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外伝10夜 時は過ぎて

※リトルガーデンの「過去の出来事1~3」が9と10の間にあります

あれから、時が過ぎ紅葉も店長もいなくなってしまった

「俺が店長って、どうすればいいんだ・・・」
「隆泰のやりたいようにするしかないんじゃ?」
「そんなことも言われてもさ」

店長の仕事が分からないわけではない
傍でずっと見ていたから、どうすればいいかは分かる
ただ急に店長と言われて、頭が混乱しているのだ

ピンポーン

店の開店前になるチャイムの音

「隆康君、恵ちゃん、居るかしら?」

やってきたのは美也子さんであった
なにやらいっぱい書類を抱えてやってきた

「はい、これあの人の使ってたもの」
「これ、全部ですか?」
「そうよ」

物凄く多いというわけではない、だがその一枚一枚にはレシピや店のことなど細かくメモがしてある

「貴方たちもこれどおりやるだけじゃなくて、これの発展させていかないとね」
「ありがとうございます、美也子さんはもうやらないんですか・・・?」
「ええ、子供のこともあるしね、お金はもう嫌というほど溜まってるし」
「それもそうかもしれませんね」

隆泰ですら既に何億と言う金額の貯金がある
店長と美也子の二人のお金は合わせたらかなりの金額になるだろう

「後は貴方達の時代なんだから、頑張ってね」
「すいません、美也子さん・・・」

隆泰は美也子に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになる
店長を殺してしまったのは自分の責任だと感じている

「いいのよ、それよりも頑張ってね」
「はいっ!!」

美也子はそれだけ言うと帰ってしまった
後に残ったのは隆泰と恵の二人

「とりあえず、やるだけやってみるか!!」
「そうだよ、私も手伝うからさ」

隆泰と恵は自分達のできることをやるしかない
二人を信じてくれた、店長や美也子の為にもやるしかない

「まずは新しい人員の確保からだな」
「うん、そうだね」

二人の店作りはまだ始まったばかり
リトルガーデンのお話はまだまだ続くのである
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by meruchan0214 | 2006-08-30 21:29 | リトルガーデン外伝

外伝9夜 親子と夫婦

隆康はいつも通り家へと向かっている途中だった

「そういえば、そろそろ紅葉さんが来てから半年になるのか」

妖である、紅葉と楓を助けてから半年
あれから特に大規模に紅葉や楓を襲ってくることはなく平和な日々であった

「今日は何か買って帰るかな」

季節は秋を迎えていた
紅葉の木や銀杏の木が色鮮やかに立っている

「ただいま~」
「おかえりなさい、隆康さん」
「おかえり、お兄ちゃん!!」

家に帰ると紅葉と楓が隆康を出迎えてくれた

「ほら、楓におみやげだぞ」
「え、ほんと!?わーい!!」

隆康からのお土産を受け取ってうれしそうにはしゃぐ楓

「いつもいつもすいません」
「いえ、家事全部まかせっきりですから、このくらいはしないと」
「そんな、匿っていただいてるだけでも十分ありがたいのに」

隆康は彼女達に自分たちの家族を見ていた
姉は別の場所で連絡こそ取り合ってはいるものの、こちらに来るということはめったにない
両親を事故で亡くした隆康にとっては紅葉は母親のような存在になっていた

「隆康さん、お風呂沸いてますよ」
「あ、どうも」
「お兄ちゃん、一緒にはいろ!!」
「分かった分かった」

隆康は楓に引っ張られながらお風呂場へと向かう

「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
「ん?」
「お母さんがね、お兄ちゃんはお父さんに似てるって言ってたよ」
「へぇ、そうなんだ」
「私もちょっとしか覚えてないけど、優しかったのは覚えてるんだ」
「そっか、今よりももっと小さいときの事を覚えてるんだからよっぽど優しかったんだね」
「うん」

隆康と楓はお風呂でそんな他愛もない話をしている
楓とはすでに兄妹みたいな感覚であった隆康であったが、
既に父親のいない楓には自分が父親の代わりも勤めないといけない気がしていた

「今日はお母さんも一緒に入るって言ってたよ」
「えっ!?」

隆康はそれはさすがにまずいと思った
確かに紅葉とは母親のようには感じてはいる
だが、いくら隆康よりも年上とは言え、紅葉は妖で外見も20代半ばとしか見えない

「それは、流石になあ・・・」
「え~、でもお母さん話したいことがあるって」
「お風呂じゃなくてもいいじゃないか・・・」
「別に一緒に暮らしてるんだからどこでもいいじゃん」

楓の言うことはもっともだ、どこでもいいというのにも間違ってはない
ただ、隆康は男としてそういう風にするわけにもいかなかった

「隆康さん、よろしいですか?」

脱衣所から紅葉の声がする

「よくないです」

はっきりと答える隆康

「私は一向に構わないですが・・・」
「俺が困るんです」
「今日だけですので、何とかお願いできませんか?」

頼まれるとどうしても弱い隆康

「一緒にはいろうよ~」
「分かりました・・・」

楓の後押しにも負け、結局一緒にお風呂に入ることになった
幸い、隆康家の風呂は大きく、家族で入っても十分なスペースはある

「はあ、いい気持ち」
「そ、そうですね」

隆康は紅葉の方を一向に見ようとはせず、ただ後ろを向いている
言葉はどこか上ずっており、いつもと調子がおかしい

「隆康さん、どうしたのですか?」

紅葉は隆康に対してわざと分かったような口振りで隆康に聞く

「何でも・・・無いです」
「だったら、こっちを向けばよろしいのに」
「そんなわけにはいきません!!」

頑なに拒否し続ける隆康

「隆康さんは私の事を女として見てくださっているのですね」

紅葉は少しうれしそうに話す

「そりゃ、そうですよ、紅葉さん綺麗だし・・・」
「ふふ、ありがとう、そう言われたのはあの人以来よ」

あの人、多分亡くなったという紅葉の夫のことだろう

「私が以前居たところはね、誰もが私の事をモノとしてしかみていなかった」
「・・・」
「あの人に出会って、あそこを抜け出すまでは散々な毎日だったわ」

隆康はただ紅葉の話を聞いている

「隆康さんとは偶然だけど出会ってよかったと思っています」

紅葉の声はいつもの母親のような声ではなく、一人の女として喋っていた

「隆康さんはあの人の代わりじゃないのは分かってます、けれど、今日だけでいいんです、あの人と思わせてくれませんか・・・?」

隆康はどうすればいいのか分からなかった、大切な人を失った気持ちはよく分かる
だが、母親として重ねている紅葉を隆康は夫として見ることは到底できそうになかった

「でも、俺・・・」
「分かっています、ただ今日だけは傍にいさせてください、それだけでいいんです」
「・・・、分かりました、何もできませんけど」
「ありがとう、隆康さん」

紅葉からの感謝の言葉、それは今までよりもずっとずっと重い一言だった

「え、お兄ちゃんがお父さんになるの!?」
「そういうわけじゃないよ、今日だけ代わりをするってだけ」
「な~んだ、お兄ちゃんがお父さんでも私はいいのにな」

残念そうな声を出す楓
だが、紅葉はただ一緒にいるというだけでも満足そうであった

「お風呂から出たらご飯を用意してありますわ、あ・な・た」
「はい・・・」

紅葉の夫に重ねられるというのは悪い気はしない
ただ、紅葉の思いは隆康も理解しているつもりだった
だからこそ、今回のことは引き受けたのだ

同じ大切なモノを失っている同士
何かが惹かれあったのかもしれなかったのだ
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by meruchan0214 | 2006-08-28 00:00 | リトルガーデン外伝

外伝8夜 納得

隆泰と恵の疑いも晴れ、いつもどおりの日常に戻ったかのように見えた

「あ、あのさ・・・」
「え、な、なに?」

二人の関係は前とはちょっと違う、お互いに意識しすぎているものであった

「これ、終わったらさ、どこか寄っていかないか」
「あ、あ、うん、いいよ」

隆泰は自分の気持ちを伝えようと思ったのか恵を誘う
恵もこのままでいけないと思い隆泰の誘いに応じる

「じゃ、じゃあ、近くのファミレスで」
「うん」

二人とも今までお互いをそこまで意識はしていなかった
惹かれていたのは気付いていたが、そこまで自覚をもっていたわけではない

「二人とも、ちゃんと仕事してね」
「あ、はい!!」
「分かりました!!」

美也子に言われ慌てたように仕事に戻る
隆泰と恵は仕事が終わるまで少しおかしかった

そして、仕事も終わり約束どおり二人は近くの喫茶店に入った

『いざ、一緒に来てはみたものの・・・どうしようか・・・』

意外なところで押しが弱い隆泰、お互いが意識しているのは分かっている
だが、言葉が見つからないのだ

「あのさ!!」
「あの!!」

二人の言葉が同時に発せられる

「恵から、どうぞ・・・」
「隆康からでいいよ」

二人の譲り合いがしばらく続く
結局、しばらく擦り付けあいが続いた後、隆泰から言うことにした

「この前のことだけどさ・・・ほら、俺が結局言ってなかったのが悪くてさ・・・」

隆泰は自分の体が熱くなっているのを感じる
全身真っ赤になっているんじゃないかとも思うほどだ

「俺、恵のことがずっと気になっててさ・・・、それで、その付き合ってくれたらと思ってる」

恵はただ黙ってそれを聞いている、というか固まっていた

「返事はすぐにとも言わないし、嫌ならはっきり断ってくれてもかまわない」
「馬鹿ね、私だって隆泰の事気になってたんだよ・・・?」

うれしそうな表情を浮かべている恵
隆泰はどこかホッとしたような顔つきだ

「もっと早く言ってれば、あんなことにはならなかったかもしれないけどな」
「それはどうだか、だって同居してるんでしょ?」

二人は安心したのかアハハと笑い声をあげる

「ありがとね、隆泰」
「ん、俺もさ」

お互いがお互いにお礼の言葉を述べる
今まではなんとなくだった気持ちが確固たるモノだと感じている

「それじゃ、私そろそろ戻るね」
「ああ、今度一緒に遊びに行こうな」

隆泰の声に笑顔で頷くと、恵はそのまま帰っていった

「やれやれ、告白ってのも大変なもんだ・・・」

隆泰は一息溜息をつき、自分も家へと帰っていった
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by meruchan0214 | 2006-08-22 13:41 | リトルガーデン外伝

外伝7夜 円満

「隆泰、ごめん!!」

誤解が解けた次の日に恵が隆泰に言った最初の言葉

「へ?」

キョトンとしている隆泰、何で急に謝られたのかも分からなかったが、
それ以上に何で機嫌が直っているのかが分からなかった

「紅葉さんとのこと、勘違いしてたの」
「あ、ああ、一体どういう風に思ってたんだ?」

隆泰が聞くと恵の顔が赤くなっている

「こ、恋人同士なのかなって・・・」
「そんなはずないじゃないか、親子くらいに離れてるんだし」
「そ、そうよね」

隆泰は紅葉との関係を否定するものの恵については何も言わない

「時にどうして、紅葉さんとの関係を勘違いして機嫌が悪くなったんだ?」

隆泰の悪い癖というか、分かっていながら聞いてしまうのが隆泰だった

「べ、別にいいじゃない!!」
「あ、そう」

恵ほど鈍感ではない隆泰は何でかは理由はついた
しかし、自分から告白できるほど勇気もなかった

「とにかく、謝ったからね!!」

恵はプリプリと怒りながら仕事に戻る

「そのうち言えればいっか・・・」

隆泰も自分の気持ちが言えない歯がゆさが残っている

「おーい、おにいちゃーん」

楓がリトルガーデンへとやってきた

「おー、楓ちゃん、学校もう終わったのか?」
「うん!!」

隆泰は楓の相手をしている

「私から言ったほうがいいのかな・・・、でも断られたらどうしよう」

恵も別のところで同じような考えをしていた
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by meruchan0214 | 2006-08-14 01:48 | リトルガーデン外伝

外伝6夜 解決

「隆泰君、ちょっと」

隆泰は美也子に呼ばれ、事務所へとやってきた

「えっと、俺何かしましたか?」

隆泰は自分が呼ばれた理由は分かっていなさそうであった

「隆泰君は恵ちゃんが怒ってる意味分かってる?」
「ああ、分かってます」

美也子に言われて呼ばれた理由が分かった隆泰

「誤解なんですけどね・・・、どっちかって言うと母親みたいな感じなんですよ、紅葉さんは」
「そう、でも恵ちゃんはかなりショックだったみたいよ?」
「あ~、分かってるんですけどね、ああなった恵には何言っても聞いてくれなさそうなんで・・・」

隆泰も恵の事は気になる存在であった
同期ということもあり、気軽に話せ一緒に居れる人間なのだ

「なんだかんの言ってもちゃんと恵ちゃんの事見てるのね」
「ええ、まあって、何言わせるんですか!!」

お互いが気になってはいるが、美也子はこの事に自分が口を出す問題ではないと感じた
二人とも多少なりとも惹かれあっているのは分かったから、
時間が経てば勝手に解決してくれると思ったからだ

「ま、何とかして誤解を解きますよ」
「頑張ってね」

隆泰は美也子に一礼すると事務所から出て行く

一方、自分がなかなか抑えられない恵は街中をウロウロしていた

「うー・・・、こんな風じゃいけないって分かってるけど・・・」

自分勝手に嫉妬している自分が恥ずかしい
でも、どうしても自分自身が抑えられない

「他人が誰を好きになろうが勝手だけどさ・・・」

やはり自分の好きな人が自分を好きではないと思うとどうしてもやるせない気持ちになった

「私これからどうしよう」

心が宙ぶらりんのまま歩き続ける恵

「あの、もしもし?」
「え、は、はい!?」

そのとき、急に恵は声をかけられた

「リトルガーデンの方ですよね?」

話し掛けてきたのは紅葉であった

「そ、そうですけど・・・」

何故自分が話し掛けられたのかよく分からない
もしかしたら、隆泰の事について何か言われるのかもしれない
聞きたくはなかったが興味はある
何とか自分の心を落ち着かせようと、努力しながら紅葉の話を聞く

「ああ、良かった人違いだったら、どうしようかと」
「一体どうしたのですか?」
「いえ、さっきお店に行った時に凄い形相でこっちを見ていらしたから、私が何かをしたのかと思いまして・・・」

恵は穴があったら入りたい気分であった
自分の嫉妬している姿が嫉妬している相手に見られていたのだ

「え、あ、いや・・・」

言葉に詰まる恵に紅葉は悲しそうな表情を浮かべる

「やっぱり、私が何かしましたか?」
「そんなんじゃないんです」

慌てて否定する恵、本気で心配している紅葉に対して申し訳なく思えてくる

「あの・・・、変な事聞いてもいいですか?」
「はい?」
「隆泰の事、どう思っていますか?」

隆泰の事を大事にしてくれそうだ、もしも隆泰と紅葉が愛し合っているのならば
自分は身を引こうとも思っていた

「何から何までお世話になりっぱなしで、気の効いた息子をもった気分ですよ」

恵は紅葉の言葉に一瞬呆気に取られる
もしかして、二人には愛情というものはないのではないのか
自分がただ勘違いしていたのではないのか、そう思った

「隆泰さんも私の事お母さんみたいって、ちょっと恥ずかしいですけどね」
「あ、そうなんですか」

急に恵に明るさが取り戻ってきた
隆泰と紅葉がそういう関係ではないと分かっただけで気分が晴れてきた

「楓も隆泰さんには良くなついてますし、なんとお礼を言えば良いのか」

勘違いしていた自分が恥ずかしいが、妙にうれしかった
自分にチャンスがあると分かっただけでもよかった

「それじゃあ、そろそろ失礼しますね」

紅葉が去った後、恵は心の中でガッツポーズをしていた
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by meruchan0214 | 2006-08-12 16:17 | リトルガーデン外伝

外伝5夜 嫉妬

紅葉と楓が隆泰の家に居候を始めた
最初は戸惑っていた二人であったが、1週間ほどで慣れてきた

「隆泰さん、今日は何時頃にお帰りになりますか?」
「あ~、20時くらいになると思います」
「それでは、ご飯作って待ってますね」

傍から見れば紅葉と隆泰は夫婦のようでもあった

「お兄ちゃん~、帰ってきたら一緒に遊んでね」
「ああ、わかってるよ」

隆泰はいつもの通り、お店へと向かった

「おはようございます~」
「あ、おはよ~」

いつもと変わらない今まで通りのこと
喫茶店の仕事もいつもどおりだ

「隆泰って、今妖を保護してるんだって?」
「保護してるってのもちょっと違うけど、まあ、一緒には居るね」
「ふ~ん」

どことなくつまらなそうな表情をする恵

「ん、どうしたん」
「なんでもないよ」

恵は怒った様子でどこかに行ってしまう
隆泰は何で恵が怒っているのかよく分からなかった

「隆泰君、あなたにお客さんがきてるわよ」
「え、誰だろ?」

美也子さんに呼ばれ隆泰は店の方へと出て行く
そこには紅葉の姿があった

「隆泰さん、お弁当お忘れでしたよ」
「あ、すいません・・・届けてもらっちゃって」
「いいんですよ、これくらいそれじゃあ失礼しますね」

隆泰がお弁当を受け取ると美也子が横でにやけた顔で笑っていた

「美人さんじゃないのさ~」

つんつんと隆泰をつつく美也子
明らかに楽しんでいる顔であった

「別にそういう意味でウチに居候させてるわけじゃ・・・」
「ふふふ、まあ頑張りなさいね」

美也子は茶化すだけ茶化すと事務所の奥へと入っていった
すると、一筋の殺気が隆泰に向かっているのを感じた

「この店の中で!?」

隆泰が振り向くとすごい形相をした恵が睨んでいた

「恵・・・?」

そのままプイッと何処かに行ってしまう恵
なんとなく理由が分かるだけに声もかけづらかった

「まいったな・・・、ああなった恵に何言っても無駄だしなあ」

本当は隆泰は恵の事が気になっていた
紅葉のことは好きというよりは母親という感覚がしていたのだ

「とにかく、落ち着くまで待つか・・・」

諦めたようにため息をつく隆泰
一方、恵はというと完全に頭に血が昇っていた

「隆泰のバカ、バカ!!」

物に八つ当たりする恵には誰もが近寄りがたい雰囲気をかもし出している

「あら、恵ちゃん、荒れてるわね」

美也子が恵に声をかけると今度は美也子に泣きつき始めた

「うわ~ん、美也子さ~ん」
「よしよし、あんまり気にする必要ないじゃない」
「だって、あの人、私より綺麗だし、料理とかできそうだし、大人の人だし・・・」

隆泰と同棲しているだけでなく、お弁当を持ってくるという場面を見せられた
完全に恵は負けたと思っているのだ

「ほら、隆泰君だって優しいから本当に守る為だけに一緒にいるだけかもよ」
「そんなことないですよ!!お弁当もらったときの隆泰の顔が見たこともない顔だったもん」

かんしゃくを起こしている恵を一生懸命なだめる美也子
お互い鈍いというか、自分の事となると気づきづらいのかもしれない

美也子はお互いが惹かれあっているのは知っていたし
隆泰と紅葉の話し方は恋人というよりは親子という感じだった

「大丈夫だって、恵ちゃんだって十分魅力的だから」
「うぅ、本当ですか~?」

だいぶ落ち着いてきた恵だが、またああいう場面があったら今度は暴れだしそうだ

「これは隆泰君にも言ったほうがいいわね・・・」

美也子は恵に聞こえないような声で呟いた
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by meruchan0214 | 2006-08-07 21:50 | リトルガーデン外伝

外伝4夜 紅葉

しばらく月日が経ち、隆泰と恵も大分仕事に慣れてきていた

「ふぅ、こんなもんか」
「大分良くなったぞ二人とも」

茂が珍しく二人を褒める
嬉しい反面かなり意外であった

「え、店長、おだてても何も出ませんよ?」
「人の褒めてることはちゃんと素直に聞くものだぞ」

冗談を言える位の余裕も出てきていた
才能はあったのだから、慣れてくれば余裕もできるのも当然だろう
隆泰も恵も他に類を見ないほどの成長振りを見せていた

「今日は二人ともあがっていいぞ」
「は~い」
「分かりました」

隆泰と恵はみんなに挨拶をして仕事からあがる

「やっと、才能開花ってやつ?」
「ん~、まあ、俺達がなれてきただけだろ」
「そうだけと、やっぱキチンとできると嬉しいよね」
「まあね」

二人はそんなことを話しながら家路へと着く

「それじゃあ、またね」
「あいよ」

お互い多少意識しているものの、それを口に出すことは無かった
本心はどうであるかは分からないが、表に出る事はない

「ふぅ、まいっか」

隆泰はのんびりと家に向かう
その帰る途中、妖の気配がするのを感じた

「妖・・・、一人で会ったら逃げるしかないか・・・」

いくら慣れてきたとはいえ、まだまだ自分に自信がもてなかった
襲われたら仲間を呼ぶか逃げるくらいしかまだ思っていなかった

バシャバシャバシャ

向こうからこちらに向かってくる
音から察するに一人ではないみたいだ

「でも、逃げて街に被害を出すわけにもいかないか・・・」

隆泰は意を決したように妖を待ち構えることにした

バシャバシャバシャ

足音が近づいてくる、それに伴い姿も段々と見えてきた

「ん、何か様子がおかしい」

その妖は人を襲っているというよりは逃げているようであった
傍らには幼い子供も連れている

「ハッ!!もう、こっちにも追っ手が・・・」

隆泰はこの妖が何を言っているのかが分からなかった

「この子だけには指一本触れさせません!!」
「え・・・ちょっと、どういうこと??」

事情を飲み込めない隆泰に対して妖の女は敵意を向ける

「貴方、追っ手ではないの?」
「追っ手、追っ手言われても、俺には何がなんだか」

妖は隆泰がどうやら嘘を言ってはいないと思うと敵意はなくなった

「おい、こっちだ!!」

だだだだだだっ

そのすぐ後、黒服を着た男達が隆泰達を囲んだ

「さあ、我々と一緒に来てもらおうか」
「嫌です!!もう私に構わないでください!!」

完全に巻き込まれた形になった隆泰
男達の包囲をどうしようか真面目に悩んでいた

「この男はどうする?」
「関係ない始末しろ」
「俺、関係ないのに・・・」

ぼやく隆泰であるが、このままでは殺されてしまう
それだけはなんとしても避けなければいけないかった

「まいったね、人に対して使うことになるとは・・・」

隆泰は式神を取り出すと詠唱を一瞬で済ませる

「なっ、貴様!!逆らう気か!!」
「逆らう気かって巻き込んだのはそっちだろ・・・」

男たちが隆泰に銃を向けた時にはすでに遅かった
多数の式神が黒服達を包み込み、この場ではないどこかに消し去ってしまった

「ま、日本のどこかにはいるから安心しな」

妖と戦っていた隆泰にとって人間の動きなど物凄く遅く感じる
自分ではまだまだであると思っていても、今でも人間の強さは遥かに凌駕していた

「えっと、まあ、何か悪そうな妖じゃなさそうだし・・・、う~ん・・・」

隆泰はどう声をかければいいか分からなかった

「助けてくれてありがとう、お陰で娘も守れました」
「あ、いや、成り行き上しょうがないし、困ってる人は見捨てておけないし」

妖の女は見た目こそほとんど人間と変わらなが、エラがあるなど妖の部分もしっかりと存在していた

「ありがとう、お兄ちゃん」

娘も母親の後に続いて隆泰にお礼を言う
妖にも善い妖と悪い妖が存在するのは聞いていた
隆泰はこの人達は悪い妖ではないと直感的に感じていた

「そういえば、貴方は私を見ても何も言わないのね」
「まあ、見慣れてますし・・・、そういうのにはこだわらないタイプなので・・・」
「ふふ、面白い人ね」

妖の女は微笑む、それの顔はとても綺麗で隆泰はその顔に一瞬見とれてしまう

「あ、もし良かったら俺の家にでもどうですか?仲間がまだうろついてるかもしれませんし…」
「お申し出はありがたいのですが、見ず知らずの人にそこまで迷惑をかけるわけには」
「乗りかかった船ってやつですよ、俺もその仲間に狙われるかもしれないんで」

隆泰は半ば強引に自分の家へと妖の女を連れて行った
特にやましいことなど考えてはいないが、見捨ててはおけなかったのだ

「俺一人で暮らしてるんで、遠慮しないでください」

隆泰の家はこの辺りでも大きい一軒屋である
両親は事故で他界し、姉もいるが姉は県外で結婚して幸せな生活をしている

「何から何まですいません・・・」

妖の女は丁寧にお辞儀をする

「いや、ほんとにそんなこと気にしなくていいですよ」

隆泰はお茶を入れる準備をしていた

「それに、一人でこんなデカイ家だと逆に寂しいんですよ」

隆泰は子供の分とあわせて3つお茶をいれてきた

「あ、自己紹介がまだでしたね、俺は平林 隆泰っていいます」
「私は水妖の紅葉といいます、この子は娘の楓」
「楓です!!」

お互いの自己紹介が済んだところで一息いれる

「つかぬ事お聞きするかもしれませんが、何で紅葉さんは追われていたんですか?」
「・・・」
「あ、話したくなければ別に構いませんけど」
「そういうわけではないのですが・・・」

どことなく暗い雰囲気をだしている紅葉
楓は無邪気に家の中で遊んでいた

「やっぱり、これ以上ご迷惑をおかけするわけには・・・」
「大丈夫ですって、一応これでも腕にはそこそこ自信あるし、いざとなったら店長とか仲間もいますから」
「仲間って・・・、もしかして貴方リトルガーデンの方?」
「ええ、そうですけど・・・ご存知ですか?」

隆泰がリトルガーデン所属だと言うことを知ると、紅葉は安堵した息をつく

「あの子を・・・楓を守っていただけませんか・・・」
「それはリトルガーデンへの依頼?」
「はい、お金は必ず用意しますから!!」

隆泰はどう答えればよいのか分からなかった
だが、今言えることは彼女を見捨てることはできないそれだけだった

「ん~、店長には掛け合ってみますよ」
「よかった・・・、この子に何かあったら私は・・・」

娘に対する愛情を感じる
それだけ大事な娘なのだろう

「ああ、行くところないなら、俺の家に居ても全然構いませんよ、部屋余りまくってるので」
「え・・・」
「どうせ、店長は『隆泰が受けてきた依頼はお前がやれ』って言うんで」
「は、はぁ・・・、でも本当に貴方はそれでもいいの?」
「これだけ家がでかいと逆に寂しいもんなんですよ、それにどこに居るか分かる方が守りやすいですしね」

隆泰はこのときこの妖に既に死んだ両親の面影をみたのかもしれない
いくら、姉も自分も自立しているとはいえ、まだ若い隆泰はどこかで親の姿を追っていた
それを紅葉と楓に重ねたのかもしれなかった

「でも・・・」
「拒否は許しません、変な言い方かもしれないけど、行く所実際にないでしょ?」

紅葉は確信をつかれ、言葉を失ってしまう

「本当に気にしないでください、俺も人が居てくれた方が楽しいので」

少し悩む紅葉

「分かりました、言葉に甘えさせていただきます」

紅葉は隆泰の言葉を承諾した
隆泰には二人を見捨てることはできない、それが彼の優しさであった
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by meruchan0214 | 2006-08-04 12:39 | リトルガーデン外伝

外伝3夜 失敗

「全然駄目だあ・・・」

初仕事が散々な結果に終わったことだった

「うん、私達まだまだだよね・・・」

才能があると浮かれていたのかもしれない
しかし、実戦はそうは甘くはなかった

「店長とかいなかったら、どうしようもなかったよな」
「そうだね・・・」

お互いがお互いに声を掛け合うがその言葉に元気はない

「二人ともお疲れ様」

美也子が二人に話しかけてくる

「どうでした、初めてのお仕事は?」
「店長がいたから事なきをえたけど、いなかったらどうなってたことか・・・」

美也子がそれを聞くとフフフと笑う

「初めてでそんなに上手くいく人なんていませんよ、茂さんも私も最初はそうだったのよ」
「店長にもそんなことがあったんですか?」
「ええ、茂さんに聞いたけど、あなた達の方が昔の私達に比べてずっと上だったそうよ」

確かに最初は誰もが上手くいかないかもしれない
慰めてくれている美也子の言葉はとても優しかった

「とにかく、今日は私がケーキ焼いておいたから、食べていきなさい」
「あ、ありがとうございます」

二人は美也子の心遣いがとても嬉しかった
今回の失敗も次へと繋がることへと考えれば少し気が晴れてきた

「今度は上手くやろうね」
「ああ、だけど恵には負けないからな」
「それはこっちのセリフよ」

そんな姿を美也子は微笑みを浮かべながら眺めていた

「頑張りなさい、二人ともいつか私達を凌ぐほどに」

美也子は聞こえないような声で二人を応援した
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by meruchan0214 | 2006-07-24 19:50 | リトルガーデン外伝

外伝2夜 動けぬ姿

「ぷはぁ・・・」

隆泰と恵が働き始めてから2週間が経った

「隆泰ってば、まだ辛いの?」
「元々力は無い方なんだよ・・・」

お互い励ましあいながらも何とかまともに動けるようにはなってきた
これを着て接客も始めたが、隆泰は仕事が終わったらヘトヘトである

「だらしないなあ、女の子よりも力ないなんて」
「恵は絶対普通の女の子じゃないと思う」
「なんだって?」

ほとんど同じ様に入ってきたためか一番会話も多く仲は悪くなかった
ただ、お互いを意識しすぎているせいか、ライバル心というのも少なからずあった

「ふふん、私が先に仕事やりはじめちゃったりね~」
「そんな事ないさ、俺だって式神のやり方教わったしな」

隆泰が式神の事を口に出すと、恵は驚きの表情を隠せなかった

「嘘!?私、剣術と陰陽術しか習ってないのに」
「ほんと、ほんと、それならやってみせようか?」

隆泰はその辺の紙を寄代に切り抜くと術文字を書き始める

「それ!!」

紙を空中に投げるとそれは2本足で立って歩き始める

「ぐっ・・・」
「ふふん、俺ってこういう才能あるみたいなんだ」
「むぅ~・・・私だってそういうの使いたいのに・・・」

隆泰は何故か勝ち誇ったような表情で恵は負けた表情をしている

「ま、店長が言ってたけど、俺はバランサーで恵はファイタータイプらしいし、しょうがないんじゃない?」
「そうだけどね~・・・」

隆泰達は事務所でこんなことを話している

「二人とも、まだ居たのか」
「あ、まあ、一応色々と」
「はい、色々と」

店長が仕事の休憩なのか事務所へとやってきた

「後一週間後くらいにはお前達にも初仕事をしてもらう」
「へっ・・・、早くないですか?」

隆泰は間の抜けた質問を投げ返す

「本来はな、だがお前達なら後一週間もあれば十分になるだろう」

店長の言葉は素直に隆泰達に才能があるということを言っているようであった
そう思うと隆泰と恵は少し嬉しくなった

「そういうことだから、ちゃんと修行しろよ」
「はいっ!!」

隆泰達に今まで以上のやる気が出てきた

「もう、実戦か・・・」
「ちょっとドキドキするよね」

恐くもあり楽しみでもある
これから先どんなことがあるのか
自分達の力で何が出来るのかが楽しみでしょうがなかった

「うし、一週間頑張るぞ!!」

気持ちも新たに修行に励む二人の姿があった
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by meruchan0214 | 2006-07-11 21:15 | リトルガーデン外伝

外伝1夜 出合った日

喫茶リトルガーデン、この辺りでは有名な喫茶店だ
ドリンクもさることながら、デザートや軽食もおいしいことで有名だ

「始めてのバイトってちょっと緊張するな・・・」

隆泰はリトルガーデンのアルバイトに始めてきた
隆泰自身、これが初めてのバイトであった為、やや緊張気味であった

「ねえ、君!!」

ビクッ

後ろから急に声をかけられ、驚く隆泰

「君もアルバイトの人?」
「そうだけど、っていっても今日が初めてなんだけどね・・・」
「そうなんだ、実は私も今日からなんだ」

隆泰に話しかけてきた女の子
明るく人をひきつける笑顔がある

「私、麻生 恵、よろしくね」
「あ、俺は平林 隆泰、こちらこそよろしく」
「とりあえず、中に入ろうよ」

恵に連れられ中に入る隆泰

カランカラーン

「来たようだな」

店の中に待っていたのはここの店長、それに奥さんでここのフロアマネージャの美也子が居た

「君達にはあらかじめ話しておいたが、この店の仕事は喫茶店だけじゃあないのは分かってるな」

隆泰も恵も最初はただの喫茶店の仕事だと思っていた
面接の日採用になったのは良かった
だが、それ以外にもリトルガーデンは別の仕事があったのだ

「分かってます」
「はい」
「それじゃあ、君達にはこれを渡そう」

ズシッ

見た目とは裏腹に異常なほどに重い制服

「まずはこれを着て動けるようになってからだ」
「は、はい」

二人は更衣室で着替え、何とか外に出てくる

「お、重い・・・」

こんなものを着ているだけで疲れてしまう

「やあ、恵さん・・・」

恵も何とか着て歩いているという感じであった

「あ、隆泰君、調子はどう・・・?」
「どうって言われても重くて・・・ちょっと辛いですね・・・」
「そうだよね・・・」

辛いとは言われてはいたが、これを着て歩くだけでも辛い
それ以外にも色々と覚えることがあるのだ

「二人共なかなか似合ってるじゃあないか」
「着てるだけで辛いっすけどね・・・」
「とにかく、これに慣れてもらわないと困るからな、慣れたらドンドン重くしていくから覚悟しておけよ」

二人に衝撃が走った
これだけでも十分辛いのに更に重くなっていくのだ
だが、幸いだったのは二人とも根性があったということだ
辛くてもやり遂げよう、そう思っていた

こうして、隆泰と恵は出会ったのだ
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by meruchan0214 | 2006-07-07 21:10 | リトルガーデン外伝