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2、表の顔と裏の顔

「ありがとうございました~」
今日、最後のお客様が帰っていく

「う~ん、今日も良く働きました!!」

私はいそいそとお店の片づけを始める
もう何年になるだろうか、すっかり花屋の店長が板についた私は慣れた手付きで片付ける

「これが終わったら皆に御飯をあげないと」

皆というのは私のお店の敷地内に生えているの兄弟達である
桜や杉など様々ではあるが、どれも私にとってかけがえの無い兄弟だ
私は自由に動けるけれども、兄弟は精霊になるまで至っていない、
だから、私が彼らの面倒を見ているというわけだ

「みんな、お腹を空かせてるだろうけど、もうちょっと待っててね」

私は兄弟に向かって話しかける、きっと傍目からすれば独り言を言っているようにしか見えないだろう、でも木々はちゃんと私に答えてくれる、それだけでも私は嬉しかった

ピンポ~ン

お店側のチャイムが鳴る
今日は既に店仕舞いの後ではあるが、売った花に不都合でもあったのかもしれない、
そう思った私はお店の扉を開ける

「あ、やっぱりこっちだったか。」
お店に来ていたのは、すぐ近所の喫茶店の店長 平林 隆泰さん
よくうちのお店に来てくださっている常連さんだった

「木陰さんの家まで行ったけど、まだ終わってなかったぽかったからさ」
「ええ、でも後は御飯を皆にあげるだけですので」
「そっか、じゃあそれが終わってからでいいや」
「あ、それでは鍵をお渡しするので先に家で待ってもらっていても構いませんよ、きっと妖の事についてですよね?」

彼は腕を組んで少し悩むが、すぐパッと表情を明るくする

「オーケー、先に行って待ってるよ」
「分かりました、ではこれが家の鍵です」
「さんきゅ、それじゃまた後で」

彼はいそいそとお店を出て行く、何か思いついたことでもあるのだろうか
とにかく、私はお腹を空かせている兄弟達に御飯をあげにいった
by meruchan0214 | 2006-03-22 02:06 | 妖の調べ


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