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アーツの章 4輪 女魔族ヘーテ

エルンドールの街、今でもたまに魔族が訪れるこの街は魔族に対して脅威という目だけでなかった
少なからず、自分達と同じような魔族が存在するという事がこの街に訪れて分かった事

「おい、今日はヘーテ様が来ていらっしゃるぞ」
「何、本当か?」

ヘーテという人物がこの街に来ているというだけで街が慌しくなっている

「あの、ヘーテさんとはどういう方なのですか?」
「この街の女神様だ、もう200年以上も前から我々の為に力を使ってくださっているんだ」

200年以上も前からということは、確実に人間ではない
エルンドールの考えからすると、女神様は魔族だと容易に想像できた

「アーツ、会ってみませんか、その方に」
「そうだな」

アーツとマヤはヘーテに会いに向かった
女神様が居るという場所は大きいが豪勢に作られているわけではなく、どちらかというと質素な造りの神殿だった
アーツ達がついた頃には神殿では見物人で鈴なり状態だった

「凄い人だかりだな・・・」
「そうですね・・・」

あまりにも人が多すぎて中を見ることができない

「何か嫌な気配がします」

マヤが不安そうに喋る、マヤがこういうときは大体的中するときだ
次の瞬間、地響きが起きたかと思うと、辺りに激しい雷が響く

「ヘーテ様が危ない!!」

街の人間が言う、アーツとマヤはその不穏な空気を読み、一気に中へと突っ込んでいく

「通してください!!」

アーツとマヤの二人は強引に人ごみを掻き分けていく
そこには一人の女の魔族、それを囲む沢山の街の人々と別の魔族が対面していた
女魔族は耳の部分が魚のヒレのようになっている以外はほとんど人間とそっくりだった
体には術式を施したような紋様が刻んである

「性懲りも無く、また来たようですね」
「貴様を殺せとの命令だ、我々の為にも死んでもらうぞ」

女の魔族ともう一方の魔族が戦闘になろうとしている間にアーツ達が割り込んだ
アーツ達は街の人が守ろうとしている魔族を守るように、立ち塞がった

「マヤ、街の人を頼む」
「分かりました」

アーツは一人、剣を構え前に出る

「何だお前は?」
「この地上でお前達の好きにはさせないただの人間だ!!」

魔族はまずアーツを殺そうと襲い掛かってくる
だが、アーツは魔族の攻撃をいなすと、逆に相手に大きなダメージを与える

「止め!!」

アーツの剣の一閃が魔族を一刀両断にする
剣を鞘に収めるアーツ、だが、魔族は一匹だけではなかった

「死ねええええ!!」

完全に不意をつかれたアーツ、やられると思った瞬間、一筋の何かが魔族を粉砕した
アーツはそれが飛んできた方向を見ると、女魔族の手に鞭が握られており、その先は先ほどの魔族へと繋がっていた

「アーツ大丈夫!?」
「うん、大丈夫」

とはいえ、ヘーテの攻撃が無かったら間違いなく深手を負っていたであろう

「ありがとうございます、助かりました」

ヘーテはアーツ達に向かって深々と頭を下げた

「こちらこそ詰めが甘くてもう少しでやられるところでした」
「いえ、貴方が一匹目を倒してくれていなかったら私がもう一匹に気づけませんでした」

今まで出会った魔族とは雰囲気そのものが違う
魔族に言われる闇の力こそ感じはするものの、それが怖いと感じる事はない

「お礼も兼ねて貴方達とお話がしたいのですが、よろしいですか?」
「僕達は大丈夫です」

アーツ達は意外な事で話す機会を設ける事ができた
どんな話を聞けるのかと思うと今から少し楽しみである
アーツ達は神殿の奥へと案内されていった
by meruchan0214 | 2007-02-13 12:21 | 架空世界[フリトアネイス]


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