タキルの章 13輪 

タキル達はしばらくグラディアに滞在していたものの、やはりデルゲイグ軍とは戦わなくてはいけない
共同して戦うという選択肢もあったが、まだまだ人間が魔族を受け入れるには時間がかかりそうであった

「うし、皆準備はいいな?」
「大丈夫よ」

タキルの言葉にケイナが頷く
タキル達はまずは地上のデルゲイグ軍を一掃する為に出撃する事になる

「タキル」

ルティが話しかけてくる

「私達も色々考えたんだけど」

ルティは真剣な表情でタキルに話している

「私達も一緒に行くよ」

タキルはそういうことを半分は予想していたみたいだった

「言うと思ったよ・・・」
「そう?でもケルベロスやオルトロスもいるから、足手まといにはならないよ」
「こちらとしても嬉しいけれど・・・」
「危険な目には遭わせられない?」

タキルの言いたい事はルティも良く分かっていた
しかし、タキルやケイナが戦うというのに自分だけが見ているということはできなかった

「分かったよ、でも無理はしないでくれよ」
「ありがとう」

タキル達はグラディアを後にし、戦いを続ける
いつか、魔族と人間達が共存できる世界を作る為に

まずはデルゲイグ軍と戦わなくてはいけない
同じ魔族であるデルゲイグ軍と・・・
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# by meruchan0214 | 2007-03-26 08:45 | 架空世界[フリトアネイス]

11夜 突然の襲撃

私はあれから毎日キルトに戦い方を教わっている
大分、自分でも強くなったとは思うが、佳織さんやキルト、それに華ちゃんに比べるとまだまだである

自分が強くなっているのを実感するほど、佳織さんたちがどれだけ危険な事をしているのか良く分かってきた

「今日も一人でお留守番かあ・・・」

私はいつも通り一人で事務所にお留守番である

ピンポーン

その時、玄関のチャイムが鳴った

「は~い」
「郵便です」

私は佳織さんの印鑑を持って、玄関の扉を開ける
しかし、そこにいたのは郵便の配達員ではなかった

「一緒に来てもらおうか」

扉の先にいたのは妖だった

妖は無理やり私を連れていこうとする
私もただ黙っていう事は聞くつもりはない

「抵抗しないほうがケガをしなくて済むぞ」
「誰が、貴方みたいなのに連れていかれるものですか!!」

私はキルトにもらった、武器を取り出す

「や!!」

ここ数日で大分様にはなってきていた
だけれど、妖には通用しなかった

「まだまだ、若い!!」

ガシィ!!

妖は私の武器を弾き飛ばすと私の腕を抑え、力づくで私を押さえつけた

「暴れられると困るのでな」

ドスッ!!

「うっ・・・」

妖の攻撃を受けて私の意識は遠くなっていった
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# by meruchan0214 | 2007-03-25 23:31 | 知らぬが幸せ

アーツの章 13輪 使命

タキル達が魔族を連れてきてから一月が経った
最初は城下町の人間も魔族を恐れていたが、悪くないと分かると次第に打ち解けてきていた

「最近は平和だな」
「そうですね」

束の間の平和、まだ戦わなくてはいけない相手は密かに息を潜めている
当然、その為の対策をしていないわけではない、毎日、稽古をするなど準備を進めている

「アーツ様」

家の執事がアーツを呼びにやってきた

「アーシャ様がお城まで来るようにとの事です」
「アーシャが?」
「どんな用件なんでしょう・・・」

アーツとマヤは用件が分からぬままとりあえず城へと向かう
アーツとマヤが城に着いたとき、そこには城の精鋭達が集められていた

「アーツもついたようですね」

アーツがやってきたのを確認するとアーシャは口を開いた

「貴方達を精鋭と見込んでのお願いがあります」

アーシャの口調から遊びで呼んだのではないという事は直ぐに分かる

「魔族・・・、いえ、ゲルデイグ軍との戦いにについてです」

ゲルデイグ軍、タキル達の魔族達と敵対している魔族の軍
今までグラディアに襲ってきたのもこのゲルデイグ軍であった

「いよいよ、魔族と本格的な戦いに?」
「それもあります、ですがその前に準備をしておきたいのです」
「準備?」
「はい、この大陸には宝具が眠っている伝説は知っていますね」

誰もが知っている話、今よりもタキル達の祖先が生まれるもっと前の話
魔族と人間との戦いに使われた宝具、人間達に大いなる力を与えるというモノ

「それを見つけ出してほしいのです、今後魔族の戦いで絶対に必要になる筈です」
「でも、神話の話です。あるかどうかも・・・」

騎士団の一人が進言する、確かにもっともな事だ

「存在します、確かに宝具は存在します」

強い口調、宝具の存在を確信をしているようだ

「魔族が今大人しいのはこの宝具を探していると聞きます」
「ということは魔族よりも早く見つけ出せ、ということですね」
「ええ、貴方達ならそれができると信じています」

アーシャの話が終わり、それぞれ各々が退室していく

「宝具・・・、確かにこうあっても驚かないけど」
「そうですね」

アーツ達の次の目標は決まった魔族との戦いの為に宝具を手に入れることであった
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# by meruchan0214 | 2007-03-23 12:28 | 架空世界[フリトアネイス]

10夜 やりたい事

「ん~・・・、これ難しいなあ」
「ガウ、シュウコ、スグツカエル」

最近の私のマイブームはキルトに戦い方を教えてもらう事だった
佳織さんは私が戦う事に反対みたいでダメと言っていたがキルトに聞いたら快く了承してくれた

「キルトはコレを二本同時に使うんでしょ?」
「コレ、デントウ、シュゾク、ミンナツカエル」

キルトが使う武器の練習をする、両端に刃がついており扱いが難しい
しかも、これは分解する事もでき両手に剣を持った状態にすることも可能である
私だって皆の役に立ちたい、足手まといだけにはなりたくなかった
そう思い、必死に練習する

「ガウ、キョウ、コレクライ、スル」
「う~ん、もちょっと練習したいけれど」
「ヤリスギ、ヨクナイ、ヤスムノ、タイセツ」
「分かってるよ、それじゃ、お疲れ様」

いくらか武器の扱い方は分かった、けれど今はあくまでも戦い方の勉強、演舞みたいなものである
実戦レベルには到底なってはいない

「もっと頑張らないと・・・」

私は心に誓いながら今日の帰路へとついた
自分の腕をもっと上げたいと思いながら

「ただいまあ」
「おかえり、今日もえらく遅かったわね」
「うん、アルバイトが忙しくて」
「そうかい、でも自分のやりたい事をやるのが一番だからね」

母親は非常に理解の良い人だった
私が冴島事務所でアルバイトするときにも快諾してくれた

「お風呂沸いてるから先に入ってきなさい」
「は~い」

今日の一日の疲れを取る
そして、また次も頑張ろう、そういう気持ちになるのだ
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# by meruchan0214 | 2007-03-23 12:27 | 知らぬが幸せ

ハクガの章 12輪 行く末

ハクガ達は地方領主へと反乱を起こした
農民と貴族との戦い、圧倒的に農民側が不利である

「農民は戦う訓練はしていない、けれど、相手は戦うプロだからな・・・」
「私達がしっかりしないとね」

ハクガとユミルは次々と領主の私兵達を薙ぎ倒していく

「ユミル、こういうときは分かってるな」
「頭を潰すんでしょ」
「そうだ」

ハクガとユミルは一直線に領主が居る城へと向かう
殺さないように戦うというのは大変である
相手はこちらを殺すつもりで攻撃してくる
しかし、ハクガとユミルは失脚させるのが目的、命を絶つことが目的ではない

「ユミル!!」
「オーケー」

門は硬く閉ざされている、しかしユミルが魔法を唱えると、次々と足場ができていく
ハクガとユミルはそれを乗り越えてあっという間に門を飛び越した

「予定通りだな」

城の内部は外に比べて圧倒的に手薄だった
内部まで侵入されないという自身があったのだろう
しかし、ハクガとユミルが進入した今いつ門が開いてもおかしくない

「さっさと終わらせるぞ」
「了解」

ハクガとユミルは領主の居る場所を目指して駆け抜ける

「ここか!?」

思いっきり扉を開けるハクガとユミル
そこには領主の姿があった

「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!」

これほどまでに早く、いや、ここまで来るとは思って居なかったのだろう
恐怖で怯えている領主がありありと分かる

「なるほどな、これだけ私腹を肥やしていれば、きついのも当然・・・か」

部屋はありったけ豪華に作られた部屋、グラディアの城にも何回か入った事はあるが、ここまで豪勢にできてはいない

「い、命だけは~・・・」
「ふん、今までやってきた罪を自分で考えるんだな」

ハクガは何も聞こえていないかのように領主へと歩み寄っていく

「ハクガ駄目!!」
「これが、お前達の領地の民が選んだ事だ!!」

ハクガの剣が振り下ろされる、がそれは領主の目の前で寸止めされていた
ブクブクと泡を吹いて倒れている領主、その姿は余りにも惨めな姿だった

「お前は殺す訳にいかない、今まで自分がやってきたことを生きて感じるんだな」

ハクガは剣を収める、衛兵達が領主の下へやってきたときには全ては終わっていた
無益な戦いはしたくない、それはハクガとユミルのお陰で最小限に留まった

「さて、行くか」
「うん」

グラディアに自分の騎士の称号を返却するよう、農民に頼んだ
これからは自由気ままに自分のやり方でグラディアを守る決意を固める

「これからどうするか?」
「しばらくはこのまま気ままに今まで通りで行こうよ」
「そうだな」

ハクガのその顔はどこか晴れ晴れとしていた
自分が真にやりたい事を見つかった時でもあった
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# by meruchan0214 | 2007-03-23 12:17 | 架空世界[フリトアネイス]

タキルの章 12輪 浮かぶ疑問

部屋に戻ったタキルはただボーっと窓の外を眺めていた

「どうしたのタキル?」
「うわっ、びっくりした!!」

後ろからケイナに話しかけられ驚きを隠せないタキル
普段なら気配に気付くだろうに気がつかないほどボーッとしていたのだ

「あの二人、いや、ルエスと話してから何か変よ」
「いや、そんなこと・・・と言いたいけど」
「恋煩い?」
「違うよ」

ケイナが聞くとタキルはあっけなく即答する
しかし、少なくともルエスを気にしているのは確かである

「ゲルデイグに居るにしては変な奴だと思ってさ」
「確かに彼女は初めて見るタイプだわね」

ルエスは名前は聞いていたし、姿も知っていた
面と向かって話したのはあれが初めてであるが、想像以上に予想と違ったのだ

「でも、敵である以上は倒さなければいけない」
「そうね、私達と考え方が違う以上摩擦は生まれるもの」

タキルとケイナは少し暗い雰囲気になってしまい、二人共黙ってしまう

「あれ、お兄ちゃんとケイナさん、どうしてそんなに暗くなってるの?」

続いて部屋に入ってきたのはティリカだった

「ん、あ、いや、なんでもない」
「お姉ちゃんが忙しいから手伝ってくれって」
「あ、ああ、分かった」
「私も手伝うわ」

暗くなった雰囲気を払拭するかのように、ティリカに言われたとおりにタキルは下の階へと降りていった
もしかしたら、ゲルデイグ軍にも話が分かる奴が居るのかもしれない
そう思っていたのはタキルだけではなかった
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# by meruchan0214 | 2007-03-22 12:20 | 架空世界[フリトアネイス]

アーツの章 12輪 調べる事情

アーツとマヤはグラディアの図書館を調べている
何故、人間と共存する魔族が居るのか、それを調べる為だった
元来魔族は人間の恐怖の象徴でしかなかった、魔族もそれを望んでいたようでもあった
しかし、マルズは、400年前から人間との共存を望んでいるらしい
そう思うようになった理由を知りたかったのだ

「ルティさんとかに聞いたほうが速かったかな・・・」
「でも、久しぶりの再開ですもの水を差したくはありませんよ」
「そうだな」

今、しばらくの休みを大切にさせてあげたい、そういう気持ちだったからこそアーツとマヤは黙々と書物を調べている

「あ、アーツ、これ!!」
「あったのか?」

それは一冊の古い本、有名な著名人が書いたわけでもない、ちょっとした絵本みたいなものだった
中は童話調でかかれており、簡単な挿絵も書かれている

「魔族の名はマルズ・・・、人間の名前は、アイナ・ヒュリスだって・・・?」
「という事は先日のシェリルさんのお話に全て当てはまりますね」

童話では二人の子供を連れて村に戻ってきたというアイナ・ヒュリス
それ以来、血を絶やさぬ為に近親により血を受け継がれてきていた
いつかそれがマルズが再びやってきた時にアイナ・ヒュリスが幸せだったという事の証明の為に

「という事は、タキル達も・・・」
「そうなのかもしれませんね」

タキル達が魔族の血が濃い理由も分かってしまった
ここに書いてある事は童話ではあるが全て事実なのだろう

「心配かけないつもりが余計な事まで知った気がするな・・・」
「分かった事はマルズさんも、アイナさんも幸せだったってことですね」
「そうだな」

人間と魔族、二種族の間には大きな壁が存在している
それはちょっとやそっとでは壊れない大きな壁

だが、ずっと昔からその壁を壊せるであろう出来事は存在した
それが、現在やっと表舞台に立っただけなのだ
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# by meruchan0214 | 2007-03-22 12:19 | 架空世界[フリトアネイス]

9夜 分かり合う

キルトは人でない姿以外はとても優しい妖であった
片言ではあるが、少しずつ言葉も喋れるようになり私達との意思疎通も大分楽になっていた

「こんにちは~」

私は佳織さんの事務所にいつものようにやってきた
キルトも今は佳織さんの事務所で住み込みで暮らしている

「いらっしゃい」
「ガウ」

佳織さんがキルトに家事のやり方を教えていたようだ
キルトは四本の腕を持っている、そのせいか仕事を覚えると腕を使う作業は非常に効率が良い

「私が四本の腕あったら絶対に混乱するな~」
「あはは、それ私も思ったよ」

キルトが私達と一緒に暮らすようになって大分慣れてきていた
元々、面倒見のいい佳織さんだ、誤解さえ解ければ打ち解けるのは時間はかからなかった

プルルルル プルルルル

「あ、私出ますね」

私は事務所の受話器を取った

「はい、こちら冴島探偵事務所でございます」
「すいません、私・・・」

依頼の人間だ、どうも話から見てあっち方面である

「分かりました、冴島に代わりますね」

私は佳織さんに受話器を渡す

「はい、はい、ええ、そうですか・・・」

ここでの仕事は8割人間の仕事と2割の妖の仕事で成り立っている
実際、稼ぎとしては2割の妖の仕事の方が圧倒的に多いのだが、その分危険性も高い
私の仕事はここや現場の情報伝達の対応、場合によっては私の判断で応援を呼ばないといけない

「ふぅ」

佳織さんが受話器を置くと溜め息をついた

「どういったご用件でした?」
「妖の捕獲だって、また一番面倒臭いことを・・・」
「捕獲・・・ですか」
「まあ、隆泰君達も協力してくれるらしいから何とかなるとは思うけど」

隆泰さんとは近くの喫茶店、リトルガーデンの店長である
この店の店員全員は全て妖とのトラブルを解決する為のプロフェッショナルで構成されている

「私はいつも通りここに待機でいいですか?」
「ええ、お願いするわ。キルト、一緒に来てもらえる?」
「ガウ、分かった」

最近は佳織さんの仕事にキルトが手伝うようになった
キルトの強さはかなりのもので、特に種族伝来の武器を使った時は組み手とはいえ、佳織さんも圧倒した

「それじゃあ、華は残していくから、よろしくね」
「はい、いってらっしゃい」

佳織さんとキルトは窓から飛び立つように降りていった
私は二人の安全を思いながら窓からそれを見送っていた
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# by meruchan0214 | 2007-03-22 12:18 | 知らぬが幸せ

ハクガの章 11輪 思うが故に

ハクガとユミルは決起の為の集会に参加していた
本来グラディアの騎士であるハクガはそれを抑えなければいけない立場ではある
だが、今の現状を見て、村の人達を見捨てるわけにはいかなかった

「丁度いい機会かもしれないな・・・」
「何が?」

ハクガの漏らした言葉にユミルが聞く

「グラディアの騎士を辞めるってことだ」
「え、どうして?」

ユミルはハクガの突然の言葉に驚きを隠せなかった
しかし、ハクガ自身は強い意志をあらわしていた

「オレが騎士になったのは、村の仇を討つため」
「うん、それは前にも聞いた」
「だが、逆に騎士になったことで色々押さえつけられる面も色々見てきた」
「今回みたいな?」

ユミルの言葉にハクガは頷いた

「騎士でなくてもやれることはあるということだ」
「でも、結局はグラディアの為・・・でしょ」
「まあな」

グラディアには感謝していた、村から逃げてきた自分を保護してくれただけではなく
騎士団の一員にしてくれたこと、子供達を快く引き受けてくれた事
恩を返したかったが、騎士という立場ではそれができないということもある

「いいんじゃない、ハクガのやりたいようにやればさ」
「すまないな、ユミル、お前には迷惑をかける」
「大丈夫だって、みんな分かってくれるよ」

明るくポンポンと肩を叩くユミルの手は少し震えていた
何故震えていたのかはハクガには分からなかったが、言及することはない

「いっその事、盗賊団でも作ったら?」
「それもいいかもな」

ハクガはユミルの言葉にうっすらと微笑を浮かべる
ユミルもそれを見て、にっこりと笑った
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# by meruchan0214 | 2007-03-20 12:29 | 架空世界[フリトアネイス]

8夜 めぐり合わせ

次の日、私は学校を休む事にした、もちろん仮病である
キルスには色々と教えてあげたいというのもあったし、佳織さんと引き合わせるわけにもいかなかった

「キルスに私達の言葉、教えてあげるね」
「ガウ」

念話でも大丈夫といえば大丈夫なのだが、やはりちゃんと自分達の言葉を教えてあげたかった
それに、複数人と会話するにはどうしても言葉を覚える必要があった

「とりあえず・・・そうだな・・・」
「ガウ?」
「私の名前はしゅ・う・こって言うの」
「シュ・ウ・コ?」

たどたどしい口で発音がままならないが、注意深く聞けば名前を言っているように聞こえる

「うん、そうそう、もっとしっかり言えるようになるまで頑張ろう」
「ガウ」

言葉の練習は何度も反復して使う事で覚えていく
元々キルスの頭がいいのもあったお陰か、比較的早く人間の言葉を覚えていった

「シュウコ、コンニチハ、アリガトウ」
「凄い凄い、この調子ならあっという間に覚えられるよ」
「ナントナク、ワカッタ」

元々言葉は理解できていたみたいだから、後は喋れるようになるだけだった
喋れない理由は元々口の構造が違う為に、人間の言葉で喋るのが難しいだけだ

ピンポーン

練習の最中に家の呼び鈴がなる

「誰だろ、親は仕事に出てるはずだし・・・、キルスは念のため隠れててね」
「ガウ」

疑問に思いながらも玄関へと向かう

「は~い」

私は扉を開けると佳織さんと華ちゃんががそこに居た

「あら、元気そうね、病気だって聞いたんだけど」
「え、あ、ああ、はい、あんまり熱とかないんですけど、親が心配性で」
「ふ~ん」
「あ、修子ちゃんこれお見舞いのモノ」
「あ、ありがとうございます」

華ちゃんは私に花を見繕って持ってきてくれた
佳織さんが来てくれたことは嬉しいけれど、今回ばかりは早く帰ってもらいたかった

「ん・・・」

一瞬、佳織さんの鼻がピクッと動いた気がした

「あいつが傍に居る・・・」

流石に勘が鋭い、ほんの少しの匂いでも敏感に嗅ぎ取っているんだろう

「どこに・・・って・・・家の中・・・?」
「あー!!何でも無いですから!!」
「まさか、修子ちゃん!!」

佳織さんは私を押しのけて家の中に入っていく

「待って、待ってください佳織さん!!」

私は慌てて佳織さんの後を追った
私の部屋にはキルスが隠れている
結局、引き合わせないことには失敗してしまった

「ガウ・・・」

部屋では佳織さん相手ではごまかしきれないと思ったのか、キルスは姿を現していた

「修子ちゃんに何をしようとしていたの!?」

佳織さんが吼える、完全に誤解しているようだ

「ガウ・・・ウ・・・」

キルスはどうすればいいか迷っているみたいだった

「佳織さん待って!!」

私はキルスと佳織さんの間に割ってはいる
佳織さんは何故私が間に割って入ってきたのか理解できていなかった

「キルスは本当はとても優しいんです、だからやめてください!!」
「修子ちゃん、そいつは人を襲ってるのよ、昨日だって人をさらって・・・」
「そのさらわれたのは私です、でもキルスは私の心配をしてくれました」

佳織さんはイマイチ信じられない顔つきだ

「人を襲ってしまったのだって、人に攻撃されたから、自己防衛の為だったんです」

私は佳織さんを必死になって説得する

「信じてあげたら?」

そう言ったのは華ちゃんだった

「でも・・・」
「修子ちゃんが操られているようには見えないし、今だって攻撃してこないでしょ、あれが私達に対して完全に敵なら修子ちゃん関係なしに襲ってくるでしょ」
「・・・」

初めて見る華ちゃんの真面目な言葉、この時だけは年齢の高さを感じる事ができた

「オレ、ワルイコト、シタ、アヤマリタイ」

まだ、上手く発音できない言葉で伝えるキルス、念話ではなく喋ったのには歩み寄りたいという気持ちのあらわれなのだろう

「ふぅ、冷めちゃったわ」
「佳織さん・・・」
「とにかく、一回彼を私の事務所まで連れてきなさい」
「はいっ!!」

佳織さんは諦めたように私に言うと、部屋を出て行った

「全く、素直じゃないんだから」

それだけ言うと華は佳織の後を追っていった
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# by meruchan0214 | 2007-03-20 12:28 | 知らぬが幸せ