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外伝6夜 解決

「隆泰君、ちょっと」

隆泰は美也子に呼ばれ、事務所へとやってきた

「えっと、俺何かしましたか?」

隆泰は自分が呼ばれた理由は分かっていなさそうであった

「隆泰君は恵ちゃんが怒ってる意味分かってる?」
「ああ、分かってます」

美也子に言われて呼ばれた理由が分かった隆泰

「誤解なんですけどね・・・、どっちかって言うと母親みたいな感じなんですよ、紅葉さんは」
「そう、でも恵ちゃんはかなりショックだったみたいよ?」
「あ~、分かってるんですけどね、ああなった恵には何言っても聞いてくれなさそうなんで・・・」

隆泰も恵の事は気になる存在であった
同期ということもあり、気軽に話せ一緒に居れる人間なのだ

「なんだかんの言ってもちゃんと恵ちゃんの事見てるのね」
「ええ、まあって、何言わせるんですか!!」

お互いが気になってはいるが、美也子はこの事に自分が口を出す問題ではないと感じた
二人とも多少なりとも惹かれあっているのは分かったから、
時間が経てば勝手に解決してくれると思ったからだ

「ま、何とかして誤解を解きますよ」
「頑張ってね」

隆泰は美也子に一礼すると事務所から出て行く

一方、自分がなかなか抑えられない恵は街中をウロウロしていた

「うー・・・、こんな風じゃいけないって分かってるけど・・・」

自分勝手に嫉妬している自分が恥ずかしい
でも、どうしても自分自身が抑えられない

「他人が誰を好きになろうが勝手だけどさ・・・」

やはり自分の好きな人が自分を好きではないと思うとどうしてもやるせない気持ちになった

「私これからどうしよう」

心が宙ぶらりんのまま歩き続ける恵

「あの、もしもし?」
「え、は、はい!?」

そのとき、急に恵は声をかけられた

「リトルガーデンの方ですよね?」

話し掛けてきたのは紅葉であった

「そ、そうですけど・・・」

何故自分が話し掛けられたのかよく分からない
もしかしたら、隆泰の事について何か言われるのかもしれない
聞きたくはなかったが興味はある
何とか自分の心を落ち着かせようと、努力しながら紅葉の話を聞く

「ああ、良かった人違いだったら、どうしようかと」
「一体どうしたのですか?」
「いえ、さっきお店に行った時に凄い形相でこっちを見ていらしたから、私が何かをしたのかと思いまして・・・」

恵は穴があったら入りたい気分であった
自分の嫉妬している姿が嫉妬している相手に見られていたのだ

「え、あ、いや・・・」

言葉に詰まる恵に紅葉は悲しそうな表情を浮かべる

「やっぱり、私が何かしましたか?」
「そんなんじゃないんです」

慌てて否定する恵、本気で心配している紅葉に対して申し訳なく思えてくる

「あの・・・、変な事聞いてもいいですか?」
「はい?」
「隆泰の事、どう思っていますか?」

隆泰の事を大事にしてくれそうだ、もしも隆泰と紅葉が愛し合っているのならば
自分は身を引こうとも思っていた

「何から何までお世話になりっぱなしで、気の効いた息子をもった気分ですよ」

恵は紅葉の言葉に一瞬呆気に取られる
もしかして、二人には愛情というものはないのではないのか
自分がただ勘違いしていたのではないのか、そう思った

「隆泰さんも私の事お母さんみたいって、ちょっと恥ずかしいですけどね」
「あ、そうなんですか」

急に恵に明るさが取り戻ってきた
隆泰と紅葉がそういう関係ではないと分かっただけで気分が晴れてきた

「楓も隆泰さんには良くなついてますし、なんとお礼を言えば良いのか」

勘違いしていた自分が恥ずかしいが、妙にうれしかった
自分にチャンスがあると分かっただけでもよかった

「それじゃあ、そろそろ失礼しますね」

紅葉が去った後、恵は心の中でガッツポーズをしていた
by meruchan0214 | 2006-08-12 16:17 | リトルガーデン外伝


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