようもなかった。

一方、ハイシェントのコクピットの中ではアリシアがルピナに話しかけていた。

「ごめんね、私のせいで」
「ううん、大丈夫。アリシアこそ・・・」

敵に捕まるということ、それから先どうなるかは誰もわからない。
ただ、アリシアはウロボロスの皆、リシェル、そして両親であるフリスとアコナに申し訳ない気持で一杯だった。
# by meruchan0214 | 2007-11-14 19:00 | 守護機兵 ハイシェント2

misson7 変わりゆく

アリシアは正式に軍人としてウロボロスに居ることになった。
階級は低いものの、その先立っての戦いでの活躍は既に有名になっていた。
もちろん、両親が前戦争の英雄であるということも、加味してのことではあった。

「ん~・・・、今日は休みだ!!」

久しぶりの休暇、ここのところ暇さえあればシュミレートや軍部関係の処理など忙しい毎日だった。
リシェルの見立てでは暫くはあちらから攻めてこないだろうということでの休暇だった。

「学校はどうかな・・・?」

なし崩し的に軍人になったアリシアは急に学校に行かないように思われても仕方がなかった。
ジョニカから話はいっている為、休学扱いでまだ学校には在籍している。

アリシアはそっと学校を覗いてみると、いつもと変わらない風景がそこにはあった。
当たり前の事、それがとても羨ましく思えてきた。
今まで居た場所ではない、それが今の自分の居場所。

だからこそ、当たり前だった場所を守りたい。
皆がいつものように生活できる場所を守りたかった。

「うん・・・、頑張れそう」

アリシアは戦いをする意義を見出し始めていた。
ブラブラとのんびりしていると、以前の女の子、ハイシェント自身が遊んでいた。

「あ、アリシアちゃん。こんにちわ~」
「こんにちわ、えっとそういえば、名前教えてもらってないよね・・・?」
「あれ、言ってなかったっけ??まあ、いいや、私の名前はルピナだよ」
「ルピナちゃん、この前一緒に居た子は?」
「ナミアはお母さんと一緒に居るって言ってたけど」
「ふ~ん」

こうやって話してみると、普通の女の子とまったく変わらない。
それが戦闘になると、ハイシェントの頭脳として動いているのだ。

「ねぇ、ルピナちゃんって170年も前からハイシェントに居るの?」
「うん、そうだよ」
「作ったのはお母さん?」
「作った・・・っていうよりは~、お母さんが助けてくれたんだ」
「助けてくれた?」

アリシアはルピナの話に興味が沸いた。
ただのプログラムだったら、助けてくれたなんていう表現はしないだろう。

「お母さん、死に掛けた私とナミアの意識をデータ化して保存したんだ」
「データ化して・・・保存・・・?」

今では考えられないことだ、確かに歴史にはそういったことを実験していたという事実は残ってはいる。
だが、リシェルなどを見ていると確かにそれしか考えられないことではあった。

「一番辛いのはお母さんだから、私達が助けてあげないといけないの。ずっとずっと悩んでるから」

今までリシェルを見てきていてそんなそぶりはほとんどなかった、
悩んでいるといっても、作戦の事などをいつも考えているようだったのだ。

「ルピナちゃんはお母さんのこと、大好きなんだね」
「うん!!もちろん!!」

アリシアはこれ以上突っ込んだことは今は言わないほうがいいと思った。
彼女の話は本当だと思う、ということはお父さんといったあのプロトタイプハイシェントは確実に実の父親だ。
両親がお互いに敵として戦い、娘達は母親と共に戦う。
どう思っているのか興味はあったが、聞く気にはなれなかった。

「そういえば、ルピナちゃんってその姿はどうなってるの?」
「触ってみる?」

アリシアは触ろうとするが、ルピナの体をすり抜ける。
今目の前に居る、ルピナの姿は立体映像なのだ。

「それで、この前目の前で消えたんだ」
「うん、ウロボロスの電気系統を伝って帰るだけだから」
「ん~でも、実際にはここに居ないってことだよね?」
「感覚的には意識だけ居るって感じだよ、実際のデータはハイシェントの中だし」
「ふ~ん」

予想以上にしっかりしている、ルピナ。
子供と言っても170年も前の話だ、学習機能が当たり前だとしたら当然とも言えるだろう。
しかし、子供っぽさは抜けてはいないようだ、それはAIとしての設定なのか、彼女自身がそうなのかはわからない。

「これからもよろしくね」
「あ、うん。よろしくね」

ルピナはにこやかに笑った。
それにつられてアリシアも笑ってしまう。

「アリシアちゃん、凄かったけど。それに慢心しちゃ駄目だからね」
「分かってるわよ」

ルピナに釘を刺されるが、実際そのとおりだとアリシアは思う。
アリシア自身、自分の才能を感じていた。
でも、それに溺れてしまったら駄目になりそうな自分が居た。

「ん、じゃあ約束」

ルピナは小指を出して指切りを示した。
アリシアは指を出すが、当然ルピナは映像の為すり抜けてしまう。
だけど、やることに意義があった。

「それじゃあ、そろそろ私、戻るね」
「うん」
「今日は楽しかったよ~、バイバイ」

ルピナの姿が消えていった。
ある意味ここに居る限りは便利な姿だとアリシアは思った。
しかし、自分は人であり続けたいと思ってしまった。

きっと、リシェルもそれを望んでいるんだろう。
人が人でなくなってしまわないようにと。
# by meruchan0214 | 2007-11-11 00:12 | 守護機兵 ハイシェント2