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あの日の思い出 6

偵察任務にでたエルターナとヴェルダはグラディアへと潜入を果たしていた

「凄い活気があるよね・・・」
「そうですね、こうして見ると見た目が違うだけで魔族も人間も同じですね」

グラディアという国では、街中を魔族が普通に歩いている姿が結構見受けられる
他人を襲うとかそういうわけではなく、世間話や仕事をしている

「とても戦争中の国とは思えないよ」

戦争中と言うのは例えそこが戦火が及んでいなくてもどこかピリピリしたものがあった
当然、私の居たフェイルト王国でもそうだった

「こういう風景見ると私達が今まで教わってきたことの無意味さがよく分かりますね」

ヴェルダが感心したように喋る
私も実際にそう思った、私達が教わった魔族と言うものと全く違うのだ
悪というのはその者の心なのかもしれない
何も知らずに決め付けることこそ、悪であるそう思えてしまう

「これを他の人たちに見せれれば・・・」
「そういうと思って、記録石持ってきてるよ」

記録石、その場所の風景や音声などを記録し別の場所でそれを再生する魔力を持った石
その用途は様々でいろんなことに使われる
ちなみに記録できる時間は約1時間ほどであり、何度でも使用できる

「そこのあなた、止まりなさい!!」

急に声をかけられ、私達は驚いた
もしかして潜入がばれてしまったのかもしれない、そう思うと緊張が走る
私は恐る恐る声のした方へと振り向いた

「何てね、驚いた?」

振り向いた先にはカースアイズが立っていた
まるで私達がここに居ることを知っているようであった

「どうしてここに・・・」
「そりゃ、貴方達が来たからわざわざ会いにきてあげたのよ」
「それはどうも・・・」

戦場の気迫は一切感じられない
あの真紅の眼が見えないせいもあるかもしれないが、優しいオーラがある

「この人、本当にあの時のと同一人物?」

ヴェルダが私に耳打ちしてくる
確かに戦場でしか会っていないヴェルダにとって彼女の雰囲気は違いすぎるものだ

「同一人物ですよ、お嬢さん」
「う、さいですか・・・」

ヴェルダはちょっと冷や汗をかいている
ヒソヒソ声で話していたにも関わらず、聞こえていたようである

「地獄耳なんですか」
「魔族ですからね、それよりもこんな所で立ち話もなんだから、私の家にでも行きましょうか」
「あ、はい・・・」

何となく逆らえない雰囲気のまま押し切られてしまう
魔族の家に行くのは少し不安であるが、楽しみでもあった

「そういえば、まだお互いの自己紹介がまだだったわね」
「そういえばそうですね」
「私は言わなくてもいいか」

カースアイズと言えば、いまや私達の国では知る者は居ないと言ってもいい

「私はエルターナでこっちはヴェルダって言います」
「ヴェルダです、よろしくお願いします」
「よろしく、エルターナちゃん、ヴェルダちゃん」

私達はカースアイズに連れられて彼女の家までやってきた
そこは大きな家ではあるが、私達の家とさして変わっているわけではない普通の家だった

「案外、普通な家なんですね」
「あはは、どんなの想像してたのよ」
「もっと色々凄いものかと・・・」
「魔界に行けばあるけどね、私はずっと地上暮らしだからこういうほうが落ち着くの」

魔界、やはりグラディアから魔界には行ききする手段が存在するらしい
私達の間では魔界の門を開くだけでも、禁忌とされている
世の中習った魔族だけなら、既に世の中滅亡しているだろう

「さ、遠慮しないで」
「お邪魔します・・・」

襲ってこないと分かっているとはいえ、敵国の家にお邪魔するのはちょっと気がひける
けれども、けっして嫌なことではなかった

「あ、ママーお帰りなさい~」
「お母様、お帰りなさい」

玄関に入ると二人の女の子が私達の前に現れる

「ただいま、二人とも、今日はお客様が来てるからきちんと挨拶しなさい」

可愛らしい少女達、顔付きは似ている
だが、少し奇妙な点がこの姉妹にはあった

「ルピナです、初めまして!!」
「ナミアといいます、お初にお目にかかります」

おねえちゃんに見える女の子がルピナ、妹の方がナミアと言うらしい

「この子達は三女と四女で、後二人居るけど、魔界に行ってて今はいないわ」

あのカースアイズに4人もの娘がいるのは意外であった
だが娘達に向ける優しさは母そのものである

「かわいい娘さんですね}
「そうでしょ、命に変えても守るつもりだわよ」

彼女の戦う理由が何となく分かる気がする
誰かの復讐や何かではなく、娘達を守るために戦いに赴いているのだ

「やっぱり、魔族と人間は共存できるものなんですね」
「ん、どうしたの急に?」

私は確信する、グラディア王国とは戦うべきではない
むしろ、共存できるはずであると、私は確たるものを得た気がした

「ま、お茶くらい飲んでいきなさい」

私は一刻も早くこの事を全ての人に知らせたかった
だが、焦っても仕方がない
ヴェルダも話を聞きたいということで、お邪魔することにした
by meruchan0214 | 2006-07-23 23:54 | 短編小説


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