「でさ~、昨日のテレビが面白くて」
「へ~、そうなんですか~」 最近は私と加奈ちゃん、そして夕子さんの3人で帰ることが多くなった お互いが妖や事情を知っているというのは非常に気が楽である 「今日はどっか寄っていきますか?」 「あ、それいいね」 「そうですね、私も今日はOFFなので大丈夫ですよ」 私達は適当にウィンドウショッピングなどしながら歩くことにした 「そういえば、皆さん夏物はどうしてますか?」 加奈ちゃんがファッションの事を聞いてくるのは珍しい 「ん~、私は暑さ感じないから何でもいいっていえば何でもいいんだけど、一応、夏らしく半袖短パンかなあ・・・」 スカートはいまいち好きになれない、別に履きたくないというわけではなくて、足元がスースーするのがなんとなく嫌なのだ 「私は、ワンピースとかタンクトップが主ですわ、下はスカートが主でしょうか・・・」 夕子さんらしい選択といえば選択だ 私は暑さ、寒さを感じなくなったせいか、ファッションに無頓着になっている気がする 着てみたいものはあるが、自分の体の都合で着れない物が多い 「皆さん、やっぱり個性があるんですね~・・・」 加奈ちゃんはハフゥと溜息をつく 「加奈ちゃんはどうなの?」 「え、私ですか?私は~、親が適当に買ってきた物を着るだけなので~」 なるほど、自分では買ったことないというわけだ そんな話をしながら街を歩いている 「陽子お姉ちゃん??」 不意に後ろから声がする 「やっぱり、陽子お姉ちゃんだ・・・」 私達が振り向くと、一人の少女、12,3といったところだろうか だが、少女が誰に対してお姉ちゃんと言っているのか私は分からなかった 「どうして、急にいなくなっちゃったの!?皆、心配してたんだよ?」 私に近づいてくる少女 どこか懐かしい感じがする、記憶を失くす以前知っていたのかも いや、少女の話し方から察するには、私が彼女の姉なのだ 「あ、う・・・」 返答に困る私、生前彼女の姉だったとしても、 私は少女の名前が思い出せない それに、今家族といわれても全く実感がわかないのだ 「ごめんね、お嬢ちゃん、この人は記憶喪失でリハビリ中なの」 夕子さんが状況を理解してくれたのかフォローを入れてくれる 「え、陽子お姉ちゃん記憶喪失なの!?」 「そうなのよ、これから病院に行く所なんだけど一緒に来る?」 「うん!!」 夕子さんが目配せをする、とりあえず話を合わせておけという事らしい 記憶喪失なのは事実ではあるが 「ごめんね、本当に何も思い出せないの」 「ううん、陽子お姉ちゃんが無事だったって分かっただけでも嬉しいよ!!」 少女は明るい声で喋る 「確かに陽子ちゃんと似た雰囲気がありますね、顔も似てるし」 小声で加奈ちゃんが話しかけてくる 確かに鏡で見た自分の顔をそのまま幼くした感じだ 「お嬢ちゃんの名前はなんていうの?」 「的場 牧子って言うんだよ、5人兄弟の次女で一番上は陽子お姉ちゃん!!」 「そう、じゃあこちらも名前を言わないとね、私の名前は真宮 夕子、こちらが春崎 加奈さん」 「よろしくね、牧子ちゃん」 「よろしくお願いします!!」 牧子・・・、確かに覚えがある名前だが、やはりピンとこない とりあえず、今は夕子さんに話を合わせるしかなかった 「それじゃあ、いきましょうか」 私達は病院へと向かう 「ただいま戻りました」 「お帰りなさい、夕子ちゃん」 私は病院について驚いた 看護婦を恵さんがやっていたのだから 「さっき、隆泰さんに連絡しておきました、話はこちらで何とかしますから、合わせてください」 夕子さんが耳打ちをする、流石に手回しがいいというか、困った時は頼りになる人だ 「それじゃあ、陽子さんはこちらに」 「はい」 私は恵さんに連れて、診察室へと入る 「えっと、妹さんは・・・、こっちで少し待っててもらえるかな?」 「はいっ!!」 牧子ちゃんは元気に返事をする、私に会えたのがそんなに嬉しかったのだろうか ガチャ 私は恵さんに連れられ、診察室に入る そこには、林さんと隆泰さんが待っていた 「連絡もらったときは、真面目にびっくりしたよ」 「ええ、慌てて病院に手回ししてもらったから」 「すいません、お手を煩わせてしまって・・・」 私はペコリと頭を下げる 「いやあ、別に構わないさ遅かれ早かれこうなることは分かってたし」 「陽子ちゃんはこれからどうしたい?」 急に言われても返事のしようがない 家族だとは体が感じてはいるが、心がついてこない 「分かりません・・・、自分でもどうしていいのか・・・」 それしか返事ができなかった 多分、今この状況で家族にあっても私は他人としか思えないだろう しかし家族であることは事実、気付かないうちに会いたいという気持ちがあるのも確かだ 「まあ、そうよね、急に言われてもどうしていいか分からないよね・・・」 「すいません・・・」 私は謝ることしかできなかった 「まあ、しょうがない、とりあえず陽子ちゃんにはコレを渡しておこう」 隆泰さんは封筒を取り出す かなり厚さがある、何かの資料だろうか 「君の身元、家族込み、ここに全部まとめてあるから」 いつの間に調べたのかが少し疑問だが、 とにかく自分を知る上では必要になりそうだった 「ありがとうございます」 「まあ、いつかこうなる日を来るのは分かってたから、下調べはしていたんだが、予想よりかなり早かったからな」 元々人間の私だ、確かにこうなることは予測できたことなのだろう だが、私はまだ何ももどってはいない 人間の時の記憶を 人間だった頃の事を・・・
by meruchan0214
| 2006-04-22 21:49
| 妖の調べ
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