朝子の両親に助けられてから、一週間が経った
傷も大分癒え、そろそろここを出ようかとも思っていた ここに居ては彼等に迷惑がかかる事は必至だ、その前に出ようということだ 「あ、体の方はもう大丈夫なのですか?」 「ええ、貴方達にはお世話になりました」 たった一週間とはいえ、自分の意識はかなり変えられた 人間は弱く醜いだけの生き物ではない、心を満たしてくれる美しさがある 全ての人間がそうとは言わないけれど、少なからず存在はしている 「でも、貴方誰かに追われているのでは、もし良かったらここに居ても構いませんのに」 「これ以上貴方たちに迷惑をかける訳にはいきませんから」 朝子の母親の言葉を断る夕子、もしも私と一緒に居たら仲間と思われて一緒に倒されるかもしれないのだ、それだけは避けたかった 「私の名前はフィリアムと言います、ありがとう、助かりました」 夕子は自分の本来の名前を教え、朝子の両親の家から立ち去った 今までできなかった自分の使命を果たすためにまた動かなくてはならない ドクン・・・ しかし、心の中でどことなく迷っている自分が居た それが心を強く打ち私の気持ちを鈍らせている 「私は神の使いなのに・・・!!」 神に伝えられた事をただやるだけだった自分自身が変わっている 少しとはいえ、暖かい心と言うものに触れたからであろうか 「見つけたよ、天使さん・・・」 迷っている夕子の前に現れる恵、この前の男とは一緒ではないらしい 「今度は逃がさないからね」 「私もこの前のようには・・・いかないわ!!」 人間の暖かい心を知ってしまった天使、夕子はその判断を鈍らせていた 恵からは朝子の両親のような同じ雰囲気がする そう、彼等から見たら夕子の方が悪なのだ 戦いは夕子の方が不利であった、実力差もあったが何よりも迷いが生じている夕子には戦いに専念する事はできなかった 「くっ」 恵に押されっぱなしで、徐々に体力を削られていく 反撃もロクにできないまま、対決は恵の勝利になった 「貴方本当にこの前の天使?」 恵の言った言葉、本当に同一人物なのか疑っていた 「同じよ、何も変わっていないわ」 「嘘よ、今の貴方には感情を感じるもの、冷たいだけではない感情がね」 自分では変わっていないつもりだった、神の任務は遂行するつもりであった 「やめやめ、私帰るわ」 恵は手にもっていた大剣をペンダントに封じ込めるとその場から立ち去ってしまった まるで自分には興味を失ったかのようであった 「人間ってなんなの・・・」 夕子はわけの分からぬままそこにたち尽くしていた しかし、自分が少し変わってきているということは認めざるをえなかった 生きられると言うことに喜びを感じてしまっていたからだった
by meruchan0214
| 2007-01-08 00:47
| 短編小説
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