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あの日の思い出 7

グラディアでの事はあっという間だった
カースアイズやその娘達との語り合い
私達と全く変わらない夢や希望に満ちていた

「何とかしてやめさせないとね」
「そうだね」

私達はグラディアの国を後にし、フェイルト王国へと戻った

王国に戻った私達はグラディアがどういう国か姉さん達に分かってもらうべく
記録石に記録した全てを見てもらうことにした

「魔族全部が悪いわけじゃないんだよ、姉さん」

姉さんの顔は信じたくなさそうな顔をしている
多分、私もあの時の出来事がなく、カースアイズと再会していなければ
姉さんと同じような反応をしただろう

「こんなの嘘よ!!」
「嘘じゃないよ、私達がちゃんとこの目で確かめたんだから!!」

私達の村を滅ぼした魔族、グラディアで平和そうに暮らす魔族
どちらも本当のことだ、私も村を滅ぼした魔族は許すつもりはない
だけれども、少なくともグラディアの魔族達は違うと私は信じていた

「だからね、姉さんもグラディアの事考えて」
「・・・少し時間を頂戴」

姉さんは部屋から出て行く、少なくとも効果はあったとは思う
グラディアとの戦闘はこれ以上は無意味だと、国全体に広める為には姉さんの協力も必要なのだ

「ラスフィーナさんも分かってくれますよ」
「そうだね、ヴェルダ」

そして数日後、私達は国王へグラディアの現状を伝えるべく城へと向かった

「おお、エルターナとヴェルダか今回の件はご苦労であった」
「いえ、それで王様提出した記録石の件ですが・・・」
「うむ、少し信じがたいがお主達が嘘をついているとは思えん」

やはりグラディアを記録石で完全に記録してきたのは正解であった
元々この国の王は温和な方、魔族が倒すべき敵ではないと分かればきっと戦争をやめてくれる

「だがしかし、国境付近の村を襲って略奪しているのも事実・・・」
「それはグラディアとは関係ないと再三申し上げているはずです!!」

私は声を大にあげて王様にほえてしまう

「じゃが、確証が無いいじょう、裏でやっているともいいきれんじゃろ」
「確かに・・・そうですが・・・」
「ワシも必要の無い争いはしとうない、無関係だと証明できたのならばすぐにでもやめよう」

証明するには私達には難しいことであった
そう、現在魔族が暮らしているとはっきりしているのはグラディアしか存在しない
それに魔族がグラディア方面からやってきているというのは事実
私達にはかなり不利な状況であった

「私が証明しますよ」

不意に後ろから聞き覚えのある声
私達が後ろを振り向くとそこにはカースアイズの姿があった

「カースアイズ・・・、どうしてここに?」
「ある人に頼まれてね、よくたったの数日でグラディアまできたと思うよ」
「お主があのカースアイズか・・・」
「お初にお目にかかります、フェイルト王国国王」

カースアイズは丁寧にお辞儀をする

「話は元に戻しますが、私達の国の魔族は決して無抵抗な人たちを殺せる者達ではないです」
「それはエルターナから聞いておる」
「ですので、エルターナの居た村を襲った魔族は私が責任を持って捕まえました」

するとカースアイズは呪文を詠唱する

フワ・・・

一個の球体の中に、幾人もの魔族が入っている
カースアイズにも似たような雰囲気はあるものの
こいつらは発するオーラ全てが邪気に満ちていたのが分かる

「この者達の処罰はあなた方に一任します」

カースアイズがトンッと軽く球体を押すと地面をすべるように球体が移動する

「本当にこいつらが私達の・・・?」
「ええ、体に聞いたから間違いないわ」

この魔族に対して怒りがふつふつと湧き上がってくるのが感じる

「ふむ、それが本当であればエルターナやお主の言うことは正しいと言うことになるな」
「今回ここに来たのは、グラディアの女王の命により代表として王と謁見することにあります」
「どういうことなんですか?」
「和平を結びたいということです、書状もこちらにお持ちしてあります」

カースアイズは王の側近に書状を渡し、王がそれに目を通す

「ふむ・・・、確かに直筆の書状らしいの」
「グラディアの魔族達は人間達と共存を望んでいます、しかしそれを快く思っていない魔族も居るのも確かです」

カースアイズは言葉を続ける

「ですが、私達はそれを最小限に抑えたい、だけど私達を認知してくれているところは少ないのが現状です」
「おぬしの言いたい事はよく分かった」
「エルターナのような事を繰り返さない為にも他の国々の協力が必要なのです、どうかお願いします」

カースアイズが深々と頭を下げる
それだけ真剣だということである表れであろう

「・・・近々、グラディアへこちらから向かうと女王に伝えておいてくだされ」

それはグラディアとの和平を結ぶと遠まわしにいった言葉であった

「ありがとうございます!!」

再び王に向かって頭を下げるカースアイズ
そして、私に向かってそっと話しかけてきた

「お姉さんに感謝しなさい、あの人がグラディアに来なければまだ戦争は続いてたのよ」
「姉さんが?」
「では、私は女王に伝えてきますのでこれで失礼します」

カースアイズは礼儀良く王室から出て行く

「さて、エルターナよ」
「はい」
「お主達の言うことは確かであった、グラディアの事は安心するがよい」
「はい!!」

私は嬉しかった、これであの人と戦う必要がなくなる
それだけで嬉しかった

「後、この魔族達の処罰はどうする、死刑は免れぬが」
「・・・私にやらせてください」

一種のけじめであった
正直、この球体に閉じ込められている魔族達は憎くてしょうがない
でも私は知ってしまった魔族全てが憎むべき存在ではないと
だけれど、家族を殺した者達だけは私の手でやりたかった
憎しみの刃はこれだけにしようと心に誓いながら私は彼らを処刑した



数ヵ月後・・・

フェイルト王国とグラディア王国は無事に和平を結ぶことができた
フェイルト王国は始めは反対していたものが大多数だったが
グラディアの魔族や王の働きもあって少しずつ受け入れられつつあった

「まさか姉さんがグラディア王国まで直訴しに行っていたとは思わなかったよ」
「別に私は貴方がそこまでいうから、信じてあげたくなっただけよ」
「ほんと、感謝してますよ姉さん」

私達はグラディアの人達と一緒に国境の警備をしている
もちろん魔族も一緒だ

「エルターナさん、サンゲル村の方に山賊が現れたそうです」
「OK,みんなよろしくね」

私達の共存への道は始まったばかりなのだ
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by meruchan0214 | 2006-07-26 21:24 | 短編小説

あの日の思い出 6

偵察任務にでたエルターナとヴェルダはグラディアへと潜入を果たしていた

「凄い活気があるよね・・・」
「そうですね、こうして見ると見た目が違うだけで魔族も人間も同じですね」

グラディアという国では、街中を魔族が普通に歩いている姿が結構見受けられる
他人を襲うとかそういうわけではなく、世間話や仕事をしている

「とても戦争中の国とは思えないよ」

戦争中と言うのは例えそこが戦火が及んでいなくてもどこかピリピリしたものがあった
当然、私の居たフェイルト王国でもそうだった

「こういう風景見ると私達が今まで教わってきたことの無意味さがよく分かりますね」

ヴェルダが感心したように喋る
私も実際にそう思った、私達が教わった魔族と言うものと全く違うのだ
悪というのはその者の心なのかもしれない
何も知らずに決め付けることこそ、悪であるそう思えてしまう

「これを他の人たちに見せれれば・・・」
「そういうと思って、記録石持ってきてるよ」

記録石、その場所の風景や音声などを記録し別の場所でそれを再生する魔力を持った石
その用途は様々でいろんなことに使われる
ちなみに記録できる時間は約1時間ほどであり、何度でも使用できる

「そこのあなた、止まりなさい!!」

急に声をかけられ、私達は驚いた
もしかして潜入がばれてしまったのかもしれない、そう思うと緊張が走る
私は恐る恐る声のした方へと振り向いた

「何てね、驚いた?」

振り向いた先にはカースアイズが立っていた
まるで私達がここに居ることを知っているようであった

「どうしてここに・・・」
「そりゃ、貴方達が来たからわざわざ会いにきてあげたのよ」
「それはどうも・・・」

戦場の気迫は一切感じられない
あの真紅の眼が見えないせいもあるかもしれないが、優しいオーラがある

「この人、本当にあの時のと同一人物?」

ヴェルダが私に耳打ちしてくる
確かに戦場でしか会っていないヴェルダにとって彼女の雰囲気は違いすぎるものだ

「同一人物ですよ、お嬢さん」
「う、さいですか・・・」

ヴェルダはちょっと冷や汗をかいている
ヒソヒソ声で話していたにも関わらず、聞こえていたようである

「地獄耳なんですか」
「魔族ですからね、それよりもこんな所で立ち話もなんだから、私の家にでも行きましょうか」
「あ、はい・・・」

何となく逆らえない雰囲気のまま押し切られてしまう
魔族の家に行くのは少し不安であるが、楽しみでもあった

「そういえば、まだお互いの自己紹介がまだだったわね」
「そういえばそうですね」
「私は言わなくてもいいか」

カースアイズと言えば、いまや私達の国では知る者は居ないと言ってもいい

「私はエルターナでこっちはヴェルダって言います」
「ヴェルダです、よろしくお願いします」
「よろしく、エルターナちゃん、ヴェルダちゃん」

私達はカースアイズに連れられて彼女の家までやってきた
そこは大きな家ではあるが、私達の家とさして変わっているわけではない普通の家だった

「案外、普通な家なんですね」
「あはは、どんなの想像してたのよ」
「もっと色々凄いものかと・・・」
「魔界に行けばあるけどね、私はずっと地上暮らしだからこういうほうが落ち着くの」

魔界、やはりグラディアから魔界には行ききする手段が存在するらしい
私達の間では魔界の門を開くだけでも、禁忌とされている
世の中習った魔族だけなら、既に世の中滅亡しているだろう

「さ、遠慮しないで」
「お邪魔します・・・」

襲ってこないと分かっているとはいえ、敵国の家にお邪魔するのはちょっと気がひける
けれども、けっして嫌なことではなかった

「あ、ママーお帰りなさい~」
「お母様、お帰りなさい」

玄関に入ると二人の女の子が私達の前に現れる

「ただいま、二人とも、今日はお客様が来てるからきちんと挨拶しなさい」

可愛らしい少女達、顔付きは似ている
だが、少し奇妙な点がこの姉妹にはあった

「ルピナです、初めまして!!」
「ナミアといいます、お初にお目にかかります」

おねえちゃんに見える女の子がルピナ、妹の方がナミアと言うらしい

「この子達は三女と四女で、後二人居るけど、魔界に行ってて今はいないわ」

あのカースアイズに4人もの娘がいるのは意外であった
だが娘達に向ける優しさは母そのものである

「かわいい娘さんですね}
「そうでしょ、命に変えても守るつもりだわよ」

彼女の戦う理由が何となく分かる気がする
誰かの復讐や何かではなく、娘達を守るために戦いに赴いているのだ

「やっぱり、魔族と人間は共存できるものなんですね」
「ん、どうしたの急に?」

私は確信する、グラディア王国とは戦うべきではない
むしろ、共存できるはずであると、私は確たるものを得た気がした

「ま、お茶くらい飲んでいきなさい」

私は一刻も早くこの事を全ての人に知らせたかった
だが、焦っても仕方がない
ヴェルダも話を聞きたいということで、お邪魔することにした
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by meruchan0214 | 2006-07-23 23:54 | 短編小説

あの日の思い出 5

「姉さん、魔族のことなんだけど・・・」
「またその話?エルは騙されてるのよ」

あれから数週間が過ぎ、何度も王や姉さんに掛け合ってはいるものの
一向に聞く耳をもたない

「グラディアは倒さなければならない国、貴方も分かっているでしょ」

倒さなければいけない敵、今の私にはそれが本当にそうなのか分からなかった
カースアイズの言葉は嘘じゃない
本当のことなら、グラディアと戦う意味は全くないのだ

「とにかく、10日後に出撃だからね」

姉さんは機嫌悪そうに部屋から出て行く

「ラスフィーナさんの言うことも分かりますけどね」
「ヴェルダはどう思っているの?」
「私は元々復讐なんて考えてないです」

ヴェルダらしい意見かもしれない
そういう淡白な所が彼女の良いところでもあり悪いところでもある

「研究好きの私としては、魔導装甲の開発は楽しかったですよ」
「ヴェルダって昔っからそういうところは変わらないよね」

村の中でも変わり者として有名だったヴェルダ
いつも奇妙な実験などを繰り返しては私達を驚かせていた
彼女にとって魔導装甲の研究は復讐のためではなく
自分の研究意欲を満たす為のモノだったのである

「お二人には死んでほしくはありませんけどね」
「うん」
「これ以上、親しい人が死ぬのはごめんですから、そういった意味では戦争を終わらせると言うのであれば、エルの意見には賛成です」

彼女にも彼女なりの考えがある
親しい人を失う気持ちは私にも分かる

「しかし王様がやめると言わない以上は、戦争をやめることは難しいでしょう」
「でも、グラディア側としては自衛以外はするつもりはないと・・・」
「本気でやめさせるなら、魔族全てが悪ではないことを分かってもらわないとね」

ヴェルダの言うとおりだ、魔族全てが悪ではないことを証明できない限り
王や姉さんは戦いをやめるということはしないだろう

私達の間でいわれている魔族は残虐非道、極悪無悲、快楽の為なら殺しを厭わないといわれている
誰かが確かめたかは分からない、でも人間対魔族の図式は大昔から存在するし
魔族が人間のことを対等と思っていないのも事実だと思う

「エルの言っていた魔族に私は一度会ってみたいですね」
「そうなの?」
「魔族には未知の部分が多いですからね、交流を深めればそれが分かるかもしれないじゃないですか」

こういう発言を聞くとヴェルダだ、と本当に思う

「私はもう一度、あの人に会うつもり」
「どうやってですか?」
「偵察任務があるから、それのついで」
「なるほど・・・、私もついていってもいいですかね?」
「危険かもよ?」
「エルの言うことは信用しますよ」

一人でも分かってくれる人が居るということは嬉しいことだ
姉さんにも分かってほしい
その為にはもう一度、カースアイズと会う必要があるのだ
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by meruchan0214 | 2006-07-22 20:32 | 短編小説

あの日の思い出 4

あれからしばらく私はあの人の事を考えていた
あの人が私に止めをささなかったのは昔会った私だと気付いたからなのではないか
日に日にそれを確認したくなってきていた

「エル、また考え事しているの?」
「姉さん・・・、うん、どうしてもね・・・」
「貴方を助けてくれたって言う人でしょ、でもカースアイズは魔族よ?」

確かに姉さんの言うとおりだ、でもカースアイズの見た目は人間と変わらない
あの時、彼女の眼は目隠しで見えていなかった
だから、カースアイズでは無いという確証はないのだ

「魔族は私達の村を滅ぼした敵、それを忘れたわけじゃないでしょ」
「そうだけど・・・」

それでも、もしかしたら、その気持ちが心をにぶらせる
魔族にも良い性格の者もいるのかもしれないそう思ってしまう

「ふう、調整が終わるまで一週間かかるらしいから、それまでに戻ってきなさいよ」

姉さんは仕方がないような顔付きで話す
だけれど、その一言が私にとってどんなに嬉しいことだったか
姉さんへの感謝の気持ちで一杯になった

「ありがとう、姉さん」
「ただし、訓練を積んだとはいえ生身なんだから絶対に余計な事はしないでね」
「うん」

私は駆ける思いで飛び出した
早く会ってあの人なのか確かめたい
とにかく、私はグラディア国の陣営へと向かうことにした

「あ、その前に村に寄っていこう」

私達の村はグラディアとの国境にかなり近いところにあった
当然、攻めてくるとすれば近い村から攻めるというのはありえる
だけれども、やってきた魔族達は村の人たち、両親、友人など手当たりしだい殺していった

制圧ではない、ただの殺戮のみがそこで行われていたのだ
私達は2週間に一度村に戻ることにしている
村で起きた惨劇を忘れない為と、皆への供養の為だ

私が村に着くと、なにやら人の気配がする

「ヴェルダや姉さんと言うことはありえないし・・・、誰なんだろ・・・」

更に進むと、その気配はただの人の気配でないことが分かった

「魔族・・・」

明らかに人間とは違う、強大な魔力を持っている
これほどまで強力な魔力は魔族でもかなり高位の者と感じられた

「魔導装甲がない今はこのクラスの敵と戦うのは無謀か・・・」

私は隠れつつ逃げようとする

「そこにいる人、出てきなさい」

相手は既に私の存在に気付いていたようであった
けれど、その声には聞き覚えがあった

「カースアイズ・・・」

ついこの前、戦場で出会ったばかりの彼女
私が今一番会いたかった人が目の前にいる

「あら、貴方は・・・もしかして私へのリベンジ?」
「魔導装甲の修復が終わっていればそうしたいところですが、今は逃げるしかできません」
「ふふふ、面白いわね貴方、でも私から逃げられると思ってる?」

確かにカースアイズの言うとおりだろう、
魔導装甲を着た状態ですら、私を圧倒するほどの力の持ち主だ
生身の状態の私ではすぐに捕まえられるのがオチだろう

「貴方に聞きたいことがあるんです、それが済んだら殺してもらっても構いません」
「へぇ・・・、どんなことを聞きたいの?」
「8年前、貴方は私を助けてくれた人ですよね」

そういいながら、私は懐のペンダントを取り出す

「これ、同じ物を貴方もしていましたよね」
「たまたま同じだったとは思わないの?」
「調べてもらいましたが、これは特殊な金属で作られていて、この辺りでは一切取れないそうです」

カースアイズは私の言葉をただ聞いている

「更に希少価値も高く、グラディアでも一部の存在しかもっていないと」
「良くそこまで調べたものね」
「どうしても、知りたかった私を助けてくれた人がどんな人なのかを」

カースアイズは何かを諦めたかのようにその辺の座れそうな石に腰をかける

「確かに8年前私は貴方を助けたし、そのペンダントをあげたわ」
「どうして魔族である貴方があの時私を助けたのですか、この前だって、私に止めをささなかった・・・」
「助ける事に理由何かいるのかしら?助けたかったから助けただけ」

カースアイズの真意が今ひとつ見えてこない
だが、私が今言える事はこの人が私達の村を襲った奴等とは違うということだけだ

「まさか偶然助けた貴方が戦場にいるとは思わなかったけどね」
「やっぱり、気付いていたんですね・・・」
「もちろん、普段は眼隠しているけど、色々理由があってね、見えなくても分かるのよ」

やはりあの時、私だから止めをささなかったのだ
もしも、私以外の誰かだったら躊躇なく止めをさしていただろう

「じゃあ、何で私達の村を滅ぼしたんですか!!」

つい大きな声で喋ってしまう、この人は魔族である
実はその優しさも建前でおそろいしい本性を持っているのかもしれない
だけれど、彼女の言葉で私は今までやってきた
心の奥底では彼女を信じたくてしょうがないのだ

「話してもいいけど、信じるか信じないかは知らないよ?」
「大丈夫です」
「簡単に言うと、魔族にも大きく分けて2種類いてね」

魔族に種類があるのは初耳である
私が知っている魔族というのは、一般の人間を遥かに凌ぐ魔力を持ち
人間達を汚し、陥れる、そんな邪悪な一族ばかりだと思っていた

「まず、力で全てを支配しようとしている魔族、これが貴方達の村を襲った」
「もう一種類とは・・・?」
「人間と共存を望んでいる魔族、グラディア王国にいる魔族がその筆頭ね」

戦争状態にあるグラディア王国が人間と魔族の共存を望んでいる
元々は魔族の力を借りて他国を侵略していると私達は教わった

「じゃあ、グラディア王国は私達と戦う気はないと?」
「そちらが仕掛けてこなければそのつもりだったわ、でも、仕掛けられた以上は私達だって自衛の為に戦うのは必然でしょ?」

確かに大儀の為に戦争を仕掛けたのは私達の国の方だ
攻められたら守る、これは人間達にだって言えることだ

「私達の村を滅ぼした魔族とは無関係だと?」
「敵対しているという点では関係しているわね、やつらの狙いは私達を疲弊させることだから」
「何で、同じ種族同士で争うんですか?」
「へ、それ本気でいってる?」

私にはカースアイズの素っ頓狂の言葉の意味が理解できなかった

「人間だっていろんな国で戦争してるのに?」

その一言で私は納得した、種族は同じでも考え方が違うのだろう

「でも、少なくとも個々の力が強い分人間よりは過激なのは確かだわね」
「だから、こういう手段もいとわないと?」
「そういうこと、ま、魔族の言うことを信じるか信じないかは勝手だけど」

私はカースアイズのいうことを素直に信じられた
魔族も人間も外見の違いこそあるものの、本質は似ているからだ
だったら、その出来た人の事を信じられないはずがない

「っと、少し長話になったようね、そろそろ退散させてもらうわね」

彼女は呪文の詠唱をすると、一瞬で目の前から姿を消した

「また、会いましょう、今度は戦わなければいいわね」

それだけ言い残していった

「一度姉さんにも話してみようかな」

私の心の中に和平と言う言葉が見え始めた
滅ぼされた時からは全く思いつきもしなかったこと
人間も魔族も同じだと教えてくれたこと

まずはお互いのことを知らねばならないのだ
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by meruchan0214 | 2006-07-21 03:08 | 短編小説

あの日の思い出 3

8年前・・・

「うわぁぁぁぁん、ここ、どこぉ」

まだ小さかった私は好奇心旺盛で珍しいものがあるとすぐそっちの方へと行ってしまった
この日もたまたま見かけたタヌキを追いかけて森の中へと入り込んでしまったのだ

「ぐすん・・・」

歩いても歩いても周りは生い茂る木々が並んでいる
今思えばそんなにでかい森でもないのに、あの頃はとても大きく感じていた

「パパ、ママ・・・、おねえちゃん・・・」

寂しさで胸が一杯でずっと泣いていた
一人がこんなに寂しいとは思ってもみなかった

パキッ

何か枝を踏んだような音
誰か居るのかと思いそっちに近づいてみる

「ぐるるるるるる」
「ヒッ・・・」

動物なら何でも襲うグレイウルフが私を狙っていたのだ

「きゃああああああ!!」

泣いているどころではなかった、グレイウルフの事は親から良く聞いていて危険だと知っていた
だから一人で森に近づいちゃいけないとずっと言われていたことだった

だけれど、子供の足では森に生きる動物達の前では遅すぎるもの
あっという間に追いつかれ周りを囲まれてしまった

「ぐるるるる」

じょじょに近づいてくる、グレイウルフの群れ
逃げ場はない、最大限の恐怖が私を襲っていた

ヒュン

ドガ!!

どこからか石つぶてが飛んでグレイウルフ達に襲い掛かる

「キャン!!」

突然の攻撃に恐怖したのか慌てて立ち去るグレイウルフ達

「大丈夫?」

グレイウルフが去った後、私に声をかけてくれたのは一人の女性だった
長い綺麗な髪にすらりとした体型、眼には目隠しをしているが顔つきからしてかなり綺麗に見える

「うわあぁぁぁぁん、恐かったよ~」

私はこの人なら安心できると思ったのか女性に抱きついて思いっきり泣いてしまう

「よしよし、お嬢ちゃん、どうして一人でこんなところに来たの?}
「タヌキさん追いかけて・・・気付いたらここまで・・・」

優しい声で語りかけてくる女の人
その雰囲気は全てを包み込んでくれる、初対面の私にすら暖かくしてくれているのだ

「じゃあ、お姉さんが森の外まで案内してあげる」
「ほんと?」
「ええ、お嬢ちゃんの住んでいるところは?」
「フェイルト王国領、ゲイルド村・・・」
「分かったわ、それじゃ行きましょ」

私はその女性に手を引かれ無事に森の外へと案内された

「ここまでくればもう一人でも大丈夫?」
「うん、本当にありがとう!!」

私がお礼を言うと女性はにこやかに笑いかけてくれた

「ふふ、もうすっかり元気になったようね」

すると目隠しをした女性はポケットにしまってあったペンダントを私に渡した

「これは、今日私と貴方が出会った記念にあげる」

銀に似ているがそれほど重くはなく、光に当てると七色に変化する
ペンダントの中心には薄青色の綺麗な宝石がはめ込まれており、
それが非常に心を魅了する美しさだった

「え、でも・・・」
「いいのよ、このまま誰にもつけられないでいられるよりも、誰かにつけてもらった方がこれもうれしいと思うから」
「う、うん」
「どんな時でも絶対にくじけちゃ駄目よ、諦めたらそこで終わりだからね」
「うん」
「それじゃ、私はここでお別れ、それじゃね」

それだけ言い残すと、その女性は再び森の中へと入っていった

「エルー、どこなのー?」

目隠しの女性と別れたすぐ後
姉さんが帰りの遅い私を心配して近くまで探しに来てくれていた

それ以来、あのペンダントはずっとずっと私の宝物だった
これを持っていればまた会える、そんな気がしていたのだ
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by meruchan0214 | 2006-07-16 22:32 | 短編小説

あの日の思い出 2

「調子はどうです?」

精霊の通信が私の耳元で聞こえる

「うん、大丈夫。絶好調だよ」

魔導装甲の実用は十分といったところだ
事実、今グラディア王国の兵と戦っても私達だけでも余裕だからだった

「エル、何か来るわ」

姉さんが示す方向に一人の影
その手には巨大な鎌を持っており、巨大な邪気が発せられているのが分かる

「あれは・・・、カースアイズです」

通信からヴェルダの声がする
カースアイズと言えば、グラディア王国の軍隊の総司令だ
その武器の一振りは何百もの命を刈り取るまで言われている

「大丈夫、エル?」
「うん、強いのは分かるけど、そのためにこれを作ったんだから・・・」

カースアイズは不敵にも単身でこちらへと歩いてくる
兵士が勝てないから総大将自ら出てきたのだろう

「貴方達が兵士の言ってた方々ね」

私達のすぐ近くまでやってくると、話しかけてくる

「悪いけど、これ以上仲間に被害を出させるわけにはいかないの」

カースアイズは鎌を構える

「貴方達は私が・・・倒す!!」

一瞬にしてカースアイズから魔力が膨れ上がった
真紅の瞳はまるで鬼のようであった

ガキィィィィィン!!

激しく武器が互いに交錯する音

速い・・・、最初に私が思ったことであった
あれだけの大鎌を片手で簡単に振り回す
見た目以上にいや、噂どおりの実力と言ったところだ

「姉さん!!サポートお願い!!」
「分かってるわ・・・!!」

バシュ!!

魔導装甲を開発した際にそれをサポートする魔具
攻撃的な武器ではないものの魔導装甲を生かすためには重要なものだ

「まだまだ、甘いわね」

カースアイズが手をかざすと目の前に障壁が発生する

バリバリバリバリ!!

魔具から放たれた弾は障壁により阻まれる

「くっ・・・」

正直、かなり分が悪い
このまま戦っていてもまず勝ち目はない

「エル、ラスフィーナさん、一旦退いてください!!こちらから援護します!!」

通信からヴェルダの声がする
彼女の言うことがもっともだ、私達は隙をみて退くことにした

ガキィィィィ

「しまった!!」

しかし、一瞬の不意をつかれ私はカースアイズの一撃を受けてしまう

チャリィィィィン

その衝撃で私の大事なペンダントが飛んでしまった

「あ!!」

私は思わず声をあげ、ペンダントを受け取ろうとする
だが、それが命取りになってしまった

「戦いの最中に他の事に気を取られた駄目よ」

私の首元にカースアイズの鎌が突きつけられる

「何に気を取られたのかしれないけど、自分のミスを恨みなさいね」

やられる、そう思った瞬間私はペンダントに祈るだけだった
昔助けてくれたあの人がきっと私を助けてくれると

「エル!!」

姉さんの声がする、そしてカースアイズの鎌が振り下ろされた

ピタッ

何故か私の寸前で鎌の動きが止まる

「貴方・・・、もしかして・・・」

何かを呟くが私にはよく聞き取れなかった

「気が変わったわ、今回は見逃してあげる」

カースアイズは鎌を引き上げるとその場から立ち去ろうとする

「何で私を見逃すの!?」

私は咄嗟に振り向いた時だった

キラッ

カースアイズの胸に光る何かが私の目に入った
しかし、次の瞬間には彼女の姿は無くなっていた

「あれは、あの人がくれたお揃いのペンダントだった・・・」

カースアイズがつけていたのは紛れもなく私が大切にしていたペンダントと同じ物
装飾店にも聞いてみたがオーダーメイドらしく、金属も少なくともこの辺りでは取れないものを使っているらしい

「まさか・・・」

私の中に一つの予感が走る
そしてそれはあの時の思い出を甦らせていた
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by meruchan0214 | 2006-07-15 10:00 | 短編小説

あの日の思い出 1

ピ・・・ピピ・・・

『出力、70%・・・80%・・・90%・・・100%、機動します』

ウィィィィィィィン

鎧に魔力が満ちていくのが分かる
これが私達の開発した、魔導装甲なのだ

「やっとできたね」
「そうね、これがあれば家族の仇を取ることも出来るわ」
「それはいいんですが、お二人さん、誰が扱うんで?」

私と姉さん、ヴェルダの3人で作った対魔族用兵器
本当に長い年月がかかった

「ここの王様にも感謝しないとね」
「ええ、お陰でこれが作れたのだもの」
「ま、グラディア王国との戦争中ですから、戦力がほしいと言う所でしょうね」

私達が今居る国はフェイルト王国、隣国のグラディアとは現在戦争状態にある

「グラディア王国は魔族も居るんだから絶対に勝たないとね」

そう、グラディア王国は私達の村を滅ぼした魔族が居る国
私達にとって憎むべき敵なのだ

「まあ、後は試験通りに動くか動かないかですけどね」
「とりあえず王様に報告してくるね」

私は王様に魔導装甲の件を報告しに行った
私達はこれに全てをかけていた、村の仇を絶対に取る
ヴェルダはあんまり乗り気ではなかったが、それでも私達と一緒にやってくれた

「じゃあ、予定通りに装着者はエルターナで、私はそれをサポートするわ」
「了解ですよ、じゃあ私は魔導装甲からのデータを集めるんで」

報告を受けた王様は直ちに私達に出撃命令を下した



そして、戦争の最前線へとやってきた

「エル、調子はどう?」
「うん、良いみたい、いつでも大丈夫だよ」
「それじゃあ、そろそろ行くわよ」

私達はグラディア王国との戦いへと赴く

魔導装甲とは大気中の精霊の力を鎧に蓄え増幅させる機関を持たせたもので
地、水、風、火はもちろんのこと、自身の魔力をも力に変える
ようするにこれをつければ、戦いを知らない人間でも戦いができるというものだ
もちろん、これを着る者が強ければ強いほど効力も増す

「この時のために修行してきたんだから」

そう、あの時から私達の戦いは始まったのだ
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by meruchan0214 | 2006-07-12 13:03 | 短編小説

あの日の思い出 登場人物

エルターナ・グレイズ  16歳 ♀

このお話の主人公、子供の頃魔族に村を滅ぼされており魔族に対して強い恨みを抱いている
魔導装甲という研究を進めており、それを着用し運用するのが彼女の役目である
村が滅ぼされる前に魔獣に襲われた際助けてくれた人がくれたペンダントを今でも持っている
その時の彼女の言葉が強く心に残っている

ラスフィーナ・グレイズ  20歳 ♀

エルターナの姉で滅ぼされた村の数少ない生き残りの一人
両親を目の前で殺されており、エルターナ以上に魔族に対して恨みは激しい
妹と同じく魔導装甲の研究の一員で、監視と援護を担当する
しっかりとしたお姉さんで家事から何までそつなくこなす

ヴェルダ・サフォン  18歳 ♀

エルターナとラスフィーナの幼馴染で同じく村の生き残り
3人の中で一番頭の回転が速く、魔導装甲の発案者も彼女である
基本的には恨みとかそういったものにはこだわらないタイプではある
だが、同じ生き残った二人に研究を手伝わさせていることに罪悪感を感じている

カースアイズ ?歳 ♀

真紅の紅い眼を持つ魔族の司令官で本名などは一切不明
その眼を見た者は一瞬で死に至らしめることからこの名がついている
見た目こそ人間と変わらないが、ある者の証言では巨大な獣が本当の正体だとも言われる
気まぐれな性格で敵を見逃したりするなど行動に不明なことも多い
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by meruchan0214 | 2006-07-12 12:48 | 短編小説