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16夜 人と妖

キルトの力を受け継いだ私は今は佳織さんや華ちゃんと同等の力を持っている
しかし、キルトの力を受け継いだことによって私の肉体に少なからず変化が起きていた

「体が妖と同じになってきているわね」
「ま、そうですよね」

半分は分かっていた事、妖の力を持っている今ではそれを隠すのはたやすい

「でもいいの?これ以上力を使い続けると本当に妖になっちゃうよ?」
「華ちゃん、大丈夫。私が選んだ道だからさ」

人間ではなくなってしまうというのには違和感はあった
けれども、素直に受け入れられるのはキルトと一緒になったからだろう
私は修子だけど、キルトと一緒になった
人の体に妖の力、使い続ければ妖に近づくのも当然だろう

「そういえば」

私はずっと気になっていることを佳織さんに聞いてみることにした

「佳織さんって、妖としては中途半端っぽく見えるんですけど・・・」
「半分人間だからね」
「半分・・・?」

佳織さんは自分が生まれたときの事を話してくれた
人狼と人間の子供、それが佳織さんなのだ

「だからほとんど人間と変わらない姿だし、狼になる部分も一部分」
「確かに、妖の姿になってもほとんど変化ないですもんね」
「まあ、純粋な人狼の業が使えないものもあるけれどね」

やはり、生粋の人狼と同等と言う訳にもいかないが、それは修行次第で何とかなるものなのだ

「修子ちゃん、これからも力を使い続けるなら自分がどうして力を使うのか忘れないようにね」
「はい」

私は佳織さんの言葉を心に止め一緒に仕事に出る
勉強する事はまだまだたくさんある、それをもっともっと学びたいと思った
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by meruchan0214 | 2007-04-23 22:42 | 知らぬが幸せ

15夜 心の支え

私はキルトから全てを受け取った、力も思いも全て

「そうなの・・・」

私は佳織さんに全てを話した、私がキルトの力をもらったことも
今の私は妖に近い存在だ、それだけの力を得た

「キルトの分も私が頑張ります」
「無理はしないでね」
「分かってます」

キルトが残してくれたもの、それを私は全て背負っていかなくてはいけない
とてもとても重いけれど、私の使命でもあった

「私頑張るからね・・・」

私はキルトの残した武器を持ち、佳織さんと華ちゃんと夜の世界へと踊り出た

体が軽い、今までは佳織さんの動きについていくことが出来なかったが今ならそれもできる
もう足手まといではない、一緒に戦うことが出来る

「いくよ、修子ちゃん、華」
「了解」
「はいっ!!」

私達は闇夜から飛び出すように駆け抜ける

「さすがキルトの力を受け継いだだけあるわね」
「はい、キルトは私に全てを残してくれましたから・・・」

暖かい力が内から溢れるように沸いてくる
キルトの気持ちが、そして私の気持ちが強くなっていく
これから二人一緒、それが私達の力なのだから
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by meruchan0214 | 2007-04-12 22:54 | 知らぬが幸せ

14夜 仕組まれた夜

少しでも佳織さんやキルトや華ちゃんに近づくために特訓の日々は続いた
力では逆立ちしても人間である私には勝てるはずがない
だから、私はそれ以外で追いつく為に努力していた

「戦いを決めるのは力だけじゃないってことは覚えておいてね」
「はいっ!!」

戦うための技術、知恵、それだけは力は関係ない
それを駆使すれば人は妖とも戦えるのだ

「修子ちゃんは素質はあるから、がんばってね」
「うん」

毎日、佳織さん達に交代で練習に付き合ってもらう
疲れるが楽しい日々である

「シュウコ、ダイブ、ツヨクナッタ」
「ありがと、でもまだまだ」

リトルガーデンの人達は人間ながら高い戦闘力を持つ
一度彼等の戦いを見に行ったけれど、自分との実力差には呆気に取られるだけだった
人という身でありながら、佳織さんやキルト、華ちゃんと互角以上に戦う
私もああいう風になりたかった

「それじゃあ、今日はそろそろ帰りますね~」
「気をつけて帰りなさいよ~」

そう、今この極限のピンチを迎えるまではそう思っていた

「キシュルルルルルル」

妖は私の目の前で奇声を発した
実力差は歴然、私では到底太刀打ちできそうにない

「私も、もう駄目かな・・・」

私を使ってどうこうする、と言う訳ではない、ただコイツは殺戮しかする気がないのだ
佳織さんも華ちゃんもキルトもいない
自分自身の力ではどうしようもない、何も出来ないのだ

「一生懸命やってもこんなに無力だったんだ」

私には既に諦めるしかなかった、それ以上何も望むことはできなかった

妖の腕がゆっくりと振りかぶり私に振り下ろされた

私は目をつぶったが、つぶされた感触は全くない
おそるおそる目を開けるとキルトが私を庇っていた

「ダイジョウブ・・・カ?」
「キルト!!」

私の代わりにマトモに攻撃を受けたキルト、傷口はかなり深い

「オマエ、シュウコイジメタ、オレ、オマエユルサナイ!!」

キルトは全身全霊を持って妖を切り裂いた
だけど、その直ぐ後にキルトは倒れてしまった

「キルト!!」

私はキルトに近寄って傷口を確かめる
キルトの負った傷はあまりにも深く、私にはどうしようもない

「待って、今佳織さんたちに!!」
「イラナイ・・・、オレ、モトモト、モウスグシンデイタ・・・」
「え・・・」
「ジュミョウ オワル、サイゴ シュウコ マモレテ ヨカッタ」
「ちょっと、駄目よ!!まだキルトに教えてもらうことが!!」

寿命が既に来ていたことに驚いたしかし私はそれを受け入れることはできない
キルトは最後の力を振り絞って、私の手を取った

「オレ、オマエニツタエル。タタカウ、チカラ。マモルタメノチカラ」
「伝えるって・・・」
「オレ、オマエトイツマデモ、イッショ。スベテヲツタエル」

キルトから暖かな力が私に流れ込んできた
今まで培ってきた全てを、キルトが私に伝えている

「オレ・・・シュウコニアエテ・・・ヨカッタ・・・」
「ちょっと、キルト!!死んじゃあ駄目なんだから!!」

キルトの体が少しずつ砂になっていく
私は目から大粒の涙を流しながらキルトの名前を呼んだ
けれど、キルトはそれに反応することはなかった

「キルト・・・」

私はキルトの全てを受け継いだ
今までキルトが覚えてきたことを、その記憶を受け継いだのだ

「ごめんね・・・キルト・・・」

最初からキルトは私に力を受け継がせるつもりだったのだ
私と出会ったときからあまり自分に時間がない事が分かっていた

「私、キルトの分も頑張るから」

私はキルトの使っていた武器を拾う
そしてゆっくりと歩き始めた

自分自身ができることをやる為に、キルトから受け継いだこの力を使って
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by meruchan0214 | 2007-04-10 22:23 | 知らぬが幸せ

13夜 自分の気持ち

何とか助かった私、命があったから良かったが殺されていたかと思うとぞっとする

「間に合ってよかったよ」

佳織さんはやれやれと言った顔だが、身に染みて危険という事を実感する
そんな世界に私は足を踏み入れてしまっているのだ

「怖くなった?」
「そ、そんなこと・・・」

怖くないといったら嘘になる、けれどこのままやめる気にもならない
むしろ、これを跳ね除けたいそんな気持ちが強かった

「やめたければ、やめてもいいんだよ?」

佳織さんが私に親切で言ってくれているのは分かる
けれども、私は今このときをやめたくはなかった

「いえ、やります」

私は力強く真っ直ぐに答えた
その言葉に佳織さんはやれやれというような顔をする

「オレ、シュウコマモル」
「お願いね、キルト」

私の我がままだということは分かっている
けれど、今は佳織さんや華ちゃん、キルト達と一緒に居たいのだ

「さて、とりあえず戻りましょう」
「はい!!」

私はまだまだ未熟者だ、けれど今この時が一番楽しい
普通とは知らない世界、知らなかった方が良かったかもしれない
知ってしまった以上、ここが私の好奇心をくすぐるのだ
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by meruchan0214 | 2007-03-28 12:16 | 知らぬが幸せ

12夜 助け出される時

「う・・・ん・・・」

目の前がうっすらと見えてくる
お腹の辺りがズキズキする、意識がまだ朦朧としていて自分が何をされているのか分からない

「ここは・・・?」

次第に意識がはっきりしてくると、自分が身動きが取れない事に気付いた
縄でしばられている、猿轡はされてはいないが自由に動ける状態ではない

「気がついたみたいだな」

私をさらった妖が私に気付いた事が分かると話しかけてくる

「貴方どういうつもりよ・・・」
「お前を餌にしてあいつらを誘き出すのさ」

こういうとき、自分の弱さが足手まといになってしまう
リトルガーデンの人達みたいな力があれば、こんなことにはならないのに

「お前はあいつらにとって大事な存在みたいだからな」
「私はそんなに大事じゃないわよ」
「ふふふ、隠しても無駄だ、今は情報の時代なんでな」

妖は嬉しそうに微笑むと佳織さん達が来るのを待っていた

ヒュン

最初に現れたのは佳織さんだった

「修子ちゃん!!」
「佳織さん!!」

私が捕まっているのをみて、凄い剣幕で妖を睨みつける

「おお、怖い。それほどまでにこいつが大事なのかね」
「大切な仲間ですもの、当たり前じゃない」

私を仲間と思ってくれている、それだけでも嬉しかった
けれど、今はそれが足手まといになっているのが凄く悲しかった

「さて、わざわざ来てくれたが、動いたらどうなるか分かっているね?」
「修子ちゃんを殺すつもりでしょ」
「その通りだ、聞き分けが良くて助かるよ」

妖はにやりと笑った

「でも、それもできればだけどね」
「何だと?」

その一瞬、何者かが私を抱きかかえ佳織さんと合流する

「キルト!!」

私を助けてくれたのはキルトだった

「上手くいったみたいね」
「アア」

佳織さんとキルトは実は既に一緒に来ていたのだ
極力、妖に気付かせぬ為にキルトは気配を殺し私を助け出す瞬間を狙っていた

「さて、どう退治してくれようか・・・」
「く、くそ!!」

妖はその場から直ぐに逃げるように立ち去る

「覚えてろよ!!」

捨て台詞を残し去っていってしまう
助かった・・・それだけが今私に思える事だけであった
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by meruchan0214 | 2007-03-27 12:18 | 知らぬが幸せ

11夜 突然の襲撃

私はあれから毎日キルトに戦い方を教わっている
大分、自分でも強くなったとは思うが、佳織さんやキルト、それに華ちゃんに比べるとまだまだである

自分が強くなっているのを実感するほど、佳織さんたちがどれだけ危険な事をしているのか良く分かってきた

「今日も一人でお留守番かあ・・・」

私はいつも通り一人で事務所にお留守番である

ピンポーン

その時、玄関のチャイムが鳴った

「は~い」
「郵便です」

私は佳織さんの印鑑を持って、玄関の扉を開ける
しかし、そこにいたのは郵便の配達員ではなかった

「一緒に来てもらおうか」

扉の先にいたのは妖だった

妖は無理やり私を連れていこうとする
私もただ黙っていう事は聞くつもりはない

「抵抗しないほうがケガをしなくて済むぞ」
「誰が、貴方みたいなのに連れていかれるものですか!!」

私はキルトにもらった、武器を取り出す

「や!!」

ここ数日で大分様にはなってきていた
だけれど、妖には通用しなかった

「まだまだ、若い!!」

ガシィ!!

妖は私の武器を弾き飛ばすと私の腕を抑え、力づくで私を押さえつけた

「暴れられると困るのでな」

ドスッ!!

「うっ・・・」

妖の攻撃を受けて私の意識は遠くなっていった
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by meruchan0214 | 2007-03-25 23:31 | 知らぬが幸せ

10夜 やりたい事

「ん~・・・、これ難しいなあ」
「ガウ、シュウコ、スグツカエル」

最近の私のマイブームはキルトに戦い方を教えてもらう事だった
佳織さんは私が戦う事に反対みたいでダメと言っていたがキルトに聞いたら快く了承してくれた

「キルトはコレを二本同時に使うんでしょ?」
「コレ、デントウ、シュゾク、ミンナツカエル」

キルトが使う武器の練習をする、両端に刃がついており扱いが難しい
しかも、これは分解する事もでき両手に剣を持った状態にすることも可能である
私だって皆の役に立ちたい、足手まといだけにはなりたくなかった
そう思い、必死に練習する

「ガウ、キョウ、コレクライ、スル」
「う~ん、もちょっと練習したいけれど」
「ヤリスギ、ヨクナイ、ヤスムノ、タイセツ」
「分かってるよ、それじゃ、お疲れ様」

いくらか武器の扱い方は分かった、けれど今はあくまでも戦い方の勉強、演舞みたいなものである
実戦レベルには到底なってはいない

「もっと頑張らないと・・・」

私は心に誓いながら今日の帰路へとついた
自分の腕をもっと上げたいと思いながら

「ただいまあ」
「おかえり、今日もえらく遅かったわね」
「うん、アルバイトが忙しくて」
「そうかい、でも自分のやりたい事をやるのが一番だからね」

母親は非常に理解の良い人だった
私が冴島事務所でアルバイトするときにも快諾してくれた

「お風呂沸いてるから先に入ってきなさい」
「は~い」

今日の一日の疲れを取る
そして、また次も頑張ろう、そういう気持ちになるのだ
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by meruchan0214 | 2007-03-23 12:27 | 知らぬが幸せ

9夜 分かり合う

キルトは人でない姿以外はとても優しい妖であった
片言ではあるが、少しずつ言葉も喋れるようになり私達との意思疎通も大分楽になっていた

「こんにちは~」

私は佳織さんの事務所にいつものようにやってきた
キルトも今は佳織さんの事務所で住み込みで暮らしている

「いらっしゃい」
「ガウ」

佳織さんがキルトに家事のやり方を教えていたようだ
キルトは四本の腕を持っている、そのせいか仕事を覚えると腕を使う作業は非常に効率が良い

「私が四本の腕あったら絶対に混乱するな~」
「あはは、それ私も思ったよ」

キルトが私達と一緒に暮らすようになって大分慣れてきていた
元々、面倒見のいい佳織さんだ、誤解さえ解ければ打ち解けるのは時間はかからなかった

プルルルル プルルルル

「あ、私出ますね」

私は事務所の受話器を取った

「はい、こちら冴島探偵事務所でございます」
「すいません、私・・・」

依頼の人間だ、どうも話から見てあっち方面である

「分かりました、冴島に代わりますね」

私は佳織さんに受話器を渡す

「はい、はい、ええ、そうですか・・・」

ここでの仕事は8割人間の仕事と2割の妖の仕事で成り立っている
実際、稼ぎとしては2割の妖の仕事の方が圧倒的に多いのだが、その分危険性も高い
私の仕事はここや現場の情報伝達の対応、場合によっては私の判断で応援を呼ばないといけない

「ふぅ」

佳織さんが受話器を置くと溜め息をついた

「どういったご用件でした?」
「妖の捕獲だって、また一番面倒臭いことを・・・」
「捕獲・・・ですか」
「まあ、隆泰君達も協力してくれるらしいから何とかなるとは思うけど」

隆泰さんとは近くの喫茶店、リトルガーデンの店長である
この店の店員全員は全て妖とのトラブルを解決する為のプロフェッショナルで構成されている

「私はいつも通りここに待機でいいですか?」
「ええ、お願いするわ。キルト、一緒に来てもらえる?」
「ガウ、分かった」

最近は佳織さんの仕事にキルトが手伝うようになった
キルトの強さはかなりのもので、特に種族伝来の武器を使った時は組み手とはいえ、佳織さんも圧倒した

「それじゃあ、華は残していくから、よろしくね」
「はい、いってらっしゃい」

佳織さんとキルトは窓から飛び立つように降りていった
私は二人の安全を思いながら窓からそれを見送っていた
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by meruchan0214 | 2007-03-22 12:18 | 知らぬが幸せ

8夜 めぐり合わせ

次の日、私は学校を休む事にした、もちろん仮病である
キルスには色々と教えてあげたいというのもあったし、佳織さんと引き合わせるわけにもいかなかった

「キルスに私達の言葉、教えてあげるね」
「ガウ」

念話でも大丈夫といえば大丈夫なのだが、やはりちゃんと自分達の言葉を教えてあげたかった
それに、複数人と会話するにはどうしても言葉を覚える必要があった

「とりあえず・・・そうだな・・・」
「ガウ?」
「私の名前はしゅ・う・こって言うの」
「シュ・ウ・コ?」

たどたどしい口で発音がままならないが、注意深く聞けば名前を言っているように聞こえる

「うん、そうそう、もっとしっかり言えるようになるまで頑張ろう」
「ガウ」

言葉の練習は何度も反復して使う事で覚えていく
元々キルスの頭がいいのもあったお陰か、比較的早く人間の言葉を覚えていった

「シュウコ、コンニチハ、アリガトウ」
「凄い凄い、この調子ならあっという間に覚えられるよ」
「ナントナク、ワカッタ」

元々言葉は理解できていたみたいだから、後は喋れるようになるだけだった
喋れない理由は元々口の構造が違う為に、人間の言葉で喋るのが難しいだけだ

ピンポーン

練習の最中に家の呼び鈴がなる

「誰だろ、親は仕事に出てるはずだし・・・、キルスは念のため隠れててね」
「ガウ」

疑問に思いながらも玄関へと向かう

「は~い」

私は扉を開けると佳織さんと華ちゃんががそこに居た

「あら、元気そうね、病気だって聞いたんだけど」
「え、あ、ああ、はい、あんまり熱とかないんですけど、親が心配性で」
「ふ~ん」
「あ、修子ちゃんこれお見舞いのモノ」
「あ、ありがとうございます」

華ちゃんは私に花を見繕って持ってきてくれた
佳織さんが来てくれたことは嬉しいけれど、今回ばかりは早く帰ってもらいたかった

「ん・・・」

一瞬、佳織さんの鼻がピクッと動いた気がした

「あいつが傍に居る・・・」

流石に勘が鋭い、ほんの少しの匂いでも敏感に嗅ぎ取っているんだろう

「どこに・・・って・・・家の中・・・?」
「あー!!何でも無いですから!!」
「まさか、修子ちゃん!!」

佳織さんは私を押しのけて家の中に入っていく

「待って、待ってください佳織さん!!」

私は慌てて佳織さんの後を追った
私の部屋にはキルスが隠れている
結局、引き合わせないことには失敗してしまった

「ガウ・・・」

部屋では佳織さん相手ではごまかしきれないと思ったのか、キルスは姿を現していた

「修子ちゃんに何をしようとしていたの!?」

佳織さんが吼える、完全に誤解しているようだ

「ガウ・・・ウ・・・」

キルスはどうすればいいか迷っているみたいだった

「佳織さん待って!!」

私はキルスと佳織さんの間に割ってはいる
佳織さんは何故私が間に割って入ってきたのか理解できていなかった

「キルスは本当はとても優しいんです、だからやめてください!!」
「修子ちゃん、そいつは人を襲ってるのよ、昨日だって人をさらって・・・」
「そのさらわれたのは私です、でもキルスは私の心配をしてくれました」

佳織さんはイマイチ信じられない顔つきだ

「人を襲ってしまったのだって、人に攻撃されたから、自己防衛の為だったんです」

私は佳織さんを必死になって説得する

「信じてあげたら?」

そう言ったのは華ちゃんだった

「でも・・・」
「修子ちゃんが操られているようには見えないし、今だって攻撃してこないでしょ、あれが私達に対して完全に敵なら修子ちゃん関係なしに襲ってくるでしょ」
「・・・」

初めて見る華ちゃんの真面目な言葉、この時だけは年齢の高さを感じる事ができた

「オレ、ワルイコト、シタ、アヤマリタイ」

まだ、上手く発音できない言葉で伝えるキルス、念話ではなく喋ったのには歩み寄りたいという気持ちのあらわれなのだろう

「ふぅ、冷めちゃったわ」
「佳織さん・・・」
「とにかく、一回彼を私の事務所まで連れてきなさい」
「はいっ!!」

佳織さんは諦めたように私に言うと、部屋を出て行った

「全く、素直じゃないんだから」

それだけ言うと華は佳織の後を追っていった
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by meruchan0214 | 2007-03-20 12:28 | 知らぬが幸せ

7夜 優しい絆

妖が降り立った場所は今は使われていないような倉庫だった
私を降ろした妖は呆然としている私の顔を覗き込んでいる

「ガウ・・ウ・・・」
「もしかして、私の心配してくれているの?」

私の言葉は通じているのかは分からない、けれどその顔は心配そうに私を見つめていた

「う~ん、何とかして言葉を伝える方法は・・・」
「ガウ?」

私が悩んでいるとカマキリのような妖は四本の腕を私に伸ばしてきた
一瞬私がビクッと震えると、妖は直ぐにその行動をやめてしまう

「あ、大丈夫だから、大丈夫」

私は慌てて妖の腕を取ると、何かが私に流れ込んでくるのを感じた

「オレ、コウスル、オマエニ、コトバ、ツウジル」

思念のようなもの、妖の意思が私の頭の中に直接響いてきた

「オマエ、ダイジョウブ?オレ、メイワクカケタ」

私を巻き込んでしまった事を素直に謝る妖
異様な姿とは裏腹にとても優しい心を持っていた

「私は大丈夫、それよりも貴方は何で追われていたの?」
「オレ、コノセカイ、シラナイ、オソッテキタモノ、タオシタ」

大体事情は飲み込めた、この妖はこの世界のルールを知らない
更にこの容姿だ、恐らく警官か何かを返り討ちにしたのだろう

「タタカウ、キライ、デモ、オソワレタラ、タタカウ」
「そうなのか・・・、でもこの世界ではね・・・」

私は彼にこの世界のルールというものを教えてあげた

「コノセカイ、オレタチ、イルノ、シラナイ?」
「ええ、ほとんどね。知っているのは私達一部だけ」

といっても、私もつい最近知ったばかりではあるけれど

「オレ、コレカラ、ドウスレバ?」
「う~ん・・・」

真剣に悩んでいる彼、何とか力になってあげたいと思う

「私が皆に話してみるよ」
「アリガトウ」

姿こそ異様だけど、その心は歪んだ心ではなく純粋だった

「私の名前は修子、貴方の名前は?」
「オレ、ナマエ、キルト・レルト・フェルト」
「んじゃ、キルトって呼ばせてもらうね、私も修子って呼んでね」
「ワカッタ」

ここで私とキルトの名前を改めて聞く

「とりあえず、そろそろ私も家に帰らないといけないけど、一緒に来る?」
「メイワク、カケナイカ?」
「大丈夫、大丈夫、ただ、隠れないといけないけれど」
「オレ、カクレル、トクイ」
「じゃあ、大丈夫だね」

キルトは私を送ると、私を掴んで一気にジャンプする
その跳躍は凄いもので私は鳥にもなったような気分だった

「窓から入ってね」

私は家に入り、部屋の窓の鍵を開け窓を開ける
キルトは素早く中に入ると、その姿の色が変わっていく
周りの風景に溶け込んでいて、言われても良く分からない

「コレ、イイカ?」
「うん、ばっちり大丈夫、大丈夫」

私とキルトとの不思議な共同生活が始まる

プルルルルル

私の携帯電話がなる、電話の主は佳織さんだった

「キルト、ちょっと何も喋らないでね」

キルトはコクコクと頷くと私は携帯に出る

「修子ちゃん、大丈夫!?」

それが佳織さんの第一声だった

「ど、どうしたんですか、急に」
「あ、良かった無事だったんだ」

安心したような声をあげる佳織さん、何を心配していたのか少し疑問だった

「今、この付近にカマキリような姿をした妖が潜んでいるから気をつけてね」

私は直ぐにキルトのことだと分かった、もしかしたら追っていたのは佳織さん達かもしれない

「あ、はい、分かりました」

とりあえず、キルトがここに居るという事は言わずに返事だけしておく

「とにかく、傍に居たのが修子ちゃんじゃなくて安心したけど、それはそれで大変なのよね・・・」

その傍に居たのは私だけど、何も言えない
言ったら間違いなく直ぐにでもキルトを倒しにここに来るだろう

「とにかく、明日は送り迎えしてあげるから家にいなさいよ」
「大丈夫ですって!!」
「ダメ、家にいなさい!!」
「はい・・・」

あまり強く言われると逆らえない
佳織さんは人狼の娘だけあって、嗅覚などが非常にするどい
もしかしたら、匂いでキルトの事がばれてしまうかもしれない

「オレ、ココ、イタラ、メイワク?」
「全然平気だよ、でも、もしかして今日貴方を追っていたのって・・・こんな感じの人じゃなかった?」

思念で会話しているゆえに、相手にイメージするだけで人物像も送る事ができる

「ソウ、コノオンナ」
「やっぱり・・・」

私は一抹の不安を覚える
佳織さんを上手く説得しないとキルトは退治されてしまう
それだけは何とか避けなくてはいけなかった
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by meruchan0214 | 2007-03-19 12:43 | 知らぬが幸せ