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misson8 驚愕

あれから、何度か小競り合い程度での戦闘があった。
お互いに様子見という程度で、被害もほとんどなかった。

何度かそういった出撃を繰り返すうちにアリシアも戦うことになれてきていた。

「サポートはできるけど操縦するのは、アリシアちゃんなんだからね」
「わかってるよ、ルピナちゃん」

ハイシェントに居る、ルピナとも息が合ってきていた。

「リシェルさん、戻りました」
「御苦労さま」

リシェルは書類の束に向かって仕事をしていた。
大きな戦闘が無い今のうちというところだろうか。
本当ならば、ずっとこの仕事だったらいいのにとリシェルは漏らす。

「事務だけならどんなにいいことか・・・」
「そうも言っていられませんからね」
「ただ、あの人もこのまま黙っているとは思えないしね」

あえて名前を言わないのがアリシアは少し気になった。
けれども、相手の侵略が終わったわけではない。
ザムレイズ軍がこのまま終わるわけではないと確信していた。

どれだけステイルが周りを止めてくれるかにも期待はしていた。

「必ずまた戦わないといけない時が来るからね・・・」
「そう・・・ですね」

戦いに慣れたといっても、好きになったわけではない。
いつでも、人殺しが大義になってしまう戦いが怖いと思っている。

ビーッ!!ビーッ!!

ウロボロスの警報が鳴り響く。

「アリシア!!」
「はい!!」

アリシアは急いで格納庫へと向かった。
リシェルも仕事をやめ、ブリッジへと向かった。

「ジョニカ、相手は?」
「はい、ザムレイズ軍の中隊です。先行部隊かと思われます」
「なるほどね、フリス隊とアコナ隊は出撃して。アリシアもハイシェントで出てもらって」
「了解!!」
「他の部隊も直ぐに出れるように準備をしておいてね」

ウロボロス内に緊張が走る。
今までの小競り合いとは違う状況に新しい戦乱の予感を感じていた。

アリシアはハイシェントに乗り込み出撃する。
次いで、リシェル、そしてフリス、アコナ達も出撃した。

「さて、どうでてくるか・・・」
「相手も前回と同じような轍は踏まないだろうからな」

お互いが様子を窺いながら徐々に距離を詰めていく。
そして、ザムレイズ軍からもパワードールの出撃が確認できた。

射撃距離に入って、ウロボロスの機兵とザムレイズのパワードールが戦いを開始する。

「いけ!!」

ハイシェントの弾がパワードールに放たれるが、電磁シールドで攻撃が阻まれた。

「な・・・」

驚きを隠せなかったのはアリシアだけではなかった。
パワードール全てに電磁シールドが搭載されているのだ。

「皆、退いて!!」

リシェルの声に皆が後退戦を始める。
電磁シールドがある以上実弾兵器のダメージは薄い。
遠距離で電磁シールドを打ち破れるのは、現状ではハイシェントとエルブラスト位であった。

「アリシア、ウロボロスが退くまで時間を稼ぐわよ」
「分かりました」
「いい、絶対に無理しちゃだめよ」
「はい」

ハイシェントとエルブラストはウロボロスや部隊全体を守るように少しずつ後退する。
しかし、敵の攻撃は激しくウロボロス軍を攻めたてる。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「レムド!!」

逃げ切れなかったウロボロス軍の機兵が破壊される。
防御に徹しているからまだ何とかなっているが、このままでは敗戦は必至だった。

「リシェル様!!全機格納終わりました!!」
「わかったわ、アリシア!!」
「はい!!」

ハイシェントとエルブラストもその場から撤退しようとする。

「アリシアちゃん!!危ない!!」
「しまっ・・・」

一瞬判断が遅れたアリシアは電磁シールドが間に合わず、被弾する。

「く・・・」

アリシアはハイシェントを動かそうとするが、何も反応がない。

「駆動系に損傷・・・。動けないや」

当たり所が悪かったとしか言えなかった。
動きを停止したハイシェントにパワードールが近づいてくる。

「アリシア!!」
「ハイシェントはもう、動けないみたいです」

リシェルの通信にアリシアは諦めたように喋る。
思った以上にアリシアは自分の事を認めることができた。
これで終わりなんだと、素直に受け入れてしまった。

「ちっ・・・!!」

リシェルは何とかハイシェントを回収しようとするが、パワードールに阻まれて近づくことができない。
ハイシェントは動けないまま、敵のパワードールに接収される。

「すいません、リシェルさん・・・。私のせいで」

それを最後に通信が終わった。

「アリシア、ルピナ、ごめんね・・・」

ハイシェントが敵に接収され、これ以上は無理と判断したリシェルはウロボロスへと後退する。
何とか取り戻したかったが、1機ではどうしようもなかった。

一方、ハイシェントのコクピットの中ではアリシアがルピナに話しかけていた。

「ごめんね、私のせいで」
「ううん、大丈夫。アリシアこそ・・・」

敵に捕まるということ、それから先どうなるかは誰もわからない。
ただ、アリシアはウロボロスの皆、リシェル、そして両親であるフリスとアコナに申し訳ない気持で一杯だった。
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by meruchan0214 | 2007-11-14 19:00 | 守護機兵 ハイシェント2

misson7 変わりゆく

アリシアは正式に軍人としてウロボロスに居ることになった。
階級は低いものの、その先立っての戦いでの活躍は既に有名になっていた。
もちろん、両親が前戦争の英雄であるということも、加味してのことではあった。

「ん~・・・、今日は休みだ!!」

久しぶりの休暇、ここのところ暇さえあればシュミレートや軍部関係の処理など忙しい毎日だった。
リシェルの見立てでは暫くはあちらから攻めてこないだろうということでの休暇だった。

「学校はどうかな・・・?」

なし崩し的に軍人になったアリシアは急に学校に行かないように思われても仕方がなかった。
ジョニカから話はいっている為、休学扱いでまだ学校には在籍している。

アリシアはそっと学校を覗いてみると、いつもと変わらない風景がそこにはあった。
当たり前の事、それがとても羨ましく思えてきた。
今まで居た場所ではない、それが今の自分の居場所。

だからこそ、当たり前だった場所を守りたい。
皆がいつものように生活できる場所を守りたかった。

「うん・・・、頑張れそう」

アリシアは戦いをする意義を見出し始めていた。
ブラブラとのんびりしていると、以前の女の子、ハイシェント自身が遊んでいた。

「あ、アリシアちゃん。こんにちわ~」
「こんにちわ、えっとそういえば、名前教えてもらってないよね・・・?」
「あれ、言ってなかったっけ??まあ、いいや、私の名前はルピナだよ」
「ルピナちゃん、この前一緒に居た子は?」
「ナミアはお母さんと一緒に居るって言ってたけど」
「ふ~ん」

こうやって話してみると、普通の女の子とまったく変わらない。
それが戦闘になると、ハイシェントの頭脳として動いているのだ。

「ねぇ、ルピナちゃんって170年も前からハイシェントに居るの?」
「うん、そうだよ」
「作ったのはお母さん?」
「作った・・・っていうよりは~、お母さんが助けてくれたんだ」
「助けてくれた?」

アリシアはルピナの話に興味が沸いた。
ただのプログラムだったら、助けてくれたなんていう表現はしないだろう。

「お母さん、死に掛けた私とナミアの意識をデータ化して保存したんだ」
「データ化して・・・保存・・・?」

今では考えられないことだ、確かに歴史にはそういったことを実験していたという事実は残ってはいる。
だが、リシェルなどを見ていると確かにそれしか考えられないことではあった。

「一番辛いのはお母さんだから、私達が助けてあげないといけないの。ずっとずっと悩んでるから」

今までリシェルを見てきていてそんなそぶりはほとんどなかった、
悩んでいるといっても、作戦の事などをいつも考えているようだったのだ。

「ルピナちゃんはお母さんのこと、大好きなんだね」
「うん!!もちろん!!」

アリシアはこれ以上突っ込んだことは今は言わないほうがいいと思った。
彼女の話は本当だと思う、ということはお父さんといったあのプロトタイプハイシェントは確実に実の父親だ。
両親がお互いに敵として戦い、娘達は母親と共に戦う。
どう思っているのか興味はあったが、聞く気にはなれなかった。

「そういえば、ルピナちゃんってその姿はどうなってるの?」
「触ってみる?」

アリシアは触ろうとするが、ルピナの体をすり抜ける。
今目の前に居る、ルピナの姿は立体映像なのだ。

「それで、この前目の前で消えたんだ」
「うん、ウロボロスの電気系統を伝って帰るだけだから」
「ん~でも、実際にはここに居ないってことだよね?」
「感覚的には意識だけ居るって感じだよ、実際のデータはハイシェントの中だし」
「ふ~ん」

予想以上にしっかりしている、ルピナ。
子供と言っても170年も前の話だ、学習機能が当たり前だとしたら当然とも言えるだろう。
しかし、子供っぽさは抜けてはいないようだ、それはAIとしての設定なのか、彼女自身がそうなのかはわからない。

「これからもよろしくね」
「あ、うん。よろしくね」

ルピナはにこやかに笑った。
それにつられてアリシアも笑ってしまう。

「アリシアちゃん、凄かったけど。それに慢心しちゃ駄目だからね」
「分かってるわよ」

ルピナに釘を刺されるが、実際そのとおりだとアリシアは思う。
アリシア自身、自分の才能を感じていた。
でも、それに溺れてしまったら駄目になりそうな自分が居た。

「ん、じゃあ約束」

ルピナは小指を出して指切りを示した。
アリシアは指を出すが、当然ルピナは映像の為すり抜けてしまう。
だけど、やることに意義があった。

「それじゃあ、そろそろ私、戻るね」
「うん」
「今日は楽しかったよ~、バイバイ」

ルピナの姿が消えていった。
ある意味ここに居る限りは便利な姿だとアリシアは思った。
しかし、自分は人であり続けたいと思ってしまった。

きっと、リシェルもそれを望んでいるんだろう。
人が人でなくなってしまわないようにと。
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by meruchan0214 | 2007-11-11 00:12 | 守護機兵 ハイシェント2

misson5 覚醒

相手はザムレイズの軍艦3隻。
パワードールも多数出撃しており、こちらとの戦闘態勢は整っていた。
対するはウロボロス軍とザムレイズ軍の軍艦1隻。
こちらも機兵やパワードールを出撃させ戦う状態は整っている。

「アリシア、シンクロシステムはお互いのシステムを共有することによって、より広範囲のレーダーを持つ事にあるわ。レーダーの使い方は分かるわね?」
「はい、分かります」
「オーケー、あんまり離れすぎると機能しなくなるから、気をつけなさい」
「了解です」
「自信を持って、貴方ならこのシステムに何も問題なく使いこなせるはずだから」

アリシアはマニュアル通りに操縦する。
ほとんどがシュミレーション通りでほぼ違和感無く動かすことができた。

「アコナ、フリスさん、ごめんね」
「いえ、こうなることは予想はしてました」
「娘が自分で選んだ、複雑な気分ですが止めるつもりはありませんよ」
「ありがとう、皆ステイルさんの軍には当てないように気をつけて!!」
「了解!!」

いよいよ、戦いが始まった。
以前の戦いから再びあの熱線の攻撃があると思うと迂闊には攻撃できない。
だが、リシェルはいつもと違いやや余裕をもっていた。

「射程距離さえ分かっていれば・・・」

相手の兵器さえ分かっていれば対策も立てれる。
エルブラストは自身の持つ砲台を連結した。

「射程外から撃てばいいってね・・・、アコナお願い!!」
「了解!!」

アコナの乗るフルゲスト改がエルブラストの砲台の照準を定める。

「いけ!!」

長遠距離からの狙撃、それを正確に狙い打つ。
エルブラスト以外にもほとんどの機兵が同じような戦術を取った。

「同じ手は二度通用しないってね」

長遠距離からの狙撃に熱線の射程まで近づくことができない。
そうなると必然的に戦闘は白兵戦になっていく。

「来たわよ、フェルル隊、シュイ隊は現状を維持、フリス隊とアコナ隊は敵を迎え撃って。狙撃隊に敵を近づけさせないで」
「了解」

機兵、パワードール同士の白兵戦はウロボロス軍の有利であった。
機体性能が明らかに違うというわけではないが、錬度が如実に出ているのだろう。

「相手のハイシェントが出てきたら、アリシア、私たちで抑えるわよ」
「は、はい!!」

正直、アリシアはついていくので一杯一杯だった。
当たれば運が悪ければ即死、良くても機体破損。
だけど、不思議と今まであった不安はなくなっていた。
破壊すれば相手の未来を奪ってしまう、罪悪感こそ残っていたが、乗ると言うことに違和感はない。

「うん、その調子だよ」
「はは、ありがと」

語りかけてくるハイシェント、自分が動かしていない、反応しきれない時に勝手に動いているのが分かる。
自分をサポートしてくれている、どんな激しい動きをしたところでもちゃんとついてきている。
戦える、自分も護るモノがある、そう思い始めていた。

「きた!!」

どす黒い大きなものが近づいてくる。
ザムレイズのハイシェントが近づいてきていた。

「アリシア、恐れないで。一人じゃないから、絶対に勝てる」
「は、はい!!」

再び対峙するハイシェント同士、それに今回はエルブラストもいる。

「お父さん・・・」
「え・・・」

ハイシェントが呟いた言葉に少し驚くが、今は戦場だ。
色々と聞くのは後回しにアリシアはした。

「レフィン・・・!!」
「おや、今日はハイシェントではないのか、それではハイシェントに乗っているのは・・・?}
「貴方を倒す人間よ」
「くくく、やれるものならやってみろ」
「アリシア!!」
「はい!!」

ハイシェント、エルブラストがプロトタイプハイシェントに襲い掛かる。
一進一退の攻防を始め、アリシアはリシェルに遅れないように必死だった。
だが、アリシアの感覚は皆の予想を遥かに超え始めていた。

「見える・・・」

エルブラストとプロトタイプハイシェントが次にどうやって動くか。
アリシアにはこの戦場全体が今どうなってるか無意識に頭に入ってくる。

「リシェルさん、任せてください!!」
「え?」

アリシアの乗るハイシェントがプロトタイプハイシェントと競り合いになる。

ジ・・・ジジジ・・・

激しくぶつかり合う音、リシェルはまだ実戦を始めたばかりのアリシアに全て任せられるはずも無く援護に行こうとする。

「え!?」
「何!?」

リシェルもレフィンも驚愕の声を出すしかなかった。
一瞬、ほんの一瞬でハイシェントがプロトタイプハイシェントの腕を断ち切った。
その瞬間はリシェル、斬られた本人にも分からなかった。

「ちっ」

予想外の攻撃にプロトタイプハイシェントは撤退する。
それに呼応するかのように、他のパワードール達も撤退して言った。

「予想以上だわ・・・」

呟いたリシェルはただ驚きの言葉を放つしかなかった。
戦闘が終わり、ウロボロスに戻る。
初の戦場で大きな戦果をあげたアリシアはまさに英雄の如き存在だった。

「私、勝ったの?」

一番驚いたのはアリシア本人であった。
思った以上にうまくいきすぎたせいもあるだろう。

「良くやったわね」

イマイチ実感のわかないアリシアに対して、リシェルが言葉をかけた。
その言葉に、自分が相手を退けたことを少しずつ感じ始めていた。
戦っているときに感じた感覚は今はもうない。
今は物凄く落ち着いているだけだった。

「戻りましょうか」
「はい!!」

アリシア達がウロボロスに戻るとステイルの艦からの通信が入る。

「ありがとう、助かりましたよ」
「いえ、それよりも大丈夫なのですか?」
「心配ない、皮肉なことだがこちらも一枚岩だけじゃないんでね」
「そうですか」

リシェルはやや複雑そうな表情を浮かべる。

「それでは、君達の無事を祈っている」

通信が切れると、みんなの緊張が解けたようにもなった。
今回の一番の大手柄は間違いなくアリシアだった。
プロトタイプハイシェントを圧倒し、傷を負わせ撤退させたからだ。

「でも、戦う才能って怖いですね」

正直なアリシアの感想だった。
得も知れぬあの感覚、しかしそれが逆に心地よい。
命をやり取りしているという、妙な興奮がアリシアの心をそう思わせたのだ。

「そうね、戦いなんてなければ、必要無いものだしね」

リシェルはそれに賛同するように頷いた。

「でも、戦わなければいけないのが、残念だけど」

それと同時に少し悲しそうな言葉で台詞を付け加えた。
戦いが無くなればどんなにすばらしいことなのだろう。
少なくとも、この地球圏に住む人間たちはこの20年は戦争を起こさなかった。
異なる星の人間たちが突然攻めてきた。

「とりあえず、今日は疲れたでしょう。もう休みなさい」
「あ、はい」

言われてみると何となく眠い気がした。
それだけ精神を集中していたせいもあるだろう。
アリシアは両親である、アコナやフリス達と共に家へと戻っていった。

「そういえば、戦闘のときにハイシェントがお父さんって言ったよね・・・」

確かにそう呟いた、作り主ということなのだろうか。
リシェルとレフィン達は確かにハイシェントを作った人々には違いない。
だけど、ハイシェントの言葉はアリシアが父を呼ぶ様な、そんな感じだった。

「まさかね・・・」

一瞬、頭の中を変なことがよぎったが、すぐにそうではないと否定した。
アリシアが考えたことは、ハイシェントもリシェルと同じなのではないかと。
そして、リシェルとレフィンがそのハイシェントの実の両親ではないかと。

それだと呟いた言葉もわかる。
けれど、ハイシェントのしゃべり方などは明らかにまだ子供だ。
いくらなんでも、レフィンはともかくとしても、リシェルがそれを許すとは思えなかった。

「今日はもう寝よ!!」

あんまり深く考えることをやめて、布団に潜るアリシア。
いろいろと考えることも無く、静かに安らかな寝息をたてていた。
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by meruchan0214 | 2007-10-30 19:57 | 守護機兵 ハイシェント2

misson4 護る力

いつ襲ってくるか分からない敵。
勝ち目があるのかも分からない。
自分に戦う力があるのならば、それを奮わないのが罪なのか。

恐怖が体を支配し、戦うことを恐れる。
死を恐れているのではない。
自分がやろうとしていることを恐れている。

人を殺すと言うこと、未来を奪うと言うこと。
だけど、戦わなければ自分たちの未来が消える。
どうすれば、どうすればいいのか。

「はっ!!」

夜、寝苦しくて目が覚めるアリシア。
ウロボロスでは地球と同じように周期的に朝から夜までを繰り返す。
できるだけ、自然にそれがウロボロスだった。

「まだ、夜か・・・」

辺りは静まり返っている。
ウロボロスでは夜とは言っても、他はどうであるかは分からない。
事実、家にいるのはアリシアだけで両親は家にいなかった。

「お父さんとお母さんは・・・軍部の方か・・・」

一人だと言うことをとても寂しく感じたのは久しぶりだった。
誰かに傍にいてほしいと思っても誰もいない。
そんな孤独感がアリシアをより不安にさせていた。

眠気が覚めてしまったアリシアはとりあえず街に出ることにする。
地球の時間で言うならば、今は午前3時、真夜中だ。

「ふぅ・・・」

アリシアは公園の辺りを一人で歩いている。
水の流れる音と木々の揺れる音が音楽を奏でているようだった。

「ん?」

アリシアは歩くのを止める。

「子供の声がする?」

耳を澄ませて聞いてみると、確かに子供がはしゃいでいるような声がする。
こんな時間にどうしてなのかは分からない、けれど気になったアリシアは声のする方角へと向かった。

公園の噴水に小さな女の子が二人遊んでいた。
こんな時間なのにそんなことを感じさせないくらいに楽しんでいる。
しかし、アリシアは遊んでいる子供に違和感を感じた。
見えているのその場にはいない、幻影のようだった。

「子供がこんな時間になにしてるの?」

こんな時間まで遊んでいるということを黙って見過ごすわけにもいかず、声をかける。
しかし、二人の女の子はキョトンとした顔で何で遊んじゃいけないのか分からない顔つきだ。

「だって、こういう時じゃないと遊べないんだもん」
「普段は遊ぶ機会がほとんどないですから」

双子のように見える女の子、一人はワンパク盛りでもう一人は大人びて見える。
顔つきはそっくりだが、その印象のせいかはっきりと区別がつく。

「いつもは何してるの?」
「お母さんと一緒に居るの」
「お母さんと一緒って・・・、お母さんは何してるの?」

いまいち会話の趣旨が掴めないアリシア。
どこの子供か聞こうと思ってあれこれと聞いてみる。

「お母さんの名前は?」
「リシェル、リシェル・エル・ビュー」
「り・・・しぇる・・・?」

リシェルの子供だと言う彼女達、まさかあのリシェルの子供とは思えなかった。

「リシェルさん、リシェルさんってもしかしてこのウロボロスで一番偉い人?」
「うん、そう言ってたよ」

やっぱり、そう思ったアリシアだが、明らかにおかしい事に気がついた。
リシェルがまともに生きていたのはずっと昔の話だ。
子供が今もこんな姿でいるはずがないということ。

「お母さんは大変だから、私達が助けてあげないといけないんです」
「うんうん」

しかし、リシェルがやってきた時は一人だった。
彼女達が居る雰囲気はどこにも無かった。

「ん・・・」

アリシアは不意に嫌な気配を感じ取った。
それは二人の子供も感じ取ったみたいだった。
子供たちは顔を見合わせて頷くと、彼女らの姿が薄くなっていく。

「え、消えた・・・?」

まるで最初から居なかったかのようにアリシアだけが残った。
その次の瞬間、警報が鳴り響いた。

「また、来たんだ・・・」

アリシアは家から軍部へと向かった。
戦うつもりはないが、足が勝手に行ってしまうのだ。
ブリッジに着くと、すでにみんな集まっていた。
だが、いつもと様子が違う。

「どうしたんですか?」

アリシアが聞くと、ジョニカが教えてくれる。

「相手が話し合いをしたいっていうのさ」
「話し合いって、あの戦った相手ですか?」
「そういうことだ」

しかし、アリシアの感じた気配はこんなことではなかった。
もっと黒く嫌な気分になる、そんな気配だった。

「とにかく、話をしてみないことにはね、アコナ、同席してもらえる?」
「わかりました」
「フリスさんとジョニカは付近を警戒してもらえる?」
「了解しました」

相手の艦は攻撃をしないという意思表示をしながら、こちらに近づいてくる。
アリシアは感じた気配とは違う、気配を感じていた。
リシェルはアリシアの感じ取ったことを察したのか、アリシアにも一緒に来るか聞いた。

「え、私なんかが?」
「大丈夫よ、話し合いにいくだけだから」

アリシアは少し迷ったが興味が勝ったらしく、リシェルの後をついていく。
入港した敵艦から、人影らしきものが降りてきた。
その相手は人間とほぼ変わらぬ風貌の男、着ているものがやや違う程度であった。

「はじめまして」

男はリシェルの前に立ち、ニコリと笑いながら話した。
穏やかな雰囲気を持っており、敵とは思えなかった。

「はじめまして、こちらの言葉が通じそうで何よりです」
「ははは、翻訳する装置を使っていますからね」
「なるほどね、私の名前はリシェルと申します」
「私はザムレイズのステイルと申します。以後お見知りおきを」
「それで、私達に何か御用でしょうか?」

リシェルは相手の出方を伺っている、人のよさそうとは言え、油断はできないということだろう。

「単刀直入に言いましょう、休戦をいたしませんか?」
「休戦を、貴方方から仕掛けてきたのに?」
「あれは私達全ての本位ではありません」
「その証拠は?」

リシェルは全くと言っていいほど信用をしていないみたいだった。
当然と言えば当然だ、アリシアはただリシェルと相手のやりとりを見ている。

「我々は信用されていないみたいですね」
「それはお互い様だと思いますけど?」

そう言うとステイルは少し笑ってみせた。

「なるほど、あの人の言っていた通りの人ですね」
「・・・」
「勘違いなさらないように言いますが、私達は少なくとも私の指揮する艦は貴方方と戦うつもりはありません」
「それで、休戦と言っても貴方達だけではないのでしょう?」
「確かに私も軍人ですし、私が指揮しているのはこの艦だけですが・・・」

アリシアはステイルという人間は悪い奴ではないと感じていた。
彼の発している雰囲気はどちらかというと、リシェルやジョニカに似ている。
寧ろ気になっていたのは、この艦以外にこの宙域に嫌な気配を感じることだった。

「残念ながら、今の我々は貴方方の星を言葉を借りて言うならば植民地にしようとしています」
「やっぱりね、予想はしていたけれど」
「ですが、私はそうではいけないと思う。あの人は我々の未来の為だと言うが、そんな良いモノではない自分の復讐の為に我々を使おうとしている」
「貴方は私達とどうあるべきだと?」
「協力し合える、彼の技術は我々の技術を大きくしました、ならば逆もあるはずです」

ステイルの言う言葉は確かにそうであった。
未知の文明の科学というのは大いに魅力的だ。
先の戦闘でも似て非なるモノが存在していた。
それがもしもお互いに共通できるモノがあったとしたら、お互いに伸ばせあえたら。
アリシアはそんなことができたらいいだろうな、と思っていた。

リシェルも興味深そうにその話は聞いていた。

「我々だけでは、自分達の軍を止めることはできません。だからこそ貴方達の協力が必要なのです」
「貴方の言いたい事は分かりました、ですが、具体的にどうしろと?」
「貴方達から、休戦を申し出てもらいたいのです」

ステイルがそれ以上言う前にリシェルが答える。

「残念だけど、それはできません」
「何故ですか?」
「今の状態で休戦を申し込んだら、相手の言い様にしなくてはなりません。それは全体の意思としてもありえません」
「確かにそうかもしれない、ですが、これ以上の犠牲を出してもいいのですか?」

ステイルの言う事も一理ある、ウロボロスやヴェルゼ、アースラインの被害が大きくなればなるほど不利な条件で停戦しなければいけない。
アリシアはステイル自身は本心で言っているのだろう、と感じ取っていたが、全体の状況がリシェルに頷かせないのだろう。

「貴方の気持ちはありがたいと思います、確かに私達ウロボロスが休戦したとなれば、ヴェルゼやアースラインも休戦するでしょう。被害もさほど大きくないと思えます」
「だったら、休戦に・・・」
「貴方の様な考えを持った方々がもっと増えたら、私達が安心できるようになったらその時は喜んで休戦をいたしましょう」
「・・・分かりました。確かにそういった意味ではまだまだ私の力不足ですね」

ステイルは諦めたようであったが、希望を捨てたわけではなさそうだった。

「あっ」

不意にアリシアが声をあげると、みんながアリシアを注目した。

「来る・・・」

アリシアの言葉にほとんどの人間は意味が分からなかった。
だが、一部の人間には確実に伝わっていた。

「アコナ、機兵の準備を」
「了解しました」
「我々もパワードールの準備だ」
「はっ!!」

ステイルも自らの兵達に指揮をする。
一気に戦場の空気にと場が変わった。

「貴方もろともって所かな」
「小賢しい真似を・・・」

アコナ、フリスはそれぞれ機兵に乗り込んだ。
アリシアはただそれを黙って見ているだけだった。

「ハイシェントの整備は?」
「終わってます、エルブラストも整備終了しました」
「二機のシンクロシステムをMAXまで引き上げておいて」
「シンクロシステムはまだ完全に完成していません、オートで検証通りの性能を発揮するかどうか・・・」

リシェルは少し悔しそうな顔をしているが、それでも使うしかない。
それを見ていたアリシアは誰かに言われたわけでもないが自分から動き始めていた。

「オートでって事はマニュアルならば検証通りに動くということですよね?」
「確かにその通りだけど・・・」
「私に乗らせてください、お願いします」

アリシアはリシェルに頭を下げて頼み込む。

「いくら、フリスさんとアコナさんの子供とは言っても実戦経験のない・・・」
「分かったわ」

整備兵を黙らせてリシェルはアリシアが機兵に乗ることを了承した。

「アリシアちゃんはハイシェントに乗って、私がエルブラストに乗るから」
「分かりました」
「誰か、アリシアちゃ・・・、アリシアに合うパイロットスーツを」
「は、はい」

リシェルに言われて周りの人間は慌ててアリシアに機兵へ乗せる準備をする。

「もう、子ども扱いしないからね」

トンと肩を叩かれるアリシア、たったそれだけだけど今のアリシアにとってはとてもうれしいことだった。

トクン・・・

心臓が高鳴っている。
自分で決めた事と言ってもやっぱり緊張するし、恐怖も感じる。

「心配しないで、お姉ちゃん」

ハイシェントの操縦席に座るとどこからともなく声が聞こえた。
聞いたことのある声、公園であった少女の一人の声だった。

「お姉ちゃんなら、大丈夫。お母さんも、ナミアも私も手伝うから」

語りかけてきたのはハイシェントだった。
その言葉にアリシアの気持ちは落ち着いていった。

「うん、ありがとう」

ふぅっと一呼吸置いてから、操縦桿を握る。

「アリシア、準備はいい?」
「リシェルさん、いつでもどうぞ」

エルブラストが先に格納庫から出撃する。
そして、ハイシェントも続いて出撃する。

「ハイシェント、アリシア。出撃します!!」

これがアリシアの初めての出撃となる。
自分ができるならやるだけやってみよう。
自分には助けてくれる仲間がたくさんいる。

そう思えば護ることに恐怖を感じなかった。
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by meruchan0214 | 2007-10-19 21:10 | 守護機兵 ハイシェント2

misson3 迷い

謎の敵との戦闘があってから一週間。
ウロボロスは補給をする為に木星のアルカディアへと立ち寄った。
物資の補給以外に戦闘の為の補給だ。

「さて、これが終わるまで敵が黙っていてくれればいいけれど・・・」
「相手の目的がまだ分からない以上、いつくるか分かりませんからね」

ブリッジではリシェルとジョニカが話をしている。
最低限の人数は残し、他は休憩を取らせている。

しかし、いつでも緊急事態には備えていなくてはいけない。

「レーダーに熱源反応、照合結果、前回のモノと一致」
「やっぱり、来ましたね」
「そうね、ウロボロスをお願いね」

リシェルはウロボロスをジョニカに任せ、自身はハイシェントに乗り込んだ。

「フリスさん、アコナ、二人ともいい?」
「いつでもいけますよ」
「私も大丈夫です」

リシェルのハイシェントを筆頭にウロボロスを護る為に出撃する。

「今回はウロボロスだけじゃないのよ!!」

ウロボロスからの出撃を合図にするかのように、正体不明機を囲むように複数の艦隊が現れる。

「流石だな、時間通りだ」

現れた艦隊は火星のアルカディア、ヴェルゼの戦艦だった。
ヴェルゼの戦艦からも、何機もの機兵が出撃する。

「ジョニカさん!!」

みんなが出撃してやや遅れてアリシアがブリッジに入ってきた。
リシェルが根回ししていた為にアリシアは顔パスで軍部には入って来れるようになっていた。

「大丈夫だ、負けはしないさ」
「でも・・・」

アリシアは言い得れぬ不安を感じていた。
先の戦いでもそうであったが、今度は今まで以上にその不安は大きかった。

「ウロボロスはシールドを展開し、攻撃に備えよ!!」

数はこちらの方が上、負けるはずがない。
誰もがそう思っていた、ただ一人アリシアを除いて。

「何かおかしいわね」
「リシェルさんどうしたんですか?」
「いや、ただこうなることは相手も予想していたはずなのにね」

リシェルも何となく何かがおかしいということに感づき始めていた。
相手の布陣が定石とは違うのだ。

「ジョニカ、聞こえる?」
「どうしました、リシェル様」
「全軍に突出した攻撃はしなように伝達してもらえるかしら?」
「分かりました、けど、どうして?」
「何となくね、嫌な予感がする」

相手も無理に撃ってこようとはしてない。
お互い膠着状態のまま、睨み合っている。

「ほ、リシェルさんも分かってるみたい」

アリシアは自分が感じ取ったことをリシェルも感じていたことに少し安心した。
しかし、このままでは拉致があかない。
お互いに牽制ばかりの攻撃でまともな攻撃はまったくというほどない。

「ノルン、通信できる?」
「リシェル、何用ですか?」
「今、木星圏の敵艦隊のデータを取ってほしいんだけど、できるだけ早く」
「分かりました、少し待ってください」
「お願いね」

痺れを切らして攻撃したらきっと負ける。
リシェルはそれを直感で感じ取っていた。
もちろん、アリシアもそれは感じていた。

「この戦い攻めたら負ける・・・」
「アリシア、何を言ってるんだい?」
「分かるんです、相手はこちらを圧倒するモノがある」

アリシアの不安は確信へと変わっていた。
相手はこの戦力差にも関わらず、怯んだりする様子は全くない。
戦力なんて関係ない、何かがあるのだ。

「くそ、何をチマチマやってるんだ!!」

アースラインの機兵の一隊長がつぶやく。
牽制のみの戦いにだいぶいらついているようだった。

「戦力はこっちが圧倒的に上だ!!一気に押しつぶせ!!」

アースラインの軍隊は牽制のみの戦いに痺れを切らし本格的な攻撃を開始する。

「いけない!!」
「無理に攻め込まないで!!」

アリシアとリシェルは同時に叫ぶ。

「リシェル、解析が終わりました。相手方には・・・」

ノルンとの通信が再びつながった瞬間だった。
敵軍から一斉に熱線がアースラインに向かって照射された。

「遅かったようですね」

ノルンが冷静に話す。
敵軍から発せられた熱線はアースライン軍の半数以上を一発で焼き尽くした。
射程こそそこまで長くはないものの、超高熱で機兵の装甲を一瞬で破壊するほどの威力。

「照射内は太陽とほぼ同程度の温度とでております」
「これじゃ、近づけないわね」

リシェルは相手の奇妙な布陣の意味が分かった。
相手は熱線という兵器を楯に少しずつ前進するつもりなのだ。
撃ち漏らした機兵は周りの護衛機が撃ち落とす。

「参ったわね、これは」

相手の熱線がどれだけ撃てるか分からないが、これでは攻めきれるモノではない。

「リロードは約30秒ほどと相手の艦の規模、出力から考えられます」
「30秒か・・・」

30秒で切り崩すのは至難の業だ。
相手は全力で熱戦を撃つ砲台を守る、こちらは30秒以内にその砲台を破壊しなくてはいけないのだ。

「やっぱり、駄目だよ・・・」

ブリッジに居るアリシアはこの戦いは勝てないと感じていた。
あの兵器を目の当たりにしてそう思えない人の方が少ない。

すると、敵軍から例のプロトタイプハイシェントが現れた。

「どうした、もう来ないのか?」
「レフィン・・・!!」

リシェルの声が変わった、憎しみに近い声。
明らかに元夫に大しての態度ではない。

「愛しき妻よ、元気にしていたかい?」
「貴方にもうそんな言葉はいわれたくないわね」

普段冷静なリシェルがあれほどまでに、感情を表に出すのは非常に珍しかった。
アリシアにもその感情がヒシヒシと肌で感じるほどだった。

「お互い攻め切れないんだ。どうだ、ここは一つ決闘で勝敗を決めないか?」

リシェルは少し考えた、相手が約束を必ず守るとは言いがたい。
けれども、このまま膠着状態が続くよりはマシだと考えた。

「リシェルさん・・・」
「リシェル様なら、大丈夫さ」

微かに震えているアリシアをなだめるようにジョニカは語りかける。

「皆さんの意見はどうです?」

さすがにアースラインやヴェルゼなどの連合軍、リシェルの一存で決める訳にもいかない。

「負けた場合はどうなるんですか?」
「だが、しかし・・・このままでは」

賛否両論である、戦いを続けても勝てる見込みは少ないのは皆わかっている。
だからといって、リシェル一人にすべてを任せたくないのも事実であった。

「さあ、どうするかね?」
「わかったわ、受けましょう」

どちらに転んでも負ける可能性が高い。
だったら、もしも負けたら自分だけが罰を受けよう。
そう考えた結論だった。

「ふふふ、戦いが嫌いだったお前がどう戦うのか見物だな」
「貴方の好き勝手にはさせないわよ」

リシェルの指示により、二機のハイシェントの周りには機兵などは一切近づかせなかった。

「行くわよ!!」

ハイシェント同士の戦いが始まる。
お互いが交錯しあう度に激しい火花が飛び散る。

「流石、なかなかやるな」
「ちっ」

お互いにダメージは受けてはいない。
武装も装備もほぼ同じ、今は互角の勝負をしているが勝負がつくのは一瞬だ。

「このままじゃ、負けちゃうよ」

アリシアは戦いの行方が何となくわかった。
リシェルに対して相手は本気をだしていない。

「もらった!!」

プロトタイプハイシェントの攻撃がハイシェントの左肩から一気に左腕を吹き飛ばす。
だが、それこそがリシェルの狙っていたコトであった。

左側を吹き飛ばされたが、右腕で相手を掴み、口で相手の動きを封じる。

「これは一本とられたな」
「くっ」

確かに有利そうに見えるのはリシェルのハイシェントではある。

「相打ち・・・」

アリシアは戦いの結末が見えていた。
お互いの攻撃が撃てばお互いに吹き飛ぶ。
動きを止められたが、攻撃はできるのだ。

「中間を取って、今回はお互いに引こうじゃないか」
「・・・分かったわ・・・」

リシェルは相手の要求を飲むしかなかった。
ハイシェントは掴んだ腕や口を外すと背中を見せることなく、ウロボロスへと戻っていく。
プロトタイプハイシェントも敵軍へと戻り、敵の旗艦はその場から去っていく。

「流石です、リシェル様」

戻ったリシェルを出迎えるジョニカだが、リシェルの表情は思わしくない。

「お世辞はよして、あれは完全に私が負けてたわ」
「ですが・・・」
「あいつは私たちに力を見せにきただけ、こちらの方が上なんだってね」

リシェルは悔しそうに話す。
今回は大人しく引いてくれた、しかし次はこうはいかないだろう。

「リシェルさん、大丈夫・・・ですか?」
「あら、心配してくれるの?ありがとう、大丈夫よ」

アリシアは不安そうにリシェルに話しかける。
みんなには不安がるから、勝ったということにしておく。
けれども、現実はそう甘くはない。

「ふぅ・・・、少し休みます」
「わ、わかりました」

リシェルはそれ以上何もいわずに部屋に戻っていった。
なんとなく気になったアリシアはその後を追った。

「リシェルさん!!」
「あら、どうしたの?」
「なんとなくですけど・・・」

何て言えばいいのかわからなかった。
今は何を言っても同情にしかならないような気がする。

「アリシアちゃんもこうなること、予想していたんじゃない?」
「え、それは・・・」
「いいのよ、本当のことを言ってみて」
「そう・・・です・・・」

アリシアはずっとこうなるような不安を覚えていた。
自分は乗って戦ったことはないけど、何となく分かる。

「護る為に戻ってきたのにね」

自嘲気味に笑うリシェルはもの悲しそうな顔だった。
アリシアにはリシェルにできることは何もない、ただ、黙って傍にいるだけだった。

「ねえ、アリシアちゃん」
「はい?」
「ちょっと付合ってもらえるかしら?」

自分で良ければとアリシアはリシェルの後をついていく。
そこは以前にもやったことのあるシュミレーション室だった。

「どうするんですか?」
「シュミレーションしたいことがあってね、アリシアちゃんに手伝ってもらおうかと思って」
「はぁ・・・」

アリシアは自分にはこんなことしかできない、そう思っていた。
でも、わざわざアリシアではなく、他の人に頼めばいいのでは?と思っていた。

「それじゃあ、この前やったみたいなシュミレーションでいいからやってみて」
「はい」

アリシアは言われたとおりにシュミレーションを開始する。

開始して直ぐに違和感を感じた。
いつもよりも感覚が鮮明になっている感じがした。
鋭い刃のように触れたものを切り裂くような感覚。

「きた!!」

アリシアはいつもの通り動こうとするが、動きが遅いと思ってしまう。
相手の機兵もそうだが、自分の操縦する機兵も遅く感じてしまうのだ。

撃った弾も遅い、しかし敵には命中する。
相手の動きが手に取るように感じ取れる。

「最後!!」

あっという間に全てのシュミレーションの工程を終了する。

「こんなに簡単だったっけ?」
「アリシアちゃんがすごいのよ」

リシェルが答えた。

「え?」
「私の与えた情報を瞬時に理解して、自分のモノにする。それは才能よ」
「あの、どういうことなんですか?」

リシェルの言葉に戸惑いを隠せない。
自分に才能があると急に言われても困るだけであった。

「貴方には私やフリスやアコナにはなかったものを持っているということ」
「私が?」
「そう、最初見たときは確信はなかったけれど、今ならはっきりと言えるわね」

アリシアはそんなことを言われても実感が沸かないし、乗ろうとも思わない。

「貴方が不安に覚えている戦いは全部貴方がどうなるか予測して感知しているから」

言われると確かに自分はこれからの事が予測できた。
見えてはいないけれども感じることができた。

「私がアリシアちゃんの感覚を広域化の役割をしてみたの、結果はさっきの通りね」
「でも・・・」
「無理強いはするつもりはないけれど、考えてもらえる?」

アリシアは自分に特別な才能があると言われてもうれしくはなかった。
確かに昔から勘は良かった、意識もしたことはない。
けれど、その才能を戦いに使わなくてはいけないということが、怖かった。

「ただいま・・・」

力無く帰ってくるアリシア、家には両親が既に帰ってきていた。

「どうしたんだ、元気が無いな」
「何かあったの?」
「ん?なんでもない」

何でも無いと言っても、そんなことが通用する両親ではない。
暗くなっているのが傍目から見ても分かるのだ。
その事が余計に両親を心配にさせた。

「考え事なら、お父さん達が相談に乗るぞ?」
「そうそう、一人で考えても拉致があかないわよ?」

両親の言う言葉はうれしいけれど、アリシアは喋りたくなかった。
自分がリーシェに乗れと命令された訳ではないが、乗ってくれと言われたこと。
戦うということが怖く、戦いたくないと思うこと。
両親はその戦いに身を置いているということを考えると自分だけとも思えない。

「私、リーシェさんに機兵に乗らないかって言われたの」
「リーシェさんが・・・?」
「それで、アリシアはどうしたいの?」

自分の中で答えは全くと言っていいほど出ていない。
戦うのが怖い、それが今のアリシアを支配していた。

「アリシアは無理に戦わなくても大丈夫だからね」

母親の言葉、娘を心配する気持ち。
自分だけ戦わないという訳にもいかないはず。
でも、母親はアリシアに戦わなくてもいいと言う。

「そうだな、子を護るのは親の仕事だからな」

父親もそれに賛同するかのようにうなずく。

「とりあえず、今は休みなさい。学校もしばらく休校みたいよ」

アリシアは重い体をベッドに乗せた。
どうするべきか迷いながら。
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by meruchan0214 | 2007-10-12 19:36 | 守護機兵 ハイシェント2

53陣 思い出す 全て

飲み込まれながらも必死の攻撃を続ける、ハイシェントとエレストリカ
だが、全身が包み込まれた時には攻撃は届かなくなっていた
どんなに出力が大きくても届かない攻撃、身動き一つできない状態、何もできずただ飲み込まれていくだけだった

「くそ・・・」
「どうして・・・、犠牲は私だけで良かったのに」
「棗さん一人にはできなかったから・、でも・・・」

二人にはもうどうすることもできない、身動き一つさえとることもできなかった
徐々にVACGが侵食されていくのが肌で感じる事ができる

「このまま、終わるのか・・・」

二人には絶望しか残っていなかった、ただ死を待つだけであった

「全く、だらしないわね」

どこからともなく、ダリアの声が聞こえてきた

「幻聴が聞こえるようじゃ・・・もうおしまいだな・・・」
「馬鹿なこといってないでよ、幻聴でも何でもないわよ!!」

はっきりと頭の中に聞こえてくる声、確かに幻聴ではなかった

「貴方はその程度じゃないはずでしょ!!」
「俺はダリアとは違うよ」

そう、自分はダリアとは違う元々唯の人間だ、例え同一存在だとしてもダリアのように強くは無いそう思っていた

「あんた、本気で言ってるの?VACGの強さを決める最終的なモノ、もう忘れたの?」
「強さを決めるもの・・・」
「あんたがそう思ってるなら、ハイシェントもそこまでしか力を出せるわけないじゃない」

竜哉は何が大切な事なのか考えていた、そう自分達は皆を守る為に、棗を守る為にここまで来たのだ
想いは人を強く動かす、それがハイシェントの力となる

「そうか、そうだったよ」

竜哉は何かを吹っ切ったようにハイシェントを動かそうとした

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

既に全体を侵食されているにも関わらず出力を上げ続ける

「竜哉君!!ハイシェントが持たないわよ!!」
「大丈夫、俺には皆を守る義務があるから」

ハイシェントのパワーがグングンと上昇していく、それは留まるところを知らなかった

ミシ、ミシミシミシ

侵食された部分を無理やり引きちぎり、肉の壁を突き破りハイシェントは動き出した
そして、核となる部分へと突き進んでいった

「これで、終わりだ!!」

ハイシェントの渾身の力をこめた一撃が零距離で核に命中する
その瞬間、激しい地響きと共にハイシェントとエレストリカが肉壁から開放された

「はぁ、はぁ」

核は消滅し、巨大な生物も消え去っていた

「や、やった」

竜哉は勝利を確信すると、喜びの声をあげた

「全く世話の焼ける奴なんだから」
「ダリアと一緒でね」

メルとダリアのソルレオンも遠くからそっと見ていた
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by meruchan0214 | 2007-02-21 12:35 | 竜の翼 ハイシェント

Last Misson 護る者

全てが終わってから3年の月日が流れた
戦争の傷跡は時と共に修復されていった

「ビエエエェェェン!!」

赤ん坊の鳴く声がする、それを聞いたアコナは慌てて赤ん坊の寝かせているベッドにやってきた

「はいはい、どうしたんですか~?」

アコナは自分の子供をあやし始める
すると、泣いていた子供はすぐにでも泣き止んでしまった

「パパも、もう少しで帰ってくるから待ってるんですよ~」

すっかり母親らしくなったアコナ、3年前に戦争で機兵に乗っていたとはとても思えないほど丸くなっていた

キィィィィ

扉の開く音がする

「お~い、アコナ~、帰ったぞ~」

そういって入ってきたのはフリスであった
あの後、1年後に二人は結婚し子供も授かった

「やっと、全てが生きる世界が見えてきたよね」
「そうだな、リシェルさんが見ていた世界がやっとできてきた」

ただ壊すだけの人間ではない、上手く調和し地球と共に生きていく
少しずつ、確実に人間は変わってきていた

「明日は休みだし、散歩にでも行くか」
「そうね、たまにはこの子も連れて行きましょう」

次の日、二人は子供を連れ散歩に出かけた
ウロボロスでの生活は変わらなかったが、子供も生まれ今までとは全く違った生活になっている
二人はゆっくりと公園の道を歩いていた

「この平和を守っていかないといけないのよね」
「ああ、それが一番大変な事だけどやっていかないといけないんだ」

フリスとアコナは今までの事を思い出すように語りながら歩いている

スッ・・・

その時、どこか見覚えのあるような女性が横切った気がした

「リシェルさん!?」

フリスとアコナは慌てて振り返るが、その女性はどこにも見当たらない
辺りを見回してみるが、アコナやフリスと同じように子供を連れた人達やカップルなどしか見当たらなかった

「見間違い・・・か?」

フリス達はそう思いながらも再び歩き始めた

その背中を見守っている女性が一人佇んでいたのは誰も気が付いていなかった

「信じてよかったよ、皆」

その女性はポツリとそう漏らした

「おかあさ~ん」
「はいはい、今行きますよ」

女性は自分の子供に呼ばれ、そちらに向かって歩き出した

この平和がいつまでも続くよう、誰もが祈っていた
人が奢るのは間違いである、それを分からせてくれた人達の為にも
導いてくれてきた人達の為にも

全てはまだ始まったばかり、戦うのは機兵ではなく自分達なのだ
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by meruchan0214 | 2006-11-08 00:29 | 守護機兵 ハイシェント

Misson 69 廻る運命

全てが終わってから一ヶ月の時が過ぎていた
アースライン、ヴェルゼはお互いの戦闘を止め、終戦をした
そして、お互いがお互いを認め合い、自分達の生きる為、全てを生かす為にできることを協力し合う事を約束した

「あれからもう一ヶ月か・・・」
「そうだな」

フリスとアコナはウロボロスの中を歩いていた
戦う必要がなくなったウロボロスは他の星を繋ぐ、巨大宇宙船として動いている
もちろん、ここに生活している人間もたくさんいる

「リシェルさんの為にも、これから変わっていかないといけないんだよね」
「ああ、それにはまだ時間もかかるけど、絶対に変わらないとな」

リシェルが守ろうとしたもの、それを実現しなければならない

「そういえば、フリス聞いた?」
「ん?」
「レオルとラユが結婚するって」
「ああ、聞いてるよ、いつの間にそんな仲になってたんだか」

今まで共に戦った仲間たちも新しい日常を受け入れてきていた

「私達も・・・、なんてね」
「ハハハ、仕事が落ち着いたらな」

フリス達は戦争やノルンの反乱によって、受けた戦争の傷跡を少しでも埋めるべく活動していた
もちろん、それだけやったから失った命が帰ってくるわけでもない、だが人々は前に進まなければならない、少しでもその手伝いをという事で始めたのだ

「今度、ヴェルゼに遊びに行こうか」
「そうだね、二人の結婚式もあることだし」

人々は確実に新しい道を歩み始めていた
人類が生み出した150年前の遺産
それは人間の道を示す為に存在したのかもしれない

「そういえば、150年前の事色々調べてみたんだけど」

アコナがバッグから大量の資料を取り出した

「ウロボロスに残ってたデータを漁ったら、大分分かったよ」

ウロボロスが問いかけてきた事はあれ以来一切にない
ただのウロボロスを管理しているコンピューターが機能しているだけであった

「でも、これあまりにも凄くて世間には公表できないね」
「どういうことが分かったんだ?」
「フリスには見せるつもりで印刷してきただけだから、終わったら処分するよ」

アコナはその大量の資料をフリスに手渡した
フリスは資料に目を通していく

「人と機械との融合・・・」

そこに書いてあったのは一個の固体が何百年と生きる為の方法を示していた

「これによると、リシェルさんはもちろん、ウロボロス、ノルン、モイライ、それにハイシェントやエルブラストにまで人のデータが使われていたわ」
「なんでまた、そんな事に意味があるのか?」
「機械の欠点、人間の欠点をそれで補えるらしいのよ、理論上では可能らしいわ」

途方もない話である、それだけ凄い理論を考えつくだけでも凄いものだ
フリスはただ感心する以外なかった

「とにかく、発想が普通じゃないわね、ハイシェントやエルブラストは子供のデータみたいだし」
「色々実験したって事か」
「そう、この技術は反道徳的ってわけね、だからこそこの世界から消えようとした」
「確かにこの技術はないほうがいいよな」
「うん、今度残っているデータと一緒処分するつもり」

フリスはアコナに資料を返し、アコナはそれを大事そうにしまった

「まあ、なんにしてもこれからだよな」

わざと明るく振舞うフリスにアコナはコクリと頷いた
過去をずっと振り返るわけにはいかない
皆の為に前に進むあるのみである
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by meruchan0214 | 2006-11-07 00:44 | 守護機兵 ハイシェント

Misson 68 始まりを語る

フリス達は脱出用のロケットブースターで地上へと運ばれ
ウロボロスへと戻った

そこにはノルンの機兵と戦って生き残った仲間達が揃っていた
ただ一人、リシェルを除いては・・・

「やはりリシェルさんは・・・」

フリス達が脱出した後にノルンがあった場所は大爆発を起こした
レオルやラユなどは敵の動きが止まった事により勝ちを確信した
だが、やはりある程度はリシェルがこうなることも予測はしていたようだ

「すまない、その為に俺達が居たのに・・・」
「お前達のせいじゃない、それは皆分かってる」

リシェルがそれを望んでいたのは分かっている
だが、皆にはリシェルはまだ必要であった、仲間として必要だったのだ


「済まないな、君達には辛い思いをさせてしまった」

急にウロボロス内に響く声、フリス達は聴いたことがあるウロボロス自身のこえ

「我々はもうこの世界には古すぎるモノなのだよ」
「貴方は・・・、でもリシェルさんは!!」
「リシェルは最初から戦いが終わったら自ら命を絶つつもりだった、死に場所が見つかって彼女も本望だっただろう」

ウロボロスの言葉、信じる事ができなかった
あの明るいリシェルが自ら命を絶つということなど考えられない

「そんなのって、嘘なんだろ」
「本当だ、だが君達のことを思っていたのもまた事実だ」

ウロボロスは語りだす

「宇宙へと生活を広げようとしたのは我々だ、だが月日が経つごとに地球は宇宙に住む人々を見下し、宇宙に住む人々は地球からの支配から逃れようとし、戦いの道具、機兵が生まれた」

誰もが習った事、宇宙の人々は地球に住む人間達の支配から逃れようとした
その最もたるがヴェルゼであった

「それを正す為に私達は考えた、人の寿命でできる事は限られている。だから私達は機械に記憶を移す事を考えた」

途方もない技術である、人であることを捨て機械として生きることである

「それによって生まれたのが、ノルンやモイライ、そして私やリシェルだった」
「ノルンやモイライも元々は人だった・・・?」
「正確には人の意識をデータ化したものではあるがな・・・」

だが、ノルンは自分のことを完全なる知性と言っていた
人間は滅ぶべきだとも言っていた

「君達は魂というものを信じるかね?」

ウロボロスから発せられる言葉、機械が聞くとは到底思えない言葉

「リシェルは良く言っていた、魂は存在すると、だから自分は変わらないのだと」

確かにリシェルは機械の体とは思えないくらい人間らしかった
いや人間そのものであった

「ノルンには魂が入らなかった、モイライは自覚ができなかった、その差でしかないとも言える」

逆をいえば、リシェルがノルンのようになっていた可能性もあったということなのだろうか
ウロボロスはただ黙ってリシェルのことをしゃべっていた

「我々は居るべき存在ではない、私もそろそろ消える・・・」
「え・・・?」
「ただ、私やリシェルは死ぬわけではない、次の為に眠りにつくだけなのだ」

ウロボロスの残した言葉、眠りにつく
それは次にまた生まれ変わるという事なのだろうか

「では、さらばだ・・・、私達の子供達よ・・・」

それを最後にウロボロスから声は聞こえなくなった
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by meruchan0214 | 2006-11-06 00:18 | 守護機兵 ハイシェント

Misson 67 背負った重さ

フリス達を見送ったリシェルは一人ノルンの前までと戻る
辺りには警報が鳴り響いて脱出の勧告が示されている

「さて・・・、やりますか」

リシェルはノルンを操作を始める

カシャカシャカシャ

その速度は流石機械の体といったところであった

ブゥゥゥゥン

すると、ノルンが再び動き始め、辺りに電源が入る
だが自爆の時間は止まる気配はない

「何故、残ったのです、私にはもう貴方達を止める力など残っていない」
「最後のケジメね、その為にハイシェントとエルブラストを作ったんだから」

リシェルはノルンの操作を続けている
すると、ハイシェントとエルブラストは人も乗っていないのに勝手に動き出した

「これには私達の全てが詰まっている、全てを守る為の全てが」
「全てを守るか、全てを捨てるほどの価値があるというのですか」
「ええ、でも力だけでは守れない、それは乗る人間の気持ち次第ということ」

リシェルは二機の体にそっと手を触れると我が子のように撫でた

「ありがとう、貴方達、最後の最後まで付き合ってくれて」

すると、どこからともなく声が聞こえてきた
ハイシェントが喋っているのだ、それはとても幼い声だった

「お母さんの役に立てて私は幸せだったよ」

リシェルはその言葉を聞くとにっこりと微笑んだ
そして、再び振り返りノルンと話し始める

「ノルン、古いモノは全てここで終わらせましょう」
「・・・、新しい時代が来ると信じているのですね」
「ええ、人はもう変われる、少なくとも貴方のやったことは無駄にはならない」

人間だけの都合で全てを壊してはならない
今回のノルンの行動は全宇宙にそれを知らしめた

「自爆装置、爆破まで後1分、後1分」

警報装置が自爆の時間を告げている
辺りの警告はいつの間にか止んでおり、自爆の声だけが辺りに響いた

「リシェル、ありがとう」

ノルンはただそれだけリシェルに言った
それを聞いたリシェルは何を今更という顔をする

「いいのよ、全ては私達が決めた事なんだから、最後に残った人間が貴方の最後を見届ける、それが私の最後の仕事」
「私も地球を守る為ではなく、リシェルの娘達のように全てを守る存在として生まれたかった」
「いつかくるわ、貴方が全てを守られる為に作られるときが、だからそれまでおやすみなさい」

リシェルは母親のような慈悲を持ってノルンに語った

「ルピナ、ナミア、貴方達もこれが最後よ」

リシェルはハイシェントとエルブラストに向かってそう喋った

「私の可愛い娘達、また次に会うときまでお休みなさい」

そして、ノルンのあったこの場所は大爆発を起こした
リシェルはその爆発の中でただ優しく微笑んでいた
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by meruchan0214 | 2006-11-04 22:17 | 守護機兵 ハイシェント