6夜 修行

「ふんぬぬぬぬぬ!!」

真は喫茶店でのバイトを始めたはいいが、制服を着てまともに動けないでいた

「あはは、大丈夫?」

横で見ていて笑う千夏、だが真にとっては真面目にやっていることなのだ

「みんなこんなことしたの?」
「うん、妖の人たちは除いてね、私もやったよ」

同じ制服を着ていても、軽やかに動く千夏
どれくらいやっているのか分からないが、普段着みたいに着ている

「まあ、歩けるだけ凄いと思うよ」
「正直かなりきついけどね・・・、今だって油断したら倒れそうだし」

思った以上に体に負担がかかる
これなら確かに短期間で力は付きそうな気がする

「まあ、しばらくは動くことだけに集中したほうがいいよ」
「そうするよ、というか、それしかできないし」
「あはは、確かにね、店長も言ってたと思うけど最初は動けるようになるのが大事だからね」

何だかんだいって真を心配する千夏
同じクラスというせいもあるのだろう、話やすさを感じているみたいだ

「おっと、もう7時だ、今日のノルマは終了だよ」
「そうか、やっとこれが脱げるのか・・・」
「それ脱ぐと世界が変わったように思えるよ」

真は気合で更衣室まで歩いていくと着替えを始める

「重い・・・けど・・・」

着てしまえばまだいいが、今の真には着たり脱いだりするほうが大変だった

「よいっしょっと・・・」

制服を脱いだ真は物凄く体が軽くなったように感じる
流石に20キロの重りを全身につけているのだ
それを脱げば軽くなるのは当然の結果にも思えてくる

「よし、帰るか」

真が店を出ると、千夏が真を待っていた

「えへへ、一緒に帰ろ」
「別に構わないけど・・・」

真は千夏と歩き始める

「どう、初めて制服を着た感想は?」
「やっぱり、重いよ・・・、本当にできるのか不安になってきたよ」
「大丈夫だって、私だって動けるようになるのに時間かかったんだから」

真の肩をポンポンとたたきながら喋る千夏

「それにさ、同じクラスでこういう仲間が居るってのはちょっと嬉しいしね」

確かにこんな他人に言えないような事をしていると、
それを喋れる人が身近にいるというのはいいことだと真は思う

「あ・・・」

急に歩く足を止める千夏

「どうしたの?」

千夏の眼つきが鋭くなる

「そこに居る人、出てきたらどう?」

千夏が睨んだ方向から、一人の男が現れた

「流石、かの霧原家のご令嬢といったところか」
「うるさいわね、霧原家の事は関係ないじゃない!!」

霧原・・・真はどこかで聞いたことある苗字だった

「とにかく、私の命が狙いなんでしょ、早くかかってきなさいよ」
「血の気の多い方だ、だが、そうでなくては面白くない!!」

千夏は真を庇うように前にでる
今の真では足手まといにしかならないのは明白だったからだ

「私に任せて、こいつの狙いは私だから」

男の姿は異形の者へと変わっていく
そう、妖と呼ばれる者へと変わっているのだ

「ふん、雑魚に負ける私じゃないわよ」

千夏は腰のホルダーから二丁の拳銃を取り出す

「死ねえぇぇぇぇ!!」

妖は千夏に襲い掛かる
だが、千夏は全く動こうとはしなかった

パン! パン! パン!

乾いた銃声が鳴る、サイレンサーをつけているのか音はあまり出ていない

「ぐが・・・」

千夏の放った弾丸は妖の急所を確実に捉えていた

「じゃあね」

パン!!

最後の一発が妖に打ち込まれると、それはただの灰へと変わっていった

「すご・・・」

改めてみると凄いとの一言しか出ない
急所を確実に捉える銃の腕、どこに撃てば攻撃が止まるのか正確な判断
真は自分でもその域に達せれるのか興味が沸いてきた

「御爺ちゃんの家は関係ないんだから」

千夏が怒った顔をして言い放つ
そこまで霧原と言う名が嫌いなのだろうか

「大丈夫、真君?」

真に話しかけるときは既にいつもの千夏だった

「全く、生まれた家とかさ、関係ないと思わない?」
「え、あ、うん」

突然何の事を言われたのかがさっぱり分からない真

「私だって好きで霧原家の令嬢になったわけじゃないのにさ」
「霧原って・・・?」
「ん~、一般の人には霧雨総合病院って言ったほうがいいかな?」

病院名を出されてやっと真は理解した

千夏は霧雨会の会長の孫娘ということなのだ

「あれ、でも名前は沖原で違うんじゃあ?」
「沖原は私のお父さんの姓、霧原はお母さんの姓」

霧雨会とは、日本全域に支部を持つ超大手の医療団体である
そこのトップは常に医学の最先端を走り続けたという
最近も新しい治療法だとか、色々とニュースを騒がしている

「ま、次期会長はお母さんだったって話だけど、お父さんと駆け落ち同然で結婚して、色々あったみたいだけど」
「色々あったって・・・」
「今はお父さんが病院の理事長だし、和解はしたみたいだよ?」

金持ちには金持ちの事情があるみたいだった

「私もそんな恋をしてみたいなあ~なんて・・・」

千夏は真の方をチラリと見るとため息をつく

「はぁ、どこかにいい男いないかな」
「それって、僕がいい男じゃないってことか?」
「私より強くなったら考えるよ?」

真は褒められてるのか、けなされてるのかよく分からなかった
多分、強くなったらって事は顔とかは多分合格なのだろう
だけど、千夏より強くなれる保障なんてどこにもない
ただ、からかわれているだけなのかもしれない

「それじゃ、私こっちだから、じゃーねー」

千夏と別れる真

「絶対に強くなってやる」

違った意味でやる気になった真であった
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by meruchan0214 | 2006-05-17 23:52 | LittleGarden


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