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31夜 別れ

デュアラウズを倒した真達、戦いは終わったはずである

「店長、戻らないのですか?」
「あ、ああ、すぐ行く」

隆泰は何か気乗りしてはいないようであった
不安がっている、そんな気がしていた

「恵さんに無事だってこと、報告しなくちゃ」
「うんうん、これでしばらくは大きな仕事はなくなりそうですしね」

真と千夏は大きい戦いが終わったせいか大はしゃぎである
だが、隆泰の表情は変わることはなかった

「悪い、先行っててもらえるか?」
「え、どうしたんですか、デュアラウズは死んだはずですよ」

確かにデュアラウズは死んだ、それは間違いない
みんなで確認したことである

「ちょっとだけやる事があるんでな」
「・・・、絶対に戻ってきてくださいよ」
「分かってるよ」

真と千夏は隆泰を残していくのは不安であったが
自分達が行かない限り隆泰も動こうとはしない
それを真達は察したのだ

タッタッタッタッタッ

真達がここから出て行くことを確認する
すると、隆泰の顔付きが険しくなるのが分かる

「これ以上は進ませない、たとえお前と相打ちになってもな」

隆泰が言葉を発するとこの地下世界の一部が盛り上がるのが分かる

「良くぞ、見破ったな」
「お前の事はよく分かってるんでな、ここがお前の核でもあるということもな」
「くくく、ここで私を倒すということもどういうことか分かってるんだろうな」
「ああ、知ってるよ!!」

隆泰は自分の武器を取り出し、構える
その顔には決意の表情があった

「お前は俺が完全にここで消滅させる、店長の無念・・・ここで晴らす!!」
「面白い、やれるものならやってみるがいい!!」

隆泰とデュアラウズの最後の戦いが始まった

ガキィィィィィン

勝負は熾烈であった、お互い一歩も譲らない戦い

「ここでお前が私を倒せば私は消滅するだろう、だがお前も一緒に死ぬことになるな」
「分かってるよ、そんなこと!!」

ザシュ!!

一瞬の隙をつき、隆泰の槍が一閃デュアラウズを捕らえる

「ガハッ・・・」
「これで本当に終わりだ」

隆泰は札を取り出し念じると、デュアラウズの体が光に包まれ爆発する

ドガァァァァァァァァン!!

凄まじい爆発と共にデュアラウズの体が消し飛んだ

「く・・・くく・・・、強くなったな・・・、だが、お互い消滅するだけのことだ・・・」

それだけ言い残すと、デュアラウズは跡形も無く消え去ってしまう
同時にこの地下世界が崩壊を始める

「ふぅ、俺の役目も終わり・・・か・・・」

隆泰はやり遂げた表情をしている、その顔に後悔はなかった

「店長もこんな気持ちだったんだろうか、後に託すっていうのは」

今なら茂の気持ちが分かる気がする
自分が未来を託すに値する者達がいる

「恵、まだ見ぬ俺の子供、ごめんな、楓、仲良くやってくれよ」

世界の崩壊が徐々に早まっていく
そして、隆泰の姿も崩壊と共に見えなくなっていった

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

激しい地響きと共に地下世界が崩れていく

「店長!!」
「真君、店長を信じましょう!!」

崩れる階段を急いで駆け上がる真達
外に出る頃には地下へ続く通路はただの瓦礫の山になっていた

「店長・・・まさか埋もれちゃったんじゃ・・・」
「そんなことあるわけないじゃない、転送術も使えるんだし!!」

札を使った転送術、隆泰は確かにここへ来る前に札を持ってきていた

「無事に終わったようですね」

仕事の終わった菊子が真に話しかけてきた

「あら、隆泰さんの姿がないようですが?」
「店長は先にと言ったきり、後には・・・」
「そうですか、ちょっと探してみましょう」
「お願いします」

菊子は精神を集中させると、何かが広範囲に広がったのが感じられた
その広がったものは何かは真達には分からないが、全てを感じ取られているそんな雰囲気であった

「・・・少なくても周囲200Kmにはいませんね」
「200kmって、転送術でも無理な距離・・・だよな・・・」
「せいぜい、5kmが限界でしょうね」

真達の表情から絶望の顔が生まれる

「折角、皆で帰れると思ったのに」
「絶対に帰ってくるって約束したのに・・・」

恵にもどう話せばいいのか分からない
千夏の時は笑い話で済んだが、今度ばかりは本当に望みはない

「でもですね」

菊子が口を挟んでくる

「絶対に死なないって約束したのなら、死んではいないと思いますよ」

菊子の言葉は気休めにしかならなかった
だが、菊子はそのまま言葉を続けた

「私の知り合いで死んだと思われていた人間が数年後にひょっこり帰ってきましたから、隆泰さんもそんな気がします」

そんな気がする、でも確かに言われてみればそうかもしれない
もしかしたら、転送に失敗して変なところに飛ばされた可能性もある

「私って、人の生き死にって感覚で分かるのですが、隆泰さんが死んだとは思えません、たとえこの状況はどんなに生存が難しくてもね」
「でも、難しいじゃなくて、絶対に無理なんじゃ・・・」

菊子の言うとおり、隆泰が生きていることを信じたい
無事で戻ってきてほしい、心の中では願っている
現実を見る限りでは絶対にありえない可能性を信じているのだ

「ま、信じる信じないはあなた達の自由ですけどね、でも、信じてあげないと帰れるものも帰れなくなってしまいますよ」

菊子は言いたいことだけ言うと、その場からさっさと帰っていってしまった

「とりあえず・・・、恵さんに報告・・・か・・・」
「うん・・・」

正直にいって報告するのはとても気がひける
なんていえばいいのか分からなかった
菊子さんに言われたとおり、どこかで生きているとでも言えばいいのか
ありのままの現実を話すべきなのか、真は悩んだ

「二人とも、仕事は終わったの?」

恵が真と千夏に声をかける

「隆泰は?」
「店長は・・・、恐らく地下の崩壊に巻き込まれて・・・」

ごまかせないことは分かっている、正直に言うしかない
恵が可哀想ではあるが、これしかないのだ

「そう・・・、何となくそんな感じはしてた」

思ったよりもショックは少なそうであった、と言うよりはどちらかというと諦めていたそんな感じだった

「あの時とあまりにも似過ぎてたから、もしかしたらと思ってたけど」
「あのとき、僕達が店長を無理やりにでも・・・」
「ううん、大丈夫、隆泰は死んでない、それが以前と違うことだと思う」

恵は菊子に似たようなことを話す

「どうして、死んでいないと?」
「死んだと思えないから、茂店長の時とは何かが違うのよ」

真達には理解できなかった、だが、惹かれた者同士の繋がる糸があるのだろう

「帰ってくるまで、私達がお店を守らないとね」

あの現状を見る限り助かるとは到底思えない
だが、前向きに考える恵を見て、真達も前向きに考えるしかなかった

「そう・・・ですね・・・」
「私でよければ、お手伝いします」
「よろしくね、二人とも」

恵は涙をこぼした、それが二人に感謝するものなのか
隆泰に対してのものなのかは分からない

真達は隆泰の帰りを信じることにした
あきらめたら全てがそこで終わる気がしたからだ

いつか帰ってくる日まで、自分達がしっかりやらなくてはいけないのだ
by meruchan0214 | 2006-08-06 00:54 | LittleGarden


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