人気ブログランキング | 話題のタグを見る

12夜 過去の出来事1

リトルガーデンの事務所に集まった人たち
真は父親の事を知る為に隆泰からの話を聞いていた

「もう、2年前になるかな・・・」

隆泰がゆっくりと話し始めた・・・



2年前、隆泰と恵が前店長の下で修行していた

「うひぃ~、やっと終わったあ・・・・」
「もうへばったの?だらしないなあ」

壁に寄りかかる隆泰に恵が笑いながら話す

二人はほぼ同時期に入ってきて、実力もほぼ拮抗
この時から既に良い仲間であり、ライバルだった

「二人ともお疲れ様、新しいケーキ焼いてみたのよ」

真の母親、美也子がケーキを並べている

「新作だから二人に味見してもらおうかと思って」
「いつもすいません」

二人は事務所のテーブルに腰をかけた

「美也子、コーヒー淹れたぞ」

店の方から前店長がコーヒを持ってきた

「流石、店長分かってるぅ」
「おだてたって何も出ないぞ」

硬い口調だが、少し照れているようだった

「ふふふ、あなたも少し休憩してお茶にしましょ」
「ああ、そうさせてもらうか」

隆泰、恵、美也子そして真の父親、茂は4人でテーブルにつく

「店長、今度の依頼ですけど、どんな感じなんです?」

隆泰が仕事の話、裏の話を始める

「ああ、もう隆泰と恵なら十分ここも仕事も任せられるからな、お前達の好きにすればいい」
「って、言われても、俺達なんてまだまだですよ」

口ではそういうが、嬉しそうな顔をする隆泰
恵も嬉しそうな顔をしていた

「じゃあ、私達二人でやってみてもいいですか?」
「構わん、ただし無茶だけはするなよ?」
「分かってますよ」

口はあまり良くないが、店員一人一人を心配している
表には出そうとしないが、なんとなく態度で出ているのが分かる

「へへ、隆泰が足引っ張らなきゃいいけどね」
「前の失敗まだ根に持ってるのかよ」

明るい話が続く、ここにいる者達はこれからもこういうことが続くと信じていた

あくる日の事・・・
それは雨の降り続く日であった

「紅葉さん!!」

道端に血だらけで倒れている一人の女性・・・いや、妖と言ったほうが正しいかもしれない

「隆泰さ・・・ん」

彼女は水に住む妖の一人で隆泰の義理の娘、楓の母親であった
紅葉は震える手で隆泰の手を握る

「ごめんなさい・・・、あなたには・・・迷惑をかけっぱなしで・・・」
「喋らないでください、今皆のところに連れて行きますから!!」

隆泰は紅葉を抱えようとするが、本人はそれを止める

「もう・・・助からない・・・から・・・」
「そんなこと!!美也子さんの治癒魔法なら!!」
「本当は・・・分かってるでしょ・・・、だから・・・隆泰・・・さんに・・・お願いが・・・」

今にも燃え尽きそうな命を必死に繋ぎとめ隆泰に伝えようとする紅葉

「娘を・・・楓をよろしくお願いします・・・」

彼女は最後の力で呪文を唱え始める
すると、水の様な宝石が大きくなり、その中から楓が出てきた

だが、楓は気絶しているようで、目を開いてはいなかった

「楓・・・を・・・守って・・・」

最後まで言葉を続けることなく倒れる紅葉
隆泰は初めて本気で怒りというものを感じていた

「今回の仕事、俺にやらせてください!!」
「頭を冷やせ、隆泰、そんな頭に血が昇った状態で上手くいくと思っているのか?」
「でも、あいつらは紅葉さんを!!」

そう、リトルガーデンの面々はどこの仕業か既に分かっていたのだ

「お前の気持ちは分かるがな、そんな状態でお前を連れて行くことはできない」
「でも、店長!!」

ドガッ!!

思いっきり隆泰は茂に殴られた

「だから頭を冷やせと言っているだろ!!何度も言わすな!!」
「・・・・・・」

何もいえなくなった隆泰、茂は黙って事務所から出て行く

「くそっ・・・」

隆泰はこのどうしようもない怒りをどうすればいいのか分からなかった
許せない、絶対に許せない
そんな気持ちが隆泰の中を駆け巡っていた

だが、反面理性的な自分がそれでは敵に勝てない
冷静な判断を下せない、そう言っている

店長の言うことは分かる、理性的には理解している
だが、感情的には納得いかない

そんな自分自身に最も怒りをぶつけていた
by meruchan0214 | 2006-06-02 23:44 | LittleGarden


<< 赤い夕日 後章 ネームカードで100万円旅行当... >>