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最終夜 未来

「ああ~、心配だ・・・」
「心配なら病院までいけばいいじゃないですか」
「でも、店を外すわけにはいかないしな」
「僕達だけでも大丈夫ですよ、忙しい日ではないですから」

隆泰は今にも生まれそうな子供と恵の心配をしている
店にいるのは店を休む訳にはいかないとのこと

「そうですよ、少しは私達にも任せてくださいよ」
「そうそう、僕たちだけでなんとかしますから」

真と千夏は隆泰に病院へ行くように進める
おめでたい日なのだ、今日くらいは仕事の事を考えてほしくないと真達は思ったのだ

「あ~、それじゃあお願いできるかな?」
「任せてください」
「安心して行って来てください。あ、生まれたらお店に連絡くださいね」
「分かったよ、それじゃ申し訳ないけど、頼んだ」

隆泰は大急ぎで病院へと向かった

「ふう、店長も大変だなあ」
「初めての子供だからね、色々緊張してるんでしょ」

真と千夏はあははと声を出して笑う
妖の脅威が無くなってはいないとはいえ、以前より大きな仕事はほとんどない

「真さん、千夏さん、オーダー入ってますよ」
「あ、はいっ!!」
「は~い」

夕子に呼ばれて慌てて仕事に戻る二人
いつもと変わらぬ日常かもしれないけれど、少しずつ動いている

「真君、今日一緒に帰らない?」
「いいですよ」

変化していく日常、それはとても緩やかかもしれない
自分たちが気づかなくても、実は変化しているのかもしれない

「店長の子供が生まれたらしいですよ、女の子ですって」

自分たちの知らなかった世界がある
この世界に入って変わった自分がいる

「お祝いの品持っていかないとね」
「そうだね」

だけど、自分であることは絶対に変わらない

「頑張ったな、恵」
「うん・・・」
「私、お姉ちゃんになるんだね」

進んでいく時間、これから先どうなるかは分からない

「店長、恵さん、おめでとうございます!!」

でも

人は歩いていかなければならない

時は有限 止まりはしない

誰も無力ではない 一歩踏み出せばいい

だから、人は前に進めるのだ
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by meruchan0214 | 2006-08-14 15:42 | LittleGarden

36夜 番外編・伝心

「ただいま」
「お帰り、菊子さん」

菊子が帰ってきたのを出迎える、メル・クローバー
満足したような顔つきの菊子にメルが問い掛けた

「何かうれしそうだね、そんなに助かったのがよかったの?」
「まあね、別れているとはいえ、元は同じ魂だったから」

そう、彼女と隆泰とは元々は一つの存在であったものの魂が複数に別れている存在なのだ
一つだった頃の記憶を取り戻すのは極めてまれであり、隆泰もこの事実は知らない

「同一存在ね、でもどっちかが死んでももう片方が死ぬって訳じゃあないんでしょ?」
「そうね、元々が同じなだけであって今はまったくの別人だから」

菊子が見守っていた理由はここにあったのだ

「だけど、やっぱり手を出しちゃいけないってのは正直辛いわ」

あくまでも、別の人格としての立場として振舞わなければならない
同じ魂を持つものといっても、無闇に手を差し伸べてはいけないのだった

「菊子も男だった頃を思い出した?」
「もう何千年も前の話じゃない・・・」

人の魂は転生する、それはずっと変わらぬ輪廻転生の輪

「まっ、私達は巡視者としての役割を忘れてはいけないということね」
「そうだね」

すべての記憶を持つが故に与えられている運命
全てを見守り、時には味方として、敵として見守る役目を担う

「ねえ、菊子さん」
「何?」

メルはいつも以上に真剣な表情で菊子を見つめた

「私たちにも終わりってあるのかな?」
「どうでしょうね、でも私達には見守る義務があるからね・・・」

菊子は悲しそうな顔でメルに答えた
もう何千年以上も繰り返されてきた転生
それを全て見守ってきた、菊子の運命は今だ終わっていないのだ

「守護者たるもの、いかなる時でも動じてはならぬ・・・か」

菊子は微笑を浮かべると、部屋の奥へと入っていく

「あ、菊子さん、待ってよ」

メルも慌てて菊子の後を追った
彼女たちに許されているのは、今存在する立場による行動のみ
それ以上の関与は許されていない
どんなに力があって、どんなに運命を変える事ができても
彼女たちは見守る事しかできないのだ
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by meruchan0214 | 2006-08-14 01:38 | LittleGarden

35夜 喜々

「ただいま」

隆泰が家に現れたとき、恵と楓は一瞬言葉を失った

「隆泰!!」
「パパ!!」

二人は喜びを体で表現するかのように、隆泰に抱きついた
顔からは嬉し涙が出ていた

「悪かったな・・・、今まで留守にしてて・・・」
「悪かったじゃないわよ!!この三ヶ月間どれだけ苦労したか・・・」

戻ってきたとはいえ三ヶ月も家を空けてしまった
恵は隆泰を困らせるつもりはなかったのだが、どうしても言葉にだしてしまった

「本当に悪い」
「でも、本当に生きてて良かった」
「パパ、今まで寂しかったんだよ」

三人は久しぶりに再会したのだ
お互いの無事を喜びあいながら

そして、次の日・・・

「店長!!お帰りなさい!!」

店長が帰ってきた事に皆がお祝いしてくれた
ただ一人夕子は知っていたことなのだが改めてお祝いをしてくれる

「みんな、今までありがとな」
「いえ、でも店長は今まで休んでいた分しっかりしてもらわないと!!」
「あはは、手厳しいな」

従業員皆から笑いの声が戻る

「ま、今日から店長に戻るけどまたよろしくな」
「はいっ」

皆からの暖かい喜びの声
店長のことが本当に心配だったからこそ喜べる

「店長、帰ってきて良かったね」
「ああ、本当にあの人の言ってた事は本当だったな」

真と千夏も店長が帰ってきたことに素直に喜べた
また、今までのメンバーが戻ってきたからだ

「じゃあ、今日はパーッとやるか」
「さんせー!!」

こんな嬉しい日には皆でお祝いをした
隆泰が帰ってきた喜びを皆でお祝いした

それを見守る一人の影があった

「ふう、やっと帰ってきたのね、ま、人間が3ヶ月で帰ってきたのは褒めないといけないかな」

その影の正体は菊子であった
菊子は隆泰の姿を3ヶ月ずっと見守っていた
なぜ、そうしたのかは彼女しか分からない

菊子は隆泰の姿をそっと一瞥すると、その場から立ち去った
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by meruchan0214 | 2006-08-11 13:11 | LittleGarden

34夜 復活

夕子が慌てて外に出て行って束の間、すぐにお店に戻ってきた

「おかえりなさい、どうしたんですか?」
「ちょっと、義妹の事でね・・・」

夕子は義妹の事をとても大事に思っている
きっと彼女の身に何かがあったのだろう

「慌てて行ったから何があったのかと思いましたよ」
「ごめんね、急ぎだったから」
「別に分かればOKですよ」

もしかしたら隆泰が帰ってきたのかもしれない、一瞬期待した真であったが、
違うことが分かると、少し意気消沈する

「あ、夕子さん今日はもうあがってください」
「もうそんな時間ですか、それじゃあ失礼しますね」

夕子は仕事をあがり、帰る支度を始めた

「それじゃあ、お疲れ様です」

夕子は店を出ると、家とは違う方向に歩き始めた
そこは街の郊外にある、小さなお店
リトルガーデンとはまた違った雰囲気を持つ店である

「お待たせしました」

夕子が席に着くと先に一人の男性がそこに座っていた

「すまないな、夕子」
「いえ、でもすぐに顔を出せば良かったのに」

彼女の前に座っていたのは隆泰であった
本当は義妹の身に何かがあったのではなく、隆泰が居ることが分かったから外に出たのだった

「まあ、三ヶ月も経ってるからな~ちょっと顔を出しづらくてな・・・」
「みなさん、待ってますよ」
「そうか、ま、明日にはきちんと帰るよ」

隆泰は頭を掻きながら話す、どこか照れているように見受けられる

「恵さんと楓ちゃんには伝えておきますか?」
「あ~そうだな・・・、いや、いいや、自宅には今日戻るよ」
「そうですか、お二人とも喜びますよ」

夕子はにっこりと笑いながら話す
その顔は隆泰が無事だったことを本当に嬉しそうな顔だった

「それにしても、良くご無事で・・・」
「自分でも良く無事だったと思うよ、帰ってくるのに3ヶ月かかったけどな」
「やはり、別世界に?」
「ああ、まったく言葉は通じないわ、札は手に入らないわで大変だったよ」

無事だったから笑い話になっているが、話し方を見る限りでは本当に大変だったということを伺える

「それじゃ、店長私はそろそろ帰りますね、朝子も待ってるので」
「済まなかったな、助かったよ」
「いえ、あ、それと皆をあまり驚かせないでくださいね」
「ははは、分かってるよ」

夕子は伝票を持って、金を払い店を出る
気持ちが高揚している、店長が帰ってきたのが嬉しいのだ
家に帰れば恵と楓が、明日店に来れば店員全員が同じ気持ちになるだろう

「無事でよかったですよ、店長」

夕子は店長が無事に帰ってきたことを神に感謝した
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by meruchan0214 | 2006-08-08 23:26 | LittleGarden

33夜 待ち人

店長がいない店を切り盛りするのは大変である
戻ってきてほしい、それは誰もが思っていた

「これで終わりかな?」
「そうだね」

最近は真と千夏のみで仕事をする事が多くなった
人員管理という面もあるが、一個の仕事に多くの人材は割けないのだ

「店長不在だから、新しい人を入れるってわけにもいかないし・・・」
「その分私たちがしっかりしないと」

今は元々働いていた真や千夏、他のメンバーのみで仕事をしている
たかがた一人足りないだけだが、それでも全然違うのだ

「ま、私は二人でも別にいいけどね」
「え、なんで?」

真は千夏に疑問の言葉を投げかけた
千夏は真の鈍さにため息をつくと帰り支度を始める

「はぁ~、これだから・・・」
「だから、なにさ~」

千夏はちょっと不機嫌そうに店へと向かう

「ただいま戻りました~」

真達が帰ってくると夕子が書類の整理をしていた

「おかえりなさい、守備のほうはどうですか?」
「ぼちぼちってところかな」
「私がいるんだから当然って感じ」

夕子は書類の整理をしながら真達に話しかける
かなりの量が夕子の前に積まれていた

「すごい量ですね・・・」
「これでも結構片付けたのですけどね、よく隆泰さんはこれだけの量を片付けれたと思います」

誰もが負担を感じ始めていた

「恵さんもそろそろ動けなくなりそうだし」
「あ~、そういえばそうですね」

恵のお腹の中の子供もだいぶ大きくなってきている
そろそろ仕事をするのも辛いはずである

「恵さんはあの性格なので、口では不満言いますけど仕事は絶対にやめようとしませんから」

夕子は心配そうに呟く、だが隆泰はまだ帰ってこない
本当はもう帰ってこないんじゃないか、そんな不安が胸の中によぎっている
生きているならもう帰ってきてもいいじゃないか、こんなに待たせるわけないじゃないか
真の中ではそう思っていた

「あ・・・」

夕子が突然声をあげた

「どうしたのですか?」
「え、あ、何でもないです」

慌てて声を上げたことに何でもないと否定をする
だが、何かあることは間違いなさそうであった

「ちょっと、私出かけてきますね」
「え、書類は?」
「置いといてください、後でやるので」

夕子はそそくさとお店から出て行ってしまう

「何かあったのですかね?」
「さあ、慌ててたのは確かだけど」

バサバサバサ

何かが羽ばたく音がする、かなり巨大な翼の音だ

「夕子さん、妖の姿になってまでどこに?」

夕子が向かった先は誰も知らない
だが、何かあることだけは間違いなかった
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by meruchan0214 | 2006-08-07 12:54 | LittleGarden

32夜 居ない人

デュアラウズとの戦いから三ヶ月が過ぎた
店長はいつか帰ってくると信じている真達は、恵を店長代理とし仕事を続けていた

「だいぶお腹が目立ってきましたね」
「もう、6ヶ月になるからね~」

身重の恵は現在は接客や実行などの仕事をせず
書類管理や事務など細々としたものに手をつけている

「隆泰さん、早く帰ってくるといいですね」

気休めにしかならないかもしれないが、死んだとあきらめたくはない

「ほんとに・・・、どこほっつき歩いているんだか・・・」

恵は呆れたような声を出す
しかし、隆泰が居なくなって初めて隆泰の居ない事の重大さを感じる

「それにしても、仕事が多くて嫌になっちゃうわ・・・」
「そうですね」

今まで何度か隆泰の手伝いをしていた恵が雑務全般の仕事をしているのだが
その仕事量の多さにまいっているようであった

「楓ちゃんにも手伝ってもらってますし」

楓に手伝ってもらっているといっても、ほとんど雑用がメインである
元々頭が良い子であるために仕事はすぐ覚えたが、まだ小学生である

「恵さん、これもお願いします」

夕子がたくさんの書類を持ってきて机に置いた

「え~・・・また~・・・」

こういった仕事があんまり好きではない恵にはうれしくない事だ

「私も手伝いますから頑張ってください」
「分かったよ~・・・」

店長代理といっても、真達との立場が変わったわけではない

「そういえば、夕子ちゃんの能力で隆泰の居場所って分からないの?」
「残念ながら・・・、この世界に居なければ感じ取る事はできませんから・・・」

この世界に居ない、すなわち今自分たちが住んでいるこの地球上には存在していないことになる
だが、魔族や天使が居るこの世の中、他の世界に居ると言う可能性はゼロではない

「店長の事だからひょっこりと帰ってくるかもしれませんよ」
「それもそうだね」

そんな日常がずっと続いている

『店長、みんな待ってますよ・・・』

真は心の中で隆泰を呼んだ
リトルガーデンのメンバーは全員隆泰の帰りを待っている

「子供が生まれる前に戻ってこなかったら、お仕置きだね」

恵も隆泰が生きている事を信じている
みんな、店長が帰ってくることを待ち望んでいる

今はただそれだけを祈っているのだ
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by meruchan0214 | 2006-08-06 23:10 | LittleGarden

31夜 別れ

デュアラウズを倒した真達、戦いは終わったはずである

「店長、戻らないのですか?」
「あ、ああ、すぐ行く」

隆泰は何か気乗りしてはいないようであった
不安がっている、そんな気がしていた

「恵さんに無事だってこと、報告しなくちゃ」
「うんうん、これでしばらくは大きな仕事はなくなりそうですしね」

真と千夏は大きい戦いが終わったせいか大はしゃぎである
だが、隆泰の表情は変わることはなかった

「悪い、先行っててもらえるか?」
「え、どうしたんですか、デュアラウズは死んだはずですよ」

確かにデュアラウズは死んだ、それは間違いない
みんなで確認したことである

「ちょっとだけやる事があるんでな」
「・・・、絶対に戻ってきてくださいよ」
「分かってるよ」

真と千夏は隆泰を残していくのは不安であったが
自分達が行かない限り隆泰も動こうとはしない
それを真達は察したのだ

タッタッタッタッタッ

真達がここから出て行くことを確認する
すると、隆泰の顔付きが険しくなるのが分かる

「これ以上は進ませない、たとえお前と相打ちになってもな」

隆泰が言葉を発するとこの地下世界の一部が盛り上がるのが分かる

「良くぞ、見破ったな」
「お前の事はよく分かってるんでな、ここがお前の核でもあるということもな」
「くくく、ここで私を倒すということもどういうことか分かってるんだろうな」
「ああ、知ってるよ!!」

隆泰は自分の武器を取り出し、構える
その顔には決意の表情があった

「お前は俺が完全にここで消滅させる、店長の無念・・・ここで晴らす!!」
「面白い、やれるものならやってみるがいい!!」

隆泰とデュアラウズの最後の戦いが始まった

ガキィィィィィン

勝負は熾烈であった、お互い一歩も譲らない戦い

「ここでお前が私を倒せば私は消滅するだろう、だがお前も一緒に死ぬことになるな」
「分かってるよ、そんなこと!!」

ザシュ!!

一瞬の隙をつき、隆泰の槍が一閃デュアラウズを捕らえる

「ガハッ・・・」
「これで本当に終わりだ」

隆泰は札を取り出し念じると、デュアラウズの体が光に包まれ爆発する

ドガァァァァァァァァン!!

凄まじい爆発と共にデュアラウズの体が消し飛んだ

「く・・・くく・・・、強くなったな・・・、だが、お互い消滅するだけのことだ・・・」

それだけ言い残すと、デュアラウズは跡形も無く消え去ってしまう
同時にこの地下世界が崩壊を始める

「ふぅ、俺の役目も終わり・・・か・・・」

隆泰はやり遂げた表情をしている、その顔に後悔はなかった

「店長もこんな気持ちだったんだろうか、後に託すっていうのは」

今なら茂の気持ちが分かる気がする
自分が未来を託すに値する者達がいる

「恵、まだ見ぬ俺の子供、ごめんな、楓、仲良くやってくれよ」

世界の崩壊が徐々に早まっていく
そして、隆泰の姿も崩壊と共に見えなくなっていった

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

激しい地響きと共に地下世界が崩れていく

「店長!!」
「真君、店長を信じましょう!!」

崩れる階段を急いで駆け上がる真達
外に出る頃には地下へ続く通路はただの瓦礫の山になっていた

「店長・・・まさか埋もれちゃったんじゃ・・・」
「そんなことあるわけないじゃない、転送術も使えるんだし!!」

札を使った転送術、隆泰は確かにここへ来る前に札を持ってきていた

「無事に終わったようですね」

仕事の終わった菊子が真に話しかけてきた

「あら、隆泰さんの姿がないようですが?」
「店長は先にと言ったきり、後には・・・」
「そうですか、ちょっと探してみましょう」
「お願いします」

菊子は精神を集中させると、何かが広範囲に広がったのが感じられた
その広がったものは何かは真達には分からないが、全てを感じ取られているそんな雰囲気であった

「・・・少なくても周囲200Kmにはいませんね」
「200kmって、転送術でも無理な距離・・・だよな・・・」
「せいぜい、5kmが限界でしょうね」

真達の表情から絶望の顔が生まれる

「折角、皆で帰れると思ったのに」
「絶対に帰ってくるって約束したのに・・・」

恵にもどう話せばいいのか分からない
千夏の時は笑い話で済んだが、今度ばかりは本当に望みはない

「でもですね」

菊子が口を挟んでくる

「絶対に死なないって約束したのなら、死んではいないと思いますよ」

菊子の言葉は気休めにしかならなかった
だが、菊子はそのまま言葉を続けた

「私の知り合いで死んだと思われていた人間が数年後にひょっこり帰ってきましたから、隆泰さんもそんな気がします」

そんな気がする、でも確かに言われてみればそうかもしれない
もしかしたら、転送に失敗して変なところに飛ばされた可能性もある

「私って、人の生き死にって感覚で分かるのですが、隆泰さんが死んだとは思えません、たとえこの状況はどんなに生存が難しくてもね」
「でも、難しいじゃなくて、絶対に無理なんじゃ・・・」

菊子の言うとおり、隆泰が生きていることを信じたい
無事で戻ってきてほしい、心の中では願っている
現実を見る限りでは絶対にありえない可能性を信じているのだ

「ま、信じる信じないはあなた達の自由ですけどね、でも、信じてあげないと帰れるものも帰れなくなってしまいますよ」

菊子は言いたいことだけ言うと、その場からさっさと帰っていってしまった

「とりあえず・・・、恵さんに報告・・・か・・・」
「うん・・・」

正直にいって報告するのはとても気がひける
なんていえばいいのか分からなかった
菊子さんに言われたとおり、どこかで生きているとでも言えばいいのか
ありのままの現実を話すべきなのか、真は悩んだ

「二人とも、仕事は終わったの?」

恵が真と千夏に声をかける

「隆泰は?」
「店長は・・・、恐らく地下の崩壊に巻き込まれて・・・」

ごまかせないことは分かっている、正直に言うしかない
恵が可哀想ではあるが、これしかないのだ

「そう・・・、何となくそんな感じはしてた」

思ったよりもショックは少なそうであった、と言うよりはどちらかというと諦めていたそんな感じだった

「あの時とあまりにも似過ぎてたから、もしかしたらと思ってたけど」
「あのとき、僕達が店長を無理やりにでも・・・」
「ううん、大丈夫、隆泰は死んでない、それが以前と違うことだと思う」

恵は菊子に似たようなことを話す

「どうして、死んでいないと?」
「死んだと思えないから、茂店長の時とは何かが違うのよ」

真達には理解できなかった、だが、惹かれた者同士の繋がる糸があるのだろう

「帰ってくるまで、私達がお店を守らないとね」

あの現状を見る限り助かるとは到底思えない
だが、前向きに考える恵を見て、真達も前向きに考えるしかなかった

「そう・・・ですね・・・」
「私でよければ、お手伝いします」
「よろしくね、二人とも」

恵は涙をこぼした、それが二人に感謝するものなのか
隆泰に対してのものなのかは分からない

真達は隆泰の帰りを信じることにした
あきらめたら全てがそこで終わる気がしたからだ

いつか帰ってくる日まで、自分達がしっかりやらなくてはいけないのだ
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by meruchan0214 | 2006-08-06 00:54 | LittleGarden

30夜 変異

デュアラウズとの戦いが始まった
真達は全力を持って戦ってはいるが、お互いにダメージは与えてはいない

「やっぱり、強い・・・」

父親の力を吸収したデュアラウズの強さは今まで戦ったどんな敵よりも強かった

「攻撃が全く効かないなんて」

何度も攻撃を試みるが、牽制程度の攻撃ではダメージを与えることはできない
だが、こちらは相手の攻撃を一撃もらっただけでも致命傷になりかねない

「真、千夏、左右から攻撃しろ!!」

隆泰の指示が辺りに響く
攻撃が効かないことは隆泰も重々承知ではある

「持久戦はこっちの方が振りだっていうのに・・・」

元々、妖と人間では身体的に人間の方が圧倒的に不利である
訓練である程度は縮まるとはいえ、根本的な差は埋まらないのだ

「何とかして短期決戦に持ち込みたいけど・・・」
「私が隙を作るよ、その一瞬を逃さず全力で攻撃すればもしかしたら・・・」

千夏が真に話し始める

「隙を作るって?」
「とにかく、任せなさいって」

千夏はそれだけ言うと、デュアラウズに向かって走り始める

「千夏!!不用意に近づくな!!」

隆泰の言葉を無視し、真っ直ぐにデュアラウズと向かっていく

「馬鹿め、そっちから死ににくるとはな」

デュアラウズの四肢が伸び、千夏を襲う

ヒュン!! ガッ!!

間一髪のところで攻撃を避ける千夏
そのまま、勢いを緩めることはない

ヒュン!!ヒュン!!

巧みに攻撃を避ける千夏で後少しというとこまでやってきた

ザス!!

肩に一撃デュアラウズの攻撃が突き刺さった

「この程度・・・!!」

傷にひるむことなく千夏はデュアラウズに取りついた

「ぐっ・・・」
「真君今よ!!」

千夏が真に向かって叫ぶ
千夏の言う隙を作る方法とは、自分が動きを封じて自身ごと攻撃をさせることだった

「くくく、私の武器を忘れたのか?」

デュアラウズの体から鋭い角が伸び、千夏の体をめったざしにする

グサッグサッ!!

鈍い音が辺りに響く

「千夏さん!!」
「千夏!!」

真と隆泰の大声が辺りにこだまする

「私に近寄ったのが運の尽きだったな」

角がつきたたっている千夏の体を引き抜こうとする

「ぬ、まだ息があるのか」
「貴方を倒すまでは・・・死ねないからね」

普通の人間なら即死しそうな攻撃を受けてなお、千夏はデュアラウズの動きを止めている

「早く、真君!!店長!!」

千夏の声が二人に届く

「真!!やるしか・・・ない!!」
「千夏さん・・・」

隆泰は傷の具合から見て治せないと判断したのか、攻撃の構えを取る
だが、真は千夏の事を思うととても攻撃はできなかった

「真君!!」

千夏の再三真を呼ぶ声

「離せ!!この女ぁ!!」

デュアラウズは躍起になって、千夏を攻撃する
千夏はその攻撃を受けながらも、手を緩めようとはしない

「このままだと三人とも死んじゃうわ、だから、今やるしかないのよ!!」
「でも、でも僕は・・・!!」
「皆を守るんでしょ!!こんな所で止まってどうするの!!」

真は攻撃をする構えを取るしかなかった
確かにデュアラウズは倒したかったが誰かを犠牲にしてまで望んだことではない
ましてや、皆で生きて帰ると誓ったのに、今ここで千夏を見捨てようとしている

「千夏さん・・・ごめん・・・!!」

真の顔から涙が溢れていた
誰かを犠牲にしなくては、自分達の勝ちはない
やりたくないけどやるしかない、真は自分の出来る全ての力を込めた

「千夏すまない・・・」

隆泰からも謝罪の言葉が漏れた

「大丈夫ですよ、店長・・・」
「真、行くぞ・・・」
「はい!!」

隆泰と真の最大威力の力が溜まっていく

「離せ、離さんか!!」

デュアラウズは必死に千夏を振りほどこうとするが傷だらけの体とは思えない力で千夏は押さえ込んでいた

「今、私は痛みの感覚がないからね、どんなことをしても無駄よ」

そして・・・
全力の一撃がデュアラウズに振り下ろされた

ズガガガガァァァァァァァン!!

辺りに凄まじい爆音が響く
全てを込めた一撃、辺りにあるモノもなぎ払うほどの威力

後に残ったのは静寂が包む世界
隆泰と真の二人だけだった

「店長・・・」
「何も言うな・・・、俺達は無力だったな」
「はい・・・」

後悔しても帰ってこない、どんなに嘆いても死人は蘇らないのだ

「結果的には一人の死者で済んだ・・・だけど・・・」

真の胸にはやるせない気持ちで一杯であった
例え敵に勝っても誰かが死んでしまっては嬉しくもなんともない

「折角、知り合えたのに・・・まだ色々話すこともあったのに・・・」

真は悲しみで声もでなくなってきた
ただ、ただ涙だけが顔から流れ落ちてきていた

「千夏さん、ありがとう・・・」
「どういたしまして、真君」

不意にどこからか千夏の声がしたきがした

「え・・・幻聴・・・か・・・」
「幻聴じゃないわよ」

ボコッ

地面から千夏が突然現れた
真と隆泰は何が起きたのかさっぱり飲み込めなかった

「うん、上手くいったみたいね、さすが私」
「さすが私って・・・、どうして!?」
「ま、死に掛けたのは確かだけどね、体バラバラになったし」

恐いことをアッサリと話す千夏
だが、それ以上に真は千夏が生きていてくれたことが嬉しかった

「もしかして、例のウィルスの力なのか?」
「ピンポーン、店長正解です」

真も以前千夏の口から聞いたことがあった
人間を超人にしてしまうウィルスのこと

「そんなこと・・・できるなら早く言ってくださいよ!!」
「敵を騙すには味方からってね、敵が私の事知ってたら掴ませなかっただろうし」

確かに言っていることは分かるが真は悲しんだ分の気持ちをどうすればいいか分からなくなっていた

「千夏、今度休みなしな」
「え、店長、それ酷いよ、私のお陰で勝てたのにー」

真は隆泰の言葉にうんうんとうなずいた

「とりあえず、無事でよかったよ・・・」

その場に力なく座る真
千夏が生きていたことが嬉しかったせいか安心してしまったのだ

「あはは、ごめんね、でも心配してくれてありがとね」

チュッ

千夏は軽く真のほっぺにキスをした

「わ!!何をするんですか!?」
「あはは、照れちゃって、可愛い」

真っ赤になっている真を千夏が笑う
それを見て隆泰も笑っていた

「店長も心配してくれてありがと」
「キスはないのか?」
「してほしいの?恵さんが何かしても私知らないよ?」
「冗談に決まってるだろ、そんなこと頼んだら恵に殺される・・・」

隆泰はかなり真面目な顔で話していた
とにかく全員無事でよかった
ただ今はそれだけで気分が良かった

戦いは終わったのだと実感できたのだ
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by meruchan0214 | 2006-08-02 22:02 | LittleGarden

29夜 真剣

地下へと続く階段
瘴気がだんだんと濃くなっていく

息苦しい、居るという存在だけでここまで辛いモノなのか

「大丈夫か、二人とも?」

隆泰が真と千夏に声をかける

「大丈夫です」
「これくらい平気ですよ」

今まで出会ったことのないほどの強さ
圧倒的な威圧感、本当は居るだけでも辛かった

「無理はするなよ」

隆泰は二人の心配をしながら先へと進む

そして、最下層に三人は到達した
そこは地上とはかけ離れた場所

異界と呼ぶに相応しい世界であった

「いつの間にこんなものを」

現代においてありえない造形、禍々しい妖気
この世のものではない何かがそこにはあった

「デュアラウズ、出て来い!!」

隆泰が叫ぶ、ここには瘴気の元が存在していた
真にもその存在をはっきりと感じ取ることができた

「グハハハハハ、相変わらずのようだな」

暗闇から現れる一つの妖
その姿は巨大にして邪悪であり、悪魔と言って過言ではなかった

「あいつのお陰で再生するのい手間取ったわ、だが、そのお陰で我は新しい力を手に入れたがな」
「デュアラウズ、まさか・・・」

デュアラウズは邪悪な笑みを浮かべる

「そうだ、あいつの力はこの我が取り込んだ」

隆泰の顔がみるみるうちに怒りに変わっていくのが分かる

「店長、あいつってまさか・・・」

真も誰のことが察したようであった

「お前の尊敬する茂の力は我が頂いた」

真はショックを隠せなかった
父親の力を取り込んだ妖、それが信じられなかった

「くくく、お前は息子らしいな、分かるぞ全て分かるぞ!!」
「こいつ・・・!!」

自分の体が熱くなっていくのを感じた
怒りが自分を支配していくのがはっきりと分かった

「真!!抑えろ!!」

隆泰の怒声が真を止める
隆泰も怒ってはいる、怒ってはいるが真とは何かが違った

「怒っても自分を見失わないか・・・、お前も腕を上げたようだな」
「ああ、お前だけじゃないさ・・・強くなったのは・・・!!」

戦いの前兆とも言うべきなのであろうか
空気がざわついている

少しでも動けばこの戦いが始まるであろう
今、まさに全てをかけた一戦が始まろうとしている・・・
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by meruchan0214 | 2006-07-30 22:40 | LittleGarden

28夜 強襲

Guardian'sとの協力体制をとった真達はディアラウズの居る廃墟までやってきた

「まさかまたアイツと戦うことになるとはな・・・」
「妖だからね、いつかは復活する運命だったのかもしれないよ」

隆泰にとっては憎むべき敵
そして、真にとっては父親がやった最後の仕事である

「父さんがやったこと・・・僕にも出来るかな・・・」
「真君なら大丈夫だって、私達も一緒だし」

千夏に言われるとなんだか本当にそんな気がしてくる
彼女の雰囲気と言うのだろうか、微かに千夏から漂ってくる良い匂いが真の鼻をくすぐった

「私達が他の妖達を抑えますので、貴方達はデュアラウズをやってください」

菊子から説明を受ける

「よろしく頼みますよ」

こうしてデュアラウズを討伐する為の作戦が開始されようとしていた

「父さん、僕も父さんみたいに強くなるから・・・」

形見でもある剣に向かって言葉をかける真
自分の心にそう言い聞かせている、自分は父親のように強くなりたいと

「時間だ、始めるぞ」

隆泰の声を皮切りに皆が一斉に行動を始める

「隆泰、ちゃんと帰ってきてよ」
「分かってるよ」

隆泰は恵に不安にさせないようにしているのは誰もがわかった
だが、恵にとってはあの時の事が頭に焼き付いて離れていなかった

「あいつのやり方は分かってる、心配するな」

隆泰はそれだけ言い廃墟へと入っていく

「僕達が必ず店長を守りますよ」

真は恵に一声かけ、隆泰の後を追った

廃墟まではGuardian'sのメンバーが足止めしているお陰かあっさりと侵入できた

「さて、ここからは別行動ね」

廃墟まで一緒にきたのはGuardian'sではメルとダリアのみだった
この中には外に居る時よりも数段強い妖の力を感じる

「本当に二人で大丈夫なのですか?」

真が心配そうに尋ねる

「二人だから大丈夫ってのものあるけど」
「そうそう、ま、大船に乗った気でいなさい」

自信満々に言う彼女達、何故か本当に大船に乗ったような気分にさせてくれる

「それよりも、負けたら承知しないからね」

厳しい念を込められるが、何とも気合の入る一言でもあった

「うし、じゃあまた後で」
「うん、またね」

メルとダリアは二人で散り散りに散っていった
そして真達はいよいよデュアラウズの元へと向かい始める

「いくら彼女達でも全部の敵を引きつけることはできないから、覚悟しておけよ」
「大丈夫ですよ、その為に今までやってきたんですから」
「うん、私も真君も問題ないよ」

真達はデュアラウズの待つ地下へと足を踏み入れていった
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by meruchan0214 | 2006-07-28 22:30 | LittleGarden