相手はザムレイズの軍艦3隻。
パワードールも多数出撃しており、こちらとの戦闘態勢は整っていた。 対するはウロボロス軍とザムレイズ軍の軍艦1隻。 こちらも機兵やパワードールを出撃させ戦う状態は整っている。 「アリシア、シンクロシステムはお互いのシステムを共有することによって、より広範囲のレーダーを持つ事にあるわ。レーダーの使い方は分かるわね?」 「はい、分かります」 「オーケー、あんまり離れすぎると機能しなくなるから、気をつけなさい」 「了解です」 「自信を持って、貴方ならこのシステムに何も問題なく使いこなせるはずだから」 アリシアはマニュアル通りに操縦する。 ほとんどがシュミレーション通りでほぼ違和感無く動かすことができた。 「アコナ、フリスさん、ごめんね」 「いえ、こうなることは予想はしてました」 「娘が自分で選んだ、複雑な気分ですが止めるつもりはありませんよ」 「ありがとう、皆ステイルさんの軍には当てないように気をつけて!!」 「了解!!」 いよいよ、戦いが始まった。 以前の戦いから再びあの熱線の攻撃があると思うと迂闊には攻撃できない。 だが、リシェルはいつもと違いやや余裕をもっていた。 「射程距離さえ分かっていれば・・・」 相手の兵器さえ分かっていれば対策も立てれる。 エルブラストは自身の持つ砲台を連結した。 「射程外から撃てばいいってね・・・、アコナお願い!!」 「了解!!」 アコナの乗るフルゲスト改がエルブラストの砲台の照準を定める。 「いけ!!」 長遠距離からの狙撃、それを正確に狙い打つ。 エルブラスト以外にもほとんどの機兵が同じような戦術を取った。 「同じ手は二度通用しないってね」 長遠距離からの狙撃に熱線の射程まで近づくことができない。 そうなると必然的に戦闘は白兵戦になっていく。 「来たわよ、フェルル隊、シュイ隊は現状を維持、フリス隊とアコナ隊は敵を迎え撃って。狙撃隊に敵を近づけさせないで」 「了解」 機兵、パワードール同士の白兵戦はウロボロス軍の有利であった。 機体性能が明らかに違うというわけではないが、錬度が如実に出ているのだろう。 「相手のハイシェントが出てきたら、アリシア、私たちで抑えるわよ」 「は、はい!!」 正直、アリシアはついていくので一杯一杯だった。 当たれば運が悪ければ即死、良くても機体破損。 だけど、不思議と今まであった不安はなくなっていた。 破壊すれば相手の未来を奪ってしまう、罪悪感こそ残っていたが、乗ると言うことに違和感はない。 「うん、その調子だよ」 「はは、ありがと」 語りかけてくるハイシェント、自分が動かしていない、反応しきれない時に勝手に動いているのが分かる。 自分をサポートしてくれている、どんな激しい動きをしたところでもちゃんとついてきている。 戦える、自分も護るモノがある、そう思い始めていた。 「きた!!」 どす黒い大きなものが近づいてくる。 ザムレイズのハイシェントが近づいてきていた。 「アリシア、恐れないで。一人じゃないから、絶対に勝てる」 「は、はい!!」 再び対峙するハイシェント同士、それに今回はエルブラストもいる。 「お父さん・・・」 「え・・・」 ハイシェントが呟いた言葉に少し驚くが、今は戦場だ。 色々と聞くのは後回しにアリシアはした。 「レフィン・・・!!」 「おや、今日はハイシェントではないのか、それではハイシェントに乗っているのは・・・?} 「貴方を倒す人間よ」 「くくく、やれるものならやってみろ」 「アリシア!!」 「はい!!」 ハイシェント、エルブラストがプロトタイプハイシェントに襲い掛かる。 一進一退の攻防を始め、アリシアはリシェルに遅れないように必死だった。 だが、アリシアの感覚は皆の予想を遥かに超え始めていた。 「見える・・・」 エルブラストとプロトタイプハイシェントが次にどうやって動くか。 アリシアにはこの戦場全体が今どうなってるか無意識に頭に入ってくる。 「リシェルさん、任せてください!!」 「え?」 アリシアの乗るハイシェントがプロトタイプハイシェントと競り合いになる。 ジ・・・ジジジ・・・ 激しくぶつかり合う音、リシェルはまだ実戦を始めたばかりのアリシアに全て任せられるはずも無く援護に行こうとする。 「え!?」 「何!?」 リシェルもレフィンも驚愕の声を出すしかなかった。 一瞬、ほんの一瞬でハイシェントがプロトタイプハイシェントの腕を断ち切った。 その瞬間はリシェル、斬られた本人にも分からなかった。 「ちっ」 予想外の攻撃にプロトタイプハイシェントは撤退する。 それに呼応するかのように、他のパワードール達も撤退して言った。 「予想以上だわ・・・」 呟いたリシェルはただ驚きの言葉を放つしかなかった。 戦闘が終わり、ウロボロスに戻る。 初の戦場で大きな戦果をあげたアリシアはまさに英雄の如き存在だった。 「私、勝ったの?」 一番驚いたのはアリシア本人であった。 思った以上にうまくいきすぎたせいもあるだろう。 「良くやったわね」 イマイチ実感のわかないアリシアに対して、リシェルが言葉をかけた。 その言葉に、自分が相手を退けたことを少しずつ感じ始めていた。 戦っているときに感じた感覚は今はもうない。 今は物凄く落ち着いているだけだった。 「戻りましょうか」 「はい!!」 アリシア達がウロボロスに戻るとステイルの艦からの通信が入る。 「ありがとう、助かりましたよ」 「いえ、それよりも大丈夫なのですか?」 「心配ない、皮肉なことだがこちらも一枚岩だけじゃないんでね」 「そうですか」 リシェルはやや複雑そうな表情を浮かべる。 「それでは、君達の無事を祈っている」 通信が切れると、みんなの緊張が解けたようにもなった。 今回の一番の大手柄は間違いなくアリシアだった。 プロトタイプハイシェントを圧倒し、傷を負わせ撤退させたからだ。 「でも、戦う才能って怖いですね」 正直なアリシアの感想だった。 得も知れぬあの感覚、しかしそれが逆に心地よい。 命をやり取りしているという、妙な興奮がアリシアの心をそう思わせたのだ。 「そうね、戦いなんてなければ、必要無いものだしね」 リシェルはそれに賛同するように頷いた。 「でも、戦わなければいけないのが、残念だけど」 それと同時に少し悲しそうな言葉で台詞を付け加えた。 戦いが無くなればどんなにすばらしいことなのだろう。 少なくとも、この地球圏に住む人間たちはこの20年は戦争を起こさなかった。 異なる星の人間たちが突然攻めてきた。 「とりあえず、今日は疲れたでしょう。もう休みなさい」 「あ、はい」 言われてみると何となく眠い気がした。 それだけ精神を集中していたせいもあるだろう。 アリシアは両親である、アコナやフリス達と共に家へと戻っていった。 「そういえば、戦闘のときにハイシェントがお父さんって言ったよね・・・」 確かにそう呟いた、作り主ということなのだろうか。 リシェルとレフィン達は確かにハイシェントを作った人々には違いない。 だけど、ハイシェントの言葉はアリシアが父を呼ぶ様な、そんな感じだった。 「まさかね・・・」 一瞬、頭の中を変なことがよぎったが、すぐにそうではないと否定した。 アリシアが考えたことは、ハイシェントもリシェルと同じなのではないかと。 そして、リシェルとレフィンがそのハイシェントの実の両親ではないかと。 それだと呟いた言葉もわかる。 けれど、ハイシェントのしゃべり方などは明らかにまだ子供だ。 いくらなんでも、レフィンはともかくとしても、リシェルがそれを許すとは思えなかった。 「今日はもう寝よ!!」 あんまり深く考えることをやめて、布団に潜るアリシア。 いろいろと考えることも無く、静かに安らかな寝息をたてていた。
by meruchan0214
| 2007-10-30 19:57
| 守護機兵 ハイシェント2
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